286話 パンデミック? 挿絵あり
風呂から上がって飯食って、さぁ寝ようかと言う時刻で問題発生?フェリエット何処で寝かせよう?案は3つあり1つは夫婦の寝室で3人で。1つはバイトと一緒に俺の書斎にあるベッドで。最後は息子と一緒のベッドとなる。別に俺とフェリエットが一緒に寝てもいいのだが、問題は夜行性であろう猫のフェリエットが夜中に勝手に外に行く事。
猫の姿なら早々窓を開けたり出来ないのだが、今の姿なら両手は自由だし頭も人並にいい。身体能力も夏目を疲れされるくらいだからそれなりに高いのだろう。ただ、ネコ科である事を前提と考えるならチーターの様に瞬発力は良くてもスタミナがないタイプとか?これも明日にならないと分からないが、本当に明日は丸一日フェリエットの付き添いになりそうだ。
まぁ、雪城先生が外見データは取ってくれたのでメインは中身の方になる。正式なデータはまだ、まとめられてないので知らないが残念な事にフェリエットに5cm程身長が負けた・・・。う〜む・・・、ソーツとしての人類の基準って実は女性は俺で男性も俺とか?確かに自衛隊の頃はあれくらいいい身体はしてたと思うが、やめて仕事に追われると直ぐにポヨポヨになったんだよ・・・。
寧ろ自衛隊時代がブーストモードで、ポヨポヨボディが本来の姿とか言えなくもない。実際小学校から中学間では太ってたし・・・。逆に高校に入ったら食欲よりも趣味欲が増してゴッソリと体重が落ちた。まぁ、その話は置いておくとして問題はフェリエットどうするかなぁ。首輪も付けてないから裸足で歩く音はほぼ無音なんだよなぁ・・・。手足には人とは違って肉球っぽくなった奴が付いてるし・・・。
「那由多一緒に寝る?」
「鍛冶師に音の敏感さを求めるな。まぁ、ハンマーで叩けば分からなくもないが、寝てる時は無理。順当に行けば父さんと母さんと一緒だろ?」
「そうなるわよねぇ・・・。少し狭いけど貴方が小さくなったから寝れない事もないし、真ん中で寝かせましょうか?ほら、フェリちゃん上に行くわよ〜?」
「勝手に運ぶなぁ〜。」
風呂から上がってテーブルの下で丸まっていたフェリエットが眠そうな声を上げる。この分なら夜中にゴソゴソする事もないだろうか?寝る前に外でタバコ吸うのが日課で、その時には勝手に玄関開けて外に出ていたが・・・。まぁ、この様子を見るに大丈夫そうか。
妻が抱っこしようかと言ってきたが、それには及ばないと魔法で浮かせて運ぶ。ぷかぷか浮きながらも寝ているので大丈夫だろう。その姿を見たバイトがスゥーッとフェイドアウトして外に行こうとするので行くなと止めて一緒に上へ上がる。言っておくが、お前はお目付け役なんだから早々簡単に離れられると思うなよ?
