閑話 120 ホットライン 挿絵あり
毒と言うモノは様々な形がある。即効性に遅効性に後遺症を残すものもある。我々は国としてその毒を飲み干し解毒不能な事態へと足を踏み入れてしまった。日本と言う極東の島国にファーストと言う少女の姿をした猛毒は現れ、世界に変革をもたらし続ける。
大国とはなにか?領土に資源に人間の数に技術力・・・。古くは領土拡大を目指し人を使い戦った。それを支えるだけの生産性があり、足りないならそれを捻り出させるだけの事が出来た。大戦を経て別の大国と技術力を競った。冷たい戦争と名付けられたそれは銃弾が飛び交うのではなく、互いの技術を見せつけあった。
その結果、人は地球を離れ広大な宇宙に足を踏み入れた。我々は先にそこに行き歴史に『地球は青かった』と言う言葉を刻んだ。まぁ、本来は『空はとても暗かった。一方、地球は青みがかっていた』の翻訳が正解なのだろうが『I Love you』を『月が綺麗ですね』なんて訳すロマンチスト集団なのだから彼等としてはそれでいいのだろう。
そんな集団から産まれた少女の・・・、ファーストのもたらす情報はとても苦い。まずいではなく苦いのだ。首根っこを掴まれ大口を開けさせられ、流し込まれたそれは吐き出すだけのまずさはなくしかし、口に入ればとても苦い。しかし、良薬は口に苦しだったか?
ゲートが出て秋葉原や米国で騒ぎがあり、それを静観しつつ裏で動いていた我々や組んだ国は表に引っ張りだされ、こうして4カ国の首脳陣で緊急会議をする事となった。彼女が何をどこまで知っているのかは分からない。そもそも情報源はなんなのか?ハッカーの様にデータを漁った形跡もなければ、日本から送還されたスパイを調べても何も出ない。
超常の存在の様に願えばソレが手に入ると言うのなら我々はお手上げだ。特に今話されている事を事実としてこれから先生きていくなら人類は・・・、人は国家や国境なんて言うちっぽけなモノにしがみついていても意味がない。
S・Y・Sにいる彼女が語った事は真実なのか?無理やり話させる事で投げられて叩き付けられた話は事実なのか?4カ国で話す回線とは別の中国とのホットラインで認識を確認するとしよう。
「オフレコだ。中国の、我々の引き際はここだろう。いきり立って叫んでも振り向かず、靡かないからと裏から手を回そうにも回す相手はパンドラの箱だ。」
「こんな事なら事務総長にファーストの頭をふっ飛ばして貰っておくんだった。それさえ成されていれば我々とて相手の強大さを如実に実感出来た。そうすれば欲さずに見向きもしなかったさ。」
「その指示を踏み止まったのは称賛する。寧ろ指示していたなら私がお前の国を攻撃する。我が国としては不死ではなく永遠を称する者に恨まれ続けたくはない。彼女の守りは強固だ。交渉権はお話し出来るだけと言われても、要望を伝えなければ返答もない。永遠を欲する国としても薬の増量で妥協出来ただろう?」
「分かっている。だが、今の国と言う枠組みの中を考えると限界も違い。領土の広さはそのまま不穏分子の隠れ蓑を作り、ガス抜き先は早々にゲートに逃げるか文句の言いづらい相手になり、変わりに得たのは貯金するだけの資源やまだ価値のある技術。その技術も日々革新されて古くなる。」
「それでも大国として動いた先で飲んだのが毒入りスープだ。遅い料理に業を煮やして自分で料理すると言って厨房に入ったはいい。そこで嫌がるシェフに口を割らせて出た答えがそれだ。通信の中で語られた事は事実とするのだろう?」
EXTRAの話や職の話。極めつけはソーツも宇宙人だが職も宇宙人の力の一部。手の平で踊らされ、飼い慣らされて牙を研ぐ。ファーストがやった交渉内容を知り、ゲートの真実はゴミ掃除と言う事実を教えられ、人をなんだと思っていると怒りに任せて机や椅子に当たるだけでは飽き足らず、ゲート内で戦車砲撃や空爆を盛大に行って気晴らしをしたのは忘れない。
「事実・・・、そもそも事実とはなんだ?我々が取るに足らず及第点の知性しかなく、知らぬ間に滅びようとした事か?悪いが何処にも証拠がない。確かに送られてきたイメージを私も見たが心底気持ち悪かった。だが、それだけだ。私はまだファーストをペテン師ではないかとも疑っている。クソ、憎たらしいが美しいと思ってしまう。特にあの魔女とか言う時は。」
