461話 嬉しい限りだな 挿絵あり
忙しくて短いです
「地術者、2ndジョブとしては魔術師:風を。他の者は特に開示しなくとも?」
「ええ、構いませんよ。松田さんもそれで構いませんね?」
「私としては聞いて損はないので聞きたいですが、長官の開示で良しとしましょう。あと、私は政治家として必要な部分では口を開きますがそれ以外は見守るとしましょう。」
「分かりました、しかし喜ばしい事です。魔法省と名乗るからには長官は魔術師だとは思っていました。しかし、それを超えて2つとも魔法職に就いた方が出た。流石は魔法と妖精の国、お見事です。魔術の系統云々は抜きにして現代のマーリンを名乗れるのでは?」
「それは目標としてあるものでまだ名乗れませんよ賢者殿。EXTRA賢者でファーストさんは間違いないですね?」
「ええ。魔術談義に花を咲かせたい気もありますが、あまりそれをすると変な勘ぐりをうける。今回は職に就いた獣人の話と言う事ですが、端的に言えばここにいるフェリエットがそれに該当します。両国とも獣人の職名は妖怪である。これは間違いありませんね?」
とても美しい娘だ。画面の向こうで微笑む少女の顔はとても優しく、純粋にワシの職について喜んでいる様に見える。美しい美しいと聞き、国として貰った旗の写真も美しいと思っておったが、確かにこうして画面越しとは言え相見えればその美しさに確信が持てる。
しかし、職名を聞き組み合わせでマーリンを言う辺り職を抜きにしても魔術に詳しいのかのぉ?それともゲームやサブカル的なものじゃろうか?日本と言う国はとても自由で魔術に対するイメージも妖怪の様なデーモンに対するイメージも多様。ワシの国で魔術と言えば古臭いやらと言われておったが、日本には多分それはない。
「日本なら・・・、賢者であるファーストさんなら何かしらの知識があると思い、こうして問い合わせをしましたが間違いではなかった。職の内容は同じですよね?」
「同じでしょう。そちらも指輪の中身が見えるからこそ、人数が少ない事やこれからの付き合い方を模索している。そちらには職に就いた獣人の姿が見えませんが?」
「別室待機させています、名はフィンと言う犬人です。後ほど招き入れましょう。」
「フィン・・・、ふふ・・・。」
「何かおかしな点が?」
「いえ、フィンと言えばフィン・マックールでしょう?知識の鮭の油を舐めて良い知恵を授かる。良かったですね、隣人としての接し方は間違いなかったようですよ?」
「獣人が職に就くならやはり知識総量を上げる必要性があると?日本ではタブレットを使い早くから獣人に勉強をさせていた。私の国で職に就いた獣人は大学の授業を聞いていた。なら、獣人が職に就く鍵はその辺りしか思いつかない。」
「神志那さん、データを。」
「あるよ。流石に画面上にデータを出して話すとハッキングがあるかもだから出来ない。ペーパーは後で許可されたら送るとして、ここにいるフェリエットは英国からの問い合わせより前に多分職に就いたって言う認識で間違いないと思う。英国側の検証がどこまで進んでるか分からないけど、日本政府から開示許可が出てる部分で話すとゲート内の戦闘に関しては1人でもサポーターとしても優秀。ただ、本人イメージと言うか戦闘スタイルが獣寄りだから武道経験者とかよりはイメージとしては弱い部分がある。魔術に関しては本人の興味次第。フェリエットは魔術が使えるから・・・。」
「横から失礼。日本の獣人、フェリエットは既に魔術を使用可能であると?」
「ええ。フェリエットは私の家族なので本人の意向により魔術を教えています。まだ人間の魔術師程上手くはありませんがこれから次第でしょう。」
「その指南方法も開示してもらえますか?」
「その点についてはすぐにOKとは。理由として獣人本人が使いたがってあるのかや、本人とパートナーとの関係性もある。それに、すべての獣人が同じ方法で魔術が使えるかは分かりません。お国柄と言う言葉がある様にイメージも様々ですからね。」
良い事を聞いた、妖怪の説明を聞いた時にフィンは魔術をまだ使えないと言っておったがそれは訓練すればいいものか、それとも自然に使えるものかは分からなんだ。獣人本人もそこは分からないと言っておったから手詰まりとして放置しておったが、聞く話によると人と変わらん様に思う。
う〜む・・・、叶うならフィンは宿舎に入れるかマイロを職に就けて学ばせたいのぉ。数が増えればそれだけ出来るイメージも増えるじゃろうし、獣人を一箇所にまとめるのも獣人同士の対話やイメージを増やすのには役立つじゃろう。スタートは単純に哀れみからじゃが、蓋を開ければ中々重大な施設になるんじゃなかろうか?
「なるほど、その魔術を使用している姿を見せてもらっても?」
「それはフィンが来てからにしましょう。獣人が魔術を使うなら獣人に見せないと意味がない。神志那さん先を。」
「あいよ〜。魔術は後に回すとして、気になる職に就けるか?の部分だと英国からの情報とすり合わせると知識総量が必要なのは多分問題ないと思う。フェリエットは低い部分でも日本教育の中学から高校レベルの知識量を有しているし、人との対話も接客業が出来るレベルがある。難しいのは知識総量以外の部分で何か足りないと職に就けない事かな?」
「知識総量以外?」
「そうポニテちゃん。知識総量が高そうな獣人をゲートに入れたけど職に就けなかった。入れた獣人の傾向は1人を好んだり日中含めて家で過す者が多かったけど、そこがネックと言うなら対人関係も職に就けるか否かの争点になりえるかな?」
「人の中で学ばせるのが必要って事か?確かにフィンは授業聞いたり学生と遊んだりしてたって聞いたけど。」
「その辺りはまだ検証中としか言えないでしょう。私達が知るのは2人しかいませんからね。え〜と・・・。」
「この娘は弟子のエヴァ、横のはジャスパーと言います。提携ではありませんが獣人関連では連絡を密にしたいと考えています。それは前向きに検討していただけますか?」
「それは日本政府と英国政府間で話を進めています。それにあたって大使を置く事も前向きに検討していますからね。ファーストさんからも許可は出ていますし。」
「ええ、その話は確かに伺っています。私が大使と直接話す事はないでしょうから、政府と大使の間ではご自由に。まぁ、今神志那さんが読んでいるペーパーが早急に欲しいと言うならサイラス長官が今すぐ直接取りに来れば済む話でしょう?」
・・・、ワシの移動魔術を知っておる?どこかで見られた?いや、隠すほどのものではないが他国に出来ると知られると面倒だと隠しておったのだが、どうしてこうも出来ると断定した様な話し方をするんじゃろう?土と風でそんな事が簡単に出来ると言う話にはならんと思うんじゃが・・・。
「どうして私がすぐ行けると?フライトチケットを買って飛行機を使っても明日以降でしょう?」
「風と土の魔術師でしょう?なら種は運ばれ地で芽吹く。自然の摂理として当然の行いでドルイドやケルト系の神話が残っているなら森は味方でしょうし、何よりマーリンを目指しているなら花の魔術師と言う名は捨て難い。」
「なるほど・・・、行ったら密入国になりません?」
「さぁ?松田さんがお目溢しするかですね。」




