454話 統合基地にて 挿絵あり
「!?!?」
「どうしました?何時も会う時の様に抱き締めてもらっても構いませんが?」
なんでここでウィルソンの方がたじろぐんだよ!ただ、多少出ている腹は懐かしさを感じる。俺にはなくなった腹の脂肪だが、このポヨポヨ感はなんとも。今度才能ある獣人女性の腹を触ってみようかな?妻も腹回りはスッキリしてるし触るとなると胸になる。と、言うかうち家族って脂肪分が胸にはあるが腹にはない。流石にソフィアや遥の胸は触れないしやはり獣人の腹か。時点で言うならコーギーから犬人になった奴の尻とか?
犬の時もモフモフしていたが犬人になったら胸よりも尻が大きくなる。それこそもう、外人のお尻を鍛えて大きい人ばりに。中々触る機会はないがスキニージーンズを履いてると余計に強調される。
結局抱きつかなかったので離れるが本人は手を広げたまま。なんにせよそこそこ親しいと言う印象を植え付けられただろう。シナリオは頭に入っているがあまり掘り下げられたいものではない。みんな疲れてるだろうし場所を移そうかな?
「ここで話すのも視線がありますし場所を移しましょうか。ウィルソンさんが来たと言う事は早急に情報収集したい事があるんでしょう?」
「え、あ、そ、そうですね。」
「このおっさんに魅力は感じないなぁ〜。」
「フェリエットもそんな事を言わない。バイトー、いるなら出てこい。疲れてるだろうがちょっとフェリエットと散歩してきたらご褒美をやろう。」
(はっ!ゆくぞフェリエット。)
「バイト行くなぁ〜。・・・、臭い?水箱を探して丸洗いだなぁ〜。」
(後でウィルソンをとっちめようウ。)
(その件には私も協力しましょう。先にお風呂に入っていなかった自分の臭いが憎い!!)
なにやらエマと望田がヒソヒソしているが別に臭くはないと思う・・・。いや、思いたいが正解か。ゲートの中なので今は感じないが流石に抱き着けば臭いは鼻にダイレクトアタックは免れない。約1ヶ月ゲートに籠っていつ風呂に入ったかも分からない状態だろ?やってたのはモンスター討伐で運動量は半端なく全身汗まみれは免れないだろ?最臭兵器だな。
「エマも含め先に風呂に行ってきたらどうだ?話は後からでも出来るだろう。シャワーを浴びてポッド風呂?に入って万全にしてから来い。それと、望田さんはごゆっくりどうぞ。私は米軍側に聞く事はあっても貴女に何かを調書するような真似はしませんので。」
「同じ任務で疲れている私達との扱いの差が激しいナ。」
「お前が米国ではなく統合基地でメディカルチェックを受けたいと言ったからだろう?研究者の山口女史も今は日本だが、それでも米国産回復薬も捨てたもんじゃぁない。お前が大人しく米国でメディカルチェックを受けたなら俺もここまで来なくてよかった!」
「わかっていル。たダ、帰ったらみんなで1杯やると言う約束があるから諦めロ。それに抱き締められた上に統合基地の本物の写真も見られたんだ文句を言うナ。」
「そんなにその約束は大切なもんかね?」
「大切ですよ。約束した、果たした。なら次の約束をする。命の軽い場所を歩く時に縛る鎖は言葉しかない。その鎖を外して新しい鎖をして中に入って帰る道標とする。心残りはない方がいい。それが背中を預けた仲なら特にね。使ってない会議室がありますね、私達はここで待ちましょう。」
扉を開き中に入ろうとするとエマに呼び止められた。望田や他の兵士達も俺の方を見てくるがなんだろう?早く風呂に入ってさっぱりしたいと思うのだが・・・。
「私達はゴミ溜めの様な中層から帰ってきたが何か言葉はもらえないカ?確かに労いは貰ったが他にモ。」
「労い以外の言葉ですか?う〜ん・・・。」
さて何を言おう。と、言うか何の言葉が欲しいのだろう?砂漠にいたかもしれない兵士達だが俺は彼らの事を知らない。望田は1ヶ月近く過ごしたので話す事はあると思うが、さてどうしよう?きつかったや辛かったでは間違いないのだろうが違う。それを俺は共に体験していない。
一般的な言葉が欲しいわけでもないだろうし、かと言って個人に掛ける言葉は持ち合わせていない。なにせ今日会ったばかりの人に適当な言葉をかけるわけにもいかない。なら・・・。
