299話 流れは本流に 挿絵あり
神田さんごめん!そしてフェリエット後で話がある。
「チャーハン上がったよー!次はふざけんな!舟盛りって個人オーダーしたやつ出てこい!時間的に食券メニュー販売オンリーだ!ここは戦場、当方に迎撃の用意あり。指輪よ、食材の貯蔵は十分か!」
「コック!コーック!被弾した!キャベツの千切りて指切っちまったよ・・・。」
「いや、お前治癒師だから。さっさと治せ。」
「火の呼吸壱の型、カラッ!シュワッ!フワァ〜♪の唐揚げ出来たぞ〜。・・・、今更塩だと?お前を唐揚げにすんぞ?」
「人間は大変だなぁ〜。」
「半分はお前のせいだ。飯が食べたいならちゃんと食べさせるから変な事はするな。」
「分かったなぁ〜。おこぼれは?」
「ない。全て食べた。」
「私の計画なぁ〜・・・。」
本気で落ち込んでいるのかテーブルに突っ伏している。成程、計画と言うモノを立てて実行する頭はあると。高度な物か否かは別として食事に関しては本気の様だ。ただ、立案して実行したからにはその責任もある。
「ほら、ウェイトレスとして手伝ってこい。そしたら夕飯を指定させてやる。」
「おぉ~、太っ腹だなぁ〜。生っぽい肉が良い!行ってくるなぁ〜。」
そう言い残してフェリエットは配膳に向かった。やらせる前は何か問題を起こすんじゃないかと心配していたが、料理を運ぶ姿を見た感じそんなに心配はないようだ。テーブルに数字が割り振っているのがいいのかな?番号を言われるたけではなく、言われた番号と文字として数字を見せる事で間違わない様にしてくれている。
そして、フェリエットのせいで『あちらのお客様からです』と言う風に俺の所にも料理がまだ運ばれてくる。断ったのに送りつけてくるとは・・・。捨てるのも悪いので食べるが、後の様子見は他の奴に任せて出るか。
「フェリエット、もう出るからぼちぼち真面目にな。」
「そろそろ日向ぼっこしたいなぁ〜。」
「駄目とは言わないが相談して許可が出たらな。」
食堂を出て外に行き一服。何人前食べたか考えるのは億劫だが推定4kg程度は飯食ったかな?大食いの範疇に収まる量なので大丈夫だろう。フードファイターとかそれ以上を余裕で食べられるし。
「流石と言うか、アレだけ食べても余裕そうですなぁ。」
「ん?まぁ、単純によく食べるだけですよ。雪城先生も不思議に見えますか?」
「腹が出らんと言うのは中々珍しい。胃下垂でも食べれば腹は出る。」
「色々理由はありますよ?例えば私は魔法を使う時に煙を使うので身体の中で煙の様に消えてるとかね。詳しくは高槻先生に聴いてください。主治医なので太らない体質の事を教えてくれますよ。」
「ふむ、その辺りは考えましょう。ファーストさんも獣人は労働力として受け入れる方針ですか?フェリエットを働かせていますが。」
「いえ?隣人です。仕事をさせてるのは自立の為であり、本人達の為でもある。お節介ですけど、未開の部族なんて今探しても多分片手くらいしかいないんじゃないですか?それだけ近代化された中で彼等が生きるのなら、どこかで共存関係を築かないといけない。対等な関係の労働って、見方を変えると共通目標の達成なんですよ。」
獣人がジャングルの奥から現れたなら、もっと別の接し方も多分あった。見て見ぬふり見できたし、関係ないとノータッチでも良かった。でも、彼等の始まりは人の手でゲートだ。なら、それを無視していいわけではない。少なくとも最初の一人として受け入れたのだから。
「交渉の配信を見ましたが先の事は考えていますか?年齢が真実なら薬を使えばいいが、それでも後任を指定する程度はしておいたほうがいい。」
配信と言えば藤とのやり取り辺りか。雪城が配信を見て心配するならその辺りは予想出来ていないか、薬を使っていないから生身だと思われているのだろう。まぁ、秘密をおいそれとバラす気もないし、結局藤達にもなぁなぁで伝える前に別れてしまった。ただ、それも数年から数十年すれば何か薬を使ったで決着はつくだろう。
薬の効果に多分巻き戻りはない。不老も不死も別に身体に起因する必要はないし、最終的に体をなくしても精神が若かったり壊れない約束がされるならそれはちゃんと効果はあるのだろう。まぁ、夏目から話を聞くと身体があるウチは身体にも作用しているようだが・・・。
