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街中ダンジョン  作者: フィノ
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33話 初日

 服を買い込み店を出て、望田と軽く夕食を取ってホテルに帰る。やたら視線を集めた様な気もするが、話しかけて来ないので、バレてないない。40過ぎてへそ出しは大丈夫かとも思ったが、ノンスリーブハイネック以上に涼しいので、割と着るかもしれない。


 ブラにしても割と蒸れるが、ヌーブラの快適さと言ったらね。少女の身体様々である。ただ、やたらと望田が周囲を警戒と言うか、威嚇していた様な気もするが、女性で露出が多ければ不躾な視線も仕方ないだろう。直接触って来るなら殴るかもしれないが、見るだけで怒り出すのは流石に理不尽だ。


「さて、後は明日からの講習に備えるだけか。」


「その服気にいりました?」


「夏場は涼しくていい。下着だと怒られるし、これならあぐらでも大丈夫。前は制服で上下長袖長ズボンで、暑かったからすごい楽。年齢も気にしなくていいし。」


「・・・、くれぐれも、盗撮とかに気をつけて下さいね?」


 気をつけてくれと言うが、この身体は綺麗だが貧相だ。胸も無ければ尻も小さい。その手の趣味の人には受けるかもしれないが、知らん所で勝手にするなら、あんまり気にはならない。そもそも、嫌悪感というのは、本人が自覚するから生まれるのであって、感知外のモノは無いモノと一緒。


 誰も彼も心の内に、何を秘めているのか分からないのだから、言いがかりは良くないし、有名になった以上、気付かれれば写真や握手もお願いされる。プールでは勝手に写真も取られたし、今更感は否めない。


「あんまり出歩かないから、大丈夫かな。個人的には水着より、ガード硬いと思うよ?」


「服は硬くても、本人がユルユルなのはどうなんですかね?」


 そう言いながら、望田が腹を摘もうとしてくる。残念だがそこに脂肪は無いのだよ。柔らかいけど、自分でも摘めなかったし。脇腹を撫でても、骨の感触さえしない。さわり心地的には赤ちゃんの肌とかみたいにプニプニスベスベのもち肌。


「なんで汗一つかいてないんですか・・・。私はスーツで暑いのに。えっ?美少女って汗かかないし、トイレ行かないし、こんなに柔らかいんですか?」


「美少女はともかく、暑いのは暑いよ?じゃなきゃこんな格好しないし。」


「そうですか・・・。まぁ、明日もあるので、早めに休んで下さいね?今日もゲートから出て殆ど休んでないみたいですから。」


 望田も帰りホテルに一人、シャワーを浴びて妻に電話して一服。講習の前準備として資料を再度確認して就寝。一応、教える側なので、最低限の知識は必要だろう。賢者のおかげか、割とずるずる頭に入ってくる。しかし、思うのだ。記憶は魂か精神に付けてくれと言ったから、そのせいもあるのではないかと。中身のない不思議なボディーは、溜め込む事には最適なのかもしれない。


 スマホの目覚ましで起き、朝のシャワーを浴び、その他諸々の準備を済ませる。格好は昨日買った白のブラウスに黒のタイトスカート。黒のタイツを履いて、靴は低いヒールを履けば女教師に見えなくもない。伊達メガネも掛けた方が、なりきれるかとも思ったが邪魔なのでやめた。


「おはようございます。その格好なんですね、似合ってますよ。」


「おはよう、カオリはトレーニングウェアか。着替えを考えると、私もそっちが良かったかな?」


 朝食を食べていると、望田が迎えに来た。肌にピッタリとしたアンダーアーマーの上下の上に、白Tと黒のハーフパンツを履いている。近接職は軒並み全体的な身体能力強化が入るが、それ以外の職は職に付随したモノしか上がらない。魔法職なんてほぼ、身体能力は元のままだし橘もそう。望田は多分、耳が良くなってる以外は元のまま。


「取り敢えず、カオリは運動得意?」


「そこそこですね。SPとして必要な分はありますが、最近はジムにも行ってないので鈍ってます。」


 こちらも準備が終わっているので、行くとするか。必要な物は指輪の中にあるし、更衣室も向こうにあるので気にしなくていい。後は、いる面子が癖のない人達だと嬉しいな・・・。


