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街中ダンジョン  作者: フィノ
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38話 退出 挿絵有り

 多分朝だと思う時間に起き、ゴスロリ服に着替え適当な岩に腰掛けて一服。ゲートの中はいつも薄暗いので、イマイチ時間が分かりづらくなる。スマホを見ると時刻は朝の7時頃。女性陣の方で寝たが、当然雑魚寝でなはく、持ち込んだテントを張って寝ている。


 水はあるし見た目と味にさえ目を瞑れば、食べ物もある。セーフスペースを寄越せと言ったので、この場は安全だ。ただ、夜中だろう時間にたまに悲鳴が聞こえたのは、1人で三つ目の馬を見たせいだろう。


 時間としては早くない時間だが、あまり起きている人はいない。ここから15階層までほぼほぼノンストップと言う事もあり、昨晩は酒を飲んだり度胸試し感覚で、セーフスペース内の物を食べたりして、旅行感覚でキャーキャー楽しんでいた。


 割と男性陣に人気があったのはやはり馬肉で、賛否両論あるものの旨味はあった。兵藤が持ち込んた調味料を掛ければ酒の肴には良かったようだ。


 馬の乗り方をマスターした後に、潰して食べたが女性陣は何とも言えない顔をしていたものの、訓練と諦めて食べていた。逆に女性陣は目玉が人気で、砂糖を振ればデザート感覚との事。そのうち料理人と出会えれば、何かしら作ってもらえるかもしれない。あれがS職なのは寧ろ移住の為とか・・・?


 馬にしろ食った植物にしろ、いつの間にか生えたり走ってきたりするので、食料問題は無いし気候と言っていいのか分からないが、外と違って洞窟内の様に気温は一定で過ごしやすさはある。還元変換が働いているので、ゴミ処理はしなくていいし、本当に楽だ。


「おはようございます、ここは朝か夜かも分からなくなりますね。」


「ん?おはよう小田さん。よく眠れた?」


「おかげさま・・・、なのかは分かりませんが眠れました。しかし、昨日の兵藤さんと赤峰さんは凄かったですね!」


「アレはまだ戯れだよ、多分本気ならヤバい。」


 訓練と言ってやり合い出した2人だが、互いに筋肉質で警官と自衛官、職は真反対と思う所もあったのだろう。軽く小競り合いから始まった訓練は熱を帯びだし、兵藤が飛べば赤峰が跳ねて迎撃し、赤峰が殴れば兵藤が水で流すと一進一退の攻防が続き、最終的には俺と望田で止めに入った。ボロボロになった2人は拳を突き合わせて分かり合っていたが、その後は今いる小田が回復するという流れ。


 他にも清水と雄二は同じ剣士と言う事もあり、他の剣士達と意見交換しながら技を出し合っていた。珍しいのは卓で、煙犬が見たいというので、犬を煙で戻すと何かにイメージが固まりだしたのか、手以外の場所にも炎を纏い宮藤も参戦して煙犬とやり合っていた。そこに更に夏目が参戦して戦っていたが、肉壁はなかなか面白い。


 武器は珍しく全身黒のボディスーツで、若干メカニカル。噛まれて穴が開こうが、有り得ない方向に腕が曲がろうがお構いなし。本人に話を聞くと自身制御と、変化を考えれば当前出来るとか。自分で言うのも何だが、割と俺の身体は不思議ボディだが、スィーパーからすると、普通になってくるのかも知れない・・・。不老不死も若返りも薬はあるし、中身が空っぽなのと巻き戻しさえアイテムでも見つかれば、割といける?目録に巻き戻しはなかったけど、そもそもあいつ等は出来るからやった訳・・・。


『バカな事考えてるね、無理だよそれ。』 


『無理?どこが?』


『自分で考えるといい。なぜ無理なのか、何が無理なのか。』


 賢者が珍しく話しかけてきたが、質問には答えずだんまり。まぁ、こいつもよくわからない職というか、性能なので問い詰めた所で仕方ないか。多分、命令すれば答えるとは思うが、変に人格の殻を被ったせいでモンスター退治以外は煙に巻かれる事が多い気がするが。