「娯楽は楽しめましたか?誰に気を使う事もなくその持てる力を使う。相手は雑魚ではなく常に強敵で快楽を感じる暇なく当然の様にモンスターを狩ることが。」
言えるとすればこのあたりかな?同一階層を歩みきつさもモンスターの危なさも分かっている。だが、同時に俺はあまり出来ないがその力を十全に使い強敵と戦い自身がどうなりたいと真摯に向き合う事も出来る。結局の所初めての時は俺も慌てたが次に行く時はもうビビらないだろうし楽しめるだろう。
それこそソロでこっそりと短時間潜り先を見てもいい。退出ゲートが見つかったと言う事は正式にセーフスペースなんだろうし、ガーディアンがそこを通り抜けて更に奥に行っているなら早めに発見しないと残骸も消えてしまいそう。下手するとソーツが先に回収しているかもしれないが、それもまた行ってみないと分からない。
「やる気が出る言葉ダ。風呂はいって休んだら一旦休み今回の反省と報告を行ウ。でハ、解散。」
エマの言葉で解散してそれぞれ風呂へ向かう。どうしても身体の表面についた垢や埃は人と接触していたら物が消えないゲートの中では残ってしまう。日本式入浴法が推奨されているのでお湯が真っ黒になる事はないだろうが長湯は確定だろうな。緊張の糸が切れて寝なければいいが。
ウィルソンと部屋に入って適当に座るがなにを話そうか。あぁ、やはりこれは確認しておかないといけない。この部屋は防音対策されているし、盗聴は大丈夫だと思う。まぁ、ゲート内で盗聴なんてしていたらそれも対策されているのですぐにバレるのだが・・・。
「あらためて、ソフィアの件では多大なご尽力感謝します。お力添えがなければ更に面倒な事になっていたでしょう。」
「いえ、かしこまらないでください。言い方は悪いですが我々はビジネスライクな取引をしただけですよ。そのおかげで飛行ユニットや宇宙開発方面で優位性も持てた。我が国としても様々な研究はしていますが、今回の話がない状態での単独開発となるとかなり遅れてしまう。」
「なら、お礼はこれっきりと言う事で。そのソフィアの件では嗅ぎ回る人間は出てきましたか?」
コチラがアクションを起こさないのをいい事に協力してもらった米国で嗅ぎ回られても面白くない。まぁ、留学先は公にしていないのでそこまでたどり着けるかはわからないが、それでも俺が話せる他国となると限られてくる。仮に日本を挟んだと想定しても日本の最大の同盟国は米国と言う事で目はむくし、何よりスタンピード以降は更に親密度がマックス。恋愛ゲームならそろそろ伝説の樹の下で告白するんじゃなかろうか?
「完全にいないとは言えないでしょう。ウチは人種のるつぼ、完全に防げているなんて幻想は捨ててますよ。」
「そうですか・・・。いえ、仕方のない話です。人が多ければそれだけ話は広がりやすい。」
「ええ。ですが私はソフィアさんが私の家にたまに帰ってきつつ病院にいたと証言しましょう。」
「ありがとうございます。さて、娘の話はいいとしてウィルソンさんがわざわざここにまで付いてくる必要ってありました?言い方は悪いですがここは多分米国からだと更に時間がかかるでしょう。」
「飛行機よりは速いですよ。エマ達と共に馬で走って5時間程度。山口女史の話では統合基地の認識者が増加すれば更に短縮するのではないかと言われてます。」
「ここに人が増えたら早くなると?」
「仮説段階ですがあの第三の目は様々な役割があると言われています。その中で大型の固定物体を多数で視認すれば位置情報の情報共有しているのではないかと。ここはそれなりに人も多いし基地が動くこともない。通い慣れた道や見慣れた建物ではないでしょうが、そこに行けと言う指示が多ければ多いほど馬も学習するのではないかと考えられています。」
ふむ、イメージすれば運んでくれる馬に同じイメージを多数で送ったら時間短縮できると?確か最初にエマが来た時はかなり時間がかかったと言うしこれからは更に短縮できるのかも。でも、その場合なにでその短縮する時間を稼いでいるのだろう?
肉を食ったりするから機械とは思いたくないが、走る姿も足は動かさないし誰かが来ればすぐに現れる。不思議生物だと言えばそれまでだが、そのうちゲートの馬専門学者とか出て来そうだな。