 車に乗って移動し、昨日の部屋で宮藤達と会う。宮藤はスーツだが残りの2人はジャージ姿。望田はSPなので近くにいると言ったが、最初の顔合わせなので教室で他のメンバーに混ざるように言った。


「今日からお願いします。」


「こちらこそ、よろしくお願いします。こちらの二人は助手兼務なので基本は自分と一緒ですが何かあれば言ってくださいね。」


「今日からお願いします。なんか大学の方から単位は足りてるから卒業していいって、言われたんですけど知りません?」


「お前もか。僕も卒業資格は、既にあると言われました。クロエさん何か手を回しました?」


「流石にそれは知らないな・・・。まぁ、今回の事が終わっても、通いたいなら多分通えると思う。そのまま宮藤さんと来るなら歓迎するよ。」


 多分千代田か大学の意向かどちらかだろう。今回の講習を受けるという事は大なり小なり、国と何らかの繋がりを持つ事になる。なんなら、2人が本部長職に付けば、大学側としても太いパイプとなると。まぁ、正式に認められればどうでもいいが、スキャンダルとかやめてほしいし、本人が勉強したいならすればいい。


「さて、行きましょうか。そろそろ時間です。」


 宮藤を先頭に教室に入る。こちらを見るのは31人62の瞳、やはり人前は馴れない。宮藤達に視線が行けばいいのに、やたらと俺を見てくる。仕方ないとは分かるが居心地は悪い。気分としては高校で初めての自己紹介とか?


「えー、初めまして。座学を担当する宮藤です。立場としてはクロエさんの部下、特別特定害獣対策本部職員です。こちらの2人は・・・。」


「木崎 雄二です。よろしくお願いします。」


「神崎 卓です。共に宮藤さんの助手兼講習参加者です。よろしくお願いします。」


 3人がそれぞれに挨拶をする。俺の番だが今更挨拶がいるのだろうか?まぁ、最初が大事。何やら思惑もありそうだし、変な事にならないように、牽制程度はしておくか。


「クロエ=ファースト、今回の助言役です。親しみを込めて、他人行儀にファーストさんと呼んでください。今、そう呼んでない方達はそのままで結構です。」


 数人はぽかんとしているが、いきなり名前を呼ばれるのもなんか違う気がするし。この名前なら、ファーストが名字になる。望田は多分TPOは大丈夫なはず。その後参加者が自己紹介をして、軽くオリエンテーションを行う。参加者にネームプレートがあって良かった。


「今日の午前中はこのまま、法律関係の説明になります。午後からは身体を動かすので、動ける服装になっておいて下さい。更衣室は出て左手にそれぞれあります。


 シャワーについてはない事も無いのですが、女性は浴場の方を利用して下さい。私達以外の自衛官もいますし、お互い不幸な事故を無くすためです。」


 軽く施設の説明をした後、宮藤が法律関係の説明を行う。スィーパーとして、今認められているのはゲート内での治外法権と出土品の拾得権。特にこの拾得権が難しく。金品や資源は特に申告しなくてもいいが、武器や薬品、書類関係は絶対申告。これを怠ると法的に罰せられる。


 うぅむ、俺の指輪の中にはかなりの量の開けてない箱があるので、後で申告しておこう。縮退炉の設計図なんてヤバい物もあったし。本部の立ち上げまでは野放し状態で管理出来ないのが怖いが、これは後からお願いするしかない。警察も頑張ってはいるのだが、指輪の中に収納してしまうと秘匿状態で、個人の良心に任せるしかないのが歯がゆい。


 申告すれば物にもよるが、武器や薬品は買取と個人所有が認められる。これは、ゲート内で活動する際に必要な物という位置付けがされている為で、当前武器は外で指輪から出せば罰せられる。逆に薬は人命救助の場面もあるので、使用は許可される。その他も細分化されているので、割と法律家は頑張ったし、橘も今分かっている出土品を鑑定して、対応図鑑を作るのに貢献している。


 資源等目録は、あくまで目録なので品名はあるが写真なんて物はなくて文書だけ。対応図鑑を作るのは簡単では無いが、名前は分かるので鑑定して写真を撮って作ってもらおう。ヤバい品については、拾得者本人と協議し買い取りか、接収と言う事になっている。用途不明品は本部預かりの鑑定後の協議。


 他にも小難しい事は書いてあるが、概ねこんな内容だ。鑑定師が少ないせいで、そろそろ橘の頭皮が心配だが、1人では無いらしいので頑張ってもらおう。鑑定師が暴走したら、鑑定品が使えるのでかなりの被害も出そうだが・・・。


