585話 言葉で伝えよう 挿絵あり
「ええ、ええ、はぁ?なんですそれは?いや・・・、えっ?そんな事は・・・。なんですその話?はぁ・・・。この事態は私としても想定外です。効果があるかは疑問と言うか・・・、はい。その点は重々話し合いこちらとしてもその様な事態が起こらない様躾けておきます。」
「移動中だが何かあったのカ?」
「少々プライベートな事で・・・。」
(ちょっと魔女さん?貴女の眷属と言うか、奉公する者が暴走してこの星の大陸を壊そうとしてたみたいなんですけど!?奉公する者の本体はそちらの管轄でしょう?この落とし前はどうつけるの?)
宮藤からのオファーでゲート内を移動しているが、そのさなかに増田から連絡があった。内容的にはふざけんな!と叫びたくなる内容で奉公する者が俺に害する情報を得ていたら英国、米国、日本以外海に沈んでいたか消失していたかも・・・。誠に胃に悪い話で本来なら青山がストッパーとなって律するはずなのだが、どうしてこうなった?
青山と言う頭の痛い奴は少なくとも無差別殺人者でもなければ、俺を探っていたリーを報告しなくとも有用だからと献上してくるだけの理性はある。危ない危なくないと言うカテゴリーで言うなら俺と魔女達の様に上下関係もあれば、主導して考えるのは青山だろう?
(履き違えてないかしら?)
(履き違える?なにを?俺達はゲート内を進みモンスターを倒し先に進みもすれば、お前の同族にも暇は与えていないだろう?黙って見ているなら内容に口出しされても困る。その上で高望みされてもまた困る。俺と魔女や賢者は対話できる。しかし、それ以外は口を開く事もないのだろう?)
職に人格がある。この話は広げるにしても微妙で例えば100人が話しかけたとしてもそれに反応するかも分からないし、位が上がっても対話出来るかも分からない。ならEXTRAなら例外なく出来るのかと言われれば微妙で、EXTRAしか職が出なかったと言われればそれだけ魔女達の同族が関心があるとも言える。
しかし関心があるから話すかと言われても微妙で、例えば学校のクラス内で女子がオタ話をしていたとしても男子オタクが話しかけられるかと言われると、切り出し方にも話しかけるにしても躊躇する。ケースバイケースで危機的な状況ならワンチャンあるがそれ以外となると・・・。
(私達と奉公する者は違うのよ?アレの行動原理は私の為に奉公すると言う方向以外ない。なら邪魔立てすると思えば道を開きに行くでしょう?流石にそこまで行けば本体も青山も止めに入るでしょうけど、手綱はしっかり握ってきっちりと上下関係を分からせなさい?)
(それって魔女がするなって言えばいいんじゃないか?)
(私が言っても青山がOKすれば身体は動く。貴女が青山に言っても奉公する者が必要だと思えば青山に有用性を説く。結局縛るのは動く者、この場合青山をストッパーにしないと意味がないのよ。)
関係性の問題か。かなり面倒で生物の星なら初っ端に魔女を引かない限り奉公する者は多分来ない。それこそ魔女の本体とやらが指示しない限り来る必要性がない。しかし、俺の場合寿命がないので何度でも第2第3の青山が現れる。今回の件は俺の考えの足りなさと対話不足が原因でもあるし、奉公する者と言う存在を軽く見て連絡していなかった点にもよる。
文章をまとめて増田と望田には共有しないといけないし、奉公する者とも言葉を選んで対話しないといけない。流石に文句言って腹が立ったから周りを壊して文句の対象をなくすなんて事はないと思うが、その辺りから探らないと怖い。
(その点は理解したが、俺は青山のストッパーには成れても奉公する者のストッパーには成れないぞ?)
(それは大丈夫よ。私も見ていると言う事は本体にも伝わってる。なら、本体としても面白くない話だから奉公する者を縛る。)
(ずっと縛り続けて欲しいんですけどねぇ。今の青山が死んでも次の青山が来るんだろ?来なくするって出来ない?)
