277話 こっちの方が理解が追いつかない 挿絵あり
続報は流れず1時間。処理が間に合ったのか否かだがここにいても特に地鳴り等はない。海を挟んでいるし、その手前にも国はあるのでそうそう聞こえるものでも、ましてや爆撃するのかも分からないので知らせを待つばかり。壊滅させるとは言うが方法は分からないしね。
イメージだけするならモンスターお得意のビームで焼き払う巨神兵スタイルたろうが、それよりも原子分解とかでごっそり地表を削ってそうなのがなんとも。モンスターの空間攻撃を考えると2通りの原理が思いつく。1つは文字通り原子分解。原子の繋がりを分解してしまえば存在できなくなり消失してしまう。もう1つはブラックホールによる特定空間の吸い込み。限りなく圧縮された空間に放り込んで出て来なければ彼等的には技術漏洩の心配はないし、人に押し付けてしまえばその部分は吸い込まれてなくなってしまう。
前者にしろ後者にしろピンポイントでやってくれないと被害は甚大で、ブラックホールを制御せずに地表を展開すれば最悪地球の軌道も変わるので話し合いという名の殴り込みをかけないといけなくなる。
「続報は流れませんね。ギリギリで間に合ったとか?」
「いや、報道含めて何もなくなって誰もいなくなった可能性もある。衛星で観測していたとしても事態の真相を発表出来ないと取る事も出来る。」
「俺的にはどうでもいいですが、宇宙人的には些事なので目標以外は興味がないしとも取れますね。配信を見た限りだとピンポイントって部分を強調してたのでいらない被害は控えたとか?」
(賢者の見解は?)
(宇宙人は争うかって事?そもそも争いって馬鹿げてない?どこまでも広い空間があるのに面と向かって延々と文句言うのなんて時間の無駄。そんな事をするくらいなら僕達は離れるよ。物理的にしろ精神的にしろ関わらなければ済む話だよ。)
(・・・、怒りは・・・、相手より自分が正しいという怒りはないのか?)
不思議に思う。相手より優れていたい。それは誰しもが思う事でそれにより発展してきた。不自由な誰かより自由でありたい。例えば飛行機がそうだ。人形地べたを這いずるのに鳥は自由に空を飛ぶ。それを大空に夢を抱いたと耳触りのいい言葉に置き換える事は出来るが、裏を返せばアレが出来るのにオレ達は出来ないのが悔しいから、研究し開発し出来ない自身への怒りを持って進んだのだろう。
(それは非生産的だよ。出来ない事を出来る様になるのとそれに対しての怒りは別物。同一視するから歪むんであって、出来ない事実と感情を別に考えないからミスをする。冷静さは大切だよ?君の言うユーモアもね。)
なんか違う回答が来たが、敵対するくらいならやりたい事をやった方が生産的と言う話だろう。確かに掃除を依頼した星をエラーが出たからといちいち壊滅させていては育つものも育たない。貰った指輪はコストがかかるから1人1個と言われたし、そのかかったコストをなくすのはもったいない。まぁ、あれだけ廃棄品を出す奴等がもったいないという言葉を知っているかは微妙だが・・・。
『臨時続報です!出現したのガーディアンと思しき飛行物体は多少の抵抗を受けた後都市上空から姿を消しました。繰り返します出現した・・・。』
「終わったのかな?」
「詳細はテレビでは不明ですね。集中しても特に音は聞こえませんでしたし。」
「東京にいる小田達からもなんの情報もない。ギリギリセーフで被害0なのか?不気味だが現地映像は衛星でも経由しないと見れないしな。」
「いなくなったなら今から明日にかけては疎開者が大量に帰ってきますね!退出ゲートは15階層、進むか上昇アイテムで出てくるかですけど、クロエさんの為にもどんどんモンスターを倒してほしいなぁ。」
「その願望は分からんでもないが、職に就いてない子供もいる。ちょっと神志那さん呼んできてくれ。ギルドとして上昇アイテムの数と護衛要員を集めて疎開者の安全な退出を目指す。」
他国の被害は二の次!優先事項はセーフスペースにいる一般人と言う名のペーパースィーパー達の退出。疎開者そのモノは今日まででかなりの数になり、ライフライン維持やどうしてもその場を離れられない人、後はウチには来ないから大丈夫と疎開しなかった人がゲート外にいる。ギルドクエストなんて発注するのはスタンピードくらいだと思っていたが、まさかこのタイミングで発注するとはね・・・。
