580話 米国の現状 挿絵あり
「書類が多くないカ?」
「何時もこんなもんですよ。さてと、視察は歓迎しますが先に米国ギルドの運用方式からですね。扶助方式と聞いていますが具体的には?」
「うム、当初から米国は個人に対する職の調査を行っていなかっタ。それをを正式に行うタイミングが無かったとも言えるシ、職を明かせば個人情報の取り扱いでゴタゴタが起こるとしテ、スタンピード後は軍や警察関係を主体調査していたガ、ギルド設立に伴い米国でもライセンス方式を採用してスィーパーの全体補助を行うモノとしタ。
米国ギルドが扶助方式と言うのハ、普段は軍や警察と切り離した政府に協力する民間施設としつつモ、トップは中位と政府と言う事からなっていル。これハ、緊急時の協力体制を整えるためだナ。因みニ、政府からの情報開示要求には何があろうと逆らえないとしてあるシ、スタンピード外の軍事行動には参入させないとしてあル。」
「それは・・・、大丈夫なんですか?普段切り離した状態で運営すると下手すると腐りますよ?」
「分かっていル。だからこそ政府側からエージェントとして紛れ込むスィーパーは多イ。当初案では州兵やFBIに経営を任せると言う話もあったのだガ、軍や警察と関わりが深ければ民間人が従わない事も考えられるシ、なにより軍拡はいらぬ火種が増えル。」
「あ〜、日本と違って軍備増強し放題ですからね。そこに傭兵スィーパーとかギルドとして参入出来るとすると、どんどん拡大して手がつけられなくなりますからね。しかし、トップが政府や中位とするならエマはトップになると?」
「一応トップ予定だガ、中位の立ち位置としては宮藤の様に指導官と言う側面が強イ。当初よりも浅い階層での死亡者は減ったガ、それでもバカは理由の分からない自信でゲートに突貫する奴もいル。ゲートに対する説明や出土品の販売ルート作成、警察からの協力要請に派遣するスィーパーの選定ニ、ゲートの観察及びスタンピード発生時に使用する物資の確保。その辺りが米国ギルドの仕事だナ。今回私が視察するのはそんな日常業務や物資の管理等と言う部分が大きイ。」
「その辺りは資料としてまとめてありますね。ただ知っているでしょうが、日本のギルマスは私腹を肥やす事を推奨しているので結構銭ゲバな所もありますよ?私を例にするなら配信チャンネルの収益とか高槻製薬の配当金とか。」
ギルド運営ってお金がかかるのよね・・・。ゲート外で稼ぐにしてもモンスター素材やら出土品を売るやら、なにかの事業に噛むやら利権を上手く習得するやら・・・。宮藤とかは米国スタンピードの時に参加者のフィギュア化利権とか持って行って、文句が出ない範囲で還元しつつ私腹を肥やしているし、赤峰なんかは空手道場開設して格闘家を月謝で指導したりもしている。
奏江は佐沼の所でオブザーバーやっていいお金もらってるし、雄二や卓は大学関係の講演会にかなり呼ばれているとか。他にも色々やってる奴は多いな。浦橋のパルクールチーム配信とかもあるし、鬼頭の鉱物採掘穴掘り配信とかも・・・。
ギルドとして政府から予算も出ているのだが、逆を言えばそれしか収入がないとアホな中身の設計図とか買い取れない。いやね・・・、設計図の中身ってピンがあればキリもあるのよ・・・。ブラックホール・エンジンをピンとするならキリは技術論とか?