「お気遣いどうも。ただ、私の仕事である以上簡単には手放しませんし、手放すにしてもソーツが納得しなければ無理でしょう。勝手に交渉権譲り受けましたと誰かが言い出したとしても『我々は関知しない』で終わりですよ。」
「ファーストさんが言うならそうなのでしょう。ただ、その権利を平等な全体資産として使う事を願います。」
「まぁ、少なくとも個人で要求する事はないですね。彼奴等の作るものは癖があって予想できないですから・・・。ホントなんで獣人このタイミングで獣人に成れるもの作ったかなぁ・・・。」
「ゲートに入る生命体として人と同等に入り、それなりに数がいる。ガーディアンの件でそれが爆発的に増えたなら有効活用するのは効率的でしょう。私は獣人になる薬を作るきっかけは人にあると思っています。そして、個体成長薬と言うからには他にもなにか使い道があるのではないかとも。」
「その辺りは分析次第ですね。少なくともギルドとしては預かり品を研究に回す訳にはいかないので、法律がある程度施行されて落ち着いた後か、さもなくば政府側から何かしらのアクションがあってからです。さて、休憩ばかりしていても怒られるので行きます。では!」
「ええ、では。」
雪城と別れて執務室へ。メールと書類は今日も多い。さっさと片付けてアフター5を目指すか。そんなこんなで数日が過ぎ明日は休みで息子の友達が来る。其の場に親はいらないので何もなければ久々に妻と2人でドライブしてもいいなぁと、思っていたらBBQしたいと言われたのでそちらの準備を手伝う事に。
獣人の件は何度も松田達と話し合い、かなり急ぎで法律の制定から施行まで進んでいる。これは話が大きくなり過ぎたと言うのもあるな。初観測されたのはイギリス。そして日本から中国へ。実しやかに流れた噂は事実を求める声と共に大きなうねりとなり、どの国も事実関係をどう発表するかで奔走する羽目となった。
情報の流出と言うか、ギルドにフェリエットがいるのはいいし写真がネットに上がるのも時間の問題と諦めていたが、それよりも先に中国方面から個体成長薬の使用ガイドラインというものが出た。ずさんと言えばずさんな物だが薬をペットに飲ませれば獣人になると言うモノ。それで一気に増えたよ・・・。それこそ一家に1人と言わんばかりに。
元々人口ピラミッドが歪だったので、若い働き手は欲しかったのだろう。人よりも体力があり、スィーパーよりは弱い。言ってしまえば外部労働を獣人に任せて、人は特定年齢まで勉強してからスィーパーに成ると言う作業区分でも問題ない。ただ、元がペットと言うか獣と言う事で下に見る人もいれば、逆に溺愛していたペットなので家族以上に扱う人もいるとか。扱いも不確定で広まった話なのでゴタゴタはあった。
まぁ、それは表向きの忙しさで真実を話すなら、先に獣人に対する情報提供を各国に呼びかけていたおかげでそこまでの準備不足はない。ただ、揉めたと言えば最終的な取り扱いかな?奴隷労働力、詰まりは低い賃金で雇用できる新たなる生物として扱いたい国は一定層おり、獣人の権利と言う面で国際会議が開かれた。議論は白熱し越権行為だと言う言葉も飛び出したが、上手く立ち回ったのは日本と米国。スタンピードに協力したおり、日本側に付くと言う話は事実でそれの証明として米国も隣人路線を取った。
それぞれでいざこざはあったものの、最終的には人権と薬を使用したスィーパーに対する保護者義務が正式に認められる事となったが、当の獣人はその会議の場におらず、フェリエットに話をしてみたが勝手にすればいいと言われた。
まぁ、他国の獣人を観察した論文等からも読み取れるのだが、犬にしろ猫にしろ出逢えば同族としての意識はあるものの、画面の向こうは他人という判断なのか同族と言えどあまり関心はないらしい。ついでに言うと性に奔放と言う面は最大限獣人の意思を尊重するとなった・・・。