本部長達は任地が決まっているので早急に現地入りし、駐屯地を管轄県の臨時ギルド本部及び疎開希望者の集合場所とした。こういった場合子供と老人が移動のネックとなるが、政府が溜め込んだ回復薬を放出して老人に配布したので、歩いて逃げられないと言う事は多分ない状態。
まぁ一定数飲みたくないやら、そもそも疎開も自由意思だったしセーフスペースが本当に安全かも分からなかったので、自分の家に残ると言う人もいた。その残る人には政府からの依頼で治癒師が動けるように無料で措置をして回ったのだが、ちゃんとした政府からの仕事の依頼なので後から一律でお金がもらえるとか。
疎開先セーフスペースへの移動はギルドが、外での治療や移動は政府主導と言う事で割と住み分けは出来たんじゃなかろうか?俺も何度か疎開を手伝ったが、セーフスペースの馬は子供より大人の方がビビっていたし凝り固まった固定観念がないのか、普通に草を引っこ抜いたり不気味な木から実を取ったりしていた。
因みに住む場所問題とトイレ問題があったが、箱を使って囲いを作りトイレにして貰った。ブツは消えるので悪臭もないし、個人スペース問題もだだっ広い草原なのでテントを持ち込みさえすれば好きな所に泊まればいい。食事はまぁ・・・、料理人がいれば楽しめるがいない場合は持ち込んで作るか馬を食え。
旨味しかないが歯のない人も食えるので、美食を追い求めない限りは餓死する事はない。日本政府含め自然災害発生時の避難先に出来ないかとデータ収集をやっているようだが、既に海外ではギルティタウンなるよろしくない名前の町、或いは村が出来ているので今更だろう。退出問題さえクリア出来ればほぼ支障のない新天地とも言える場所だが、生活様式はかなり変わるので創意工夫次第。
実際疎開した人達からは電気足りないやら、ネット使えないと言う声がわんさか上がりガーディアンが出るまでの間に急ピッチで電波塔が作られたし、発電機も遥達が頑張ったおかげとクリスタルリアクターでどうにか賄えた。
本意不本意という話をするなら今回の件はソーツとしては諸手を上げる結果だろう。モンスターの持ち出しは彼奴等としては容認できないが、掃除しないのも困る。俺達が地球から出られないならゲートに入るしかない状況を作ればいいし、ガーディアンを弄る許可も貰えたので持ち出されたモンスターも処理し、後顧の憂いである不用意な持ち出しもやめさせられる。
結果だけ見るならアチラの手の上で踊っていた様なモノだが、そもそも歓迎されない交渉だったので仕方ないか。まぁ、祭壇を見つけたとしても多分交渉そのモノは歓迎されないだろうが・・・。
「呼ばれてきたよ!1階層分の上昇アイテムはここのギルドだけで34個。ざっくり計算しても丸一日はかかるかにゃあ〜。15階層。到達組は自力でいいけど、ペーパーの人は少ないけど待ち伏せされると死ぬ可能性があるし。」
「やっぱりネックはそこになってきますか・・・。入った時も誘導に付いたスィーパーがモンスターは倒したし、出来る限り最短ルート通ったから戦闘経験は実質なし。ウチは中位が多いからいいですけど、他の所は安全策を考えると本部長と副長がメインで誘導かなぁ・・・。ま、現地は現地の本部長達に任せましょう。見ていないのに未熟やら任せられないなんて判断できませんし。」
上昇アイテムを持たせて望田達を送り出しマスタールームには俺と神志那だけ。ローテーションを組んで退出作業を行うが、長丁場になりそうだ。初めて職に触れて舞い上がっている人もいるらしく、外が安全と聞かされればそのまま怖いもの見たさに奥へという人もいない事もない。
青山が仕事が滞ったサラリーマンらしき人をセーフスペースへ連れて行った時は、やれいつ終わるやらいつ出られる?納期が間に合わないやら、外が壊滅したらどうやって出ればいいと矢継ぎ早に質問されたらしい。そして、15階層の退出ゲートの事を懇切丁寧に話すと目の色が変わったとか。
好きで早めに疎開したんだから大人しくしていればいいし、壊滅したら仕事どころではなかろうて・・・。まぁ、退出する優先順位は職に就いていない子供やその家族。その後老人となり、成人男性やらは後になる。たまには休めよ?セーフスペースに暇つぶしは乏しいが、馬には乗れるぞ?
