627話 撮影終了 挿絵あり
「来るなカ、状況的にそう送らない訳にもいかなかったが感じ取られていると面倒だナ。いヤ、困るのは2カ国だガ。」
「この部分から送る前にカットでお願いね。下手を言うと何やらされるか分からないし。受信出来るかもと発表しない訳にもいかない状況だったけどソーツ来いは送りたくないなぁ・・・。」
「当初の呼びかけ案からかなり離れた形になりましたからね。最初はスモークスクリーンにクロエを投影すると言う形でしたし。」
呼びかけ当初案は宇宙服着た俺が宇宙空間で撮影されつつ、それをメリークリスマスの文字を書いた時に使ったスモークに拡大投影して宇宙に来ている事を知らせると言うモノだった。まぁ、その中でクチパクでソーツ来いと言ってくれと言われたな。どの道宇宙では音が響かないので声出しても仕方ない。
その案は状況的に潰れてしまい、代わりにS・Y・S光らせて呼びかけると言うか、メッセージを送信する羽目になった。う〜む・・・、地球に帰ったらどやされそうと言うか、絶対魔女達にどうにか出来ないかと言う嘆願は飛んできそう。少しの救いがあるとするなら中露が大人しくなった事とか?
少なくともソーツに会いたいと言う国の筆頭で欲したのは永遠。今の指導者が欲しいのか、それともその指導者を動かせるだけの権力を持つ人が欲しいのかは分からない。分からないが表向きの最高権力者はその国の指導者である。松田の様に裏方万歳で首すげ替え議員やらがいないとも限らないが、地球に帰るのも億劫になってくる。
「本当にディープな質問をしていいカ?」
「なに?ソーツが本当に呼べないか?」
「そうダ。私達は話を聞く事は出来ても本当に出来ないのかは分からなイ。賢者と魔女がソーツに嫌われていると言う話も聞いたガ、その上で格上なら呼び出しも可能なのではと思ってしまウ。」
「確かに宇宙人に上下関係があるかは分かりませんけど、嫌いだから来ないと言われたなら祭壇でも・・・、輸送機で飛び立った時に密談してましたよね?ソーツ側からの年1回と言う。」
「密談・・・、あの時は賢者も魔女も公表してなかったから密談と言えば密談かな?多分、そのホームラン級の材料を出せば奴等は来るしお願いを最大限聞いてくれる。」
「そんな材料があるのカ!?」
「待ちなさいエマ、その材料ってかなりヤバい材料でしょう?例えばクロエを地球から引き取って他の星で盥回しにするとか、ゲートに閉じ込めるとか。」
「誘拐に監禁ですね、ソレ。ソーツが求めたのは交渉権の返還。つまり、最大級のホームランを打つ代わりに2度と交渉には応じないと言う事です。逆を言えばそれだけ何かを差し出しても魔女と特に賢者には合いたくないと言う事で、呼ばれたからとホイホイ来る事はない。」
「流石に返還は許容出来ないナ。しかシ、探している祭壇なら契約があるから返還せずに交渉が出来ル・・・、なるほド。確かにソーツに宇宙でいくら呼びかけても来ないだろうし来る意味がなイ。材料をちらつかせて来させても不興を買っても後に響ク。これも情報開示と言うやつカ?」
「元々魔女と賢者の事は表に出す気はなかった。その我儘の結果が今とも言えるし、隠していたからこそ世界は世界として回ったのかもしれない。まぁ、ifの話に意味はないし腹を括ったから出来る限りの情報開示はするかな?」
流石に元男と言うのは開示しなくていいよな?知っている奴は・・・、2人とももう知ってんじゃん。まぁ、だから何だと言う話でもあるしトランスジェンダーが肉壁に就いて自分の思う性別に転換する事もある。トイレも改築が進んでほとんど男女共に個室になったし、これから先性別と言うものも更に曖昧になってくるのかも。
獣人と結婚して子供残したいと言う人は一定数いて職を絡めたDNA突破方法は日夜研究されているし、今の赤ん坊からすれば獣人がいて職があってコロニーがあるのが当たり前の世界になる。少なくとも100年くらいすればある程度の常識は固まるのかなぁ・・・?