いらん勘ぐりをするなら見目麗しい獣人と・・・。そんな考えの人がいないとも言えないし、いきなりそんな目で見れる人はある意味すごいと思うが、日本で集めたデータを各国に提供して『身体の作りは概ね人と同じ。』と言う事でハードルが下がったのかも。
ただ、某宗教の人は教義的に獣人とどうこうと言う事は禁忌に近いので考えないが、そもそも宗教そのものが人よりも高等な宇宙人出現により、現実的にいる宇宙人といるか分からない神を天秤にかけた時に教義の根本が揺らぐと説法出来なくなってきている。まぁ、信じる者は救われる。何を信じるかは別として現実は少なくとも信じられると思うよ?うん。だって獣人いるし。
ーside リーー
祖国への情報伝達経路は複数ある。テイが待つルートにゲート内を使うルート。大分ゲートには神志那がいるので使いづらいが、深夜帯を狙い鑑定を避けるなら有用だ。特に今回は日本から犬猫を運ぶ為に使用したと聞いたが、やはり私の知らない内部協力者がいるのだろう。
ただ、言論統制しようともネットは広大で情報が1つ出れば差し止めは厳しい。獣人の件はテイ曰くもう少し情報と習性が知れてからと言う話だったが、人の口には戸が立てられず大々的に広がってしまった。
そしてその流れで常任理事国として、我が国は労働力としての雇用を全面に押し出したが、内容は思っていた方向とは違い人と同等の扱いで且つ、人間側が負う責任の方が大きいモノとなった。日本ではまだ法律が大々的に発表されていないが、それも近々あるような動きもある。
日本と米国、この2カ国の蜜月は長い。大筋で労働力・・・、半奴隷状態での雇用を考えにいた祖国に対して『日本は理性ある人間として獣人を隣人として扱い、思考する動物として仲間とする。仮に獣人が不当な扱いを受けたなら、日本国として最大限の受け入れ体制を示す。』そう言われてしまっては中々不当には扱えない。そして、それに米国も追従した。
スタンピードと言う天災があるとして、それを体験した2カ国の絆は深く。仮に自国で発生した場合、その2カ国に協力要請を行ったとして、出来る限り不要な軋轢を生みたくないと言う国は少なくない。
残念な事にまだ力がどの国も足りない。中位が2人ではスタンピードが抑え込めないし、下位を揃えて雑魚は減らせてもその先は相当に厳しい。データだけを見るなら、ゲートと言うものは人類の戦力が上がればその分だけモンスターを出してくる。つまり、現時点では勝てる見込みはない。なら、日本と言うかファーストがいる国に敵対はしたくない。
だが獣人を労働力として全く扱えないわけではない。ある程度の制約はできたがそれは確実だろう。実際ファーストの飼う?獣人はギルドでウェイトレスをしていると言う。そんなしてやられた中で戦果を話すなら、国際の場で各国にギルドを作ろうという呼びかけはできた。どの国にも同じ様な仕組みの機関が出来れば日本としても、ファーストとしても無視はできないだろう。
「タダ飯は旨い。真理だなぁ〜。」
「真理はいいけど動かないと太るわよ?フェリエット、畑からレタス取ってきて〜。」
「日向ぼっこで忙しいなぁ〜。縁側は暖かくて気持ちがいいなぁ〜。」
「それはいいが私にもたれ掛かる意味はあるか?」
「昔は膝の上で丸まってたなぁ〜。」
「はぁ〜、離れんなら仕方ないか。」
対象と佐伯と共にファーストの家を訪れたが本日はBBQをすると言う。なので玄関からではなく、そのまま通り過ぎて対象等と共に庭の方に向かうとファーストと誰かの声がする。そして、姿を確認するとじゃれつくフェリエットと煙で浮かぶ野菜、そしてBBQコンロ。
日常レベルで魔法を使うか・・・。いや、本人の能力ならさして驚く事でもないだろうが、不用意な発言と行動は控えよう。どこで何を見られているかは分からない。
「本日はお招きありがとうございます。改めて、時枝 加奈子です。」
「いらっしゃい、子供の遊び場に親がいるのはやりづらいだろうけど、来てくれた事には歓迎するよ。改めて黒江 司だ。気兼ねなく食べて遊んでいってくれ。」
「いらっしゃ~い、妻の莉菜よ〜。加奈子ちゃんも気兼ねなくね〜。貴方〜、お茶出せる〜?」
「すまん、フェリエットに絡まれてる。煙で運ぶから置いといて〜。」
 