寝てもいいが、その間にフェリエットが脱走したらもれなく責任を取ってもらう。その思いが通じたのか項垂れるように首を下げたままトボトボと後をついて来る。まぁ、簡単には首を刎ねないさ。パートナーとは認めてるんだし。そんなこんなで2階に上がり布団に入る。猫だからかうつ伏せで寝ているが苦しくないのだろうか?そんなフェリエットの背中を妻がポンポンと叩いている。
「3人で寝るなんて何時ぶりかしらね?」
「そうだな・・・、遥が産まれてから那由多のぐずりが終わって以来か?部屋を作っても那由多は結構一緒に寝るって潜り込んできてたし、遥もホラー番組見た後は来てたし。」
妻と2人で寝る事はあっても、子供達と同じ布団で寝る事はもうない。狭いと言うのもあるが、流石に成人してたらね。なのでこうして3人で寝ていると昔を思い出して子供が新しく出来たようだ。ただ、布団の中が暑いのか無意識にモゾモゾ動いて出て行こうとするのはやめて欲しい。
元々猫なので布団で寝る習慣がないからかな?春先にこたつをしまったら死にそうな声で鳴いて、テーブルの周りをウロウロしてたのになぁ・・・。
そんなちょっと懐かしい夜を過ごした朝。息子は寝坊でもしたのかバタバタと朝の支度を済ませて出て行き俺はシャワーを浴びて一服。妻は洗濯機から洗った物を出して干している。フェリエットが出歩かなかったのはいいが、未だに布団の中で惰眠を貪り夢の世界にいるので起こすかな。
「ほら起きろ、仕事の時間だ。」
「ネズミはいなくなったなぁ〜。だから仕事はないなぁ〜。・・・、寝るなぁ〜。」
「その姿ならやる仕事はあるんだよ!朝飯食べないならギリギリまで寝ていいが・・・、後で腹空くぞ?」
「その時は鳥を獲って食べるなぁ〜。」
サバイバルする気満々だが、口元が血で汚れた少女とかホラーだろう。ただ、ここで駄々をこねられて脱走されても面倒なのでギリギリまで寝かせるか。モゾモゾしながら布団の中に潜って行ってるし。
「また行く時に声かけるから外には出るなよ?バイトもその認識で。」
(はっ!)
そんなフェリエットの姿を後に昨日の残りのサバ味噌と食パンと言う、合うのか合わないのかよく分からない朝食を食べて出社。息子よ・・・、食べ盛りなのは分かるが俺の分も残しておいてくれ。妻は妻で先に食べたので御飯とサバ味噌と言う旨そうな組み合わせで食べたのに・・・。
望田の運転で進む車が大通りに出た頃に電話が鳴り、相手を見ると高槻から。内容的には去年ゲートを出た後に入院していた病院に来てほしいとの事。まぁ、ギルドには検査機材も無いので仕方ないか。
「どうします?一旦ギルドで莉菜さんを降ろしてから向かいますか?」
「いや・・・、神志那さんも連れて来てほしいらしいから適当なコンビニで別れよう。幸い指輪にはバイクもヘルメットも入ってるし、フェリエットと先に病院に向かうよ。バイトはそのままでゲートに入って人を助けつつモンスターを狩る事。」
「なにか分かったら私にも教えてね。食事とか作る時に気を使わないといけないから。」
「了解、了解。」
そんな話をしてコンビニで別れてバイクを出して向かおうとしたが、今度はフェリエットがヘルメットを嫌がる。まぁ、人用に設計されたヘルメットにフェリエットの猫耳は収まりきらないか。一度被せてみたが耳が窮屈で痛いらしいし。仕方ないのでタクシーを捕まえて病院へ。運転手がしきりにバックミラー越しにこちらを見るが、話しかけて来ないならそのままでいいだろう。
散髪やエレベーターでもそうだが、狭い密室とかパーソナルスペースに知らない人がいるとなんか黙ってしまうよね、床屋で話しかけないでカードが置かれたのは偉大だと思う。まぁ、長さがいいとか髪型がこれでいいかとかは聞いてもらってもいいのだが、世間話って意外と難しいんだよなぁ・・・。
そんな静かなドライブを終えて金貨を手渡し、やってきたのは1年ぶりの地元の病院。ここで今の姿に変わったと思うと少し感慨深い。割と広いのでフェリエットと手を繋ぎ受付で高槻を呼んでもらい待つ事数分。