「出来る限りの情報開示ですか・・・、ゲートの底が何階層と言うのは?」
「それは魔女達じゃなくてソーツ案件だから知りません。寧ろ分かってれば祭壇もどの辺りとか目星付きそうですけど、63階層まで進んで祭壇はなかった・・・。と、思う。」
「と、思うカ・・・。確かに端の見えない階層内で何かを探すのは骨が折れル。寧ろ祭壇とはどんな形なのダ?確か最初の交渉では探せと言われただけだったと記憶しているガ。」
「その通りで祭壇の様な物を設置したから、自分で探して交渉するならそこと言われた。設置と言うからにはするだけの大きさで人工物っぽい物とは推測出来る。出来るんだけど確証がない以上限定された交渉相手、つまり私が入れるだけの大きさとも受け取れる。更に言うとセーブスペースにあるとも限らない。交渉人さえ無事なら他は掃除してても問題ないからね・・・。」
祭壇と言われて思い浮かべるのは葬式の時のモノだったり、教会にあるモノだったり神殿の中にある供物を捧げる場所だったり或いはピラミッドだか、ソーツの言う祭壇が俺のイメージする祭壇とイコールかは分からない。彼奴等の感性はモンスターやら鳥やらを見ればぶっ飛んでるのがよく分かる。よく分かるのだが、交渉拒否して隠匿するとも考えづらい。
ドックで会う前ならそれも可能だったかもしれないが、今はもう賢者と魔女の事をソーツは知っている。つまり、約束は反故には出来ない。だが、分かりづらい所に設置するくらいならやりそうで、本人達の目的が掃除させる事ならやはり奥のどこかに設置するだろう。
「せめて形でも分かれば探しやすいんでしょうけどね。こう・・・、神殿があってその奥に祭壇があるとか、神殿行きのゲートがあるとか。」
「推論はいくらでも出来るんですよ。でも私達はまだ中層しか見ていない。下層があるとして、そこがどう言った場所になっているかは分からないんです。」
更に言うならその下層には米国のアレがいる。正確にはあれレベルのモンスターがいる。そして、中層ではまだ空間攻撃して来るモンスターとは出会っていない。燃費が悪いのかは知らないが乱発されればかなりヤバく、森林地帯と言う事もあってモンスターの視認性は悪く仮に狙撃方式で使われれば被害はデカい。
「少なくとも私達は中層に入っている。それを含め地道にやるしかないでしょう。何かを探す様な魔法はないのでしょう?」
「橘さんと同じですよ。手掛かりのないものは探し様がない。一発でそれと判断できるならその限りではないですけど、何かを探すイメージするにしても間違えば違うものとなる。」
慣れてくればと言うのはおかしいが、多くゲートに潜る人ほど何となく次に向かうゲートなんかの方向が漠然と分かる様になってくる。当然知見やら退路のある職の方が精度は高いが、剣士とガンナーのコンビでも走り回れば何となくこっち!と分かるらしい。まぁ、それだけ次に進むゲートが多くあるとも取れるのだが・・・。
「それはそうと撮影は終了カ?紹介と言う分にはそこそこ撮影出来たと思うガ?インパクトと言うならパワードスーツを撮影すると言うのもあるガ。」
「アレって撮影していいの?日本のモノは外観とかなら文句言われないと思うけど、米国のはマズイんじゃない?」
「外観なら構わないゾ?船外活動記録として残すシ、どの道公開される予定でしないと逆に企業がうるさイ。ラボではないが技術を生むのは企業や技術者で政府としてもその流れは止められなイ。代わりに早期にギルドを稼働させて管理体制を作りたいとしているヨ。」
『橘隊長、エマ隊長、ファースト氏の3名はコントロールルームへ来られたし、繰り返す・・・。』
「どうやら撮影は終わりみたいだね。カット部分は消してから地球に送って下さい。コントロールルームへ行きましょう。」
何処を使うか分からない撮影だったがトータルして6時間くらいは休憩を挟みつつやってたかな?食べ物やら料理やらも撮影したし大浴場も紹介したし。宇宙と言う場所にいると本当に時間感覚が狂うな。そんな事を思いながらコントロールルームに着くと藤が待っていた。
「先ほど地球から連絡があったでござるが、ゲート侵入実験の許可が出たでござる。かいつまんで話すと、呼びかけ等を通して観察しておったが何1つ変化はなく異常も見られない為でござるな。」




