31話 打ち合わせ
来客で遅れました
「切り取って、砕いて、潰して、刺し、穿つ。あらあら残念、穴だらけ。・・・、フフフ、掃除はいいわね、静寂だけが友だけど、進めばきっと声もある。」
殲滅とは魔女が言ったものの、それぞれの階層がだだっ広いので、目の見える範囲、煙の届く範囲しか掃除はできていない。犬は嬉々として走り回って、そこいらのゴミをボールかフリスビーの様に噛み付いては屠って行く。
声か・・・、犬は出会った時も犬になった後も、何かしら分からない言語で話す事がある。ソーツの管理しないゴミ箱の中、モンスターにも文化があるのだろうか?始めに言葉が生まれた・・・、どこで聞いたか忘れたが、言語とは他者と自分を隔てるものだ。なにせ、相手がいなければ話す必要は無いのだから。あのソーツでさえ面倒だといいながら言ノ葉を紡いだのだから。
そう考えると、魔女も賢者も他者という括りでいいのだろう。感覚的には多分共有しているとは思う。と、いうかしてる。魔女が歩みゴミを屠るたびに楽しくなるし、賢者はゴロゴロしているようだが、なにか仕事はしているように感じる。
「楽しいけれど、物足りない。せめてバイトくらいのが来ないかしら?戯れるにしても、脆すぎる。」
『無理だね、まだ浅すぎる。でも、彼は許してくれないよ。』
魔女と賢者が話しているが、確かに許さない。ゴミ箱の中の地形を変えようが、モンスターを殲滅しようが構わないが、35階層以降に今の所行く気はない。そりゃあ、娯楽には耽りたい。しかし、娯楽は娯楽。1人で掃除が不可能な以上、頼まれた仕事もしないといけない。
15階層を越えた先は動画で見たように渓谷じみていて、高低差がかなり激しい。モンスターを殲滅する関係上、かなり地形を変えてしまったが、どうせゴミですぐまた地形が変わるだろうから、どうでもいい。
しかし、退出ゲートのあった20階層を超えると、割と平地が目立つようになり、メカニカルな残骸が転がるようになってきた。残念ながらセーフスペースは無かったが、水や植物、なんでそう作ったか分からない生物はモンスターに紛れていた。なぜ、ダンゴムシが丸まらず空を飛ぶと思った?腹は柔らかいので、飛んでいる関係上真下から倒すのは楽だが殻は思いの外硬い。使えるかは分からないが、一応箱も含めて全部指輪に収納し、モンスターの戦利品も回収する。
この辺りのモンスターは小骨が割と出るようになり、中には原型が分からないモノもいたが、新型なのだろうか?観察型、砲撃型、豚面、球体ときて、新たに出てきたのは鳥でいいのだろうか?バーニアもなく、羽ばたく訳でもないのに空飛ぶそれは、遠距離ではなくバリバリの近接型。
滑るように近づいては伸縮する6本腕で、刺すように振りかぶりもせず腕を突き出してくる。しかも、砲撃型を取り込んだのか、ビームも乱射するので面倒この上なく、速度も多分赤峰の正拳突きより早い。こいつのせいで大分服が破け半裸になった。
その他にも、カマキリっぽいのや地形だと思って近づいたら、いきなり砕けてファンネルよろしく刃の嵐を巻き起こしながらこちらを斬り刻もうとするものなど、バラエティー豊かになってきた。しかし、思うのだ。そろそろ防具が欲しいと。モンスターを倒すのは問題ない、小骨ならどうとでもなる。辺りの被害は受け付けないものとする。しかし、服はどうにもならない。採取した植物に繭っぽいのがあったので、あれで糸が出来ないものか・・・。
『なぁ、賢者。防具はないのか?』
『なにそれ?』
『いや、身を守るものだが?バリアは出せる。しかし、身につけて守るものはないのかと。』
『ん~、そもそも身体がないからね、誰も彼も。邪魔で殆どが脱いでしまって、そんな原始的な物必要ないからなぁ。作るなら、鍛冶師と装飾師にお願いしたら?繊維は魔女が紡げばいい。嫌なら、草を調合師に渡して調合すればいいし。』
『えっ、紡げるのか?』
「紡げるわよ?確か、糸だったかしら?魔法でもいいし、さっきの草?でもいいけど。魔法が使えるならできるわよ?どちらにしても貴方次第だけど。」
どうやら、先は長そうだが防具っぽい物は出来るようだ。しかし、なんで調合師から糸が?そう言えば詳細は聞いていなかったな。高槻に会ったら聞いてみよう。
