456話 口を開くしかない 挿絵あり
エマの乾杯の合図でグラスを掲げ飲む。飴と合わさって甘いな。他の面子はそのまま一気にする様に飲むが生還を喜んでの乾杯ならそれもまたあり。ただ、話は聞かせてもらおうかな。
「それで何か発見はありました?」
「いヤ。前回と違い退出ゲートが確認されたくらいダ。目新しいと言えばそのゲートと後ハ・・・。」
「ダチョウみたいなのはいましたね。多分馬の代わりですけど凄いんですよ走る跳ねる飛ぶ全部してくれて。ただ、多少お馬鹿でしたけど・・・。」
「お馬鹿?なにか不具合あった?」
「コウモリの様に逆さまにぶら下がったり出来る分、操作をミスすると鳥は大丈夫だが私達は落ちル。まァ、固定はしてくれているんだがナ。」
「ダレスがビビって抜け出そうとして真っ逆さまだったな。モンスターにやられるより先に真っ逆さまに落ちで首をグギッとやった感想は?」
「乗り物がないって話であれなら誰でもビビる。あんな不気味なシートベルトはゴメンだ。寧ろ俺に感謝しろハミング、俺がやらなきゃお前がやってた。」
「確かに身体を這われる感覚は嫌でありましたね。」
「まぁ、食えたけどな。変に柔らかくてチーズみたいな食感。まぁ、あれならそこそこ摘みにも出来る。」
「魚と挟んで食えばって試したけど全部同じ味で嫌になったな・・・。ま、食料切れじゃなければバケットサンドが正解だ。次行くなら大量に買っていく。」
「サンプルは持ち帰ったな?ドゥ。」
「あるよウィルソンさん。多少ならここで出して食っていいくらいな。ファーストさんもいかがかな?前はいなかったんだろう?」
仮面をつけたドゥがチーズっぽいと言う肉を何個か皿に出してテーブルに置く。見た目だけなら形成肉と言うか、食べやすいようにベビーチーズサイズに切ったのかな?色合い的にも白っぽいので確かにチーズに見えるし一口食べてみるが・・・、羊羹かな?食感的には確かにチーズでも間違いないが日本人としては羊羹だと強く言いたい。
「カオリ、これって羊羹だよね?食感的に。」
「そう思うんですけどチーズも種類がありますからね。ただ、焼いたら表面カリカリで中身トロトロになるんですよ。」
「そうなるとコレは生なのか・・・。」
生食が苦手なのか手に取ったウィルソンが顔を顰める。でもゲート内の食い物って生食出来るんだよなぁ。調理してもいいが時間がなければそのまま食べるし、馬も馬刺しなら鳥は鳥刺し、魚はそのまま刺し身と言う感じに。今回のアタックも日米合同で退出して再度集まるとなるとそこそこ時間がかかるから出なかったのだろうが、ウィルソンの話が本当なら集合時間も短縮できるかも。
そんな事を思いながら火を出して肉を浮かせて焼いてみる。特にいい香りはしないが焦げ目はついたようだしいいかな。冷まして口に入れると確かに望田が言う様にカリトロ食感。おめでとう、チーズはたこ焼きにクラスチェンジした。但し、味の変化はない。寧ろこれでチーズフォンデュとかしたらかなり美味いかも。
「これの写真とか映像ってある?」
「あ〜・・・、今見ます?」
「渋るんなら止めとく。かなりキモい?」
「乗り物と思わずモンスターと思う程度には。」
「散々撃ち殺したナ・・・。さすがに初遭遇だと乗り物とは思わなイ。まァ、クリスタルが出ないからモンスターではないと判定したガ・・・。」
話から察するにヤバいビジュアルらしい。取りあえず見ないいまま食べて後は見てから考えよう。そうじゃないと手が出なくなりそうだし。まぁ、他の面子も普通に食べているので慣れると言えば慣れるのかな?
「それで、次に進むゲートにはそのダチョウっぽいのに連れて行ってもらったと?」
「ええ、何個かありましたけど洞窟っぽい所の中にあるんですよね。上空からの探索じゃ多分見つかりません。探すなら森の中をトレッキングですね。」
また体力を使う様に置いたなおい。しかし、見つかりづらいならそのまま51階層からこのセーフスペースの間を掃除すればそこまで奥にいかなくていいのかな?俺は祭壇を探すと言う用事があるから進むにしても、そうでないならわざわざ次に行く意味は薄い。仮にスタンピード対策を考えるならこの辺りが最善とか?
そこそこ強く喋るモンスターもいるし、作業効率を考えるとこの辺りに来れる人が増えればかなりの抑止力にる。これでモンスターか少ししか湧かないと言うなら考えるが、そんな事はなく無数に集まってくるし大きさもでかい。
命を天秤に乗せるのは嫌だが逃げ場のある、或いは逃げられるスタンピード地帯と考えればかなり気は楽になるのでは?そもそもゲート外でスタンピードが発生したとして一番嫌なのはモンスターが逃げる事なんだよな・・・。
人に興味があるので囲めば爆発的に拡散する事はないと思うが、逆を言えば人が全滅してしまえば行動範囲は広がってしまう。それに一応規模を伝えてくれるが、それは排出が始まった時点でなので前回今回と増えている以上、多分減る事はないだろう。そうなってくると抑止力となる階層を考えた時にこの辺りになるんじゃないかな?