「さてと、ウチもチェック要員で行きますか。高槻先生の論文だと職に就いていない子供達にどんな影響があるか分かんないし。」
「モンスターとの接触は出来る限り控えてスィーパーが盾になる様に連れて行くよう指示はしましたが、何があるかわからないのでお願いします。松田さんとも話してWHO経由で各国にスィーパーでない子供達がゲートに入った場合の健康被害データがないか調査してもらいましたが、ロシアに存在したので渡しておきます。」
後ろ暗さしかないだろうこのデータ。対象数が多いし一番嫌な方法で一番嫌な事をやろうとしたであろう証拠。流石にポジティブには考えられない。何を思ってやったのか?今はそれを追求している時ではないので目を瞑る。そんな目を瞑った俺に出来るのは回復薬を渡し後から影響が出ないか年単位で調べるくらい。
赤峰夫妻の赤ん坊はお腹の中で元気にしていると聞くし、母体がバリアとなって胎児には影響しないのだろう。だからこそ問題はそのバリアのない子供達となる。だってモンスターってガチに有害だし・・・。
「おけおけ、深刻な被害を見つけたら報告するよ〜。ただ、セーフスペースで鑑定した限りは何もなかったし、あった被害と言えば馬に乗りそこねたじっちゃんが背中打ったくらいだね〜。そう言えば個体成長薬が一杯出てるみたいだよー。」
「それは被害というより本人のやらかしです。あの馬って潰して食おうとしても微動だにしないんですよ?いいところ見せようとして飛び乗り失敗とかでしょ?進化薬は後で考えます。」
それを聞いて神志那も笑いながら出て行き部屋に1人。タバコを取り出してプカリと吸うが、テレビから速報が流れない以上持ち出しは一カ国だけだったようだ。どうやら割と人類はお行儀が良かったらしい。今後を考えると退出してきた人達にライセンスを発行するのと、低年齢スィーパーをどう扱うのか?
他はクエスト参加者に対する報酬の配布・・・は、参加者名簿とライセンスカードの照らし合わせだから取りに来てもらえばいいか。国として被害はないので退出したらそのまま日常生活に戻って貰えばいいし、疎開中の個人への不利益は国が認めない。寧ろ、疎開から帰って何で逃げたと怒られたなら裁判で勝てる。
しっかしこうして考えると輸送機は惜しかったな・・・。個人対話型AIに自動修復ユニット。田辺ではないが動力と使われていたであろうブラックホールエンジン・・・。ん?動力とエンジンって同一視してたけど原動機と動力って別物だけと同じで良かったのかな?まぁ、大本の名前は事象の地平動力だから間違ってはないか・・・。多分莫大なエネルギーは生み出すし。
そんな事をつらつら考えていると電話が鳴り、相手を見ると松田から。テレビ速報は流れないが政府の方にはなにか話が来たのかな?被災地支援はウチの管轄じゃないので勝手に方針打ち出してたからやってくれればいいのだが、なにかあったのだろうか?まぁ、被害状況だけでも教えてくれると嬉しいが・・・。
「もしもし?お疲れ様です。被害状況が分かりましたか?」
「お疲れ様です松田です。被害状況はモンスターを持ち出して保管及び研究していたであろう施設の消失です。初め全く被害なしとの報告を出していましたが、衛星監視カメラで各国がそれぞれ確認した所、ガーディアンが現れた地域にあった建物の1つが綺麗さっぱりなくなっていました。」
「やらかしてますね・・・。後出しで被害ありましたじゃ通用しない規模ですが、建物が小さかったわけじゃないですよね?」
「まさか、それなりの大きさですよ。衛星の画像では黒い穴になっているので地下まで貫通させたんじゃないでしょうか?」
「地下なら見つからないかもと言う浅はかな考えですね。人的被害もないしどうせ地盤沈下で建物が倒壊したって言いはるんじゃありません?」
「その可能性は大ですし、そう言われたなら我が国は支援を行いません。疑わしきは罰せずでしたが、これからは疑わしきは近寄らない路線に変更です。」