 一コマ約1時間、休憩10分で午前中を座学に費やしながら、参加者を見る。みんな真面目に受講しているが、時折ワックがこちらに視線を送ってくる。多分、兵藤を探していた内の1人だとは思うが、早く助言が欲しいのだろうか?他にも視線を送ってくる人はいるが、真面目に講義を受けてるので大丈夫だろう。


 雄二と卓も真面目に受けているが、雄二の方は時折頭を抱えている。良かったな宮藤の助手で。俺も彼をスカウトして、頭の痛い法律関係を任せられるのでかなり助かってる。覚える事は出来るが、それでも1人では判断に困る場面もあるので、相談できる相手が居るというのは心強い。


「質問ですが、金品や資源の買い取りも本部で行う予定ですか?税金等の申告問題がありますが。」


「立ち上げ後は、それも視野に入ってます。既に民間では金貨や銀貨での支払いを受け付ける企業もあるので、ゆくゆくは正式な国際共通通貨として落ち着くと思います。どの国のゲートからも金貨は出てますからね。


 税金については正直な所、国としても割れています。そもそも、金銀貨はどの国にも属さない場所からの産出なので、国としての税収にはしづらい。かと言って価値はあるので使用は出来る。今の所、税金は発生していませんよ。」


 豪勢な悩みではあるが、本部が金銀貨の買い取りをすると莫大な量が集まりそうだが、多分すぐに価値が無くなる。0ではないにしろ希少性と言う物が無くなるのだ。あくまで金はその希少性に価値があり、レートがある。それが無くなったら、ただの綺麗な石ころである。何かしら用途が生まれれば価値の保証はあるかも知れないが、それは既に貨幣ではなく、資源としての価値である。


「他に質問はありますか?」


「はい、今の所不明品は警察に届け出ると、言う認識でいいのですか?強制力はどれくらいありますか?」


「その認識でいいですが、まだ一般的ではないですね。これから政府と警察が連携して、法のPRを行います。本部の建物は急ピッチで建設中で、ゲートも移設して本部庁舎内に設置予定なので、そこから届け出するような感じになりますが、現在はゲートに駐在している警官が、声掛けする程度に留まっています。


 ちなみに、武器は形がすぐに武器と、分かるものが少ないので、刑罰は厳し目に設定されています。被害を出してない者については厳重注意。被害を出したものは、ゲート内で特定の大きさのクリスタル採取刑を考えています。これはまだ、試案段階の法なので記憶に留める程度でいいです。」


 海外で言う所の社会奉仕刑。怖いのは賭けるモノが自身の命という所。まぁ、軽いヤンチャ程度ならいいが、殺人まで行ったなら実力にもよるが、小骨10体は覚悟してもらおう。そんな人間の相手も本部長職に就くならやってもらわないと困る。だからこそ腕っぷしを要求したんだし。


「他に特になければ、午前は終わりです。質問がある場合は個人的にどうぞ。」


 宮藤の言葉と共に、昼食を知らせるラッパが鳴った。午前は終了か。殆ど事前に知っている人間を眺めながら話を聞いていたので、割と早く済んだ。休憩中は資料に目を通すのに忙しかったしね。昼食は自衛隊の方で用意してくれるので、ありがたくいただこう。


「クロエ、昼食にいきましょう。やっぱり自衛隊のご飯って量が多いんですかね?」


「そんな事はないよ望田さん、食事は幹部でもない限り自分でよそう。好きな量を取るといい。」


 望田と兵藤の他に夏目がやって来た。夏目は休憩の時、他のワックと話していたので、てっきりそちらと食事を取ると思っていた。短髪で活発そうな感じなので、兵藤とは気が合うのかもしれない。


「ファーストさん私もご一緒していいですか?色々と話を聞きたいです。」


「どうぞ、食事くらい気楽に取りましょう。私は自衛官ではないので、階級なんかは気にしなくていいですよ。兵藤さん、食堂まで案内をお願いします。」


 兵藤を先頭に食堂まで歩く。サングラスもしてないので、やはりというかかなり注目される。中には兵藤達ではなく、俺に敬礼してくるやつまでいる。辞めた時は下っ端で、する側だっただけに感慨深い。


