262話 休みの午前中 挿絵あり
「貴方〜、買い物行くけどなにがいる〜?」
「お徳用ビーフジャーキー。無かったらガムお願い〜。」
「分かったわ〜。」
「せいっ!せいっ!」
妻は買い物に行き、息子は上を脱いでの筋トレと空手の型。我が息子ながらよくやる。ギルドは平穏に回っていて行方不明者数にさえ目を瞑れば特に大きな動きはない。毎度のように『姉さん事件です!』的な事は起きない。仮に言葉が続くなら『犯人は僕です!警察がすぐそこまで来ています!』だろうか?実際ゲートを運用しだした張本人なので間違いない。
4月も中頃に入り久々の休み。本来ならもう少し休みは多いはずなのだが立ち上げが忙しいのは何処も一緒でギルドも例外はなく、一般職員は別として本部長と副長は毎日の様に働いていた。しかし、ようやく休みが来たので家で縁側に座り息子を見ながら本を読んでいる。庭で植木に向かい正拳突きやら蹴りやらを放っているが長年やっているだけあって様になってるな。
「那由多君、精が出ますね。」
「そう言うカオリもね。」
汗を拭きながら軽く息を切らして帰って来るが、軽く2〜30kmは走ってきたのではなかなろうか?普段も走りに行くって言ったらそれくらいの距離なので間違いはないだろう。バイトも散歩として連れて行っているが普通の犬なら嫌がる距離。それを妻と俺は別として那由多か望田、下手したら両方が連れて行く。大型犬の見た目で俺が背中に乗れるくらい大きいのでいいのだが、普通の大型犬でも5〜6km程度を1時間くらいかけて歩くのでオーバーワークも甚だしい。
そんなバイトは大人しく望田から頭に水をかけられているが、目線の先には相変わらずフリーダムに俺の横で寝ているにゃん太。視線に気づいたのか尻尾だけパタパタと動かしてこっち見んなとしている様だが、バイトからすれば好き勝手しているのにどうして怒られないのか?と言う様な感情が見え隠れする。
お猫様には人間勝てないんだよ。腹を出して寝ていたのでモフモフと腹を撫でてちょっと猫吸いをする。されるがままだが多少面倒なのかな、頭を肉球でポフポフと叩いてくる。
「よし、猫補充完了。で、那由多はどれくらいそれ続けるんだ?朝食後少ししてからずっとやってるが。」
「型と打ち込み、ハンマートレーニングやらデッドリフトはやったしそろそろ終わろうかな。」
スィーパーだからいいのだろうが、ハンマートレーニングでどっかから貰ってきたタイヤを2本くらい駄目にするのは普通なのだろうか?叩きすぎて殆ど跳ね返らなくなってるし・・・。ただ、逆を言えばこれだけやってるんだから躰は鍛えられていると言う自信はつくだろう。実際プロのアスリートでもやらないような過酷さだが、息子曰く出来そうと思ってやったら割と出来たので続けているらしい。
「そう言えば父さんもなにかやりたいんだろ?取り敢えず木を殴るか?拳を鍛えるのにはいいんだけど。」
「いや、付け焼き刃の格闘術じゃ無理だからそれは諦めた。代わりにサブミッション系と言うか何でもありスタイルになりそう。まぁ、人と戦うなんてやりたくもなければ喧嘩なんてしたくない。」
心構えとしては一応ある。残りは程度の問題で最悪は殺害となるがそれは受け止めよう。既に他人をそれぞれの目標があろうともゲートに誘っているのだから綺麗事の時間は終わっている。そもそも奉仕刑で奥につれていけばそれは見殺しと大差ない。直接手を下すか否か。それが問題なだけだ。
「俺がやるのはあくまでルールのある格闘技だからな。てか、モンスターにサブミッションって通じるのか?」
「那由多君、モンスターに腕らしき物があるなら可動範囲はある程度決まってますよ。なら、逆パカ出来ればそれで一応壊せます。まぁ、それだけじゃ倒せないので徹底的に破壊するかクリスタルを抜くしかないんですけどね。」
「そっか・・・。なぁ、鍛冶師で戦うとしてやっぱり俺はハンマーで叩き潰すのがいいのか?武器もこのハンマーだし。」
そう言って取り出したのはスレッジ・ハンマー。ただ、片方は平たくなく尖っているので、そこを叩き込めば点での打撃もできるし平たい方で叩けば面でも殴れる。どちらが有効と言う事はないがシンプルなので扱いやすそうだ。最悪投げ付けてもいいしね。