昔の混み方が嘘の様に人が少ないが、これもゲートと回復薬の影響だろう。下手したら病人よりも医者の方が多いんじゃなかろうか?まぁ、行き交う医者も手に資料の束を持ったり、指には黒い指輪が見えるのでスィーパーなんだろうけどさ・・・。でも、いちいち受付付近を何度も通り過ぎたり、上の階からこちらを観察しなくてよろしい。
「お待たせしました、コチラが例の?」
「遠路はるばるお疲れ様です。ええ、フェリエットと言います。しかし、よくここの機材貸して貰えましたね。医師会抜けた後は仲が悪くなって病院に寄り付かないものと思ってましたよ。」
「仲は悪いままですな。何せ客と言うか病人を片っ端から健康にして商売潰してるんですから。ただ、今回は政府からのプッシュもあって黙らせました。今回得たデータはギルドと医師会の共同資料になる事を了承してください。」
「いいですよそれくらい。私の推測だとこれから獣人は増える方向性だと思ってるので、それに即した医療も必要でしょう。何なら獣医も呼びますか?外見は人でも中身は未知数ですし。」
「そちらも獣医師会から派遣がありました。見学と言う話ですが、場合によっては診察してもらうかもしれませんな。」
「変な臭いがするなぁ〜。なにかぶっ刺されそうな気がするから帰りたいなぁ〜。」
アルコールとかの臭いで予防接種を思い出した?毎年大人しく注射されていたが、気にしてないんじゃなくて場所見知りで警戒して動かなかったのか。まぁ、過ぎた事だ。今は人の姿なので黙って腕から採血なり何なりしてもらおう。
そんな腰の引けているフェリエットを引っ張りながら病院の奥に進みCTにMRI、レントゲンに採血と済ませていく。注射を嫌がるかと思ったがそんな事はなく寧ろ、検査そのものに興味がないのかされるがままなので素早く進んでいく。ただ、聴力検査だけは耳の位置が人とは違うので出来なかった。
ただ、代わりにモスキート音を聞かせると反応していたので少なくとも10代程度には耳が良いのかな?出て来たデータをあれやこれやと話しながら見ている医者達は置いておくとして、体温は38度か。人よりも猫の方が体温は高いので風邪とかでない限り標準値くらいだろう。視力も・・・、目がいいと言うか猫には見えなかった色も見えている様なので問題ないし、脈や血圧も外見年齢から見ると正常範囲内。ただ、MRIの結果から見るに心臓は人よりも筋肉質でポンプとして考えるならかなり強力だそうだ。
多分、瞬発力を上げる為に瞬間的に血流量を増やすためだろう。実際ランプがランダムに光る機械を叩かせるとかなり反応速度が高い。ただ、飽きも早いので途中からは眺めるだけになったり、尻尾でポフポフ叩いていたが・・・。
髪については蓑の様に纏えるので、どれくらい自由に動かせるのかを検証したが、結果としては自由度はそれほど高くない。強いて言うなら表情筋を動かす感じとか?フェリエット曰く、根本を動かせるだけで毛先はそれに連動して動いているだけの様だ。試しに1本毛を採取してみたが毛根部分から極々少量の血液が出たとか。痛みはないし抜け替わりも少しするらしいので長い分毛取り用のコロコロが大量に必要になるな。
因みに髪を切るのは嫌らしい、スウスウして寒くなるのが駄目だとか。身体も大きくなったが、基礎体温が高い分寒さには敏感なのだろう。そんな検査をしているうちに神志那がやって来て昼を挟んで身体能力テストの方に入る。
一緒に服を着替えて先ずは柔軟からと言う事で、リハビリルームで前屈を見せた後にさせたがペタリと身体が床についた。他の柔軟も試したがかなり柔らかく、新体操とかやらせたら大会に出られるかも。平均台とか走って渡っていたし・・・。因みに俺は元々身体が硬かったので曲がらないと思っていたが、同じくらい曲がった。骨や腱がないって素晴らしい!前屈しても股が痛くなったり膝裏が痛くなったりしない!
