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街中ダンジョン  作者: フィノ
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285話 買い物 挿絵あり

 取り敢えずロビーに降りて声出して買い取りを呼び掛けたおかげで結構集まったが、イギリスに情報が流れた以上増えるだろうな・・・。日本が打ち出した法律が他国で使われるかは分からないが、少なくともモデルの1つになるのは確定だろう。法整備がないのに増やした国?自国でどうにかしろよ、どこもかしこも精いっぱいなんだからさ。


 途中から起きてきたフェリエットもこちらに合流して、一緒に買い取りを呼びかけると言うか、お披露目会の様になってしまったが、触ったりしなければコスプレした少女に見えるので大丈夫だろう。ついでに青山と夏目にはモンスターの調査もお願いした。


 前に三つ目が減っていると言っていたが、もしかしたらモンスターもマイナーチェンジとかしているかもしれない。モンスターは正式には廃棄品扱いなので生産終了とかもあるのだろうか?アイツだけビーム撃って来ないのでその辺りの調査もしないと、下手に殴りかかればええやんと、接近すると痛い目を見る人がいるかも。


 そんな風に仕事をこなし定時で帰る。寧ろ、シフトで仕事しているので常昼勤務者は17時頃には上がるし、それ以外の2交代者の出勤時間は更に遅くなってから。斯く言うマスターである俺の勤務形態は常昼となっているが、事が起これば泊まり込みもあり得る。一応、残業代金も出るのでいいし、元々2交代勤務だったのでそこまできつくはない。望田が運転し妻が助手席、俺とフェリエットが後ろに座るが、人の手をモミモミしながらたまにグルグル喉を鳴らしている。


「それで莉菜の所にいる間、フェリエットはずっと寝てたの?」


「ずっとって訳でもないかしら?寝て起きて子供達と遊んでまた寝ての繰り返しでよ。でも、指が自由に動かせるのが不思議なのか、レジの玩具をポチポチ指でいじったりしてたわね。」


「ちっこい奴等は苦手なぁ〜。耳と尻尾を引っ張るなぁ〜。」


「それでベッドの下に隠れたり棚の上にいたりしてたの?雪城先生が身長体重視力とかのデータが欲しいって探しても姿を見せなかったのよ、この子。」

 

「そうか、明日も検査が多いから大人しくしておくんだぞ?」


「面倒だなぁー。寝てる間に勝手にするといいなぁー。私は遊んでご飯食べて寝てるだけがいいなぁー。」


「フェリエットちゃんはそれでもいいかもしれないけど、病気とかになったら大変ですよ?」


「死ぬ時は死ぬなぁー。この前もババ様が轢かれて死んだしなぁー。歳で死ぬならどっかの落ち葉の下で隠れて静かに死にたいなぁー。」


 見た目少女のフェリエットから出るには結構達観した生死感だな。まぁ、飛び出した猫が轢かれる事はよくあるし、老衰の時は挨拶して姿を消すとも言う。感性としては野生の方がウェイトは大きいのだろうか?そうなると、ますます人とは違う法を提示しないといけなくなるが・・・。


「そう言えば今日の夜も縄張りと言うか、家の周りを見て回るのか?てか、猫の言葉って話せる?」


 割と疑問な点。元々猫なので理解は出来ると思うがどうなのだろう?耳は形が変わってないので音はキャッチ出来るだろうが、会話となると普通に人語を介しているので相手の猫が理解出来るのか悩む。


「分かるし話せるなぁー。」


「ニャウリンガルいらずか。えっ、猫から求愛されたらどうする?」


「形が違うからビビって逃げるなぁー。あの住処はクロデカもいるし、いい匂いがするからみんなウロウロしてるなぁー。でも、縄張りだから私がコレからは他の猫を蹴っ飛ばすなぁー。」


 ウチって魚臭かったっけ?前にばら撒いて自生した猫草のせいだろう。個人的には粗相しなければ好きにしていいのだが、猫にそれを言っても・・・。フェリエットなら伝えられる?まぁ、伝えたとしてそれに従うかは別問題か。