「それがいいでしょうね。ガーディアンがこれ以上うろつかないならモンスターの持ち出しはないのでしょうし、持ち出そうとすれば死んでしまう。報酬貰いながら粛々と仕事をしましょう。それで、話はその報告だけですか?それなら私も疎開者誘導に行こうかと思いますが。」
「いえ・・・、動力の話です。」
「・・・、研究するんですか?個人的な意見としては基礎科学を固めてからステップアップしてもいいと思うんですが・・・。」
「見つけた当時と今では状況が変わってきている・・・。クロエさんの配信は既に地球外生命体の脅威を示してしまいました。」
「脅威?なんか危ない事ってありましたっけ?あの配信では私がひたすらワタワタしていただけでしょう?後シャコ業者が喜ぶとか。」
「そんなシャコだけ扱ってるピンポイント業者がいるわけないでしょう。不味かったのは胸ぐら掴まれた事です。現状、貴女は人類の最大戦力なのですよ?その貴女が安々と吊るし上げられたら誰もが地球外生命体を脅威に思うでしょう?」
ソーツ斎藤の片手ネックホールド!クロエは足が地に着かない!まぁ、見えなかったので仕方ないが、そもそも交渉していて手をだされるとはね。まぁ、そうなるように煽りはしたが。しかし、交渉そのものは成功の部類だろう。それに最高戦力と言われても接近戦は得意じゃないしなぁ・・・。
「脅威と宇宙に行くのって矛盾してません?普通に考えるなら引き篭もって地球から出たくない路線だと思うんですが・・・。」
「援軍捜査というやつです。実体を持つ宇宙人がいるのなら何かしらの方法でコンタクトも取れるでしょう?それこそシャコにお願いしてでもね。」
「シャコも宇宙人も迷惑な事この上ないですね・・・。先に言いますが私個人としては推奨しませんし、発見できるとも限らない。やるなら宇宙ステーションやらコロニー作ってからでしょう?それにモンスター退治もやらないといけないんですよ?」
「その為のマンパワーでしょう。私個人としては各国がクローズしつつ、閉塞感の中でモンスター退治だけをするのはよろしくないと思っています。特に今回ガーディアンの出現は次がないと思いつつも、隣国が下手にやらかすと自分達にも被害が及ぶとして監視の目が強まる結果となります。その目を逸らす先が・・・。」
「動力であり宇宙開発と?昔売り出した月の土地の権利書は有効ですか?」
「まさか!そんな権利書なんて無効です無効。新しく売っている所はありますが、行って住める人以外は無効です。仮に主張したとしても占有権があるのでどうしょうもないでしょう?」
どうやら移住しないと月には住めないらしい。まぁ、持ち家があるので移住する気はない。ただ、目眩ましにしてはいささか動力はリスキー過ぎると思うのだが・・・。もう少しなにか別のモノはないのだろうか?この前エマと話した時は米国でアルミホイルが売り切れて、頭にアルミホイルを巻き付けた人が増えたり、シャコの目の代わりが配信動画用に3Dメガネを買う人が増えたと言っていた。
「何にしても個人としては推奨しませんし、田辺理事が持ってきた計画書のように宇宙エレベーターからやるならやってくださいよ?ミスって地球が吸い込まれるとか考えたくもない。」
「その辺りはNASAとの連携ですよ。米国の方としても宇宙エレベーターについては賛同しています。」
無限の彼方へ、さあいくぞ!ってバズじゃないんだよ。確かにジョージは好きそうだし若返ってアグレッシブだけどさ!多分動力の話は出していないだろうが混ぜるな危険の香りがプンプンする。洋画で宇宙人と仲良くするのってE.Tくらいしか知らないし、後のは大抵ドンパチやってる。
宇宙やべぇと思って帰ってきたが、俺が小心者なのだろうか?いや、そんなことはないはず!クソデカいクリオネに意思疎通できず頭からムシャムシャされるのが怖くないわけがない。そもそも宇宙行って何星人と仲良くなるつもりだよ・・・。翻訳要員とか願い下げなんだが・・・。
