598話 連携を密にしよう 挿絵あり
「現段階だと獣人はパートナーの住民票のパートナー欄に名前を記載してどこの家の獣人か分かるようにしてある。それにプラスアルファしてドッグ・タグを発行して身分証明とし、獣人を正式に臨時ギルド職員として扱い仕事をしてもらう。当然その際はパートナー側とも協議する事になるけど、基本的には現状と変わらない。まぁ、指輪の中身見てと言う依頼はそこそこ増えそうだけどね。」
「考え方としては身分保障付きの日雇いですか。依頼金額は一律でいいとして、獣人への報酬は食事か金銭か指定物品か選ばせるでいいんですか?」
「他案があればそれでも構いませんが、今の所既にスィーパー獣人には依頼時に食堂解放で手を打ったギルドもありますからね。今更報酬を変更するよりも仕事したから解放したと言う方がいいでしょう。獣人憲章にもある様に働かざる者食うべからずですよ。専属契約の報酬として長期契約したなら仕方ありませんが、これから先は仕事した日に解放するとでもしてください。」
「政府も色々投げてくるねぇ。まぁ、獣人自体は悪さもしねぇし臨時職員扱いで声かけできるなら悪い話じゃないのかねぇ?」
「パートナー側が依頼拒否を示した場合はどうします?職に就いていればパートナーとゲートに入ったりもしますし、チームとして獣人と過ごしていた所もあるんですけど。」
「その場合はパートナーと獣人の意思を尊重するしかないでしょうね。あくまでお願いベースでの依頼となりますし、重要なのは今回多数の獣人がスィーパーとなったと言う点です。そこで獣の法を持ち出したなら、弱肉強食理論で問題を起こさないとも限らない。打てる手は先に打ってスィーパーとしての刑罰も教えていくしかない状態ですし。」
「落ち着いたと思たら本部長は忙しい・・・。獣人スィーパーの刑罰って人のスィーパーと同等と考えてええんか?」
「結論はでないですが、政府が獣人の管理をギルドに任せるにと言う事は職に就いた時点でスィーパー法で裁くと言う意思でしょう。それに、スィーパーになった獣人がそれを理解出来ないと言うのもおかしな話です。説明は懇切丁寧に理解出来るまでお願いします。まぁ、憲章を守る限りは軽微なものはあるにしても、重大犯罪はそうそう起きないでしょう。」
頼むぞ獣人達、ある意味ここ2〜3年が正念場なんだからな?少なくとも日本国内で獣人が重大犯罪、具体的には殺人、強盗
、放火、強姦、略取誘拐・人身売買、不同意わいせつ等を行ったと言う話はない。まぁ、抱きつきに行ったりする獣人は多いのだが、それはもう習性として人が受け入れている。
当然嫌な人もいるが抱き着くのは基本的に正面からだし、人の判別も夜目も効くのでパートナーがきちんと駄目な事と教えればやらなくなる。まぁ、驚いたり本能(?)に負けて抱き着くこともあるのだが・・・。と、言うか俺はよく抱き着かれたり尻尾で撫でられたりしている。
ただそれは拒否を示せばしないし、基本はお食い初めしたパートナーには好意的で元からペットと飼い主なので早々ゴタゴタも起きないし、人を傷付ける事には忌避感もあるので殺人やら傷害事件も聞かない。ただ、やるのは腹減ってのスーパーやらでの未会計摘み食い。
待ての出来ない犬がいる様に指輪を持たない獣人はバックに食い物入れている事が多いのだが、それが切れると腹減ったコールが聞こえてくる。その時パートナーが何か食わせればいいし、獣人側もパートナーに何かしようか?と声かけてくるのでそれが判断基準だな。
置き餌の感覚の抜けない猫人とかは、お婆ちゃんやお祖父ちゃんに飴玉くれるなら荷物待とうか?とかも声かけるし、ある意味摘み食いは最終手段かな?ただ、逆を言えばそれが獣人の取る最大の問題行動とも言える。企業も獣人向けの腹持ちのいい食べ物とか開発してるし多分あと数年で摘み食い事案も無くなるだろう。
それまでの間に大人しくしてお互いに実績を積み上げれば、関係性も定着していく。被害者ならいいと言うわけではないが、加害者である事は出来るだけで避けてもらいたい。
「獣人の成人スィーパーになり職に就ける事になりそうですね・・・。日本でも海外の獣人ベイビー誕生はトップニュースになりましたし、国内で産まれた獣人もご多忙に漏れず報道された。」
「そうですね・・・、幸いと言っていいのか食糧危機は回避されているので残る問題と言えば一気に人口が増えたので住む所となります。まぁ、それも放置された空き家買って住む人が増えた。」
「確かに過疎地やらにも人が増えました。東京一極集中も解消されつつあるし、また開墾ブームとか来るのか?鬼塚さんと鬼頭さんとかどうよ?」
「互いに穴掘りしまくってるよ。ゲート内の土が欲しいって依頼もあれば山崩すから魔術師と採掘家集めてくれとかな。開拓ブームと言うか変わった所に住みたいスィーパーもいる。わざわざ山奥とかな。」
「亀仙人ハウス作りたいって人もいたな。勝手に海底を埋め立てるなって話したが日本の排他的経済水域なら大丈夫とか抜かしてた。流石に船がなぁ〜・・・。」
「鳥取では雪祭りに対抗して砂祭りするから協力して欲しいって話はギルドに来ましたね。まぁ、金額的な折り合いも付いて協力する人も多かったですけど。」
「テレビでやってましたね、サンドアートが動くアトラクションは中々見ものでした。」
テレビでやっていたが砂丘に出来たサンドアートは壮観で見応えがありそうだったし、魔術師が動かしたり即興で作ったりとアート面でも新境地だと言われていた。確かに絵画とかなら残り続ける事も出来るが、その場限りの儚さを楽しむ侘び寂び的なモノにも注目が集まっているし、映画とかもCGと職の融合なんて試みが多くなっている。
特にSF系は最新パワードスーツの品評会の様に様々な物が出てきているし、ロボテックスもどこまで大きく出来るのか?なんて試みも見られる。やはりユーモアは大切だな。楽しまない事には情熱も消えてしまうし。
「なんとかアートってのはよく分からんな。買う人がいるから価値があるんだろうが、キャンパスに墨汁垂らしただけで金貨数百枚ってのはなぁ・・・。」
「絵画か・・・、雄二の所にあるクロエさんの絵は売らないのか?」
「売らないぞ卓。売るって言ったらお前買うだろ?」
「それが物の価値だろ?」
宇宙服の資料絵は雄二の所に飾られているが、アレっていつまで飾る気だろう?俺が描いたと言うか魔女が描いたので次を頼まれても困る。まぁ、誰が描いたかは本部長とかしか知らないはずである。
「さてと、雑談となりましたが獣人関連はギルド管理の方向となります。ただ本決定まではまだ時間があるので、引き続き意見集約や獣人スィーパーに対しての対話を続けてください。フェリエットと接していますが、獣人の職そのものも難しい。連携は密にしてやっていきましょう!」