(来なくするのは無理ね。ただ奉公する者の記憶は連続するから貴女が貴女である限り取り決めをすれば守るわよ?なにせ私も貴女も袋小路に入って出られないんだから。)
(へいへい、末永く主であるつもりだからしっかり取り決めを作るとしますかね・・・。他に何か奉公する者関係で気を付ける事は?)
(そうねぇ・・・。貴女達関係ではすぐに来いと決めるとかかしら?)
(すぐに来い?勝手に来るだろ?青山も来たし。)
青山が来たと言うか初めて接触したのはゲートが出現してスタンピードが発生した後の講習会時期だったか?多分半年も経っていなかったと思う。早い遅いと言う話をするなら遅くもないと思うが・・・。
いや、そもそも奉公する者が誰を選ぶか分からない・・・、のか?青山は探索者の職に就いているが、それは単純に魔女を探す為に選んだとも取れるし俺が女だから顔のいい男を選んで且つ、出来るだけ近い所にいた奴に入り込んだとも取れる。つまり、何かしらの縛りを作っておかないと次は女性の奉公する者が現れて風呂でもどこにでもついて来ると言う悪夢が・・・。
それに離れた所に現れたなら俺の所に来るまでに何かする?記憶が繋がっているなら青山死亡時点で何かしらの問題が発生していたとする。なら次の奉公する者はその問題を解決する為に邪魔者の排除やら問題の根底をなくす?ヤバい・・・、近くにいても面倒なのに遠くにいても面倒・・・。
「黙り込んで大丈夫カ?」
「・・・、ちょっと自分の浅はかさに嫌気が差しただけ。」
「話せば多少は楽になるゾ?」
エマにも伝えた方がいいのだろうか?エマは魔女や賢者の人格の話は知らない。その知らないを知っていると言う判定に変えると対応が変わる?分からん。何がどうトリガーとなるか全くもって分からん。
(魔女や賢者の事をエマに話したとして奉公する者の対応って変わる?例えばエマが俺に対して軽口とか叩いたらブチ切れるとか。)
(ないとは言えないけど、そもそも青山と奉公する者の親和性が高いのよ。この星では男と女に別れ男は女を守るのでしょう?言い換えれば青山は貴女を守る事を無情の奉公だと考えているかもしれないし、なにかを貢ぐのだって獲物を仕留めた男は女にそれを渡して安全な生活を営んでもらうためでしょう?関係性と言う部分での理解はあるけど、本気で喧嘩したなら青山はどんな理由だろうと貴女の肩を持つ。まぁ、知らせない方がいい話ではあるわよ?
物事を知ると言う事は、多かれ少なかれその事象に干渉する手段を持つと言う事になる。無知のままなら見過ごせる話でも、知った上でそれをするなら見過ごせないと言う事も出てくる。なら、先に縛ってからよ。)
うぅ〜む・・・。少なくとも生物として種を残せる存在を守ると言うのは自然な事で、男が全滅していいわけではないが年食っても子供は作れる。しかし、女性の場合早ければ40代で閉経して子供が産めなくなる事もある。その事を考えると青山が最初に子供を作ろうと言って来た事の辻褄も合ってくるし、毎回なにかを持ってくる事もその延長線と取れる。
・・・、縛る。いや、青山と奉公する者の思考をブレイクするなら多分今は少女の身体だとしても元男だと伝える事が1番早いのか?
庇護対象でもなく、あくまで肩を並べる者として共に戦う者として認識させる。多分それが1番納得してくれると思う。腹を割って青山や奉公する者と話さないといけないな。どんなに面倒でどんなに曲解されようと、それに対して駄目な部分をしっかり伝え納得させ理解させる。俺達はイメージなんて言うものでやり取り出来ない。面倒だろうとなんだろうと言葉で伝えよう。
「見えて来た様だナ。」
「そうだね・・・。よし、ちゃんと言葉で伝えよう。」




