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街中ダンジョン  作者: フィノ
393/849

312話 盾鉾 挿絵あり

すいません、遅刻です

「木の枝が邪魔!ちっ!視えてるのに!!」


「宮藤君は先行を!流石に木の硬さが分からない中で曲芸飛行を連続してやるのはきつい!」


「なら自分が先陣を切りましょう!」


 50m?去年ならいざしらず今なら数秒、或いはコンマ以下で走れるさ!飛行速度だってビームを避けられる!しかし、それは今まで遮蔽物等がなかったから!モンスターも飛んでただろうって?アレはアレで攻撃すれば回避もするし、逆に攻撃の為にこちらの退路を塞いだりするのである程度読める。


 しかし、高速飛行中に無数の枝に突っ込むのは自殺行為。相手は避けてもくれなければそこにあるだけなので、こちらが回避を強いられる。いや・・・、耐熱性は見たが植物なら切れる?セーフスペースでも切り倒せたし多分切れる!


 そんな俺達をおいて宮藤が直滑降で加速していく。つま先から吹き上がる炎は蒼白く先陣を切るの言葉通り辺りの木を燃やし、焦がし、炭にしながら進んでいく。良かったと取るべきか熱いと言うべきか・・・。少なくとも木はちゃんと燃えるんだな。なら、燃え尽きたイメージも作りやすい。


 着弾したであろう宮藤は辺りに熱波をばら撒き更に木や草が焼土と化している。アレならもしかしてモンスターも余波で死んだ?だが、油断しないようにあの言葉は言わない。橘も鑑定しているのか言わないし、もしかして本当に溶けて死んだ?


「・・・、本当にやったの・・・、か?」


「えっ・・・、マジですか?鑑定してもいません?」


「木や枝が邪魔なんですよ。確かに大雑把には鑑定できますけど遮蔽物を挟むとつらい。クロエは?」


「宮藤さんの特攻で煙持ってかれましたからね。木々から上がる煙を使って範囲を広げてますが・・・。あぁ、いる!宮藤さんの右後ろ!1体木の上から伺ってる!」


  挿絵(By みてみん)


 宮藤が降りた所より少し離れた位置、木の上にそれは視えた。形で言えば蜘蛛だろうか?多脚で森に溶け込む様な姿大きさだけで言えば2〜3mと言った所で、身体が小さい割に細く長い脚が6本ある。それとは別に銃身の様に見える腕があり、それから先程の弾丸は撃たれたのだろう。


「確認しました!私も行きます!」


 橘も見えた様で一気に加速しながらハサミを取り出す。不用意に近づきたくはないが、宮藤が気づいているかもわからない!ちっ!かなりメカニカルな外見のくせに橘を追って近付こうとも駆動音も無ければ、全容が見えようとも目立った損傷はない。


 硬いのかそれとも宮藤の攻撃位置から離れていたのか?山岳地帯な上層は視界が良好だった分、こうしてゲリラ戦を急にやらされるとやりづらさがある。


「なるほど、確かに中層と言うだけはありますね。クロエ!あれは50階層のものより強い!」


「そんな事は言われなくても分かってる!私達は中層に入ったんです!わざわざLv1からスタートなんてないでしょう!」


「ええ!ですが、米国の者よりは弱い!」


 言うが早い、すれ違いざまに一閃。多く有った脚の一部(・・)は切り飛ばした。しかし、モンスターはモンスターで橘の斬撃を躱す様に木の枝を軸に横に回転しながらすれ違おうとする橘の腹に爪を突き立てようとする。貫通出来るかは分からない。ただ、その爪は嫌にスィーパーが使う武器の様な黒色に見える。


「過信はいけません。当然の様に倒しましょう。私達はここに来た初めてのコンキスタドールなんですから。逃げるなよモンスター?縫い止めよう、射止めよう、標本として公開しよう。針突き立てて、亡骸を観察しよう・・・、突き出ろ!」


 カサカサと動くが視えている。確かに橘が言う様に上のモノより攻撃性は高そうだが、流石に消えて現れるでもなく高速とは言え姿を見せた後に襲ってくるならやりようはある。ただ、質量兵器という今まで無かったモノを使うなら、出来れば標本としたいが・・・。


「ナイスですクロエさん!って、なんか飛んで・・・。燃え上がれ!引くな同胞!」


 ふざけんなと更に言いたい・・・。弾丸は分かったさ、棍棒の次は投げ槍とか弓とかと投射兵器だし。しかしね、ここで更に炸薬使うってどうなの?上にはそんなのいなかったよ?むしろ、上のは宇宙怪獣チックに光学兵器で攻めてきたよ?