人でも理解出来ると言うか、水は温めると沸騰して気化するなんて話しを滅茶苦茶丁寧に書いてあったりもする。大多数の人はコレには価値が無いとするが、そこに価値を見出す研究者もいる訳で・・・。実際、それを読み込んで新たな可能性を模索する人もいるし、人の知らない事に言及してある事もある。
例えば2016年11月に命名されたニホニウムの活用方法と言うか、確実な観測方法なんて事も書かれていたりする。多分こう言った系の設計図は集める事に意味があるんだろうな。買取額としてもギルドとしては最低価格を金貨5万枚からとしている。
御堂の所で買い取りの申し出があり写真集との交換が申し出られたらしいが、内容を精査する限りキリの方だったので金貨で決着が付いたとか。面倒な会計を政府に投げられるのはいい。基本的にギルドの収支報告は全部政府公認会計士がやるし。
「頭の痛い話だガ、米国でもギルド運営資金の話しは盛んダ。流石に看過出来ない設計図と言うモノもあル。日本のギルドとの交流や情報交換は密にしていくとしてモ、自国から出た物を買うのに資金提供を呼び掛ける訳にもいかなイ。」
「雑に言うなら米国だと司法取引が良さそうですけどね。日本では刑罰+賠償金と言う名目で公務内の仕事だからお金を取ってないけど、米国とかならそこに減刑加えてお金儲けは出来そうだけど・・・。」
「それも考えられタ。死刑復活の議論も含メ、禁固刑や懲役300年なんて言う犯罪者を刑務所に留めておくだけのキャパシティはなイ。S・Y・Sを刑務所にと言う話も上がったガ、結託される恐れもあル。米国の犯罪者も日本同様ゲート奉仕刑路線が増えるだろウ。」
「エイリアン3が現実味を帯びてきましたか・・・。圧縮装着を使って数百年分の食料を渡して缶詰にするとか、開拓させて完了を刑期終了にするとか。まぁ、S・Y・Sの正式版はロールアウトしていないから先の話として、奉仕をやるなら目印とかの話を大々的にやらないとまずい。セーフスペース以降に送り込む事が条件だとしても、その先で上昇アイテムを見つけないとも限らない。」
「その件には留意していル。米国では装飾師に額にバーコードを刻印とタトゥーして固定処理させる案が採用されそうダ。」
「ん?それって削れないの?肉壁とかなら消せそうだけど。」
「ドレッサーがいるらしイ。私も会った事はないガ、彼女が施せば消せないらしイ。まァ、皮膚の下にGPSや発信機を埋め込むよりは確実性もあるだろウ。それニ、対スィーパー戦術として額のバーコードは絶対に自分では消せないと思い込ませるそうダ。」
「つまり、額にバーコードがある人を見たら逃げろと言う事だね。まぁ、日本人的にはタトゥーって怖いイメージがあるから見たら近寄らないとは思うけど。」
日本では首輪カメラ方式だが米国はバーコード方式か。確かに管理と言う部分では額にピッとすれば情報が読み取れるから楽なのかな?しかし、消せないタトゥーか。元からタトゥーを消すならレーザー除去とかになるし、消しても跡が残るから確かに理には叶っている。
後は逃げ出した時の対策さえすればいいのだろうが、今度は額のタトゥーが邪魔しておいそれとは逃亡も出来ない。まぁ、帽子やら髪で隠せるが国外逃亡やら国境越えしても周知されていれば送還されるだろう。なにより、ゲートは原則として入ったゲートからしか出られないし。
「一応、1つ補足をしておきましょう。検証しているかは別として、職に就いていない人は誰かと共に外に出ればその人共にその人が入った場所にでます。流石にスィーパーでない人にゲート奉仕刑を科すとは思いませんが留意しておいて下さい。」
「そんな事ガ・・・、分かっタ。報告しておこウ。日本政府からの資料にその点ハ?」
「明記されていません。明記すると悪用する人が出て来ますからね。特に人身売買とか言うクソにも劣る所業をやる人には吉報でしょう?」
「それハ・・・、ナ。米国では行方不明者が大量に出つつも見つかっていル。生死問わずだガ、そう言った販売ルートはかなり潰しタ。しかシ、それが海外となると手が届かない事もあル。この事実は重要機密扱いにしろと厳命すル。なら獣人もそうなるのカ?」
話を聞いたエマは胸糞が悪いと言う風な雰囲気を出すが俺としても胸糞が悪い。なにせ職に就けないと言う時点で概ね16歳未満。労働力としてもスィーパーや獣人には劣り、かと言って養子とするなら正式な手続きをすればいい。様はそう言う趣味や逆らえないモルモット扱いだろう。しかし、獣人はどうなのか?か。検証していないから分からないな。
ラボに問い合わせれば或いは検証した結果があるかもしれない。個体成長薬は今は希少品と成りつつある。約1年で薬を確保出来なかったスィーパーはいないと思うが、現時点でペットを飼っていなかった人や、こんなに出るなら落ち着いた頃に後から吟味して獣人にしようなんて思ってた人には焦りもある。
ゲートの中では希少でも溜め込んだ箱にはあるかもと言う人もいるし、まだ希少でも出ない事はないので買わずに探すと言う人もいるだろうが、多数の獣人と共に生きてる人なんかは羨望の眼差しで見られる事も。
「獣人は分かりません。スィーパーじゃない人間よりは捕まりにくいにしても、スィーパーと成った獣人の価値はかなり高い。そう考えると獣人にも注意喚起しないとか。そう言えば米国ではスィーパー獣人誕生した?」
「模索中だナ。アライルとウィルソンが補佐要員兼養成要員として薬を飲ませようかと話していたガ、猫か犬で揉めなら先にどちらも品種を決めようと言って大型か小型かで揉めていタ。因みに毛並みは白がいいらしイ。まァ、先に民間から出て来そうだがナ。」
「それはそうでしょうね。職に就かせるにしても薬を飲ませるにしても動くには少し遅い。まぁ、それもデータがある程度揃ったからと言えばそれまでですが・・・、なんでまた白猫か犬を?」
「さァ?趣味じゃないカ?PCで画像を漁っていたシ。」
「毛並みの色はそのまま獣人になった時の髪色になってきますからね、ほら。」
「・・・、あの2人がよからぬ事を考えているのではないかと勘ぐるナ。」