「基本的にそれが出来ればダメージも倒す事も出来る。ただ、説明の分だけ戦いを組み立てた方がいいかな。無闇矢鱈と突っ込めばそれだけ被害もでるし。鍛冶師ならなにか作れるだろ?」
「選んで色々試したけどこれって言うのがなぁ・・・。武器メンテも出来るからいいっちゃいいけど、なんか面白い事はしてみたい。」
難しい話だな。面白い事とはそれぞれで感じ方が違う。本を読むのを俺は楽しいと感じるが、嫌いな人から見ればそれは地獄だし運動が嫌いな人から見れば望田が走る距離は異常だ。フワッとしたイメージで言われても本人が納得しないとなんとも言えないんだよなぁ・・・。
「それなら面白いを作ったらどうですか?」
「面白いを作る?」
「ええ、作成があるならそれで面白いと思うモノを作ったらいいじゃないですか。」
「面白いを作るか・・・、ならあれを作ってみるか。」
そう言って息子がハンマーを地面に振り下ろしているが、何を作るつもりだろう?どうでもいいが庭を荒らさないでほしい。せっかくこの前剪定と草取りをしたんだぞ?まぁ、魔法でやっているのですぐなのだが・・・。
そんな息子が作ったのは泥人形。普通なら直立しないが作った物は直立している。ただ、動かない人形を作ってどうするつもりだろう?そんな人形に最後にハンマーを一振り。叩かれた人形の表面は土色から多少光沢が増し陶器っぽくなっている。ただ、曲がるだろう肘やら膝、腰なんかはそのままなので薄汚れたシャツを着た人に見えなくもない。カカシにするにはいいかもしれないが、これ単体だと不気味だ。
「これでよし。多分大丈夫。」
「泥人形でなにする気だ?」
「いや、欲しかったのは木人なんだよ。流石に植木を木人にするのは駄目だろ?なら土で作ればいいかなぁって。結城がいればもっと色々出来そうだけど今は反応するだけだな。」
そう言って息子がハンマーを指輪に収納した後、泥人形に向かって正拳突きを出すと泥人形も鏡合わせのように反対の拳を出してくる。多分造形師の様な自由度も魔術師の様な事も出来ないプログラム通りに動く物を作ったんだろうが、中々いい動きをしている。ただ、泥なのでぐにょんと拳を突き出すと若干下に下がるが・・・。
「早く動くとやっぱり芯が無いから壊れそうになるか。」
「骨のない泥人形だからなぁ・・・。骨格標本でも買ってくるか?私も欲しいし。流石に本だけ読んでも実物があった方がグニグニ動かせるし。」
「サブミッションやるなら欲しいですよね〜。私が捕縛術習った時は他の人とやってましたけど、今やると力加減間違った時点で腕とか折れますし。」
「実際この人形ってどれくらい自由に動かせるんだ?」
「自由にか・・・、他の人は知らないけど俺だと最初にどう動いてほしいか考えながら作って、それをそのままトレースする感じかな?当然って言えば当然だけど指がなかったら物は持てないし、持てるように自分で生やす事もないよ。学校とかだと新しくバトルチェス将棋部が出来て、そこの面子が色々やってるかな?」
また分けの分からん部活ができたな・・・。囲碁サッカーは聞いた事があったが何でもかけ合わせればいいと言うモノでもない。そもそもルールってどうしてるんだろう?興味があるが・・・。
「聞かないスポーツ?ですけどルールってどんな感じなんですか?」
「俺も詳しくは聞いてないけど、将棋の盤面でチェスっぽい駒の動きしつつ駒が殴り合うよ。全ての駒は2マス動けて最初に3体裏切りを仕込む。後は互いに駒を動かしていって、ポーンの動きだと相手の駒の前で防御か攻撃を選ぶ。この時2マス動いてたら攻撃出来ない。」
「ターン制でやるんですね・・・、その話だと1マス動いて防御が最適なんじゃないですか?」
「いや。角とか飛車もあるからそのコマは動いた後に攻撃できる。代わりに防御がない。防御も背後から叩かれると有効打でコマが半壊するけど使える。そして全損したら板から取り除いて相手の手待ちになるけど、それを相手が板に戻した時に裏切り指定だと相手の駒じゃなくて自分の手駒に復帰して、そのまま自分のターンになる。」