疑り深い事だ。いや、野心家と言えるのか?ゲートはある。職もある。宇宙人はいたしコチラの送信に対して回答はあった。なら、何処を疑う?証明出来ないモノを証明させるのは難しく、今回の件でやるなと言われた事をやって人類を滅亡の危機に晒したが・・・。
「何処にその要素がある?出された事実は現物で補強され人は超人となり水の上を走りもすれば空も飛ぶ。これが催眠術にかけられた結果だと言うならペテン師どころか称賛に値する。」
「違う。そこではなく話が出来すぎていると言う点だ。初期の話ではそちらとコチラの企業の不祥事を盾にS・Y・S内部に侵入し技術回収と、あの宇宙ステーションは改修後身体のあった宇宙人を呼び込むと言う話だった。その為にわざわざ強度の足りないパーツやエラーの出るプログラムを作らせた。しかし、結果はS・Y・Sに乗り込みこそ出来るが大人しくしろとしか指示は出せず、実行する前に威嚇された。今回のイメージ送信者が魔女とやらの知り合いなら全てファーストが仕組んだ事なんじゃないか?」
「ソーツには連絡手段がなくとも他の宇宙人・・・、職には連絡する手段があると?確かにファーストはソーツよりも職が上とは言っていたが・・・。」
宇宙人の分類なぞ知らないが、ソーツをソーツとしたのが魔女とか言う宇宙人らしいよ。そして、すでに話をつけてもらい脅威はない・・・、らしい。しかし、このタイミングで自作自演をする必要はなんだ?
魔女とやらは会いたいなら探せと言っていた。姿形も分からないが、来いと言うからには見つけられる者なのだろう。しかし、それを見つけてどうする?捧げ物をしてファーストの様になる?大国の指導者として中露共に不自由はない。それが何時まで続くかは別として、生きている間に見つけられるのか?
不老も不死も薬はある。それを飲んで永遠となったとして、その後そんな者に会いに行く必要性はあるのか?私はそこまで長く探し物をしたいとは思わない。
「覇権国家と言う言葉がある様に覇者と言う言葉もある。ファーストは自身が地球の代表だと国際会議で話した。そして、交渉権も渡した人物が死亡すれば有耶無耶にされるからと渡さなかった。なら、その両方を揃える人物を出す為に大国を動かそうとしたなら?職は位を経てEXTRAに至る可能性もある。」
「まさか・・・、ゲートに人を入れる為にこんな事をしたと?永遠でありながら後継者を作るために?」
「人物像を思い描いていけば主人格のファーストと言う人物は権力に興味もない。何処国にもギルドが作られグランドマスターになるとも言ったが、それは本当に本人の意志なのか?私も職に就いているが、人格なんてものはない。仮に職の人格に操られ掃除を促す装置とされているなら、我々の様に逃げ場を作ろうとする者には警告をするだろう?そして、どこかの時点で渡せる可能性のあるものが産まれれば・・・。」
「交渉権を引き渡す変わりに更に掃除をさせたり、場合によっては仲のいい国の中で権利を回す?しかし、至る方法を日本は世界に開示した。それさえもフェイクとするのか?」
「要はスィーパーの量産と中層以降も掃除出来る人間の確保だろう?エマと言う人物はファーストに選ばれて短期間で中位へと至った。なら、その先へも最短で至る可能性があるのではないか?話を聞けばファーストに直接選ばれたのは彼女のみ。他の中位は誘われた人物こそいても選ばれたとは言えない。」
この話を信じるか?複雑怪奇に絡み合った人との交わりの中で、様々な話を検証しそうではないか?そうなのだろうと言う言葉は出せてもファーストの本心は本人しか知らない。ペテン師・・・、どれが本当で何が嘘なのか・・・、ペテン師め・・・。
「ロシアとして・・・、日本への融和政策に舵を切る。信頼は積むものだ。」
「中国としても国として日本へ融和政策を行う。今回の件で貸しと言われたが、その貸しを返せと言われたら出来る限り飲むとしよう。」




