267話 どうするべきか
多忙でまた短いです
神志那の指示出しが終わりそのままゲートへ。生憎と言うか青山は別件だし夏目は帰還していなかったので仕方ない。まぁ、帰ったとしても長丁場だったので疲れているなら今日は上がりで良かったのだが・・・。流石に回収と言う手を打ってくるとはあちらも思っていないだろうし、動きとしてはこちらが早いだろう。
「馬は大丈夫ですか?まぁ、そんなに難しいモノでもないですが。」
「多分大丈夫!一時期ラボに入り浸ってたからイメージもできるにゃ。」
「ならさっさと行きましょうか。」
来た馬を捕まえて走り出すが、相変わらずどうやって走っているかは分からない。そんな馬に揺られて辺りの風景を置き去りにして向かえば、途中で神志那が尻が痛いと休憩をとっても相応の時間でラボが見えてくる。幸いと言うか、まだ残骸はそのままで見えるのはJAXAの服を着た人と人形達。
しかし、回収したとして以降の調査はどこでしよう?情勢不安から一時凍結としてもいいが、今度は期限はいつだとうるさそうだ。納得の行く説明がなければ向こうも正当性を盾に延々と話してきそうで煩わしい。煩わしいがそれで投げ出しても事なんだよな・・・。いっその事修理完了して本来業務の輸送に戻ってもらう?
スタートとしては自動修復装置を回復薬の生産工場に組み込めないか?そこがスタートなので欲張らなければ『期限を定める為にメインコアを組み込んだら飛んでいきました。』で済む話だろう。何かしらの批判はあるだろうが、そこは人類の技術では分からないモノを取り扱ってるので、この事態も想定できましたよね?と返せる。
まぁ、それで荒唐無稽にマスター辞退しろと言われたら、然るべき決議の末に解任してもらっても構わない。そもそもマスターに未練はないし、それが大筋の決定なら仕方ないだろう。後釜?やりたい人を据えればいいよ。ただし、一般スィーパーとなったからには好き勝手やらせてもらう。今でさえスィーパーを束縛するような法律は犯罪を犯した時くらいしかないので、そこで文句を言われても困る。
「そう言えば神志那さんはアレを触ってなにか読み取れました?」
「分かった事は斎藤っちに全部データで渡したから、それ以上の事は分からないのだ。」
「ふむ、どれくらいデータって覚えてます?」
「思い出せる範囲だと、輸送機は元々全部独立したパーツをドッキングして作ってるとか?何処かが壊れてもパージして船体を小さくも出来るし、逆にパーツを増やせば配送量は増えるにゃ。ただ自動修復ユニットが壊れたのを許容範囲と判断したメインコアは多分ポンコツぅ〜。」
「多分考え方の相違でしょう。物が運べるなら輸送機としての機能は失われていない。壊れようが代わりが多数なら廃棄でも構わない。ただ、修理して復帰出来るならそれでもいい。まぁ、修理する相手がいなければ無意味なんでしょうけどね。」
多分必要なのは浮遊ユニット、メインコア、自動修復ユニットの3つ。それさえ無事なら輸送機は継続できるし1つの破損なら取り替えれば済む。間に挟む輸送部分をどんどんドッキングすれば大きさも自由自在なのでいいのかな?ただ、型式としては古いのかなぁ?指環なんかの技術を考えるとかなり古めかしい部類だと思うが人類としては最新なんだよなぁ・・・。
「おや?クロエさんと神志那さん!丁度良かった、なんで来たか知りませんが手伝ってください!」
そんな話をしながら輸送機は近づくと思いの外歓迎を受けた。神志那が去った後は斎藤が主導して調査していたが、何を手伝ってほしいのだろう?外観的にはあれから変化していないので問題はないと思うのだが・・・。
「斎藤殿主語がなければ伝わらぬよ。お久しぶりでござる。斎藤殿が言いたいのはメインコアを戻して欲しいと言う事でござる。」
