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街中ダンジョン  作者: フィノ


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474話 受領中 挿絵あり

 娘に連れられて超機動要塞飛行ラボを歩く。飛行後に社員の逆ストライキ?仕事や研究をさせないと金を振り込むと言うよく分からないジョークの様な脅しと、自国で勝手にチーム作って技術流出させると言う本気の脅しにより、緊急避難要請時には従うが必ず何をするかの大雑把な説明をする事を会社は約束させられたらしい。


 ただ、大雑把に説明されると残ると言う人が増える様な・・・。まぁ、命の危機やらラボが危険に晒されているから逃げろと言う話なので、無視した場合自力生存ルートを探してもらうと言う事で社員とは妥結した。今の所ラボは空を飛んでいるし多分危ない事はない。仮にあるとするなら襲撃を受けるよりも実験失敗からの爆散ルートの方が・・・。


 別々の建物として造られていた駐屯地は飲み込まれる様に一体化しているし、新たな発電施設の様な建物もあるしR・U・Rのサーバーも持ち込まれているのか一気にラボが近代化を通り越してサイバーパンクしている様に見える。ドローンやらUFO試作機は未だに飛んでるし、パワードスーツ姿で飛行する人も・・・。


「遥、ここにいて外に出たら技術のギャップに悩むとかはないか?」


 話しかけると娘はピタリと立ち止まる。いや、そもそも娘はラボで暮らしているわけでもないし、東京を離れる時は増田に頼んでホテルも確保してもらっている。いや、装飾師講習会終わったからホテルも引き払った?いや、娘も要人なのでそんなにふらふらされても困ると思うが・・・。ラボなら警備体制も万全だしなぁ〜。


「ま、まさか・・・。人は普通に空を飛ぶし、R・U・Rを使っての人体スキャンからのバーチャル会議はごく一般的だし、獣人が著名な研究者と議論するのは普通だよね?」


「ごめん、普通が何か分からなくなってきた。」


 娘が話す事は一般的かと問われると迷うがそんな事はないと言えないレベル。確かに格闘家含め空を走ったりするし、佐沼の所は何故か対面で会議やりたがる所用にメタバースを進化させて完全独自開発したバーチャル会議室プランも販売してるし、フェリエットの学力と言うか知能を考えると、ここで専門的な事を延々と聞かされていればそれに対する知識もついてくる。


 結果として普通の範囲内。但し、頭にここでのと言葉がつく。常識も認識も場所が変われば変わるものなので、普通かと聞かれればここでは多分普通の範囲内だと思う。外ではどうか知らんけど。


「やめてお父さん・・・。外から来たお父さんの常識がぐらつくと私の常識もぐらついちゃうんだから・・・。最近頼まれてた宇宙服の納品に行ったら、終始外の街並みも含めてなんか前時代的だなと思っちゃったんだから・・・。」


「サイバーパンクに生きてたらなぁ・・・。」


「で、でもバイク改造してもらったから私でも空が飛べるんだよ!バイクが空を飛ぶなら車も空を飛んでるはずだよ!」


「それはフォローになってないし未来技術だ。どうせ宇宙空間でパワードスーツよりも安定した移動手段が欲しいとか言い出してそれの試作機だろ?」


 生身大気圏突入は高所恐怖症ならトラウマものだろうが乗り物があれば多少は安心できる。う〜ん・・・、個人やパワードスーツに圧縮空気とか計算するシステムを搭載するより、乗り物に搭載した方が生存率は上がるのかな?最悪壊れたら乗り捨てて自力で大地に降り立つルートを探せばいいし。


「さぁ?でもラボの人はロケットブースターとか古くて草生えるなんて言ってたかな?あんな爆発物抱いて宇宙に向かうとか死亡リスク管理がなってないとか・・・。」


 言ったお前もちょっと前まで宇宙行く=スペースシャトルだったろ?と顔を見ながら事実を突き付けたい。まぁ、突き付けても何の意味もないのでやらないが・・・。しかし、歩く中ですれ違う研究者達は常に意見交換をして口を閉じる時間さえ惜しいと見える。


 山口がおしゃべりだったが、ここの研究者達はマシンガントーク検定とか受けないと会話出来ないなんて事があるのだろうか?どちらかと言えば俺は聞き手側に回るので、会話に上手く話を割り込ませる事は出来るがあんまり早すぎると諦める。言いたい事吐き出せばそのうち口は止まるからね。


 中に入ると藤が動かしているだろうアンドロイド風ロボとすれ違ったりしながら進む。前は薄暗かったり有り合わせの箱素材で作っていたので排他的且つマッドな雰囲気が漂っていたが、今は壁なんかも塗装されて結構綺麗になっている。


「さてと、ここが試着室って事になるけど乱雑でごめんね。」


「いや、消えないって事は全部固定処理?」


「それも含めてだね。基本的に作るのは私なんだけどここに用事がある人は多く・・・。あそこの箱の中は自由に持って行っていい魔法糸の束が入ってたり、固定処理依頼品が箱に入れて置いてあったりとか色々。36階層まで行ってる間に結構増えて、どうにか片付けたんだけどね・・・。」


 中々リスキーな事をする。下手したら消える可能性があるのだから指輪に収納して帰りを待てばいいものを。社員も増えたから娘だけに依頼せずとも代わりはいそうだが、やはり中位と言うブランドは大きいのだろう。


 ただ、奥の壁に掛けられている白い服が俺の宇宙服になるのかな?依頼した時の絵がヘルメット被ったものはいいとして、座っている方はかなりのレースと金細工があしらわれてかなり面倒なデザインだったのではないだろうか?流石に背景の椅子っぽいモノは作られていないのでコスプレ衣装に見えない事もない。