「綺麗に敬礼を返しますね。自衛隊好きなんですか?」


「うん?その辺りは知らないんですか?」


「何の事ですか?」


 ふむ、橘が自衛隊には問い合わせたので、その辺りは周知の事実だと思っていた。知らないふりか否かは知らないが、後々面倒になるよりはいいか。夏目が話しかけてくるが、彼女の所属は衛生隊。知らなくても無理はない。


「G-1733448、認番です。他言無用ですよ、今は戸籍も女性ですし。」


「同じ穴の貉ですか。フフ、昔の貴女にも会ってみたかった。さぞ優秀だったんでしょう?」


「普通の士長ですよ。仕事ぼちぼち、遊びぼちぼち。こんな事が無かったら、家族とひっそり過ごす有象無象です。モブですね、モブ。」


 夏目にだけ聞こえるくらい小さな声で話す。今回のメンバーでどれくらいの人が、俺の過去を知っているのだろう?少なくとも宮藤と望田、警察組はある程度知っている。逆に自衛隊組は、認番の問い合わせくらいしか多分接点がないので、そこから辿ったかどうかだろう。単純に警察に資料をもらったという可能性もあるが。


「着きました、なら・・・、ばなくて良くなりましたね。」


「何だか割り込みみたいで嫌ですね。後ろに付きませんか?」


「クロエ、ここで遠慮しても仕方ないですよ。入りましょう。」


 食堂前に並んでいた兵士達が、俺達を見つけるとあれよあれよと道を譲り気が付けば入口前。他の人も仕事があるから普通に並んで待つのだが・・・。望田に促されて食堂に入り、適当にご飯を盆に取って行きながら席につく。部隊毎に大体座る所が決まっているが、俺達はゲート教育隊と銘打った席に座るようだ。他のメンバーも座って食事を取っているので間違いないだろう。


「クロエ・・・、それは少なすぎでは?何時もならそれの5倍は食べるでしょ?」


「望田さん、ファーストさんがそんなに食べる・・・、訳あるんですか?今も結構な量ですけど。確かSPの方でしたよね?」


「そうですよ、夏目さん。クロエは大食いです。焼肉屋とか行ったら山程食べるし、ルームサービスも山程頼んで食べます。体調悪いですか?」


「ん?食べても食べなくても変わらないし、昼から身体も動かすからね。食べようと思えばいくらでも入るけど。」


 望田と夏目が話し、男1人の兵藤が居心地悪そうに黙って食事を取る。分かるよその気持ち、話している女性に男が1人交じるのはコミュ力が試される。1対1なら割と話せるんだけどね。ここは話を振って少しでも馴染んでもらおう。夏目の手前兵藤をヨイショしてもいいし。


「兵藤さん、昼からのカリキュラムは聞いていますか?」

 

「今日は軽くランニングしてから、それぞれの職を確認する感じですね。35階層が目標なんでしょ?」


「ええ兵藤さんなら、すぐに空も飛べたし行けます。私も頼りにしてますよ?」


 望田と話していた夏目が、俺と兵藤の会話を聞いて兵藤を見ている。多少は意識してもらえたかな?助言役からも頼りにされるなら、彼女からの評価も高くなるだろう。実際、兵藤も秋葉原を戦い抜いたので実力はあるし。


「へー、兵藤さんはファーストさんと仲いいんですね?」


「まぁ、一度ゲートにご一緒したからな・・・。」


 所属も違うし階級を気にしないこの講習会なら、これなりに生まれるものもあるかもしれない。ラブとかコメとか。いきなり結婚引退は困るが、そうなれば仕方ないとも思う。好きな気持ちはまぁ、止められないし。


「さて、食事も済みましたし、午後の準備をしましょう。」


 食堂を出て教室に戻り、午後の準備を・・・、打ち合わせで使った会議室を借りるか。プールの更衣室にも入ったが、これから毎日顔を合わせる人間相手では気が引ける。それに、夏目には既に認番の話もしたし・・・。一期一会ならそこまで気にしないが、知り合いとなるとな・・・。


「クロエ、何してるんです?着替えますよ?」


「いや・・・、気が引けるので会議室で着替えようかと。」


「あ~、まぁ、うん。私も行くので更衣室で着替えましょう。どの道、ゲートに潜れば女性として活動する事になるんですから。」


「まぁ、仕方ないか。諦めよう。プールを出た時の事もあるし。」


 後で訴えられたら、誠意を込めて賠償しよう。流石に肌を見られたから結婚なんて、漫画みたいな展開はないだろうし。そもそも、俺が見なければいいだけの話。うん、イケルイケル。


