616話 キラッ☆ 挿絵あり
クロエはなにかした人物に心当たりがあるらしい。話を濁した辺り親しい人物なのでしょうが、話が大きくなりすぎる中でその人物を守るのか或いは切り捨てるのか?
多分切れないと言う方が正しいのだろうか?色々と暴露して情報を叩きつけられ考えるにしても誰もが時間を必要とする。実際、私も職に人格があると言われて心の内で『鑑定師〜』と話しかけて見たが返答はなかった。多分あの話を聞いた人間なら皆、同じ様に試したのではないだろうか?
勝手に考察するならEXTRAの名は職の真名とかではないだろうか?本当に交信出来ないのではなく、交信するだけの価値を示せれば或いは反応を返してくれるのかもしれない。ただ、その価値とは何かは分からないのだが・・・。
ただまぁ、話しかていくら反応はないと言われても試してみてリスクを負う事もない。それで返答されたらソレがリスクかもしれないが、クロエは上手く職と付き合っている様に思える。しかし、仮に反りの合わない者に居座られたら面倒で仕方がないだろう。
「発進いいでござるよ〜。」
『サイ了解!3、2、1、ゴー!・・・、コレの操作中々難しい・・・、身体は地面があると反応するのに視覚的にはなにもない。でもトレースシステム面だけを抽出して作業様にカスタマイズしたから仕方ありませんか。佐沼さん、データは後から共有してもらうとしてソーツへ呼びかけミッションに呼んでもらえて光栄です。でも、コレの試験航行を私がしても良かったんですか?』
『サイ大臣を除けば何は出来ませんよ。大元は台湾側のシステムを共同改良しているものですからね、扱いも指揮していたサイ大臣が1番得意だと思いまして。私達も思考による操作システム等をR・U・Rを作り上げた後に研究していましたが中々上手く行かなかった。そこに試作品とは言え足がかりが来たなら、こうして一緒に楽しむ方がいい。橘隊長、マシンの大破や誤作動による大気圏突入は無視してください。』
『マシンの大破・・・、爆散とかしないですよね?鑑定しただけなら爆発物はないと思いますけど。』
『今回の試験機はコスト削減の為に飛行ユニットではなく、エアー噴射で姿勢制御しているので大爆発はありませんよ。その代わりデブリを回避するなんて言う咄嗟の行動にはついていけません。先程の大破と言うのはデブリの直撃なんかですね。S・Y・Sの力場内なら簡単にはデブリも来ないので、もしもの時の保険とでも思って聞いておいてください。』
『了解です。エマや藤の嫁達以外の手があるのは素直に喜ぶとしましょう。サイ、敬称は付けない約束でしたが不快なら付けますよ。それくらいの余裕はある。』
『サイで結構、今私は地上からリアルタイムで宇宙にいる。松田官房長官ではないですが、こんなに遠くにいるのに肩書や敬称を付けられても面倒です。』
『橘、話してないでさっさとポイントに魔法を配置しよウ。それが終われば私も付属ユニットを指輪に収納して宇宙遊泳と洒落込ム。』
『そう言えばクロエからバイク借りてましたけど、ミスして火星やら金星まで飛んでいかないで下さいよ?あのバイク、鑑定したらかなりアホな設計なんですから・・・。』
元々は装備庁のからの寄贈品。それを宇宙に行くに辺りラボで弄くり回してもったと聞いているが、鑑定すればするほど頭を抱える。鑑定術師として使えない訳では無い。但し書きをするなら、クロエが使う前提で再設計されたと言う点だろう。
鑑定して使いこなす。それはこのパワードスーツも例外ではない。ただ、乗り物となると前提条件が違う。誰でも乗れる自動車なら問題ないが誰かの為に作られてその人が使う前提のモノなら私にない要素を盛り込まれていても仕方ない。
あのバイク・・・、飛行ユニットを開示したことをいい事に宇宙空間での無限加速を実現しようとしている。色々と難しい話を取っ払い何かが直進すると言う事は、その速度で何かに激突する可能性をはらむ。前にクロエと馬鹿話をして『スィーパーなら豆腐の角で死ねる』なんて話をしたがビームを避けられるスィーパーの速度なら理論上、動いた先に豆腐の角があれば刺さる。まぁ、実際に検証されたら豆腐は粉々で人が勝ったのだが、それはスィーパーと言う既に人類でありつつ人類ではなくなりつつある大多数の話し。
職の絡まない製品は既存の強度のままで、下手をすれば壊れてしまう。そんな中で作られたバイクは飛行ユニットを物理障壁化していて、加速し続けながら隕石にでも突っ込んでいけば貫通するだろう。光速ドライブシステムなんて言う夢物語を力技で実現するなら、別空間やら位相空間に入るなんて話よりも壊れず直進出来る物を作ればいい。まぁ、轢き逃げされたらたまったものではないが・・・。