「何にしても計画倒れな事を願います。では、第一陣の疎開者が帰ってきたようなので、そちらの対応に向かいますね。」
「分かりました。・・・、あぁ、ギルドを国際組織にしようと言う話が国連本部で上がっています。日本でのスィーパー管理体制は他国としても手本にしたいようなので耳にだけ入れておきますが・・・、視察の依頼・・・。」
「却下です。そもそも動き出して1年も経ってない組織を手本にするなんて時期尚早でしょうが!国民性や地域性があるんです、何でもかんでも真似ればいいと言うモノでもないでしょう?」
「ええ、なのでギルドの組織表と連携状態を書面にして渡しました。ただ、今回の件で職に就いた方は国内外問わず増えています。その点だけは留意しておいてください。では、私もこれから会合に出てきます。」
松田との電話を切ってプカリ。眼下には退出してきた人達が集まりどんどんはけていく。そうしなければ次の組が出て来るのに支障をきたすからだが、治安維持で啓蒙していた警官達はギルドから駅に続く交差点で交通誘導が大変そうだ。何せ海の中を埋め立てて作られたギルドから街へ帰る橋は車がひしめき合い、いくら誘導しようとも量が多い。
灯されるブレーキランプの赤が血の様に見え、ゲートに関わって死んだ人達の流したものの様に思える。ただ、それが繋がって進んでいく様はさながら輸血か。既にゲートと人は切り離せない所まで多分来ている。なら、この先もより良い結果を求めて進むしかないだろう。
下に降りて望田達とローテーションで退出を手伝いどうにか22時前には最終組まで帰せた。助かったのは割と15階層到達者がいて自力退出に乗り出した事。ひと稼ぎして帰ると言っていたが大丈夫だと信じたい。まぁ、今回ばかりはソロもおらずどこかのパーティーに参加していたようなので、最悪死ぬ事はないだろう。
先に出た妻や救護要員は医務室でスタンバっていたが来る人は少なく、代わりに道が混んでいたせいで地下の温泉が繁盛していたし、食堂も賑わっていたので急遽鳥と魚を取りに奥のセーフスペースへ行く羽目になったが、無事を喜び飯を食っていたので良しとする。
まぁ、料理を作る方は大変だったしS料理人に依頼を出して外で露店をやってもらったのでギリギリさばけたかな?ある程度車がはけた後に帰ってきた伊月と柊に話を聞くと、治安の方は端から指輪に貴重品を収納しているだろうと泥棒被害は今の所ないらしい。ただ、帰り着いた後に被害届けが来る関係上、ギルドクエストで泥棒確保は発令しないといけないかもなぁ・・・。
そんな事を考えながら妻や望田と家に帰り着いて母屋に入るなり服を脱ぎ散らかす!この数日ウチの国でガーディアン出ないかとか、もしかしたら世界中でガーディアン出たらどうしようかとか気を揉みすぎて疲れた・・・。先に那由多は帰ってるはずだが気にしない。シャワー浴びて唐揚げとハイボールで一息つきたい。
「お帰りって、なんで下着でソファーにダイブしてんだよ!」
「好きなだけ見たいなら見ろ。見たくないなら見るな・・・。父さんはたいそう疲れています。」
「お風呂沸いてるかしら?沸いてるなら持って入るわよ?」
「ナチュラルに携行品扱いするのな・・・。風呂は追い焚きしないと冷めてるからするよ。ギルドで温泉に入ってくるとばかり思ってた。」
「この人ったら今更女湯に入るの嫌がったのよ?流石にまずいって。」
「息子よ・・・。お前の精神は守ったぞ・・・。」
「現在進行系で下着姿の美少女がソファーにうつ伏せなんだがな・・・。そう言えばにゃん太見なかった?見つからないんだけど。」
「外では見なかったわよ?」
「おっかしいなぁ。大抵この時間は帰ってるんだけど・・・。」
ウチのにゃん太様が行方不明らしい。バイトもいるから大丈夫だと思うが後から探すか・・・。春先なので外でお泊りもよくあるしそこまで・・・。
玄関からガラガラと音がするので望田が用事があって来たのかと顔を上げる。ヤバい、理解が追いつかない。
「ただいまなぁー。」