 更衣室に入って着替える。パーテーションが無いのは気になるが、それよりも見られてる。めっちゃ見られてる!そりゃあ、望田に下着も裸も見られたが、それはあくまで生活スペース内で且つ1人。


 男からの視線はどちらかというと、チラチラしたものが多いが、女性は同性と認識しているせいで、ガッツリと見てくる。指輪からスパッツと短パン、上はヨガで使うランニングにTシャツを取り出して、上を脱いだだけで誰かが息を呑む。


「えーと、何か?」


「いや、白くて細いなぁ〜と。秋葉原の英雄が、こんなに細くて小さいなんて思ってなくて。」


「・・・、容姿は置いておくとして、英雄ではないです。私は私の出来る事しかしていません。英雄と呼ぶなら私ではなく、逝った彼等に言ってあげてください。」


 着替え終わって外に出る。巻き戻る身体に、自身で選んだ職。それを持ってすれば、やっている事は当面出来る事しかしていない。英雄とは突然事態を知らされて、扱いも慣れない下位職に就き、訳も分からぬままにただ自分の使命の為に戦った彼らの非凡さにこそ相応しい。


(夏目、彼女の機嫌損ねたと思う?)


(いや、大丈夫だと思うよ。彼女は追悼式に出ず、逝った彼等の事を立てたというし、引きずっているのかもしれない。)


 気分を変える為にキセルで一服。普通なら運動前にしないが、体的には問題ないので気にしない。プカプカと煙で輪っかを作っていると、着替え終わった人達がきた。身体を鍛えている赤峰や兵藤は、その筋肉が服の上からでも分かるほど隆起している。宮藤も着替えているが、軽く流す程度だろう。


 女性メンバーもそれぞれ、ジャージやTシャツと動きやすそうな格好だ。身体を動かすだけなら自衛隊側に軍配が上がるが、それを置いても近接職なら楽に勝てるだろう。さて、集合も終わった様だし行くとしよう。


「今からは軽く1時間走って貰い、その後近接と魔法で別れてもらいます。どちらに付くか分からない人は後で聞いてください。」


「近接職は好きに走っていいんで?」


「あ~、クロエさんどうします?」


 宮藤が聞いてきたが、普通に走っても面白くない。まぁ、体力は付くだろうが、そもそもの講習会の目的は職について知る事が前提となる。なら、それに沿ってやってもらおう。


「近接職は自分の限界を理解して下さい。1時間走って疲れないなら、被害の出ない程度に速度を上げてください。終わったら他の人と意見交換です。魔法職の方は自身を強化してください。先に言いますが、魔法職=後衛なんて考えは捨てて下さい。これは前衛も同じです。戦うなら妥協せずに叩き潰すつもりで鍛えて下さい。」


 魔法職側が僅かにどよめいた。うん、イメージだよな・・・、魔法=後衛。近づいたら魔法を剣とか拳にまとわせて殴る。でも、それなら物理職じゃない?と。うん、甘いというか窮屈だそんなもの。近づいたなら、そのまま魔法を使えばいい。そもそもイメージで事を成すなら、究極的な話見るだけでいいのだ。


「ファーストさん、その、強化とは?」


「自身のイメージで考えて下さい。速いもの、強いもの、職に親和性の有りそうなもの。ここに来ているメンバーで魔法職は全員魔法が使えます。


 なら、出来ますよ。出来ると、私が保証しましょう。・・・、そうですね、軽く走るので魔法職の方は、全力で考えながら付いてきてください。個別訓練は身体が保てばやりましょう。なに、楽しく話しながら行きましょう。」


 さて、最初はキロ5〜6分くらいの緩いペース。酸欠で頭に酸素が回らなくなる事も無いし、何なら横の人と話して仲良くなってもいい。ユルユルと走って約3キロ、時間にして15分程度のジョギングで身体も温まっただろう。


「ペースは大丈夫ですか?」


「「はーい!」」 


 大丈夫なら、速度をあげよう。


「強化のイメージは何でも・・・、そうですね。馬にしましょう。競走馬ではなく赤兎馬、千里を走る馬です。」


 速度を上げてキロ4〜5分ペース。さて、どこまで上げるかな。


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