「何か考え事ですか?」


「いや、なんでもないよ。」


「そうですか。そう言えばファーストさんは、なんで自衛隊止めたんですか?」


「そうだな・・・、単純に任満だよ。上に行く気もなかったしね。ボールは敵だったし。」


 入隊した理由もかなりどうしようもない。就職氷河期で友達が行くから俺もという流れ・・・。そこに他の人と違う事がしてみたいという思いがあった。なにせ合法的に国内で銃を撃てる職業は少なく、サバゲーよろしく野山を走り回って給料が出る職業は思いつかない。


 割と楽しかったが勉強は、あまり好きではなかったので昇格試験も受けずに任満除隊。体力検定のボール投げで、規定に届かなかったのも辞めるのに拍車をかけた。まぁ、そのおかげで妻とも出会えたし、人生何があるか分からない。分からない事は継続中だが・・・。小田がどこで元自衛官の事を知ったのかは、今は問い詰めなくて良いだろう。ゲート内で人間不信とか嫌だし。


「割とある理由なんですね・・・。兵藤さん空飛んでましたけど、私も飛べると思います?」


「治癒師かぁ・・・。」


 妻と同じ治癒師。内容は増殖、再生、結合だったが空を飛びたいか・・・、ハードルは高いが・・・、やるなら増殖と結合だろうな。この2つからイメージが固まれば多分飛べると思う。しかし、それが小田にイメージ出来るかはまた別の問題で・・・。ニュートン先生に頑張って貰おうか。


「小田さん・・・、はい!」


「え!?あっ!」


 下投げで目玉わらび餅を小田に投げる。彼女は驚きながらも上手くキャッチした。流石ワック、運動神経は良いようだ。取った拍子に胸が地震を起こしているが。


「今、なんで目玉わらび餅は飛んだんですか?」


「それは投げたからでは?」


「ここからは物理になるけど、位置エネルギーが移動したと捉えれば、それを増殖させて自分に結合すればいい。ただ、操作を誤るとロケットになるから、最初はジャンプして感覚を掴んでみたらいいよ。先ずは結合からだね。」


 少なくとも空間結合出来れば浮けはする。それを無重力状態と捉え、後は斥力なり重力加速度なりで方向さえ決めれば移動も出来る。ただ、失敗するとかっ飛んでいくので、制御難易度は高いだろうな。


「むむむ・・・、そもそも空間に結合?空間?空?」


 ぴょんぴょん飛びながら胸に地震が起きている。痛くないのだろうか?もう少しイメージが発展すればとりあえず、浮けるようにはなる、そうすれば後は自分のイメージを重ねていくだけ。


「躍動的で自由な感じで・・・、渡り鳥の飛び立ち?いや、アレはバタバタしてる・・・。」


 小田はウンウンあーでもないこーでもないと唸っているが、そろそろ他のメンバーも起き出してきた。望田なんかは腰に手を当てて牛乳よろしく回復薬を一気飲みしている。さて、俺もカメラを付けてボチボチ準備するかな。


「スムーズな感じ・・・、バスケのエアウォーク?飛ぶというよりは歩いてるけど、あれなら・・・。」


 小田は何やら思いついたようだ。しかし、治癒師は説明が物理寄りだが、魔法職でいいのだろうか?班分けでは魔法側に来るし、やってる事は魔法っぽいからいいのかな?まぁ、本人が魔法だと思って事が為せるならいいのだが。要は考え方次第か・・・。


「小田ーっ、そろそろって、えっ?ファーストさんから指導されてたの?」


 小田を呼ぶ声がすると見れば、井口がこちらに走ってきている。さて、そろそろ出発か。テントはまるごと指輪に収納して、ゴミは適当にまとめて置く。環境保護団体とかが見たら怒りそうだが、ゲートの中のゴミは勝手に無くなるので気にしなくていい。