『君は魔法と言うモノを、現象として捉えているからね。掃除するなら別にいいんだけど、魔法で作るなら上手くしないと解けて裸になるよ。』
賢者が嫌な事を言う。どこでどうなるか知らないが、公衆の面前でストリップとかやめてほしい。・・・、秋葉原の誰もいないところでストリップになりはしたが、進んでしたいものではない。
そうして歩いている間にも、辺りの掃除は着々と進み、着いたのは35階層退出ゲート前。被害を考慮しないというのは思いの外楽だ、そして楽しい。実戦形式の授業という事を踏まえて潜っていたが、30名がここまで来れるかは分からない。
多分、送り出した側も出来る人間を選定しているので、パーティー単位なら出来るかもしれないが、授業で命を懸けさせるのはちょっと違う。無茶と無謀はする時と場所を選ばなければ、ただの無駄死にである。授業だというのに熱くなられても困る。馬鹿は風邪を引かないのではなく、引いた事を知らないから馬鹿なのだ。
服を着替えてタバコで一服。流石に半裸はまずいので、邪魔なカメラを外して見えないように置いて、下着ごとシャチパーカーと朝着ていた短パンに履き替えて、帽子を被りカメラを回収。犬は煙が解けて元の犬に戻って、足元でお座りしている。魔女は先に行こうと囁くが無視だ。そりゃあ、楽しいのは楽しいし、面白いのは面白い。しかし、娯楽はあくまで娯楽、楽しさにかまける訳にもいかないし、大人にはやることがある。
カメラを回収してゲートを出ると朝日が見える。時間と日付を確認すると打ち合わせ当日の6時頃、中でほぼ2日半ほど休まず掃除していたようだ。一応各階層毎にゲートを目指しながら進んだが、掃除ではなく探索をメインとした場合は時間がいくらあっても足りないだろう。
こうなってくると、海外勢がやっているように車両の持ち込みも視野に入れた方がいいのかもしれない。なにせ、みんな飛べるとは限らないし、なにより35階層退出迄にセーフスペースが無かったのも痛い。更に言うなら、普通人は休むもの。俺の様に強行軍は出来ない。
「さてどうするかな・・・。時間も時間だし、バイト、ホテルへ戻るぞ。」
「ワン!」
朝焼けの街をバイト共に歩く。リードが無いのを咎められそうだ・・・、そもそもコイツに首輪もしてないし・・・。予防接種とかコイツに出来るのかな?飼うなら義務だから一応しないとまずいとは思うが。そんな事を、考えながら歩いて着いたのは宿泊しているホテル。途中迷いそうになったが、スマホで検索して事なきを得た。
望田にメールを送り、部屋でシャワーを浴びて下着姿で一休み。プカリとキセルから煙を出せば、揺蕩う煙は帯の様。こっちに来て色々あったが、1人でのゲート散策は中々に楽しかった。正しくこれは娯楽だろう。仕事から開放される楽しみ、やっている事は結局仕事なのだが・・・。
「おはようございます。」
「おはよう、カオリ。」
つらつらと考え事をしていたら望田が入ってきた。SPなので部屋への出入りは勝手にしてもらって構わないのだが、せめてノックは欲しかった。未だ下着のままである。
「ツカサ。一人で勝手に…って、なんで下着なんですか!?」
「さっきシャワーを浴びたから?」
「取り敢えず服!服を着てください!目の保養です。」
「普通そこは毒なのでは・・・?」
今日は暑くなりそうだが講師と顔合わせもあるので、拉致された時に着ていたスーツを着る。ちゃんと洗濯もしてるので臭くもない。そもそも、代謝の無い身体に付ける服を、こまめに洗濯する必要性はあるのだろうか?まぁ、習慣なのでするのだが。
「着ましたよ。講師役の人はもう目黒駐屯地に?」
「いえ、まだいませんよ?今回早いのは私が怒ってるからです。なんでSPを置いて危険なゲートに特攻するんですか!せめて一言くらいください。」
「・・・、ごめんなさい。フラストレーションが爆発した。」
流石に縮退炉の話や帰りまで最長1年と言われれば、キャパオーバーもいい所。一時帰宅はできるらしいので、盆には帰ろう。そして妻と温泉と墓で花火を・・・。
「はぁ〜、次からは気を付けてください。私は貴女専属のSPなんですからね。スィーパーにもなりましたし。知らん間に出世もしました。」