握力はそうでもなかったが、跳躍力は凄くササミで釣りながらジャンプさせたが2mくらい余裕で跳んでいた。素足でやっていたので着地も音無く降り立つし、オリンピックに人間枠で出たら金メダルを軽く取れるかも。
逆に反復横跳びはやる度にどんどんバテて行く・・・。最終的にはご飯で釣ってもオヤツで釣っても嫌がったので諦めた。残りの検査やらテストやらもあるが一旦休憩となり、今は水をガブガブ飲んでいる。
「クロニャンの身体能力って、何ていうか普通?」
「魔法なきゃこんなもんでしょう。ただ、延々とやろうと思えばやれますよ?」
「それはそれで凄いけど、見るべきははやっぱりフェリエットだね〜。」
「そんなになにか違いました?」
「身体能力テストだけど、多分瞬間的に血流量が人よりも一気に増えるし、それに付随して負荷もかかるから結果としてパンプアップしたみたいになるにゃ。跳躍力とかのデータ見たけどジャンプする直前とか太ももカチカチじゃないかな?」
「その割にはこの娘柔らかいんですけどね。」
腹を突付くがプニプニしている。骨の硬さはあるが、マッチョマンと言うわけではないと思うがどうなのだろう?筋力がありすぎれば今度は骨が耐えられず自壊してしまいそうなんだが・・・。今も疲れたのか寝そべって喉をゴロゴロ鳴らしているし。
「俗に言う柔らかく靭やかな筋肉と言うやつですね。筋肉には遅筋と速筋がありますが、フェリエットちゃんの筋肉はほぼ速筋で普段は柔らかく、瞬発的に力を引き出しているようです。そしてそれがほぼ全身に高密度である。」
データを見ながら高槻もこちらの話に加わったが、フェリエットは我関せずと喉を鳴らし続けている。そう言えばこの音も骨にいいんだったか、骨折した時に猫を抱えてゴロゴロ鳴らしてもらうと治りが早いらしい。
「そのせいでスタミナがないんですかね?反復横跳びでバテてましたし。」
「それは運動量の問題でしょう。外見年齢の平均以上の回数を行ってますし、自己申告の年齢よりも動けていますからな。」
「ふむ、食べさせて脂肪つけさせればいいものでもないんですね。そう言えば、血液検査や身体検査はどうでした?」
「データ的にはヘモグロビンが多く酸素運搬量は人の倍以上。感覚的には常に高地トレーニングしている様なものです。そのせいと言うか、筋肉量が多い分それを維持する為にタンパク質はいっぱいあげてください。」
元々肉食獣なので肉食べ放題コースか。身体の維持の為と言う免罪符もあるので、これからは2人で妻に向かって肉を寄越せと叫ぼう。やっぱり肉!今晩は親子丼とかいいなぁ・・・。
「先生私にもデータちょーだ〜い〜。」
「そう言うと思ってコピーしてますよ。」
「先生やるぅ〜。出来る男は違うね、このこのぉ!」
「もっと褒めてもいいんですよ?と、アレルギーはなし。雪城先生が撮ったレントゲンを見る限りでは骨格は人に近いですが関節が若干多い分可動域が広いとか。それと、骨密度も高いですな。CT画像で見る限り臓器の位置は人と同じで、子宮なんかの形状も・・・。」
「待ってください!子宮があるんですか!?」
「?」
「クロニャン女の子には普通あるよ?」
「違います!フェリエットは元々猫で去勢してたんです。つまり、ないはずの臓器が復元してるんです。」
喜ばしい様な喜ばしくない様な・・・。子孫が残せないとフェリエットから恨まれる事はなくなったが、代わりに自然繁殖し放題に・・・。えっ、DNAどうなん?人とハエでさえゲノム的にはそんなに変わらない。なら、獣人と人もそんなに変わらないからハーフ猫娘やクウォーター猫娘が産まれる?
そうなれば世界は混血パラダイスだが、そこでまた純血が〜とか出そうで嫌なんだけど!?フェリエットを見てその気になるか否か?多分ケモナーは歓喜する。俺は妻がいるからいいが、独り身の男女でペットを家族として扱っていた人が本当の家族になれるとしたら?
