表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街中ダンジョン  作者: フィノ
364/848

289話 どれが該当するかな? 挿絵あり

 神志那も来ているし検査は終わったから一旦ギルドに戻るか。出てきたデータもギルド内で共有したいし、新たに発見された時の指標にしたい。今日集まった人達の中には成長する時の映像が欲しいと言う人もいたが、マスター権限で不可としておいた。


 知的探究心は分からないでもないが、分かったとしても勝手に増やされると困る。なにせペットを飼うのとは訳が違い子供を1人引き取るようなもので、薬を飲ませて検証してはいさようならとはならない。ただ、どの程度の量でどの程度成長するかは確認しないといけないよなぁ・・・。一応、それについての問題提起も先生方にしたが、あれやこれやと話し合って結局猫を使っての動物実験を行うのがベストで、次点として何が獣人に該当するかの種族発生実験と同時進行がいいのではとなった。


 今の所確認されているのは犬猫だけで他の動物は確認されていないが、基準とは一体なんだろう?無作為に獣人が増えるのなら、それはただの生存侵略だ。同等の知能を持つ他種族が増えればそれだけ諍いが起きやすくなる。それにスタートが獣なら尚更だ。


 知能で選ばれたならイルカやクジラは獣人に成れる?或いは人に近しいチンパンジーは?いや、チンパンジーが獣人になったとしてそれは単純に人なのでは?2種族しかいないので検証も出来ないな・・・。高槻はこの後も他の先生方とデータをまとめるといい、雪城先生もそれに同行したので一旦お別れとなった。何気に雪城先生が獣人に興味があるのか色々と聞き回っていたな。まぁ、新種族なので誰でも興味はあるか。


「神志那さんは他に何が獣人になれると思います?」


「う〜ん・・・、クロニャンが言う侵略者じゃないってソーツが言ったんだよね?それって、戦いたくないから?」


「いえ・・・、するだけの価値がないからですよ。漫画みたいに『青く豊かな星を我が物に!』って話なんか全然なくて、彼等からすれば資源は作ればいいし、他者にも興味薄で何なら話しかけんなこっち来んなですよ?聞いたでしょう?会いに行きたくて行った訳じゃないですが、我々は歓迎しないと。」


 箸にも棒にもかからないとは正にこの事。別に『よくぞここまで辿り着いた、歓迎しよう!』なんて展開を期待したわけではないし、面倒だから来んなよでスタンスとしては間違っていない。ただ、救いがあるとすれば交渉権はちゃんと認められ話を聞いてはくれる。その点だけは律儀と言うかなんというか・・・。


「価値がない・・・、か。無価値のモノにわざわざ目をかけてゲートを置いて仕事をさせる・・・。ゲートを置いた理由とか聞いていい?」


「公にはしていませんが一部の人は知っています。モンスターを倒させる為、私達は知性ではなく戦う事が有能だと判断されて選ばれました。」


  挿絵(By みてみん)


 帰る為に待合室でタクシーを待っているがフェリエットが船を漕いでいる。丸一日動いたり勉強したりで疲れたのだろう。本来の猫ならそんな事せずに散歩しては寝てを繰り返してるんだしね。そう言えば、ここで見たお婆さんがもしかしたらまだいるかもと思って見に行ったがいなかった。まぁ、幽霊ではないのでいなくてもおかしくないか。


「戦う事・・・、もしかして獣人の基準分かったかも。」


「・・・、えっ!?これだけの会話で!?」


「確証はないから推測だけどね〜。多分だけど観測されてるのは犬と猫でOK?」


「ええ、その2種族はいます。他は未知数ですが、動物実験を・・・。」


「ペットの歴史って諸説あるけど犬だと1大体万5千年前、猫だと大体穀物育てだした頃なんだけどさぁ、その2種類だけが明確にパートナーなんだよね。犬は獲物追ったり弓で射った鳥持ってきたり、猫はネズミ捕まえたり蔵の中の穀物を荒らす小動物を食べたり。そこでなんだけど、パートナーが意思疎通出来て一緒に戦ってくれたら助からない?」


「それは確かにそうですけど・・・、犬はなんとなく猟犬がいるので分かりますが、モンスターはネズミとは訳が違うんじゃ。」


「そうでもないよ?どっちも獲物を人の所に持ってくるじゃん。獣人の選考基準がパートナーなら、その2種類だけの可能性があるかな?」


「なら、他の動物に飲ませた場合は?」


「なんとも言えないけど、そのままで多少脳が良くなるとか?少なくとも鳥類と魚類系はないんじゃないかな?飛行能力を失うのは退化だしエラ呼吸から肺呼吸になるのは進化だにゃあ。成長という言葉が環境適応を意味するなら、路線的には人と密接な関わりがある動物には可能性があるけど、労働とか食用の家畜は目的が違うから厳しいかもね〜。例えば乳牛が獣人に成ってオッパイが2つだと足りないでしょう?」


 複乳が普通のオッパイに成る・・・。確かに生産量としては減るのか?人型に成って自分で乳搾りしてくれる牛人。需要がないわけではないだろうが、純粋に家畜と考えると確かに微妙。かと言って、牛人に成って機械を胸に当てて座ったまま1日中乳を搾られるとなると・・・、知性がフェリエットくらいあるとストレスで死ぬ。例え編み物とかテレビ見せたりしたとしても、今度はチャンネル争いやら横の人と比べてなんで言い出すときりがない。