「出世?」
警視庁の人間というだけで既にエリートという感じがあったが、階級でも上がったのだろうか?いや、S職という時点で、何らかの報酬が国から出たのかもしれない。
「なんと、内閣府直轄警護要員になりました!」
「おぉ~!それは何か変わるんですか?今までと。」
「警察から政府の人間にはなりました。後は別に何も・・・、あぁ、千代田さんが直属の上司です。」
千代田か、ネゴシエーターになったり部下を持ったり、知らん議員を殴ったり、辞職させたりと忙しいやつだな。ただ、望田の上司と言う事は公安から抜けたのだろうか?まぁ、どこの所属でも公務員は国の人間である。と、なると俺も国の人間?なら、政府に全部押し付けるのが楽でいい?いや、この前のタヌキとキツネをしたばかりだ、慎重に行こう。
「今回の勉強会には護衛兼参加者として出席するので、ご指導お願いします。」
望田が頭を下げてくる。指導も何も俺はあくまで助言役。場は整えたりするが、早々指導には口を挟む気がない。そもそも、座学は多分法律関係だろうし、実技はゲートに潜る前提。やるにしても、先ずは15階層到達者からだろう。
「あくまで助言役です。座学はさっぱりなので、講師に頑張ってもらいましょう。所で講師って誰なんです?」
「宮藤さんですよ?ツカサが職員採用を打診したんじゃないんですか?まぁ、座学は書類を読むのがメインなので、言い方は悪いですが、誰でも良かったと言いますか、息のかかってない人間なら良かったと言いますか。元の講師は自衛隊の方でしたが、千代田さんが実戦での実力が足りないと押し返しました。」
確かに職員採用は打診したが、動きが早い。女性が結構いるのも、ハニトラの可能性が出てきた。今回の元は政府主催。人員は警察と自衛官のみだったが、どうやら助言だけではなく、水面下でも何かしらの動きがあるようだ。来る面子で今の所面識があるのは兵藤と赤峰、望田にねじ込んだ3人。
面識から俺を取り込もうと考えるなら・・・、本人達が動く訳では無いな。そもそも、面識のある人間なら単純に頼みに来ればいいのだ、力を貸してくれと。組織を作る以上、簡単には肩入れ出来なくはなるが、それでも全てを蹴ってはこちらとしても動けない。
なら、今回の勉強会で何らかのアプローチをかけて、パイプを作りゆくゆくは取り込むと言うやり方を取るのがベストだろう。最悪、パイプとまでは行かなくとも、面識のある無しでも人は変わる。遠い知人の死でも知らせを受ければ思い出すが、テレビで知らない人の死を聞かされてもそうか、可哀想にくらいしか感想は出ない。
そうなると、どこに属するかも分からない俺を通じて、どれかの組織が利権を欲している可能性もある。俺個人と言うモノを見ると、今あるのは戦力としての人材、ゲートへの発言権、宙ぶらりんな対策本部長という名前。自衛隊は多分戦力として、警察はゲートへの発言権、政府はそのまま本部長として飼い慣らしたいあたりが妥当な線かな?
まぁ、下手に勘ぐっても仕方ない。取り敢えずは宮藤と打ち合わせをしてから考えるとするか。
「宮藤さんか、取り敢えず会って話しましょう。場所は目黒駐屯地でしたよね?」
「ええ、多分待ってるので行きましょう。」
望田の車でやってきたのは目黒駐屯地、警衛所で入門の手続きを行い中に入る。手続きする時、やたら若い兵士が話しかけてきたが、適当に相槌を打って握手をして済ませた。来客用の駐車場で迎えを待ってほしいとの事だったが、その迎えが佐官クラスというのは、元自衛官として肩身が狭い。
場所にもよるが、2佐なら駐屯地司令、つまりはその駐屯地の長。普通の会社なら部長クラスの人がペコペコしながら案内するのだから、更に居心地は悪い。
「お会いできて光栄でした、この部屋でお待ちです。おタバコはご自由にどうぞ。」
自由と言われても困る。駐屯地内は喫煙所が厳しく管理されている。駐屯地自体が自己完結性をもつ関係上、燃料やら弾薬やらがあるので、火事はご法度。なんなら駐屯地内に消防班もある。
「はぁ、ありがとうございます。煙缶もありますか?」
「煙缶をご存知で?ありますよ。」
(ツカサ、煙缶ってなんです?)