「その辺りはまだ不明ですな。DNA解析はこれからとして、問題は混血が生まれるかどうかですか・・・。」
「私はその前に薬の量でどう変化するかの方が気になるかなぁ〜。推定1本丸々飲んで今の姿だとして、半分とか1/4とかで獣度変わるなら色々試す人がいそう。喋る猫ってケット・シーぽくって憧れない?」
「頭の痛い話をしないでくださいよ神志那さん・・・。高槻先生、DNA解析は最優先でお願いします。既にイギリスには犬人がいます。仮に、これを見て欲しがる人がいて情報が漏れたなら獣人がどんどん生まれてくるかもしれません・・・。」
前にネトゲでパンデミックが起きた事を考えた事があったが、今はそれの中の不特定多数の愉快犯がいる状態。仮にフェリエットの容姿が二足歩行の猫ならまだ需要は限られたかもしれないが、犬人にしろフェリエットにしろ容姿は整ってるんだよ・・・。おまけに生殖器があるならマーケットもそのうち出来る。やはり、未然に防ぐと言う段階は通り過ぎたと思った方がいいな。
「ちょっと電話してきます・・・。」
寝ているフェリエットを置いて部屋を出る。電話の相手は松田だが、先に結論から伝えるか。『獣人はこれから増えるから、私のギルドとしては隣人として尊重する』これしかないだろう。あくまで尊重であって法律を押し付ける気はない。
なにせ何獣人が生まれるか分からないのだ。松田が言った様に牛人が生まれるかもしれないし、馬人が生まれるかもしれない。草食獣と肉食獣で性格が違うかもしれない。そんな不確定の中で法律を作ったとしても、守れと言う方が無理がある。なら、現時点では一個人として尊重し、悪さをすれば罰するくらいしかないだろう。
幸いな事にスタートは人間の欲望だ。なら、責任の所在は明確で飲ませた本人に取ってもらうしかない。そして、時が過ぎて数が増えてから自立させるしかないだろう。
「もしもし?松田さん?実は・・・。」
ーside リーー
「テイ、獣人と薬の情報は流したか?」
「流した。おかげで私はペットショップを回る羽目になったよ。祖国の猫と日本の猫では薬の効きが違うかもとね。輸出は難しくないが同士の見立てでは獣人は有用と感じるか?」
「話を聞く限りならば有用と判断する。接触していない為、現状は不明だが人と変わらない容姿ならば、人と変わらない作業が出来るだろう。」
那由多の話では本日検査等を行っていると言う。テイの息のかかった者もその場にいるらしいので情報自体は祖国に速やかに送れるだろう。幸いというか、対象は獣人に出会っていたのでそれとなく話を引き出したが、容姿端麗な猫娘と言うだけでも需要はある。
特に祖国では一人っ子政策が解除されたにも関わらず、人口ピラミッドは歪で働き手はいくらいても構わない。職に付けば老人も働けるが、外働きよりもゲートの方が稼げるとスィーパーとして働くばかりだ。
上手く獣人を増やし徴用出来れば労働力問題は解決し、まだまだ繁栄していける。繁栄していけるのは喜ばしい事なのだが・・・。
「なぜ我々が猫じゃらしとチュールを持って猫を探さなければならない?保健所で引き取ればいいだろう?」
「・・・、君はやはり浅はかだ。」
両手に猫じゃらしを持ったおっさんに言われたくない。獣人の話をして昨日の夜からマタタビを撒いたり猫スポットを調べては猫を捕まえに行くが、保健所が優秀でそこまで多くの猫は確保できなかった。そんな私は登校ギリギリの今も『猫の保護ボランティア』のタスキを付けてこうしてテイと歩いている。
「浅はかで結構。周りの好奇の目よりはマシだ。」
「はぁ〜。よく聞け、保健所から引き取ればその猫が元気か訪問を受ける。野良なら捕まえても足はつかない。それに!大量引き取りで多頭飼いなら頻度は増す。なら、多少の好奇の目よりも隠蔽を優先する。」
「いや、好奇の目の時点で隠蔽出来てないだろう!?」
「すいません・・・、産まれた子猫って引き取ってもらえます?」
「ええ、大丈夫ですよ。どこにいますか?」
「ウチのじゃないんですけど近くの公園に・・・。」
悔しい!この活動をするに当たって姿を変えているが、やれ猫耳と肉球グローブ付けて猫好きっぽくなれとか、顔をもっと美人にしろとか面倒な指示してきて、誰も声をかけないだろうと思っていたのに悔しい!
「時間だからここで分かれる。後は任せた。」
「分かった。次は深夜帯の活動となるからそのつもりで。」
分かれてトイレに行き、そこで身体を作り変えて加奈子へ変わる。一睡もしていないので頭が痛いが、この頭痛は睡眠不足だけではないだろう・・・。エナドリを一本キメて学校へ。常識とは何なのだろうか・・・。