「橘、集中しなさい。このスーツが壊れれば貴方は死ぬのよ?無理やり生かすにしても限度がある。」
「無理やり生かす?また藤君からなにか改造されたり・・・。」
「お父様から圧縮不凍液型救命装置を貰ったのよ。30分は生身で放り出されても生かして見せるわ。」
「それはありがたい様な一生使われたくない様な・・・。」
「私の献身が邪魔なの?宇宙から帰ってみたら食事は全てカップ麺で、栄養への配慮なんてなかった貴方がそれを言うの?」
「・・・、忙しいんですよフェム。」
「忙しくても葉っぱを食べなさい。貴方はスィーパーとして身体能力は底辺、それを鍛えたりしながら賄っていのだから。」
『人口生命体と夫婦漫才!日本は未来に生きてますね、そのフェムと言う方?ロボ?とも後から話させていただけませんか?』
『そういった話は藤君に流してください。』
夫婦漫才と言うより自分で自分を気遣うと言う方が感覚としてはしっくり来る。そもそもフェムは私の精神の一部なのだから。指定された場所にクロエの魔法の玉をエマと浮かべ、サイ大臣率いるラボチームは中露宇宙ステーションに向かい搭乗員移送の準備をする。
非常に原始的と言えばそれまでだがS・Y・Sが近づき過ぎれば斥力で宇宙ステーションが地球に分解落下する恐れもある。クロエの暴露後から中露側は協力的になり宇宙ステーションの詳細な概要等を開示したが、接続部の強度不足は事実で元から壊れる前提の物をわざと見過ごしたと取れなくもない。
そんな廃棄前提の宇宙ステーションからの移送は全員を紐で縛っての牽引。既にS・Y・Sは全て衛星周回軌道を離れデブリ反発による誤射のリスクもなく、エマの付属ユニットが斥力を展開して辺りのデブリを跳ね除けながら電車ごっこの様にステーションの搭乗員を運ぶそうだ。
移送方法を聞いた宇宙ステーションのリーダー2人を含め、声が引きつっていたのは苦笑するしかない。私だって宇宙で西部劇の様に縛られて引きずられると聞かされれば嫌だ。ただ、他の方法を模索した中でドッキングしているステーションの一部に乗せ連れて来ると言う方法はS・Y・S搭乗口にステーションの一部が入らない点や、下手に近づき過ぎれば移送に使ったステーションの一部が斥力に反発して全員仲良く吹き飛ぶ可能性もあるとされた。
そもそもS・Y・Sの搭乗口は人が通れるサイズしかなく、指輪がある今の状況ならそれで事足りてしまう。コレを大規模補給基地にするなら形そのモノを変えた方が楽とも言っていた。
山口さん曰く『ここから宇宙船を離発着させるなら、近くで宇宙船を降りて宇宙遊泳してもらうのが1番楽ですよ。今段階のS・Y・Sが宇宙空間で飛行ユニットを停止する事はありえません。それは言わば敵軍のど真ん中で鎧を脱いだ上に手足を縛られた状態で戦おうとする事です。前回宇宙に上がり帰ってきて地上で外観点検を行いましたけど、飛行ユニットを完全停止した場合のデータを見ると小物体との激突はかなりあったとされています。一撃で破壊されるほどの強度ではないですけど、ここにいる全員を危険に晒す価値はありませんよ。』と言っていた。
宇宙でのS・Y・Sへの乗り降りは専用口からコチラも飛行ユニットを使いS・Y・Sの引力より斥力を勝らせて射出する様に行い、逆に乗り込む時は斥力に引力を勝らせて乗り込む。これは対象物が人とS・Y・Sと言う比較にならない程違うから出来るらしい。その他にも色々とギミックはあるが、いくら鑑定してもそう言うものとしか受け取れない。
仮にマニュアルや論文を読めば理解出来るのだろうか?まぁ、それでも使いこなせと言われれば月面不時着位は出来るのだが・・・。
「コレて40。クロエ、後40でいいんですね?」
『それで大丈夫なはずです。吹いて出した分を全て玉にしましたからね。総量だけ考えるならお釣りが出るレベルですよ。』
「後、オフレコで通信出来ます?」
『大丈夫ですけどなんですか?』
『気づいてますよね?回りの状況。』
「気にしたら負けです。今の所まだ橘さんしか知りませんよ、多分。」
橘が言う回りの状況って精神体宇宙人だよな・・・。別に何かをするわけでもなく見ているだけだからいいのだが、見える人からすれば鬱陶しいだろう。今も俺の身体をスーッと通り過ぎ・・・、ずになんか避けられた。まぁ、まとわりつかれてもさウザイ。
(此奴等ってなにかしに来たわけじゃないよな?侵略ぅ〜侵略ぅ!とか。)
(前にも言ったけどそれをする価値がない。強いて言うなら箱庭観察だと思えばいいよ。)
(箱庭?S・Y・Sが?)