 モミモミしていたのが手から頭に変わったが、そんなに揉まんでいい。猫のグルグルは骨いいらしいが、そもそも骨がないので骨振動とか出来ないしなぁ・・・。


「フェリエットちゃん私に猫語教えてもらえますか?おやつにチーかま上げますよ?」


「勝手に聞いて覚えればいいなぁー。チーかまはもらうなぁー。そろそろ眠たいなぁー。」


 モミモミしていた手が止まり、そのままコテンと膝の上に頭を乗せてくる。この身体になった後何度か帰省した時もよくすり寄ってきたし、そうなる前もよく膝に乗ってきたり腹の上に乗ってきたので同じ様な感覚だろう。まぁ、見た目が人になったのでただの甘えん坊な子供に見える。


「本当によく寝るわね。寝疲れないのかしら?」


「上で話してたんですけど、脳を酷使しているがゆえに寝るんじゃないかって話も出たんですよ。」


「そうなの?分からない事だらけね。まぁ、にゃん太がフェリエットになって話しだしたんだから仕方ないかしら?」


「莉菜さんも大概ですけどね。どーんと構えていると言うかなんというか・・・。」


「そう?私は眼の前の事実を受け入れてるだけよ。何をどう考えようとフェリエットはいるしにゃん太は見てない。そして、にゃん太の代わりにフェリエットが来た。なら、信じるところから始めて違うならやり直せばいいじゃないのかしら?」


 妻の肝は太いな。仮に俺がこうならずにフェリエットが来たら最初は疑いまくる。そして、それが事実でも今度は元に戻す方法を探し出すかもしれない。物事を受け入れると言うのは納得出来ていようと、外的要因からならかなり難しい。それを自然体で受け入れられるのは、やはり妻の胆力が凄いからだろう。


 少し違うかもしれないが手塚版ブッタのアッサジを思い浮かべてしまう。別に自分の死期を知っているわけではないが、不老も不死も薬がある中で、そして俺にお願いすればそれがどうにかならない訳でもならない状況で飲まずに死を受け入れる姿勢がそれを思わせるのだろう。


 そんな事を考えながら太ももにフェリエットの温かさを感じた帰路は、程なくして家について終了となる。息子はまだ部活でもしているのか帰っていないので、3人しかいない家は少し広く感じるが、来年にはその息子も家を出るかもしれないので近い将来の家はこの広さなのだろう。


 子供が出来るからと広い家を買ったが、遠い未来一人になった時どうするかなぁ・・・。手広い家だが住み替えるかと言われると踏ん切りはつかない。何せこの家は実家で暮らしたよりもそろそろ長い時間住んでいる事になるし、その分思い出も詰まっている。別に思い出の中に囚われて生きる気はないが、それに浸るくらいは許されるだろう。


「夕食は手軽なものでいいかしら?冷蔵庫見たら思ったよりも食材がないのよね。」


「構わないが今から買い物にでも行く?どうせ明日になればまた同じ事を繰り返すし。」


「そうねぇ・・・、行こうかしら?お風呂のセットだけして近くのスーパーに行けば帰った頃にはちょうど入れるし。」


 そんな話をして帰ってすぐに出る。離れにいた望田が何事かと聞いてきたが、買い物と伝えるとお気を付けてと見送ってくれた。フェリエットはどうしようかと迷ったが、縄張りを見て回ると聞かないので望田にお願いしたから大丈夫だろう。本人?にも家の周りから出るなと伝えたし、バイトもお目付け役として一緒にウロウロするようだ。


 スーパーはウチから歩いて15分くらいの所にある雑貨品やらも売っている所だが、そこに行くまでの道には家が立ち並び道路も私道から県道に変更されて道幅が広がったし歩道も付いた。残念といえば畑やらビニールハウスがなくなって古き良き風景がなくなった事か。まぁ、畑ばかりで風が吹くと車が土埃まみれになっていたが、それがなくなったので洗車の手間が減ったと思おう。