 宮藤は飛んできたモノを見た瞬間に危ないと思ったのだろう。いい判断だな。だが、今度は手榴弾よろしく爆発している・・・。破片はもう落ちるだろうが突き抜ける衝撃波は厄介だな。盾師の衝撃も応用の幅があって面倒だというのに!


「宮藤君!無事ですか!」


「この程度なら大丈夫ですよ。動揺してイメージを崩さない様、出来ないイメージを拭い去る訓練は嫌と言うほどしましたからね。まだ弾があるかは分かりませんが、仕留めてしまっても?」


「いえ・・・駄目です宮藤さん。橘さんクリスタルだけ抜いてください。そのかわり標本予定のモンスター以外なら好きにしていいですよ。かなり音を立てたのでそこそこ集まってきているような気配がします。」


「分かりました。流石にカッコ悪いままじゃ終われません。新手と殺り合って来たいのでコチラはお任せします。では!」


 宮藤は行ってしまい残されたのは俺と橘。視界は悪いが呼べば火の手を上げてくれるだろう。宮藤には悪い事をしてしまったが、このモンスターだけは確実に確保しておきたい。モンスターが全て同一とは限らないし質量兵器を・・・、実弾を装備しているわけではないと思う。しかし、その可能性があるなら戦闘して破壊する時に今までの様に粉砕してしまえば誘爆の危険性もあるし、何より残弾がどの程度あるかも知っておきたい。


 1つのモンスターを研究する。今までは殆どなかったが、破壊後のリスクを考えるなら、早期にこれは行い情報共有した方がいいだろう。それに撃ち出された弾丸も問題で仮に予想が当たっているなら中々ヤバい状況かも。


「橘さん場所は分かりますね?バイト、宮藤さんの援護へ。」


「ええ。しかし上手い具合に関節であろう場所を縫い止めますね。」


「昆虫標本は図鑑で見ました。懐かしの赤と青の防腐剤注射はした事ありませんが、それでも概ね何処にピンを打つかは知っています。ただ、手早くやりましょう。橘さんを穿とうとした爪、あれもビームが収束している様に見えましたし。」


「つまり、ビームも実弾も運動性能も高いゲリラモンスターであると。ここですね、破壊して抜き取ります。」


 橘が装甲をこじ開けてクリスタルを抜き、モンスターを活動停止させる。残骸を検分したいが指輪に収納しないと消えてしまうのでさっさと収納する。せめて弾丸だけでも確保出来ていればよかったのに。いや、ここにそれが分かるかもしれないやつがいるじゃないか。


「橘さん。弾丸見えました?アレってもしかすると・・・。」


「クロエもそう思います?各言う私もチラリとしか見えませんでしたが、同じ結果だと思います。あれは私達が武器として使っているものと同様の物質だと思ってください。」


「やっぱり・・・。何度か見覚えのある色だと思ってたんですよ・・・。て、事はやはりあり得るんですか?」


「ええ、下位なら武器破壊の可能性があります。今までは余程の事がない限り武器は壊れませんでした。そして、灰色に成った物は強度が増し使用者に寄り添うように本人同様最適化されます。」


 橘の話で謎が1つ解決した。下位は中層に入れないのか?解答は単純明快で打ち合う事すら許されない可能性があると言う事か・・・。確かに上手く受けたり捌いたりすればいきなり破壊される事はないだろう。しかし、同一物質ので射撃されれば刃こぼれもあるだろうし、貫通する事もある。


 何気に武器はスィーパーにとって信頼と安心の証で、モンスターと打ち合っても簡単には壊れず、盾なら受け流したりビームを防いだりも出来る。しかし、それがさっきの様な弾丸を打たれれば1発目でヒビが入り2発目で砕け散る可能性がある・・・。


 確かにソーツに言われたな。武器が壊れたら探せと。今までは使い続けても壊れる事なんてなかったが、戦闘で砕ける可能性が出てきたのは嫌な事だ。


「橘さん。下位は別として中位の武器は簡単には壊れませんよね?」


「それはある程度保証しましょう。」


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― 新着の感想 ―
[一言] いずれ下位侵入禁止になりそう
[一言] とはいえソフトターゲットに炸薬は基本だしねぇ 敵もパワーアップして爆殺による群れ退治される可能性アップだ 対人には榴弾ってのは冷戦期に東側で証明されたしね
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