540話 到着 挿絵あり
(それってコードを使えって事だよな?確認を取るが・・・、耐えられるか?)
前はコードを使って吐きそうになった。米国で使った時は精神にダメージを受けてモニターがバキバキになって壺に変えた。そして今使えと言ってくる。段階的にはかなり慣れてきているとは思う。扇動も1人で使えたし多分全く使えない事はない。しかし・・・、この土壇場でいいのか?
(僕の見立てなら大丈夫だね。魔女も・・・、うん。君が使うなら大丈夫そうだと頷いてる。この周りの守りは僕がやってあげよう。君はコードを使う事に集中する事。)
「クロエさん、流石に不味い!これ以上は身体が燃えそうです!」
「ぬっ!この身体も不味い。流石に抜き取るにしても限界が来る。まだつかぬか?」
流石にスィーパーとしての身体でも・・・、磁場の弱い所を進んでいても限界か。抜き取り要員で青山は連れて行くとして夏目とバイトは撤退させる?いや、下手な所で降ろせばうねる磁場で焼かれるだろうし、飛来するモンスターの破片は減ったものの巻き上がったケイ素の砂は人をすり下ろす。やるしかないのか・・・。
荒れ狂い磁気嵐と成りつつある中で、負傷しても立て直せる段階で札を切るしかないか。台風の目の中は穏やかだと言うが、この嵐が続くなら・・・、ガーディアンが引き起こしていると言うならたどり着いた先とて穏やかではない。
「奉公する者は戻れ!命令だ!奉公すると言うなら私の元に来い!」
「直ちに!ぐぬっ!こしゃくなぁぁ!!」
何でエネルギーの塊を噴火する様に出すだけで直接撃ち込まないのか?答えは簡単でガンナーの狙撃さえ避ける時は避けるモンスターに対してわざわざロックオンをする手間を簡略化する為。
嵐に乗り横なぶりになんの計算もなく飛来するプラズマ火球をどうやって避ける?叫ぶ奉公する者は服が消し飛び全裸で片腕は炭化していて大火傷、熱傷で言えば3度とほぼ全身2度と言った所だが指輪は死守して薬を出して飲んでいる。かなり赤に近い色なので等級の高いゲート産の薬だろう。
「お見苦しい姿を・・・。」
奉公する者が謝罪しながらバイトに跨り布を出して腰に巻く。お見苦しいと言うかお前瀕死だからね?いい薬飲んで炭化した所とか剥がれ落ちてるけど普通なら激痛で離脱だからね?いや、離脱と言うよりここだと死亡?蘇生薬はあるから1回なら生き返らせられるが、使うならここで脱落者が出た時か。
「話はいい。奉公する者はバイトに指示を、夏目さんはもう少しのあいだ私を守ってもらえますか?」
「女性からの頼みとあればいくらでも身を粉にしましょう。ただ、流石に連続で直撃すれば厳しいですよ?抵抗に自身制御に増殖に再生、タフネスはピカイチと自負しますけどね。」
「なっ!ずるいぞ女!吾より役立とうとするな!」
「奉公する者、お前がミスれば全滅だ。いくら巻き戻るとは言え戻った先からミンチにされては敵わん。ガーディアンまでの案内、任せたぞ。」
「その役仰せつかろう。流石に魔女様が何度も傷付くのも見たくない。それでクロエはなに・・・、なるほどな。バイトよ、吾が示す方向に行け。そこが一応の安全ルートだ。」
奉公する者が先頭で俺が真ん中、夏目が周りから守りこれで落ち着いてコードが使える。キセルを取り出しプカリ。奉公する者が何かを納得したが何を納得したかは分からない。タバコの代わりとして吸っているこのキセルは武器でこの煙も武器。いや、魔女曰く贈り物なので魔女本体が寄越した物なのかもしれない。
何度でも吸い何度でも口から吐く。それはあの砂漠でアブザを産み、産み落としきれなかった時の誓い。ただ、コレの本来の使い方は思いっ切り吹くらしい。そして、それを今自分の意志で吹こう。気合を入れろよ俺、気合でどうにかなるかは分からないが、イメージを持つならそれを崩さないだけの気合を入れろ。
そんな事を思っていると背後から魔女が抱き着いて来た様な感覚が・・・。精神的なものだが・・・、と言うか精神世界で背後から抱き支えられているな。
(魔女?)