少なくとも中位なら生きて帰ってくれるだけの事実は今回のアタックでわかったし。まぁ、全員が全員毎回生きて帰って来れるとは思わない。それだけ過酷な場所なのだから。
(均衡を取るならまだ先よ?確かにメーターは微増には出来るけどその増加は止まらない。先に行きなさい、先にね。)
(先ねぇ〜、例えばどの当たりが均衡を保てる場所だと考える?)
(さぁ?でも今の階層ではダメね。弱すぎる。)
(へいへい、そもそもお前が強いって言う奴はいるのかねぇ?)
(奥にいかなければ分からない。行かない事には始まらない。そもそも貴女だって彼女達より先に行ってないのよ?初めては誰よりも先に楽しまないと色褪せる。)
(とりあえず俺は先に行く。それだけは間違いない。)
(いいお返事ね。)
とりあえず文句言われない程度には仕事する。それは祭壇を探す事もそうだしモンスターを倒す事もそう。やるだけやらないといけないし、他よりも安全に進めるなら進むしかない。
「ここだなぁ〜、戻ったなぁ〜。」
ぼちぼち話に花を咲かせているとフェリエットが帰ってきた。バイトが湿っている様に見えるので多分洗っていたのだろう。ただ、扉を開いた時に獣人の影が多数見えたし尻尾を絡めてるやつもいた。
「おかえり、大人気だな。」
「どうでもいい奴ばっかりだなぁ〜。仲良くはするけどそれまでだなぁ〜。」
「そう言えばなんでフェリエットちゃんがここに?」
そう言えば、望田はしらないんだよなぁ〜。どうしているかと言えば職に就いたからだが、米国には開示されているのだろうか?公式発表はまだされてないし他国からも報告は聞いてない。知られたくはないが、ここに来たら多分もう知られてるよな・・・。
「先に伺いますが貴方は鑑定術師ですよね?その上で問います。フェリエットの何が見えますか?」
「あ〜・・・、知らないと言って話をうやむやにするのと。正直に話すのはどちらがお好みかな?」
「誠実は積むもの、不誠実は隠すもの。その質問の時点で分かっているんでしょう?」
事の成り行きが分からないメンバーは話に聞き耳を立てているが、問題はドゥがどこまで見えるかだな。神志那は職名くらいは見える様になったが人物鑑定が苦手といい元々引き籠もりだったせいが人物鑑定に向かない。だがこのドゥと言う奴はどうだろう?声色からすると男だし体格も悪くない。メンバー的に考えると軍人だが、それなら顔を隠す必要がない。ウィルソンと仲良く話すあたり軍人ではなく役人方面とか警察方面とか?
「読めないが書ける。『妖怪』この字の職が見える。ただ、中身は不明だ。変にモヤモヤした感じがする。」
内容は見えないか・・・。さてどこまで見せるかな?ここでの開示は最早仕方ない。ドゥと言う鑑定術師の存在と交換の情報開示ならそこまで文句を言われないと思うし、究極的に言ってここでの話はゲートの霧とでも言えばいいのか証拠にはできない。どんなに機密を話そうとも、どんなに違法品を取り扱おうとも外でそれを使わない限りは違法ではない。
「それはフェリエットの職です。フェリエット、ちょっと魔術を使って。」
「バイトの丸洗いで疲れたなぁ〜。何か食っていいなら出すなぁ〜。」
「ならそこの白い塊を焼いて食っていいぞ。」
「分かったなぁ〜。」
ワイルドというか下手と言うか、手に炎を巻き付けたまま握るかね?確かに早く食べるならさっさと焼いて方がいいのだろうが、火力をミスってるのか表面がカリカリどころか真っ黒になっている。
「これって食えるかなぁ〜?」
「食べてもいいが多分焦げて苦いぞ?ほら、こうして焼くと焦げないしどの面もよく見える。」
空中に火の玉を出したその上に肉を浮かべてくるくる回しながら焼く。別に魔法は何個でも使えるし魔術も何個でも併用できる。問題は得意分野から派生させられるかどうかだな。宮藤の灰を操るのも派生だし、卓のバトルスーツも派生。加納は最初から水より氷だったので派生と言うよりはイメージの問題となるが。
「クロエは難しいが事ばかり言うなぁ〜。でも、この黒いのはまずいなぁ〜!」
「え〜と、その職は魔術師系であるんですかね?」
「そのうち開示するので、その時までは今見た事以外は伏せさせてもらいます。ただ、一つ言えはるのは獣人は間違いなく職に就けた。隣人として適切に接していたならいいですが、なにかヤバいと思う様な事がある都度、自分達の考えを改める事をおすすめします。」