「それで、来たのはいいけど何が食べたい?なんのメニューも考えてないんだけど。」


「そうだな・・・、肉は確定として焼くか煮るか・・・。たまには茹でてもいいな。」


「魚は?魚と言う選択肢はないの?ブリとか良さそうなのあるわよ?」


「刺し身っておかずになる?ハイボールと刺し身で一杯ならいいけど、御飯食べないと君怒るだろ?」


「うん!ちゃんと食べてお風呂入ってしっかり寝る。貴方ってば変に集中すると全部投げ出して没頭するでしょう?」


「没頭すると言うか、煩わしくなるんだよ。ほら、集中してゲームしてる時に辞めろって言われたらイラッとするみたいに。まぁ、終わったら終わったでまとめて食べるから太るんだけどね・・・。」


「だから決まった時間になにか食べる。今晩は煮物にしようかしら。ぶり大根とサバ味噌どっちがいい?」


「に、肉は?」


「魚は魚肉、何なら畑の肉がいい?」


「・・・、サバ味噌で。あぁ、後ササミ買っとこうか。フェリエットがサバ味噌食べられるか分からないし、明日検査するし一応茹でたササミとか、焼いたササミを出している方がいいと思う。味は・・・、なくていいかなぁ・・・。」


「買うのはいいけど勝手に焼いて食べちゃ駄目よ?あっ!鳥刺し勝手に籠に入れてるし、その4Lのウィスキーは買うの?」


「ハイボール用に買って自分で作ろうかと。こっちの方が安上がりだし、割るのは適当に炭酸買えばいいし。」


「ダメダメ、貴方これ買うとどんどん飲むじゃない。缶だと1本で終わるのに自分で作るともう少しって言って、ガブガブ飲みだして半月もしないうちに空にするからダメ。500ml6本パックで我慢よ、我慢。」


「へい・・・。お館様!お館様もビールはどうですか?たまには2人で飲むのもいいでござろう?」


 妻を晩酌に誘ってみる。ビール党で強くはないが1本くらいはたまに付き合ってくれる。しかし、東京でガブガブ酒を飲んでいたので感覚狂ったかな?まぁ、酔そのものが殆ど無いので一瞬の酩酊感を味わうだけの為に飲んでいる様なものだ。


「ふむ、ならば1本買うとしよう。して、摘みは?」


「お館様の好きなポテチで・・・。」


「越後屋、お主も悪よのぉ・・・。なにか1つお摘み選んでいいわよ?」


 そんなやり取りをしてビーフジャーキーをゲット。別に勝手に買って食べればいいのだろうし、買って食べた所で諦めて何も言われないが、こう言うやり取りは大事である。会話もなく同じ家に住むのってやっぱり味気ないしね。


 そんな買い物を済ませ家に帰ると、明かりのついた玄関の軒先に猫の餌が置かれていた。やったのは望田ではないだろうからフェリエットか息子だろうか?猫屋敷にされても困るので注意しておくかな。まぁ、今ある餌がなくなるまではあげてもいいし、面倒なら畑にばら撒いてしまってもいいのだが・・・。


「ただいま〜。」


「お帰りなさい。2人で買い物行ってたんだろ?晩飯何?」


「サバの味噌煮よ。作るのに時間かかるしどっちか先にお風呂入っちゃって。」


 妻が台所に立ち息子と共に居間へ。横になるバイトにもたれかかる様にフェリエットが寝ている。流石猫、よく寝るが元々夜行性なので今度は夜に歩き回らないか心配だ。


  挿絵(By みてみん)


「そう言えば那由多が餌を外に置いたのか?野良を集めて糞とかマーキングされても困るんだが・・・。」


「えっ?俺じゃないよ?父さんが朝から置いたんじゃないのか?フェリエットみたいな猫がいないか調べるために。」


「いや、調べるにしても流石に猫の餌で釣らないだろう?もっとこう・・・、張り紙とか・・・、警察に依頼して猫耳と尻尾のついた人は職質かけてもらうとか・・・。あっ!それ依頼し忘れた!」