(違うわよ。白の中・・・、星の中を見る事よ。貴女達の言う侵略って物質的資源の回収でしょう?貴女の知識から言えば・・・、火星に肉体持つ知的生命体がいれば争奪戦は起こる可能性はある。でも、それは物凄く低確率よ。だって、資源を浪費して資源を回収するなんて回収率が上回らなければ意味がない。)
(そうだね、それに外に出る技術を同時に持たなければ戦いになりえない。君達が貴重だと思う物、例えば月の石だっけ?あれだってただの石ころでいくらでもあるし、水だって硬いけどいくらでもある。スター・ウォーズとか言うのだって、結局同族との争いで未知の敵ではないし、わざわざこの星を絶対に奪う必要性もない。)
(見ているだけと言う認識でいいんだな?なにかするわけでなく。)
キャトルミューティレーションとかどうなんだろう?牛が空飛んで宇宙船内で解剖されたとか言う都市伝説だが、事実は分かっていないし宇宙人に攫われたなんて言う話はテレビのオカルトネタでは鉄板である。ただ、攫って何をさせたいのかと問われればコレと言った目的もないよなぁ〜。
宇宙船作れる技術力があって気ままに宇宙を旅する肉体のある宇宙人だとしても、自分達と姿も形も何もかも違う存在を見つけたとしてわざわざ調べるだろうか?しかも、それは星から出たとしてもUFO持ってる宇宙人からすれば玄関の敷居を跨ぐにも満たない距離だろうし。
(仮に人を攫うとか、接触するとして理由はなにかあると考えられる?)
(君達を攫う理由?闘争心だよ。肉体を捨てた者は感覚が鈍くなるから何かしらの刺激を欲したりしている。逆に肉体ある者ほ物理的な制約をなくし限界を超えたいと考える。そしてその中で君達は限界を超える為に自己を苛め抜こうとする。)
(奇特な存在よね、貴女達って。思考する頭はあるのに全員でバラバラに弾け飛ぶ様に舞い踊る。全員が同じ方向を見る必要はない。でも、種としての目標さえ統一されないと言うのは珍しいわよ?)
えっ?宇宙人って種としての統一目標とか持ってるの?いやまぁ、数がいればそれだけだ目標もありそうだし、でも暇してるって事はその目標とやらも気長なものなのか?
(なら魔女達の目標ってなんだ?)
(今の所他種族の観察かしら?)
(ついでにゲートの底だね。)
やはり底にはなにかあるらしい。前に考えた通りなら掃除する者がいるっぽいが、掃除するなら穏便にして欲しい。寧ろブラウニーとかみたいに勝手に綺麗にしてくれるならなおよし。でも、多分そんな奇特な存在じゃないんだろうな・・・。
来ている宇宙達は見ているが、興味をなくした者は次の瞬間にはいない。人が何光年とか言う単位で宇宙の広さを測ろうとしても、彼等からすれば制限された速さで距離なのだろう。
『そろそろコチラはS・Y・Sに帰還すル。状況ハ?』
「順調ですよ。宇宙引き回しの刑に合った方達は元気ですか?」
『うるさいだけダ。不測の事態に備えて通信出来る様にしていたガ、叫ぶばかりでなんの情報もよこさン。』
「まぁ、カーボンナノチューブ製でラボで開発したロープだと説明しても、切れたらそれでおしまいだからね。・・・、ならちょっと面白いモノ見たい?」
『面白いモノ?S・Y・Sを光らせる変わりにライブデモするカ?キラッ☆とかいいながラ。君は誰と・・・。」
藤から借りたアニソンを流しているのか、キスをする?なんて言う歌声が聞こえてくる。宇宙でコレを流すのは中々のユーモアである。ただここは本当に宇宙であると言う事を、おぼえてい〜ますか〜?
「ビーコン用に渡した魔法の玉だけど、何も込めていないなら何者にもなれる。ならば、見えない者をモノを見ようとする目となろう・・・。」
ガンッ!
『つっ・・・、おイ!これハ・・・。』
「仮装パーティーは始まってたよ。米国風ならサンタクロースの方かな?」