 知性が高くなるのも良し悪しと言う事か。虎にやらライオンに飲ませて勇猛果敢な戦士を作ったら戦う前に脳筋で暴れだしそうだし、そもそもの基準として一定数の従順さも考慮されてるとか?フェリエットもある程度はこちらの言う事に従ってくれるし、まだ本気で敵対されていない。まぁ、まだそこまで嫌がる事をしていないが・・・。


「なにはともあれ帰りましょう。タクシーが来たようです。」


「私の鍛えた筋力が今!唸りを上げるじぇえ!」


 そう言うとあのひょろかった神志那がフェリエットをお姫様抱っこして持ち上げた。割と真面目に身体鍛えてたんだな。それとも第2職で格闘家とか近接系の職に就いたとか?就けばお手軽身体強化で鑑定術師の格闘家とか強いんだろうけど、なんだかもったいない気がしないでもない。


「貴方の職はなんですか?」


「魔術師系は出なかったんだよね〜。でもコレってのはあったよ。私の第2職はオカルト。本格的に探求者として歩み出すぜぇ!てか、歩いて探せって事なのか体力ついたし結構いいよ〜。鑑定の精度もかなり上がったしね!」


 本格的な探求者か。確かに鑑定と探究が合わされば何れは正解に辿り着ける。その歩みが早いか遅いかは別として、正解を探すなら何処までも続いてゆくこの道を、歩き続けてゆくしかない。ゲートオタクになると言ったからにはうってつけだろう。


 それに五島もオカルトで戦っていたし戦闘面でも有用なのかな?走るよりも一歩一歩踏み固める様に戦えば、一回の戦闘は長くとも簡単に負ける事はないし、相手を究明出来れば未来予知染みた先手取りも出来るらしい。まぁ、その辺りは本人のイメージなのでどう成長するかは分からないか。


 そんな神志那と共にタクシーに乗り込みギルドへ。コレから資料をまとめると言うか、情報共有でまた忙しいだろうな。政府はこちらに管理を投げたいみたいだし・・・。



ーside リーー



 学校での無難な時間は終わり帰路へとはならず、駅の近くで姿を変えてテイと合流する為に待っている。休み時間の合間にテイから獣人の情報が上がっていたが骨格等の物が多い。多分潜り込ませた手駒は技師系の技能を持っているのだろう。


 対象達は今日はそれぞれでバラける様なので、2人きりになり踏み込もうかとも思ったが、週末にファーストの家に来ないかと言うオファーがあったので、一旦準備の為に私も用事があると離れた。


 行かない手はないが不確定要素は多い。1つは望田。彼女は音を武器とする中位で外見的な要因で私が工作員であるとバレる可能性は低いと考える。どの状態でも言えるが、サバイバーとしての隠密と撤退、拡張としての変化に自身制御なら早々心音等で揺らぎを気取られる事もないだろうし、危険度は低いと想定する。


 2つ目は不確定要素な来門者。ファーストの家と言うだけあって誰が来るか分からない点。仮に神志那とバッティングしたらかなり厳しいのではないかと考える。祖国にいた頃に潜入工作員になるに際し対鑑定師訓練と言うモノを行ったが、結果はあまり良くない。


 内容的には私を知らない鑑定師を連れて来て握手で情報がどの程度読み取れるかと言うものだったが、誤情報も読み取れたし同時に少ない真実も読み取れた。言い訳をするなら訓練時は至ったばかりでサバイバーと言う物をそこまで理解できていなかったからなのかもしれないが、それ以来試していないので中位相手にどれほど対抗できるか判断に苦しむ。ただ、すでに時枝と言う人物が共通認識としてある場に行くので、撤退用の道を探すならそちらに意識を誘導するのがベターだろう。


 まぁ、見ただけで鑑定出来る人物がなんの対策もなしにホイホイ出歩かれても困るし、引き篭もり体質と言う事を考慮するならいないと思いたい。一応、その日は監視者が神志那を見張ってくれるので危なくない内に撤退は出来ると思う。


 そして最後。ファースト本人が私に気づく事。これが一番問題と言えば問題だが、はっきり言わせてもらうなら不確定要素しかない人物に接触するのだから、その辺りは考慮して欲しい。テイは危ない橋を渡るくらいなら適当な用事をでっち上げて行かなくてもいいのでは?と言うが、学生としても成人手前なので付き合いと言うものがある。


 誰しもが羨やむファースト邸への招待。雑な話をするなら私を潜入工作員と知らない工作員が接触して来て口説こうとして来たりしたが、気になる人がいると断った。ここで考えておきますなんて言えない。こう言うのは断った事実が必要で学校と言う密室空間ではすぐに噂が広まる。


「やぁ、時子さん。朝はどうも、おかげで猫がたくさん集まりました。」


「いえいえ、保護のためですから。」

 

  挿絵(By みてみん)


 時子、名字は雪城だったか?テイの指定だが関係ないのでどうでもいい。あちらはあちらの仕事をして私は私の仕事をする。互いにビジネスライクなんだ、深入りをする気はない。


「では、雪城(・・)先生からもらった情報共有から・・・。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価、感想、ブックマークお願いします
― 新着の感想 ―
[一言] あー、ソーツから見た狩人である人間にパートナー付けたのか 軍用イルカとか研究されてるけど一般的じゃ無いしな 狩のパートナーという点だと猛禽類もありのような気もするけど鳥類な時点でアウトか 人…
[一言] 情報漏洩してる?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