477話 決心 挿絵あり
白衣の集団を連れて先頭を歩くと言いたくなる、教授の総回診てすと。まぁ、見た目だけで言えば俺が診察される側と言っても過言ではないな。ベッドに寝てて腹とか触られて痛くないかとか。そんな感じてぞろぞろ歩いて外へ。逃走したいので下に行きたいがそう言えばここの上り下りはどうしたのだろう?流石にオカルトで空が飛べるとは思わないが・・・。
「下へはどうやって行きます?」
「貸し出し用のシャトルで。どうにか飛行ユニットを作ってそれで移動してますが、ここで出せばいいのでは?」
「ここでは邪魔と言えば邪魔でしょう?色々と改築してるみたいですし。」
広い所に出たがパワードスーツ着た人が工事したりしているし、何やら測量っぽい事や地面を掘ったりしている。岩盤と言うか地面のしたのプレート強度を確かめてるのかな?作った当初の話ではコレを宇宙エレベーターに出来ると言っていたし。
「宇宙仕様に換装すると言って工事の真っ最中ですからね。NASA側から管制システムを、日本側から離発着場所を提供してもらい宇宙に上げる予定だと聞いてます。まぁ、行った所で対話出来なければ意味はない。やはり言語が解明出来なければ何も先へ進まない。」
「対話に希望を持ち過ぎですよ。コチラに興味があろうともアチラに興味があるとは限らない。好意のない相手からいくら話しかけられても話題がなければ返答はない。宇宙人にハラスメントは通用しないので面倒なら離れるだけですよ。」
「それはソーツも?」
「ええ。友好的な宇宙人像を想像しているなら改めたほうがいい。見たでしょう?歓迎はしていないって言われた動画を。そもそも交渉の場は用意しましたが条件は提示されたし交渉材料はなにもない。」
「何か取っ掛かりはないですか?現状ソーツや他の宇宙人と1番対話しているのは貴女だ。」
「1番対話したのが私だと思うなら無理の一言で納得してくれませんかねぇ?希望は時としてより大きな絶望を産む。」
「でも夢や希望がなければ先には進めないでしょう?」
「いりませんよそんなモノ。必要なのは責任と現実と務めです。夢や希望を持つのは自分で何かをする時で、他に願うものじゃない。それをしていいのは子供だけです。それが出来ない大人は自分で掴み取るしかない。」
「ファーストさんの哲学ですか?」
「違いますよ、事実です。」
魔法の様な科学を、科学の様な魔法をと言ったのはドクだったか?しかし、それは下地もあれば現物もある。まぁ、創作だとしても、だ。思い続ける事に意味はあっても願い続ける事に意味はない。それをするくらいなら地道な一歩を踏み出して道にした方が良い。しかし、言ってしまったならここから逃げるのはダメだな。アルは変わり者だが一歩を踏み出して俺に聞いた。なら、それに答えないのは卑怯だ。
「これが現物です。」
「下でなくて良かったんですか?」
「下に行くなら私はそのまま走り去ってましたよ。まぁ、魔法なしじゃ追い付かれるのも目に見えてましたけどね。」
「人が悪い。コレを見せられたら私達は自分の手で解明しなければならないじゃないですか。」
「楽しみは奪うものでも教えられるものでもないでしょう?自分で見つけて納得した時が一番楽しいんですからね。一旦戻りコアの方の発したイメージを書き出します。何が何に対応しているかは調べて下さい。」
バイクを見ながら絵が上手い下手で一喜一憂している研究員を見ていると彼等もまた夢追う子供なのかも。責任はあっても仕事を楽しんではいけない理由にはならないしな。
部屋に戻りコアから出た言葉と言うか指示を書き出す。遥も含めて興味深そうに見ているが遥は聞こえてるだろ。俺と一緒かは知らないが・・・。
「ふむ、ほぼ対話形式の指示出しですか?」
「そうなります。基本的に修理と故障の経緯を語ったものになりますね。ただ、神志那さん曰くAIの最終進化による自己完結型対話思考とか言ってましたよ?」
「それって中に何個か考えがあるってこと?」
「多分。ソーツ正式名称を思念制作群体って名前だけどたまに口調が変わるでしょ?あれって中で多数の人格が表に出たり引っ込んだりして話してるからって思ってる。」
「えっ?ソーツとは斎藤型宇宙人の総称ではないんですか?我々は自身でソーツと名乗ったと思ってましたが?」
「いえ?私が勝手にそう名付けて受け入れられたのでそう呼んでます。多分本人達に取って名前は重要じゃないんですよ。証拠に武器の名前とか割と適当でしょう?日本語を指定したので英語表記の物は出て来ませんが。」
そこは律儀なんだよなぁ〜。ブラックホールエンジンをわざわざ事象の地平線動力と言う辺りカタカナもギリギリ避けてるとか?まぁ、職名はカタカナもあるのでそこまでの忌避感はないと思うが・・・。しかし、斎藤型宇宙人って言われると本当に斎藤が宇宙人枠になってしまう。他の言い方はないのか他の言い方は!確かに本体と言うか本当の姿は見えないけどさ!