「クロエさん、行きましょうか。」


「そうですね、宮藤さん。これから先は休み無しです。準備は念入りにしましょう。」


 そうして出発して早2日。タグや人の捜索があるので歩みは遅いが、人数がいるので班分けしヘリも試験的に投入して各階層を探し回るが、広すぎるので隅々までとは行かない。スマホの電波問題があったので、千代田に連絡を入れると、最初は繋がらなかったものの日中の時間別で掛けた所、通話出来る時間があって情報交換すると、繋がらなかった時間帯はゲートから4km以上離れていたようだ。


「千代田さん。とりあえず今10階層まで来ました。タグは1枚見つかりましたが、そろそろ先を急ぎたい。最低限の捜索でいいですね?」


「分かりました、1枚見つかっただけでも僥倖です。無理のない範囲でお願いします。」


 通話を終了して周囲を見る。山岳地帯の高い所にいるので、見通しは良いし静寂の中をポツンと飛ぶヘリからは、エンジンの爆音と銃声が木霊している。連れてきたバイトは全体フォローで危ない所に駆けつけるよう指示した後は、元気に走り回ってモンスターを追っかけて走り回っている。多分、あいつは、小骨程度なら簡単に噛み砕くだろう。


「あれだけ撃つと言う事は群れかな?」


「ちょっと確認して見ましょう。」


 横にいた望田が笛から「ピコーン、ピコーン」とソナー音の様な音を出しながら目を閉じている。あれが敵で群れなら確実に察知出来るだろう。なにせ彼女はS防人なのだから。


「数は15、モンスター図鑑で擦り合わせた砲撃型ですねって、危ない!」


 言うが早いか、望田はすぐさま笛を構え「パンッ」と音を響かせ、ビームを無効化。ヘリ直下からの砲撃だったが、被害はなく地上で護衛に付いていたメンバーが、すぐさまモンスターを倒している。ヘリの護衛以外の班は更に元気で、あたりに広がり。


「ヌルい!井口合わせろ!」


「あいさー!」


 赤峰が銀の玉を殴り飛ばし、それに井口が合わせて穿つ。井口の方にかなり衝撃がありそうだが、本人はピンピンしているので大丈夫なのだろう。赤峰班は身体能力高めの人員が固まり、いつか見たパルクール動画のように足場など関係ないとモンスターを殴り倒し。


「雄二!突っ込みすぎだ!右側、来ているぞ!迎撃を!」


「わりいっ!これ面白くてな。赤峰のおっさん様々だ!右は任せて左行く!」


「ホバー移動か、私も出来るだろうか?お供する。」


 雄二と卓には宮藤から許可をもらい、試験的にリーダーを任せ補佐に清水を付けた。最初は慣れなかったものの、卓の指揮能力が意外に高く、全体を見ている為安定してモンスターを倒している。雄二は切り込み役としてモンスター達を斬り捨てるが、時折危ない場面があるので清水がフォローしている。


「夏目、その、服はないか?目のやり場がな。」


「兵藤さん、職の関係上無理です。着てもすぐ破けます。」


 コミカルな事になっているのは兵藤班。夏目は肉壁の為前に出る。当然、モンスターから攻撃を受ける。そうすれば当然服は破ける訳で・・・。途中までは着ていた。途中から予備もなくなったのか、ボディスーツのみで戦っている。


挿絵(By みてみん)


 そのスーツが問題でメカニカルだが、全身タイツよろしくボディラインはまるわかり。多分、自身制御の補助なのだろうが、場所が場所なら扇情的だろう。兵藤は居心地悪そうにしているが、仕事はこなしている。


「皆さん頑張ってますね。」


「そういう宮藤さんがMVPなんじゃないですか?」


 そして、1人岩に座り辺りに転がるクリスタルを眺める宮藤。実力だけなら、更に潜れる彼には物足りないのかも知れない。俺に留守番を頼みモンスターを殲滅していたが、流石に1人は危ないと小田をつけた。


