276話 やらかしてます 挿絵あり
「一応今日が期限か・・・。今日は面会対応はせずにマスタールームに籠もるけどカオリはどうする？」
「私もここにいますよ、日常業務も殆ど無いですからね。ガーディアン起動の予定日に向けて各国とも疎開処理に追われたりしていましたが、ウチの国でもその動きが全くない訳でもないですからね。東京の方にいる他の本部長達とチャットでもします？」
「恨み言いわれそうだからやめとく。実際問題ニュースで見る限り、向こうは緊急措置として犯罪者のゲート入り緩和も打ち出してたから大変そうだしね。」
見殺しは出来ないと政府は犯罪者やスネに傷のある人もゲート入りを許可したが、その分監視の目は強い。新しい公安室長のニュー千代田から現在受刑者と指定者には首輪カメラを付けると通達が来たが、付ける事自体は俺の管轄じゃないのでいい。
問題は出た後で、受刑者は刑務所に戻って大人しくすればいいが力尽くでの脱獄も可能だし、指定して付けられた人もその手の人なので大人しくしているかは微妙。だってそう言う事をしてお金を稼いでいた人達が更に力を付けるのだから面倒は増えそうだ。
スィーパー犯罪者になるので、ギルドとの連携を取りたいとして先に通達が来たので、なにかの際には協力しましょうと返しておいた。まぁ、東京には本部長多数なのでコチラよりは安全だろう。実際受刑者の入るゲートは東京にあるゲートを指定しているし、スネに傷のある人も警察署に顔を出してからじゃないと認めないとしてある。
ガーディアン起動を通して犯罪者や、その手の人達に文字通り首輪を付ける事に成功しつつあるが、本当にガーディアンが起動するかも分からない。願わくばやらかした人がいませんように。
「そう言えばにゃん太ちゃんが昨晩凄く鳴き声上げて喧嘩してましたけど大丈夫でした？」
「あ〜、季節柄発情期だからなぁ・・・。どこかのオス猫取り合ったか縄張り争いとか？春先は餌食べたら外で遊んでる事多いし今朝は見なかったなぁ。」
別に家の周りに野良猫が多いわけでは無いのだが、住宅地になる前は畑しか無かったので相対的に家の周りに猫が集まっていた。それこそ人の車の上で寝ているヤツもいれば車の下でたむろってたり、そのまま交尾してたりと好き勝手やっていた。まぁ、ウチのにゃん太は去勢しているので発情期だから騒いでいると言うより、周りの猫が騒がしいから騒いでいるような感じ。
ただ家の周りって畑が消えて宅地になっているのだが、このままだと他の猫は保健所に連れて行かれるのだろうか？野良なので仕方ないが、いっその事ギルドに連れてきてしまおうか？アニマルセラピーとして敷地に住み着かせれば問題ないよね？
トイレとかは望田に猫語を話して躾けてもらえばいいし。何気に音を武器にする望田は動物会話ができる。本人曰く鳴き声を脳内でイメージに変換して笛を吹けばいいだけなのでお手軽だそうだが、テレビで動物番組を見ていて自然と身に付いたとか。ただ、配信動画の映像にしろ音声にしろ電子加工された後なのでノイズが入るらしいし夏場は盛った虫の交尾させろ！繁殖バンザイ！と言う声が聞こえまくるとか。
本人曰く『あんまり聞きすぎると、私もそうしないといけない気分になりますね・・・。』との事。望田には発情期は無いはずだが、時折妖しい光を宿して俺を見るのはやめて欲しい。まぁ、人間なんて年がら年中発情していると言えば発情しているのだが・・・。妻とも昨日いたしたし・・・。
「どこがやらかすと思います？一応今日明日大丈夫なら被害0で終わりですけど。」
「私は被害0を望むけどどうだろう？各国の政府も被害0を目指してるけど水面下での動きは分からないからなぁ・・・。ゲート外は駄目、ゲート内は特に言及なし。なら、さっさとゲート内に研究場所を移せばいいだけだけど、ソーツも反省して一定の監視はしてそうかな。」
「監視したとして研究するとやって来て叩き潰すんですかね？」
「どちらかと言えば勝手にデータ持ってくんじゃない？モンスター作ってるやつがモンスターの事知り尽くしてない訳ないし、ヤバそうな部分だけ部分削除するとか？多分、外で研究するなって言うのは探す指針もなくて面倒だからだと思うし。」
実際人がモンスターを研究するとした時、出来る場所はゲート内では限られる。不干渉のゴミ箱だがウチの星のゴミ箱には仕切りがあってセーフスペースがあるのでそこを調べればいい。まかり間違ってもモンスターが跋扈する所に研究施設を作るなんてバカはやらないだろうし、ゾンビではなくモンスターが押し寄せる研究施設とかおちおち研究も出来ない。まぁ、研究対象は勝手にやって来るよ？コチラをぶっ殺しにだけど。
「戻りました。疎開希望者は私と青山さんでセーフスペースに送り届けましたが最終組まででかなりの人数でしたね。」