 話し合って薬集めてとやっていたら肝心の足元の整理忘れてた!ヤバい、すぐに増えるわけでもないだろうが、正式にはギルドからの依頼として伊月に頼んでおかないとまずい。まずいけど話して頼んでいいのかな?この話自体はまだ公でもないし方針も決まっていない。野良で勝手に増えるわけでもないので、直ぐにどうこうとも考えづらい。


 ん〜、どうしたもんかなぁ・・・。話さないといけないけど・・・、取り敢えず伊月に電話して夜の警邏なんかで見つけたら声掛けする様にお願いする。職質?全裸のゴツい兄ちゃんが尻から尻尾生やして動物の耳付けてたら事案だろう?そんな奴見かけたら普通通報する。問題なのは誤って飲ませて服着せてる奴の方。人数把握なり何らかの形で所在を明確にしておかないと、後から何らかの登録をするにしても手間取る。


 まぁ、大分で猫娘のコスプレして歩き回る奴は祭りでくらいしか見た事ないので、そこまで気にしなくてもいいのかなぁ・・・。電話を貰った伊月も動物のコスプレした奴見かけたら職質お願いと言われて悩んでたし・・・。


「腹減ったなぁー。見回りは重労働だなぁー。餌の取れない雑魚に餌をくれてやったり大変だなぁー。」


「餌出したのお前かよ・・・。他の猫にわざわざ餌をやらなくていい。」


「自慢も兼ねてるから嫌だなぁー。私はここの女王だから施してやるなぁー。」


 いつの間にかボス猫から女王猫にクラスチェンジした。まぁ、元々ボスでもなんでもなかったし、喧嘩が弱いから部屋の中から威嚇し出して終わる事もあった。しかし、人型になったせいか女王になった様だ。


「因みに、この周りにお前と同じ様な奴いる?」


「知らんなぁー。いたら多分会いに来るなぁー。他の奴も知ってたら騒ぐなぁー。」


「俺も帰ってくる時に何匹か猫見かけたけど、だいたい顔見知りのやつで変わった事はなかったな。」


「なら、今の所薬を誤飲した動物はいないか。まぁ、ゲート入って出た物をわざわざ動物に与える方が少数派か。」


「だな。そう言えばにゃん太の事を学校で友達に話したけど大丈夫?」


「結城君は見ちゃったし、千尋ちゃんはうちに来るから仕方ないだろう。それと、にゃん太改フェリエットになったからよろしくな。」


「またなんかハイソな感じの名前になったな。微妙なネーミングセンスの父さんにしては珍しい。」


「褒め言葉と受け取っておこう。さて、風呂はどうする?先入るか?」


「いや、さっき帰ったばっかりだしもう少ししてから入るよ。」


「そうか、ならフェリエット入るぞ〜。」


「嫌なぁ!もう入ったなぁ!」


 すげー、怒ったら髪の毛盛り上がるというかブワッとなるんだな。まぁ、それでも連れて行くが。1日ほぼ寝ていたとは言え、あのモフモフ加減では汗もかくだろうし、入れないと言う選択肢はない。それに昼間入ったから石鹸も人の物で大丈夫だろう。


 風呂に入れると耳を両手で抑えて水が入らないようにしている。器用だが、やはり水は苦手なのだろうか?ただ、湯船は大丈夫なようなので良しとしよう。さて、明日の検査で何が分かるかな?

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[一言] 工作員のコスプレ予定のリーさん…職質されそうなフラグ…
[一言] バイトに寄りかかって寝るフェリエットは絵になるなぁ、と思ったけどバイトでかいな 現実だとあったかいから犬とかその他動物にくっつくらしいけど、バイトの体温はどうなんだ
[気になる点] 獣人と人で子供出来るか? [一言] やっぱり奥さん凄い人だな
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