 彼女はまだ空は飛べないものの、どうにか空は跳ねれるようになった。寝ずに食事もほぼほぼ移動しながらと、かなり強行軍だが薬のおかげか、疲れは見えない。これは無害なのだが、昔あった24時間戦えますかというキャッチコピーの栄養ドリンクのCMが思い出される。


 そうこうしながら潜って今日で7日目。食料の残りも大分心細くなってきた。自前で持ってきた食料はほぼなく、セーフスペースで取った、馬や目玉わらび餅などを食べながら歩く。残念ながら、ヘリや車両関係は燃料切れで使えない。脱出アイテムで外に出て補給すればどうとでもなるが、流石にもう今は15階層。退出ゲートがあるのに補給も何もない。


「あー疲れた、そろそろ見つかりそうか?流石に外に出てぇ・・・。」


「さてな、今回は捜索をしてたから大分時間を取られたが、それがなければ、かなり短縮は可能だろう。それに、ここから出れば、次は15階層〜20階層の5階層潜るだけだ。」


 雄二と卓はかなり頑張った。雄二は最初こそ前衛として前へ前へと出ていたが、途中から自分の班のサポートに回り、卓のフォローに入るなど、指揮者としての行動も行うようになった。卓は卓で当初は雄二の指揮をフォローしていたが、信用が置けると判断してからは任せ、空いたタスク分モンスターの殲滅を行った。


 そして、この班から切り込み役が無くなり、全員が全員個別でも集団でも、モンスターに対処できるように成長した。そんな中でも、成長目覚ましいのは清水だろう。当初は雄二に習おうと色々試していたが、彼女の剣は抜刀スタイル。脇構えとは確かに似ているが、そもそも速度が違う。


 ゲート内の宝箱で黒色手袋を手に入れ、それが武器であり且つ、斬れない事が分かると、そのまま自身の手を鞘に見立てて、彼女自身のスタイルへシフトチェンジ。そこからは速かった。西洋剣は担いで押し付けて叩き切るスタイル、東洋剣、刀は引いて斬るタイプ。これは、鎧の違いから来るものだったが、身体の構造も関係している。そんな中、漸く自身の思うイメージと一致出来たので、彼女の剣は早く靭やかになった。


「赤峰さん、赤峰さん。出たら飲みいきません?赤峰さんの奢りで。」


「井口、俺の給料は低い。奢るならぼちぼちの店だ。」


「了解です!」


 赤峰班はそもそもが、単騎タイプが多かったのでほぼ問題無なかった。その中でも、ツーマンセルを組む事が多かった2人はだいぶ打ち解けたようだ。最初こそ赤峰が井口を引っ張っていたが、途中からは井口が槍で先制してから、赤峰が確殺するスタイルが多くなった。


 そして、今は2人だけで小骨を倒すまでになった。遭遇は偶然だったがフォローに回るより早く断られ、2人でどうにかこうにか勝利。途中、槍が戻るより早くモンスターが攻撃した時は、流石に手を出そうかと思ったが、赤峰お得意の握撃で事なきを得た。ただ、この時指を挽き肉にされたのでどうしようかと思ったが、小田が増殖と再生で指を創り結合でくっつけた。本人曰く、今の限界はこのあたりらしい。目標は宮藤の腕を治す事だとか。


「毎日水浴びができたのは良かったですよ、兵藤さん」


「褒め言葉と受け取っとくよ夏目。」


 兵藤は見ただけでモンスターを潰すなり、干上がらせるなりが出来るようになった。そこからはやはり宮藤と一緒でこの階層は物足りないのかも、他のメンバーを前に出して自身はフォロー役。実際、兵藤も距離は余り関係ないので、攻撃範囲も広くなんでもそつなくこなしていく。