「おのれソーツ！カメラ取付時のガチ恋距離はいいが、首を長くして掴むとは何たる所業！今見ても腸が煮えくり返る！会う機会があったら抜き取ってやろうか・・・。」
「やめとけ青山。跡もなにもないんだからせんでいい。それと、スマホの待受は変えたよな？」
「はい！切り抜きのガチ恋距離はやめてシャコの方にしました！」
「それにもせんでいい。養殖業者からお礼として、ギルドにシャコが大量に届いてみんなで食ったのを忘れたか？」
研究用なのかは知らないが、シャコやら目の良い海産物の大量発注があったらしい。実際あの配信の問い合わせの9割近くが音声が分からない事と、視えない宇宙人を見たいと言うもの。いの一番にここに乗り込んで来たのはJAXAの田辺だったが、視えたモノを再現して見せると概ね納得した。しかし、どう動くやら意思疎通の方法を聞かれても困る。最後の実体宇宙人は念話？でいいのだが、他のヤツとは話していない。
また、輸送機が飛び立った事に対してご立腹だったが配信で見た通りと黙らせた。まぁ、本人も動力と言う単語を出した手前突っ込まれたくなかったのだろう。ブラックホールエンジンの事を聞いたが知らぬ存ぜぬで白を切り通した。この件を追求するか否か。増田とも話し合ったし松田やらとも話し合ったが、設計図に沿って作るとして文部科学省が一部推進しつつ開発しているらしい。
らしいというのは誰が設計図使用を許可したか不明な為・・・。いや、不明と言う事で明確化されただろう。何せ増田や松田がお茶を濁したい人物とすれば、総理大臣くらいしか思い浮かばない。それ以外の圧力があるとすれば米国からだろう。スタンピードが発生し奥の箱が流出したのは日本以外だと米国しかない。
あの国でなんの設計図が出たのか？話に上がらないし国益を考えると極秘にしたいと考えるのが普通だろう。エマからなにかの際は助力を！と言う話もあったし疑わしさはある。まぁ、何から何まで疑っていても疲れるだけなので分からない事は分からないで済まそう。
「覚えてますとも！指を舐めるエロティックなクロエさんは素敵でした！」
「クロエ、判定は？」
「ギルティ！ちょっと51階層まで目に付いたモンスターを片っ端から殺しながら旅してこい。」
「1人は寂しいので一緒に行きましょう。ストレスは敵です。美しさに陰りが出たら人類の・・・、果ては宇宙の損失です。化粧品いりますか？肌にいいと言うので奥様方からヒアルロン酸やコラーゲンをもらってきました。」
「いらん。貰ったって抜き取ったんじゃないよな？」
「まさか、ちゃんとメーカーまで行って買いましたよ。施設見学は中々有意義でした。今度頼んで自分で作ろうかな？」
そんなに簡単に作れるわけはないが、コラーゲンだけ抜き取るなら出来るのかな？まぁ、貰っても魚介臭や鶏の臭いがしそうで使う気はないが・・・。
「しかし、何時までこうして不安な時間を過ごせばいいんでしょうね？何処かでガーディアンが出ればはっきりするんですが。場合によっては持っていかれた腕のお礼参りも辞さない。」
「あの時も大慌てでしたからね・・・。」
「そう言えば賢者さん？って今も話せるんですよね？なんか言ってないんですか？」
残り1割の問い合わせ。俺が二重人格か否かと言う事だが全て否定した。状況的に二重人格宣言すると色々と面倒だし、俺が地球人から宇宙人にクラスチェンジしそうで面倒。まぁ、魔女と賢者がいる時点で推定地球人と言う状態だが今更それを話してもねぇ。現時点で言えば・・・、ここにいる面子は全員知ってるな。話した事は夏目しかなくともいる事は知らせてるし。
「話した所で分からないよ。時間関係は色々面倒みたいだからね。」
そんな話をしている間に正午を周り、テレビからは慌てればいいのかどっしり構えればいいのか微妙な話ばかり流れてくる。夏目ではないがどっかがやらかせば分かりやすいんだがな・・・。
『緊急速報です！ガーディアンと思しき飛行物体が日本以外の地域で観測されたと内閣府から発表されました！現在観測されたモノは1つ！日本に被害はないと思われますが、自身の身を守る行動を取って下さい。繰り返します・・・。』
「どっかやらかしたな。」
「ですね。すぐに壊滅に動くと思います？」
「さぁ？見てから急いで処理して間に合うならそれに越した事はないんじゃない？」
報道の限りだとガーディアンが出たらしい。壊滅したという知らせはないがその地域はてんやわんやだろうな。丁寧な作りをするなら一応、警告とかしてくれるかもしれないし若干の自己処理時間をくれるかもしれないが、現れただけで大人しくしてくれるかねぇ？まぁ、目の前に命の危機があるのでやらないわけにはいかないのだが・・・。
そんな中電話が鳴り出ると松田から。詳細情報として話してくれるが出たのは某北の赤い国。あそこ単体でやらかすとは思えないので、何かしらの取引でもしたのかな？あの国が壊滅したとしてその国としてのメリットは割とあるし。