「ぼちぼちやって無理なら無理って言えばいいよ。やりたい事があるならそれを優先してもいいしね。ここは相互扶助前提だからこっちからお願いしてもいいしね。」


「したからこの出来なんだよね。金細工の部分とかは斎藤さんにお願いしたし、伝導率のいい導線と言うか藤さんに頼んで魔法糸出してもらって糸そのものが電気通す様にしてみたり・・・。はっきり言えばこの宇宙服ってパワードスーツ以上の技術と作り手側のイメージが詰め込まれてる。」


 話す遥は誇らしげだ。やり遂げたと言う自負もあるのだろうし、本人が思う様に仕上がったと言う気持ちもあるのだろう。後は袖を通して感想を言えば依頼完了かな?見た感じ俺としては特に問題はないと思うが、あの絵を描いたのは魔女だからなぁ・・・。


 ただその魔女も不快な印象は持っていない様だし、当初のオーダー通りモンスターの素材は使っていないのだろう。何を持って芸術とするかは知らないし、その人が美しいと思えばそれに価値はある。少なくとも俺はこの宇宙服に携わった人達の熱意は本物で、魔女の絵はかなり忠実に再現されていると思う。


「ありがとう、これって裸で着るの?パワードスーツとかR・U・Rは真っ裸かが1番いいって聞くけど。」


「アレはバイタルチェックとかの問題があるからね。コレにもあるけどインナーでいいよ。」


 真っ裸は回避出来たか。R・U・Rにしろパワードスーツにしろ同調率を上げるなら素肌を多く押し当ててバイタルチェックしてもらうのが一番と結論は出ている。それすなわち中身は真っ裸。まぁ、R・U・Rの首筋に付けるデバイスはそれだけでも高性能だし、人力パワードスーツならヘルムから読み取るデータだけでも十分緊急生命維持はしてくれる。


 ただ、使う状況がゲートの中や対人戦メインとしているので真っ裸信者は多い。風の噂では敢えてR・U・Rのデバイスを棺桶型で特注して使うなんて人もいるようだ。


「なら早速着てみよう。下手に持つとシワになるとかないよな?」


  挿絵(By みてみん)


「流石にそれは大丈夫。寧ろ頑丈さだけで言えば色々な糸を織り込んだりしてるから、鉄やらチタンなんかよりも強靭だよ。モンスターと戦うにしても問題ないし、スペースデブリ衝突実験もしたかな?」


「えっ、そんな実験したの?」 


「自衛隊の格闘家の人に石投げてもらったりガンナーの人に撃ってもらったりしてね。破けなかったけど中のトマトはトマトジュースに・・・。」


「仕方ないとはいそれを言われると着る気が・・・。」


 まぁ、服だしなぁ・・・。何かがぶち当たっても中身が大丈夫な物と言えば既に鎧だろ?仕方ないので自力でどうにかするしかないが、真空の宇宙で防御力を高めるとなるとイメージ構築を一からしないとなぁ〜。まぁ、すぐに宇宙に出るわけでもないので地道に納得出来るモノを作ろう。


 着込んでいくがフリフリのレースや重ねられた布が邪魔と言うかゴスロリ以上に着にくい。娘が手伝ってくれるので、どうにかこうにか着られるが1人だと面倒になるな。取り敢えず途中まで着て一息。全て着込むと風も通さないので暑いと言うか、これでヘルメット被れば酸素供給なければ窒息するな。


 半分脱いだ状態で一息。誰の要望かは知らないが中間形態っぽい物があるのでそれでいる。魔女としても問題はない様だ。モンスターはぶち殺したいと言う反面、芸術には寛容なのだろうか?


  挿絵(By みてみん)


 まぁ、モンスターが芸術的かと言えばクリーチャーだしなぁ・・・。ただ、映画のクリーチャーを芸術的デザインではないと言えないので何とも言えないし、イベント・ホライゾンなんて言う映画は宇宙船のモデリングをする時にどこかの教会だったが聖堂だったかをモデルとしているし、要はオリジナリティーがあるかないかが境界線とか?


 う〜ん・・・、モンスターは似てるけど外観は少しづつ全部違うし、それがオリジナリティーと言えばオリジナリティーでもある様な・・・。なんにせよ魔女からのダメ出しがないなら宇宙服の作成は成功だろう。


「ヘルメットはどこ?まだ被ってないけど。」


「それがまだなんだよね。遮光グラスをどうするかで揉めてて・・・。」


「いや、遮光してよ。流石にないと目がやられる。」


「遮光はするよ、うん。問題は顔をどうやって見せるかでね・・・。モニターで投影するって案がメインなんだけどほら、ヘルメットって曲面だから再現度が悪いとダメなんじゃないかって・・・。ポスターとか写真集でも劣化するとすぐになんか違うって思う様になるし・・・。」


「初期ポスター問題か・・・。」


 初期ポスターは超高額。しかし、一つ問題があって大量生産した分固定処理されていないものもある。それに気付かず部屋に張ったりしていると劣化していきコピー品と言うかロッドナンバー付きと変わらなくなる。


 最高保存状態は固定処理して額に入れる事らしいが、そこまでされるとむず痒くてかなわん。


「何か要望ある?」


「私は技術者じゃないからなぁ・・・。」

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飛行バイクはさしあたってスピーダー・バイクからだろ まあいずれ変形してパワード・スーツになるバイクとか出てくるだろうけど 宇宙服で顔の見栄えを気にするのか将来必要になるかもしれないからここでしっかり…
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