 夏目は諦めたボディスーツ姿でモンスターに絡みつくなり指を細く、それこそ極細ワイヤーの様に変化させてバラしていく。ネタ職なのかと思われた肉壁は思ったよりも有用で攻撃的だ。壁とは一体・・・。そもそも、壁とは攻撃する前に様子見するもの。壁に穴が空いていれば、そこからは攻撃が飛んでくる。


「クロエさんがピクニックというのが、なんとなく分かりました。確かに職の理解やイメージが重なれば楽になる。」


「宮藤さんまで遠くへ・・・、置いていかないで〜。」


 元々頭1つ抜けていた宮藤は、小骨とサシで勝利した。事の始まりは小田がエアウォークの練習に、宮藤を連れ出した事。講師側でもある宮藤は2つ返事でOKして、少し離れた位置で練習していたが、そこへ空からの襲撃。


 いつぞや兵藤と倒した小骨に似ていたが、それを危なげ無く撃破。出す鉄糸も燃やすし、身体に付いているパーツも関係なく燃やして灰にする。煌々と赤熱して灰になる様は、どこか花が散っているように見える。灰になる様を見る宮藤の顔はどこか寂しそうに見えた。


「後は退出ゲート見つければ帰れますけど、心当たりはありますか?」


「ん?探すのはお互い簡単でしょ?」


 望田は割と大変だった。防衛で距離も手段も問わない。これの意味する所は本人が、そこを守る事が出来る考えれば一切の妥協なく守れる防衛手段。まぁ、実際はかなり難しく、音か視認しないと発動出来ないし、ランダムでやると味方を巻き込む。どちらかというと、望田は俺寄りの広域殲滅型。1人でモンスターを殲滅した方が、それこそ配慮しなくて済む。本人は戦場の楽士がいいというが、奏でるなら魔笛だな。あの物語は最初こそラブロマンスだが後半はモンスター退治の話になるし。退出ゲートも見えてきた、この辺りならいいだろう。


「さて、この辺りはモンスターも見当たらないし、見張りを立てて水浴びしたい者、挙手。」


 ちょうど上から見るとT字になった岩場を見つけたので決を取る。男性陣はそこまで手は上がらないが、女性陣はそれなりに手が上がる。自衛隊メンバーはあまり上がらないが、実際、最後に風呂に入ったのは7日前。


 デオドラントスプレーや、ウエットティシュで拭いたりしている人もいるがほぼ休み無しで、かなりの運動量があれば汗もかく、なので、実際結構臭う。無理強いはしないので、入らないメンバーは見張りだな。俺と兵藤は石の上に登り背中合わせで座って、男女それぞれの方を向く。


「兵藤さんは男性メンバーの方で放水係です。間違っても高圧で洗わないように。怒って山に逃げた後に、街が占領されます。」


「そんな赤鉢巻の映画ありましたね・・・、しませんよ。クロエは女性側で?」


「私は身体も戸籍も女性ですよ?変な想像は勘弁願いたい。」


 実際の所も結構みんな格好は際どい。特に近接職の場合モンスターに近づく為自然と傷も負いやすい。そうすると、普通の布の服など簡単に破れてしまい、半裸率が上がっている。雄二なんて、無精髭生えて上半身裸だし、夏目はボディスーツ。赤峰は上もなければ、蹴りも使うので膝丈の短パンになっている。


 赤峰の場合、武器が悪かった期間が長い。そもそも秋葉原でメリケンサックは片方壊れ、橘にもお願いして探し回ったらしいが見つからず、仕方無しに素手と前に渡した警棒で戦っていた。素手でモンスターを倒せるが、それでもあるなら武器は欲しい。箱を開けていたら、清水と同じ手袋が運よく出たので、それを着けている。


「そうですか・・・、酒は飲めませんね。」


「何言ってるんですか、打ち上げ宴会からの2次会でもいいですよ?」


「何話し込んでるんですか、水ください!」


 呼ばれたので兵藤はそのまま水を出し、俺の方は紫煙から雨を降らせる。下からキャーキャーと黄色い声と野郎の野太い声がするが、あまり騒がないでほしい。いくら退出ゲートが近いとはいえ、モンスターはいるわけで。