「なら思念制作群体が正式名称でいいんですね?」
「違いますよ?そう呼ばれているだけで本当の名なんて言われてませんし、誰かに呼ばれたからそう名乗ってるに過ぎない。要は野良猫が多数の名を持つのと一緒で、ウチではにゃん太と呼んでいた猫が多所ではフェリエットと呼ばれる様なものです。」
「なら仮に!そう仮に本名をイメージに乗せコンタクトを取ろうとすれば!」
「知りようもない取っ掛かりのないモノをどうやって知るのか?私は少なくとも名前に言及した事はありません。」
立ち上がって閃いたと言う様なアルは俺の言葉でシュンとしながら縮こまりまた座る。実際名を聞いてもそう呼ばれているとしか言わない辺り本名がないと言うかどれが本名が分からないんじゃないかな?
「それを知る歩みもまた学者の楽しみです。私じゃない誰か・・・、次の学者が知る足がかりがつかめるならそれでいい。そうやって繋いでいけば夢は・・・、いえ、思いは繋がるでしょう?」
「諦めなければ何時かは知れるかもしれませんね。その可能性を私は否定出来ません。さて、本来私がここに来たのは宇宙服の試着だったのでそれも終われば後は帰るだけです。」
「また来て頂けますか?」
アルも含め他の学者も来て欲しそうな顔をしているがどうしよう?来たくない訳では無いがあんまり来ても意味はない。適当に煙に巻いておこうかな?コレから松田なんかと国際会議の詰めの話も進め出せば時間もなくなるし。
「来ないとは言いませんが私はカンペです。聞いて答える辞書を前にしたらやる気はなくなるでしょう?どうせ呼ぶなら他の宇宙人見つけるかソーツ見つけた後がいいと思いますよ?」
「ふむ・・・、ならその時お願いしましょう。さて、コレから皆で検証だ!言葉は此処にある。会話はしてる。なら、後は私達が聞くだけだ。」
やる気は出ているがそこまでたどり着けるのかな?さっさと中層目指した方が早い気もするのだが、下位としてやる事に何か意味はあるのだろうか?う〜ん・・・、他の宇宙人とコンタクトを・・・。ヤバっ、それって中国が考えてるやつだよな!あんまり来る気はなかったが定期的に見に来ないと不味い?いや、でもNASAとJAXAの組織ならそこまで無茶は・・・。
「話すなら対象はソーツだけにしてくださいね?絶対ですよ!?」
「ちょっ!お父さんアルの首を掴んでガンガン振らない!急にどうしたの!?」
「どうしたと言うより警告・・・、に近いのかな?」
「警告?ソーツ以外は何かまずいと?」
「不味いと言うか最悪食われる?」
「・・・、は?それは知性が低いとかそう言う話しですか?」
「違います。あの試験管に入った宇宙人はなんと言うか彼?彼女?基準では入浴中と言うか全裸でした。つまり、私達が何かを着ている様に彼等もまた何かしらの生活様式や衣類に類するモノがある。いいですか?地球の礼儀は宇宙の非礼。それの弁済に1人よこせと言われても拒否は出来ない。」
裸見られて1人の命差し出せは大げさかもしれないが、裸見たから結婚しろと言うのはよく聞く話だろ?アレに羞恥心に類するものがあるかは知らないが、非礼の延長で戦争なんてあったらたまったものではない。宇宙人を目の前にしたらどうするのが正解か?少なくとも攻撃的な意志を感じない限り何もしないのが正解だろう。
無論、腹に幼虫とか産み付けようとしたら抵抗するし敵対も辞さない。う〜む・・・、対話用の言語表は早めに作って首脳陣とかには配った方がいいのだろうか?毎回呼ばれるのは面倒だが知らない所で宇宙戦争勃発もまた避けたい。最悪国際会議で宇宙人の話が出たら最適化された中位を呼べとか?
しかしそれだと中露はいい顔しないよなぁ・・・。あそこにも中位はいるから先に行けと促す方がスムーズなのだろうか?ズームで済ませるつもりだったが、やはり直接出席して呼びかけないと不味い気がして来た。
松田的にはと言うか、日本政府としても俺を国外には出したくないと言う方針で招待はされても蹴ると言う方針だった。しかし、ギルドも安定して副長も有能と言う話が出回り行かないと言う選択肢は外堀から埋められつつある。やはり腹をくぐらないといけないかな・・・。
臆病かもしれないが、それで家族の安全が買えるならいくらでも臆病風に吹かれていい。やらないよりもやった方が後悔もないしやはり前向きに検討するとしよう・・・。
「言語だけではなくて礼儀・・・。生活習慣のパターンはどう集めれば・・・。」
「敵対されない限りなにもしない。それが多分正解です。今回はありがとうございました、改めて自身の立場を考えたうえで決心が付きましたよ。」
「決心?なんのですか?」
「ジュネーブで行われる国際会議、コレの出席に付いてです。」