「メインコアを?まだ調査中という認識ですが終わったんですか?」
「見た感じまだ飛べないよ?鑑定する?」
「浮遊ユニットも外したし、ドッキングも解除したのでパーツ毎に調査しようかと!」
なんだか煮詰まっているが修復までの期間って算出出来ているのだろうか?いや、そもそも自動修復ユニットは破損していた。なら、即時修復は出来ない?しかし前見た時はそれなりに修理していた様に思う。なら、もう一度そこを分解して停止させれば即時修復は不可能なのか。神志那曰くドッキングさせて1つの輸送機としていたなら、信号さえ通らなければ修復は出来ない。
「本格的に修理出来ない状態じゃないんですよね?」
「違いますよ?手間はかかりますが治癒師なら結合出来ます。治癒師の中位が復元師なのはこういった物も修理するためでしょう。モンスターを結合出来るのにこれが結合解除出来ない分けないじゃないですか。」
「うぉ!機械生命体産まれちゃう?確かに鉄も砂鉄集めて結合すればインゴットにできるし、コップ一杯の水も増殖させれば乾燥するけど溢れるくらい増やせるにゃ!それどころかイメージと理解が進めばこの船の燃料も・・・、そもそも物体として存在しているなら単体ではなく結合体。なら、分子レベルで変換させれば修復出来る。もしかして自動修復ユニットの原理は分子変換?それだとテレポートも可能で自己さえ確定出来れば素粒子レベルに分解した後指定の場所で結合出来れば・・・。」
神志那が思考モードに入ってしまった。テレポートとか分子と言われるとダブルオーとか?見てないから知らないがなんか攻撃すり抜けたりしてたな。テレポートかは知らないが小田は真っ二つから復活して戦ったと聞いたが、確かに失った血肉を増やすのに必要な分の原子を取り込んで変換出来れば傍目から見れば回復しているように見える。
回復薬も似たような原理と言っていた記憶があるが、もしかして血液が増やせないのって情報量の問題とか?まぁ、全く増やせないわけではなく他人の血液が増やしづらいだけで、治癒師なら自分の分はどうにかなる。骨を繋ぐのも欠損をパーツ持ってきてくっつけるのも、見方を変えればプラモと変わらないので多分似たような事が出来るのだろう。そもそも藤は取り外しも交換も出来るボディーに変わってしまっているし。
「メインコア・・・、その前になにかおかしな動きってありませんか?漠然としていますが。」
「おかしな動き?ここに籠もりっきりのかかりっきりだからなぁ・・・。JAXAから来てる人もほとんど代わり映えしないし・・・。」
「ん〜、今何人くらい来てます?」
「多くはないですよ?一度来てそのままって人もいますし。覚えてる限りではローテーションでここに来てるのが3人。ただ、この方達はそろそろ引き上げとかも言ってましたね。元々コレから取れるデータって重力発生装置の完成品だったり、液化クリスタルの効率的な利用動力の完成品だったりと、物凄く有用な物が多いんですけどなにせ動かせませんからね。起動状態でデータが取れれば更に詳細な物が取れるんでしょうが、メインコアがないんで無理だったんです。」
常時出入りは3人。後は視察とか?まぁUFOあるよと言われれば見たくなるのは仕方ない。仕方ないが見たそれを即どうこうしようと思うだろうか?仮にその3人に息がかかっていたとしても報告を上げて即行動する?ん〜、わからんな。
「取り敢えずコアが欲しいのは分かるんですが、本当に大丈夫ですか?」
「確実とは言えません。私達も分からない事は多いですから。」
「でもここまで来たなら嵌めちゃおう!私も改めて鑑定したいし!」
「いや、神志那さん。輸送機を回収するって話してましたよね!?」
「拙者としても見てみたいでござるな。光で話せるなら鑑定すれば対話表も作れるかもしれんでござろう?」