(灰皿です。)
望田がコソコソ聞いてくるが、なんてないものである。まぁ、不思議なキセルは灰も出ないので、灰皿が無くても困りはしないのだが、紙巻きを吸いたい時はやっぱり必要になる。
「失礼します。」
「おつかれさまです、クロエさん」
「宮藤さんもお元気そうで何よりです。雄二君と卓君も来てたんだ。2人は助手?」
「おつかれ様ですクロエさん。そうっす、2人してこんなとこ入ったことないから緊張しました。」
「クロエさん、ありがとうございます。上手くねじ込めたみたいですね。2人とも助手兼参加者です。」
「えっと、秋葉原の2人組?」
扉を入った対面の席に、宮藤を真ん中にして2人が座っている。宮藤だけかと思っていたが、2人が来ているとは思わなかった。参加者を名乗ると言う事はねじ込みは成功らしい。席についたら情報交換といこう。
「カオリ、卓君は宮藤さんの弟子・・・、でいいのかな?まぁ、補助役。雄二も立ち位置は同じ感じかな。2人とも民間出身のスィーパーとしてスカウトした。」
「若い燕ですか・・・、どこで引っ掛けたかは知りませんが、大丈夫ですか?私は望田 香織です。立ち位置としては参加者兼護衛です。」
望田よ、若い燕は既に愛人として確定した事になるんだぞ・・・。なんで男に靡かにゃならん。
「カオリ、冗談はそこまで。宮藤さんも笑ってないで話を詰めましょう。」
「ええ、そうですね。今回座学と実技というかゲートに入りますよね?そちらの方もサポートします。幸いな事にいつの間にか指輪も帰ってきたので、薬の取り扱いも大丈夫ですね。基本的に自分は、この二人とチームで動いて回ると思ってください。ただ、雄二は剣士なので、近接職の方を指導する時はそちらに参加させます。」
片腕が無い関係上、ある程度気心の知れた人間をサポートにつけるのは問題ない。寧ろ、卓は宮藤に任せようかとも思ってたし。
「3人でチームですね、分かりました。座学は任せきりになると思いますが大丈夫ですか?法律関係はサッパリですが、分かる事は答えますよ。」
「その点は大丈夫です。自分と卓君で手分けしてやります。まぁ、座学自体は法律はそこそこで、座学という名の対話形式のカリキュラムで組まれてますね。その場合、クロエさんがメインになります。」
対話形式か・・・、法律関係以外ならまぁ、大丈夫かな?いきなり最強にしてくれと言われても困るが、そもそもそんな事を言うやつはいないだろう。仮にいたら、一度丁寧にへし折って組み立て直させるしかない。最強も無敵も絶対も不変等も含めて・・・。
「ツカサ、なにか悪い顔してますよ?」
「ん?前に無敵の剣士に出会った事を思い出してね。」
「そんな人いたんですか?ツカサがいるのに、何をもって無敵と考えたんで・・・え?」
雄二が両手で顔を隠している。望田も気付いたのか、雄二を見ているし、卓はニヤニヤしている。しかし、卓よお前もあまり変わらなかったんだぞ。
「やめてください・・・、若気の至りです。」
「大丈夫、今も若い若い。」
「クロエさんが言っても説得力ないですよ・・・。見た目だけなら一番若いんですから。」
全員頷いているが、仕方ないこの身体自体の年齢は14歳なのだから。中身はおっさんだが、見た目はいいのだよ。
「対話形式は了解しました。実技の方は宮藤さんはどう考えています?私は目的階層を設定して、期間中にたどり着ければと思ってますが。」
「その点は、問題ないですよ。寧ろ自分達も潜りますので、その際はサポートお願いします。で、何階層を目的地に設定するんです?」
「35階層ですね。下見してきましたが、その辺りが楽に倒せるなら、実力が付いたと効果判定出来ます。」
潜った感じ小骨は多いが、4〜5人ならどうにかなると思う。無論、それは15階層まで単騎とかの制約は付く。しかし、ゲートの掃除は何も1人でしなくていい。30人も居るのならチームで挑めばいいし、自分以外の職を知るいい機会になるだろう。
「えっと、クロエさん。そこまで行ったんですか?望田さんと?」
「ああ、1人で下見してきた。フフフ、楽しかったわ。」
卓が質問してきたが実に楽しかった。しかし、次行く時はサポートがメイン。多少残念だが、後進に育って貰わない事には家に帰れないので、ここは頑張ってもらおう。
「その、どんなのがいました?」
「ん?そう言えばカメラ映像がある。」