(支えてあげるから好きにおやりなさい?煙は白に白は煙に。影だろうと煌めこうとそれは変わらない。)
(分かった。)
吐き出す息は静かながら肺なんでない身体はどれだけでも吹き続けられる。出る煙は嵐に乗り宙を舞い辺りを紫煙で染め上げていくが、視界を変えたわけでもないのに手に取るように見えてくる。その破片の動きも、砂粒の舞い方も。確かにコレは常人なら狂うし俺としては余り好きにはなれないな。全てから注目されている様な感覚。そもそもコードとは魔法の材料であり大元であり、人の思う無から有を生み出せるもの。
確かにここまですれば馴染むか。アブザはダメだったがソフィアは産まれた。生い立ちも成り立ちも違うが確かにソフィアの身体は俺が産んだ。そして、この白い世界をキャンバスとするなら・・・、魔女が絵が上手いのも納得出来る。思い描き色を入れ風景を作り自身の感情を差し込む。多分、魔法の鑑定で気持ち悪いと言われるのは混ぜ方が下手で綺麗に描ききれてないからだろう。
「告げる・・・。白き平野の主が告げる・・・。災いは去り、阻む嵐は凪、行く先を阻む者はない。白き新雪に足跡を残した暴れる者の元へ向かう。旅路に安寧を、友に安らぎを・・・。この場の主がそれを思い描く・・・。」
磁気嵐は凪暴力的に飛んで来ていた破片も今はない。その代わり精神がガリガリ削れると言うか軋む。ただ、最初の頃よりは軋みは緩く。多分、これならモニターは壊れない。壊れないが・・・。
「クロエさん?」
「ちょっと動けないので支えておいてください。変わった魔法のフィードバックです。」
俺を中心とした異界。いや、新たな星?外を見れば磁気嵐は更に酷くなりここに向かってどんどんプラズマ火球も生き残ったモンスターもやってきている。ただ、それさえも跳ね除けよう。魔法は紡いだ。コードは成立させた。ココの主が俺である限り目的地まではノンストップで行かせてもらう。
「バイトよ、速度を上げろ。魔女様ではなくクロエがあの御方達の力の一端を使った。多分そこまで長くは持たぬ。」
「おい青山!それはクロエさんが倒れるということか?」
「違う夏目。倒れはせぬだろうが初めて行うなら不備も稚拙さもある。今この時も世界を外と中から同時に見ておるのだぞ?脳なんて物がなければ限界も無かろうが、人にはそれがあるであろう。まぁ、中身がない身体なら多少の無茶が効くとしても、処理限界はある。」
奉公する者に言われバイトが白い空間を速度を上げて走る。確かに処理限界と言うか維持限界がある。この空間内は思うがままだとしても一歩外に出れば焼かれ砕かれモンスターに襲われる。クソ、モンスターは大気圏突入で死なないと国際会議で話したが磁気嵐の中でも風に乗ってここに特攻してくるものもあれば、無視してガーディアンを目指す者もいる。
大気圏突入とココとどちらがヤバいかは分からないが、少なくともスペースデブリではモンスターが死なない事は実証されたし、プラズマ食らってもピンピンしているやつはピンピンしている。個体差が激しいが、それもまた中層と言う事か・・・。
ただ俺の中に入りこまれてもゴミには拒絶しかない。触れただけでありったけの今までモンスターを倒したイメージを重ね屠る。それでいい。ここは凪いだ静かな道としたのだから。速度を上げたバイトが奉公する者の指示に従い走りようやく見えてきたガーディアンは地中に半分埋まったデス・スターと言うか天球儀の様に見える。
ただその周りを制御リングとでも言えばいいのがレールの様な物が幾重にも回転しているので、それで少しづつまた埋まっていっているような・・・。ただ、ここまでフリーな状態で来たからにはダメでしたとは言わせんぞ?近くで見れば巨大だがこれ持ち帰れるかな?
(賢者、任せたぞ?)
(ここまでお膳立てされたならミスはないよ。さて、これを停止させたとして・・・、持って帰るかい?)
(自動修復機能は輸送機の時に取り逃した。他の機能もあるしいじくり回していいなら持ち帰りたい。)
(ふむ・・・、いいよ。僕が許可しよう。アレが文句言ってきたら君の好きな煽りで煽ってやればいい。そうすればアレも多少は周りに目を向ける。)




