閑話 87 三者会議 挿絵あり
「俺はこの着物を推す。」
「黒はいいがちと派手すぎんか?俺は思いきって紫やら赤でもいいとは思うんだが。」
「まぁまぁお二人共。ここは間を取って振り袖のピンクでどうでしょう?髪を結い上げて花魁風にまとめると言う方向で。」
「松田さんそれはダメだ。いくらなんでもソレをシンボルにしたら怒られる。国旗は使えない、それの代わりに目立って大衆的で名前と姿が一致する様な旗なり銅像なりのシンボルをどうするかって話で嬢ちゃんにお願いしようって話なんだ。流石に日本の基地を示したいから着物はOKしてくれるだろうがなぁ。」
「そうだな松田さん。黒岩さんの言う通りでゲート内では国旗掲揚もしてないし、迷彩服の階級なんかも外させてる。共通認識で指揮官等は分かりきってるが、国旗の代わりに花魁姿のクロエさんの旗やらを掲げだすと本当に何者か分からんくなる。」
「いい案だとは思うんですがね。大人しい着物の旗よりも派手な方が印象に残るでしょう?ゲート内セーフスペースに点在する村と言うか集落と言うか、そこを調査した結果どの場所にもシンボリックな物はありました。そして、印象に残れば残るほど到達率は高くなる。それに、同盟国からはウチの民族衣装でって話は多いんですよ。」
「分かりやすいと言えば分かりやすいからな。民族衣装ならその国の人がいるって一目で分かるだろうし。ただ、これって本人に話はしてるのか?」
「一応無理を通す材料はありますね。配信前のゴタゴタで色々と取引出来る機会もありましたし、何より協力しただけの見返りは十二分にありましたよ。」
「それは・・・、増田さんが貰ったスパイか?」
「人数や程度が分からんからなんとも言えないが、国と自衛隊側の管理でいいんだろ?」
「その予定なんですけどね、増田君曰く指揮者に任命されてその後の指揮権譲渡が出来るか微妙なんだそうです。主観的な印象を言うなら暗示や洗脳よりもなお質の悪いものではないかと。」
「嬢ちゃんブチ切れてんな。まぁ、あの・・・、ソフィアたっけか?事情を聴けばブチ切れるのもわかる。」
「同感だ。生きてる人間を・・・、それも年端もいかない子供を使うだけでも虫酸が走るのに、言うに事欠いて他国にそれを依頼するなんてのはあってはならない事だ。」
「ええ。なので今の所国会内から親中派と言うか共産圏がわと仲良くしようとする方は監視する事になりました。当然秘密裏にですけどね。」
「今の千代田がバタバタしてるのはそのせいか。まぁ、スパイは大規模組織を潰して残るは少数と聞いてるがな。」
「全部をなくせないのが歯がゆいが、誤情報は持って行ってもらわないと困るからな。実際誤情報の量や質は格段に上がってるんだろ?」
「ええ。付き合う国を選ぶ権利もありますし、何より今の時代国として情報は武器にも盾にもなります。今回の無視もかなり効いてますよ?連日様々な方にアプローチをかけているようですし。」
「それはウチにもあるな。今までなかった日中合同演習を持ちかけてきたり色々なノウハウを交換しようとしたり、流石にラボの状況を教えろと直接言ってくることはないが。」
「警察側は嫌われたな。好かれるのも嫌だが警察と言うだけでそそくさと離れていく。まぁ、旅行者レベルで検査を厳しくしたからな。」
「ソレでいいですよ。政治家や公務員は国民に好かれたいわけでもなければ嫌われたいわけでもない。あくまで国と国民の中立であれればいいんですからね。さてと、回り道しましたがいっその事写真集第二弾でもお願いしてみます?関係各国分の写真を用意するならそれも可能でしょうし。」
「強気だな松田さん。だが、そんなもん売り出したら今度は各地に置いた統合基地に人が押し寄せるんじゃないか?」
「それも狙いの1つですよ。人の交流が国を跨ぐなら今は厳しいですがゲート内なら可能でしょう?中位の少ない協力国からはその辺りの指導も欲しいと言われています。なので、そこに人が集まれば・・・。」
「国土を踏まれずに指導は出来ると。」
「ええ。外での違法は中での合法。今回の件でそれは明白になりましたが、それをしても許されるほど甘くないとは感じているでしょう。特に今回は衝突こそありませんでしたが、仮に衝突しても表では静観するしかない。と、ここまで話してですがこんなモノを政府として用意しました!」
「ハワイアンにアラブ方面、ドイツの民族衣装に北国向けと色々あるが・・・、これを着せるのか?」
「予定ではそうですね。私としてはこれを日本の物として推したいとも思ってますし。」
「ディープフェイクと言う奴か。本物には劣るがきれいなもんだな。」
「そうでしょうそうでしょう。元は違法写真集販売者の方でしたが司法取引して減刑の代わりに仕事をさせています。なので、こんな振り向きスタイルなんかもありますよ。」
「なんか違う気もするが・・・、違法写真集ってなんだ?」
「第一弾の写真集はコピー不可ですが、それを無理矢理にでもコピーして製品化しようとした方達ですね。ゾンビの様に本物を求めていたのでコンペを行い優勝者に1ページ見せるとして集めました。すごい熱意ですよ。」
「人材なんだろうが何がそこまで駆り立てるんだかなぁ〜。」
「最近クロエさんにお会いになりました?更にお美しくなられた様に感じましたよ。」
「あれから更にか、救いの天女か傾国の美女か。昔の姿はどうでもいいから単純にきれいと思えばいいんだろうな。」
「そうでしょうね。それに・・・。」
あの方は人を薬を使わずに作り直した。詳細なデータは高槻医師しか持っていないですが、目の当たりにした光景は人を超えた存在と言われても信じたくなる。
「なんか含みがあるな。」
「いえ?ただ醜いモノを見るよりもキレイなモノを見て過ごす方がいいでしょう?」