千代田に貰ったカメラだが、別にここで見ても大丈夫だろう。配線関係は雄二が出来るというので、部屋に備え付けのテレビに接続し、みんなで鑑賞開始。出てくるモンスターや地形に興味津々といった感じで画面を見ているが、魔法には若干引いている。
「なぁ卓、俺達って無謀だったよな・・・。」
「寧ろ、生きている事に感謝したい・・・。」
「ツカサ、あれはやりすぎでは?地形が・・・。」
「まぁまぁ、あれは至れば出来るように・・・、なるのかなぁ?」
それぞれに感想を言っているが、仕方ないではないか。楽しかったし、フラストレーションも溜まっていた。掃除もできて、ストレス解消。おまけに楽しいといい事ずくめ。
「まぁ、楽しかったよ?どうせゴミの山だし、いくら壊しても文句言われないし、誰もいないし、間引けばスタンピードも減るかもしれないし・・・。」
「ま、まぁ、被害はないですからね・・・。」
シークバーをいじり、植物などの映像が流れ風景の映像等を見ながら先へ先へと進めていく。
「ここまでセーフスペース無しですか、休憩ができないのは痛いですね。」
「最悪の場合、キャンピングカーを持ち込めば休憩は取れると思う。戦力が欲しいなら装甲車とガンナーに遠距離制圧してもらうのもありかな?」
セーフスペース問題というか、人の生理現象問題というか、食う寝るが安心して出来ないのは中々に精神に来る。今回だけ特別とは言わないが、望田を鍛えるのにいい環境になるかもしれない。
「カオリ、あのモンスター達の攻撃防げる?」
「防げない事は無いですけど、まとまって来られると考えますね。攻防一体の音とか無いですかね?」
「それは自分で探すもの。イメージするなら聞きなさい、貴女の音を。」
「そうですね、響かせないとです・・・、そう言えば、相当長いですけど、休憩は?」
「魔法でどうにか・・・。レンジャー最終工程なら確かこんなはず。」
嘘だが、これなら説得力もあるだろう。飲まず食わずでまる2日動き続ける。出来るならその辺りの訓練を積んだ人。多分、兵藤とかならやれる。
「カマキリ?いや、ヘビ?卓なんだと思う?アレ。」
「僕には羽を広げた蝶・・・って、なんか爆破した?アレもモンスターか、ミミックみたいだな。ボックスじゃなくて、完全に地形と同化してる、厄介だ。」
「あの煙犬はクロエさんのペットかな?」
「外装を纏わせるイメージか。煙ならそこまで本体を傷つけないし後は強度か。」
犬は煙を取り込んだ後は好き勝手暴れていた。多分、呼べば来るし、命令すれば応えてくれる。それは犬の本能だろう。オオカミから犬になろうとも、強いリーダーには従う。あのモンスターは負けて犬になったのなら、多分従う・・・と、思う。
キセルをプカリ。おっと魔女や賢者と話してる辺か。独り言話しているように見えるから飛ばすか。そう言えば、魔法が使えるなら糸は紡げるらしい。宮藤と望田にも話してみるか。
「そう言えば、宮藤さん魔法で糸が紡げるらしいですよ?カオリは糸とか出せない?音からすると弦とか?」
「糸ですか?火はどちらかと、言うと焼き切るイメージがありますね。糸でなにかしたいんですか?」
「私は弾くならイメージできますけど、弦は無いですね。」
「防具的な物が作れないかと。あのダンゴムシの殻は硬かったんですよ。」
「ん~、自分のイメージでは厳しいですね。火でも暖かさ方面のイメージの人なら出来るかも知れませ・・・、クロエさんなんでカメラ外したんですか?」
「カメラ?」
画面は視点が低くなったカメラの映像。雄二と卓は目が点に・・・、あぁ、最後か。宮藤は多分俺と話していたから見えなかったのだろう。そもそも、見えないように置いたはずだ。年齢も知っているし、流石に趣味ではないだろう。
「服が破けて半裸だったので、全部着替えたんですよ。仮に映っても上は一瞬で下は膝辺りまでだから多分大丈・・・。」
「ぶ。じゃないですからね、音だけとか余計想像しますからね!そこの2人見るな!あぁ、下着脱いだ!」
望田が急いで配線を抜く。映像確認はしてないが、きわどいものは映っても無いはずだ。その辺りは配慮したし、大丈夫だろう。
「カオリ落ち着け、ほぼ何も映ってない。2人共私の歳は知っているね?すまない不快な思いをさせた。」
「あ、いえ、その、なぁ?」
「まぁ、はい。大丈夫です。」
映像も終わり目標も話した。後は、明日からの勉強会が上手く行けば良いのだが・・・。