「兵藤さん、ちょっと掃除してきます。」


「アレは・・・、前見た球体ですか。惜しいな、前は敵う気しなかったのに、今ならやれる気がする。」


「まぁ、次の階層からは、小骨がかなり出ますよ。」


 球体との距離はそれなりにあるが、モノが大きいので分かりやすい。兵藤に言葉を残しキセルを取り出し、フワリと宙に身を投げ出せば、アレの所に風が運んでくれる。まだ弱い若芽だけど、私の為に戯れて?彼がアナタを嫌うから、遊びのうちに無くなって?


「あら、(下僕)あれは駄目、玩具は私が遊ぶもの。」


 ピカピカ鉄球形が変わり、網のように広がって、銃口こちらに向けてくる。星の煌めき綺麗だけれど、渡す駄賃は今はない。


「雲の隠れて、見えないそれは、無いも一緒で消えなさい?アナタの形は何かしら?元の姿を見せなさい?」


 元の姿の鉄球さん、悲しいわ、アナタはやはり弱すぎる。操作に耐えられず、確定された、形あるなら破るだけ。藻掻きなさい?腕なき身体で。叫びなさい?声なき声で。羨みなさい?私は声を手に入れた。古すぎて、忘れてしまったモノだけど、アナタ達を縛るにはちょうどいい。


「解けなさい?元の姿へ。深く深く戻りなさい?彼がクリスタルを無くすなと煩いの。ホントは派手に壊したい。戻ったアナタは更に弱い。さようなら、さようなら。」

 

挿絵(By みてみん)


 これで多少は魔女も煩くないだろう。先程の球体は跡形もなく、大きいクリスタルが落ちている。これで小骨のクリスタルと大きさを照合すれば、多分小骨になるのに必要なクリスタル量も分かってくる。少なくとも、あの鉄球は10はモンスターを倒していた。なら、小骨になるのに必要な条件がわかるかもしれない。前はざっくりと約50体分としたが、橘が中位に至ったので詳細が分かるかもしれない。


 さて、やる事も終わったし戻るか。横に居た犬がこちらを恨めしそうに見てくるが、俺としても煩わしいんだよ・・・、そう言えば、煙で出来たコイツ乗れるのかな?


「伏せ。よし、乗るぞ間違っても振り落とすなよ?行け。」


 片足を掛けたが通り抜ける事はない。まぁ、煙は俺が出しているので制御系統では、犬に巻き付こうが上なのだろう。さて、戻るか。流石に今回だけで中位に至るものはいない。仮に、至るとすれば少なくとも35階層辺りまで潜った時ぐらい。これからの訓練場は、ここからは20階層。その辺りを今回ぐらいの余裕を持っていければ、先は見えてくる。


「さて、戻りました。帰りましょうか。」


「帰りましょう、明日はどうします?」


 先程の所に戻ると、既に皆着替え終わっていた。宮藤が明日の予定を聞いてくるが、流石に休みでいいだろう。何なら2日くらい休んで明日慰労会でもいい。


「問題がなければ2日ほど休んで、何なら明日慰労会でもしましょうか?」


「いいですね!夏目が手配しますよ!夏といえば海!ファーストさんは泳ぐのが好きと、風の噂で聞いたのでバーベキュー!」


 帰れる為か夏目のテンションが高い。まぁ、泳ぐのは好きだからいいのだが、俺が行って大丈夫だろうか?行かないのも悪いし行くが。


 ゲートを全員で出ると外は夕焼け。カメラで確認していたのか、千代田が車を手配してくれていたので、駐屯地へ戻って解散。望田も今回はかなり疲れた様なので、久々に俺がハンドルを握りホテルへ帰る。望田はこのまま泊まると言うが、ベッドに座ったら事切れたので、そっとしておく。俺はシャワーを浴びてルームサービスを適当に頼み、お酒を飲んで一服。さて、明日から休みだ。

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