ルールだけ聞くとシンプルだが思ったよりも頭を使いそうだ。下手に裏切りのコマを見抜けずに土壇場で王将の前に置いたならそのまま討ち取られてしまう。かと言ってポツンとなにもない所に打っても投了まで遊兵になる可能性がある。それに、裏切り指定の駒をさっさと相手に送り込んで使わせるのも手で、じわじわとプレッシャーもかけやすい。
嫌だな、最後の詰めと思って打った駒が裏切り者で反撃してくるとか。ターンをそのまま差し出さないといけないので、防御出来ずに相手に駒を渡す事もあるし、固めた陣形を崩される事もある。動かした駒しか選択権がないのならファランクスも無理だろうし、穴熊では巧みに躱していかないと徐々に削られる。
「面白そうだな、ルルブってないの?」
「なんか分厚いやつがあるっぽいけど俺は持ってない。必要ならコピーして貰ってこようか?うちでボドゲ大会する時にやってもいいし。2人なら人数いらないから出来るだろ?」
「お願いしようかなぁ〜。最近新しいの買ってないから少し増やしたかったし。」
「そんな事家でしてたんですか?ボードゲームって難しそうなイメージありますけど・・・。」
「コミュニケーションツールの1つとしてね。中学とかになると親と話す機会って減るじゃん。でもゲームなら話しやすいでしょう?別に今日なにやった?とかは聞かなくてもいいけど、顔を合わせて雑談出来る場が出来ればいいかなってね。」
思春期だと何か親といるのが小っ恥ずかしい時期があるし、自室があるならそこで何かをやる自分の時間が増える。飯食ってる時に急に親から、今日どうだったと聞かれても何を話せばいいか分からないし、話した所で親の知らない事や話しづらい事は話さない。そうやって会話の機会が減れば子供はよく分からない他人になってしまう。まぁ、それが子離れの時期でもあるのだろうが、同じ家で共同生活をしているのに一言も話さないのは少し寂しい。
そこで考えついたのがボードゲーム。別に桃鉄とかでもいいが、あれは最終的に喧嘩になる可能性があるので同じ目標に進む系のゲームとしてこれを選んだ。PCのチャットで出来なくもないが、やるならやはり面と向かってやらないとね。用意するものも紙とペンがあればいいと言う手軽さもあるし。
そしてやった本人が面白いと思えば自ずと人を増やしたセッションや別の人とシナリオをやりたくなる。そうなれば勝手に友達を呼ぶとかするので誰と遊んでいるのかという目も届きやすい。何せ家に友人を呼ぶにしても、それなりに付き合いのあるやつしか呼ばないだろ?家という自身のパーソナルスペース内に招き入れる人物が見知らぬ他人と言うのはおかしな話だ。
これが小学生とかなら友達の友達と言う第三者もあり得るが、中学高校なら流石に考える。仮に家に来たのがいじめっ子だとしてもそれはもう普段から顔を見ていれば雰囲気で分かるだろう?それに絶対に自室には入れないだろうし。
「タイトルって何があるんですかね?人生ゲームとか将棋オセロは分かりますけど。」
「有名と言うか映画にもなった人狼ゲームに色んな作品に影響与えてるクトゥルフ神話、ネクロニカって言う未来を旅するゲームにパラノイアって言う理不尽ゲーム。他もパン屋が国起こして戦争するやつとか?色々あるよ〜。入口なら人狼がサクッと終わるかな?そう言えば教科書にも乗ってた狂気山脈が今度新しいシナリオでクトゥルフ神話で出るとか記事で見たな。」
昔はミスカトニック大学とかも米国にあったらしいけどハリケーンでなくなったらしい。今は跡地しかないし既に取り壊されて別の建物が立っているので聖地巡礼は出来ない。米国に行った時に見れば良かったかなぁ〜。建っていた所の地名はアーカムではないので多分魔導書とかないはず!
ただ、アル・アジフが美少女だったり巨大ロボが出て来るなら見学くらいはしたいかな?現在進行系でロボットは作られているし、藤に頼めばそれっぽい物は作れると思うが・・・。今の所各企業が作っているのはパワードスーツ、正式にはパワードアシストスーツで基本は人力補助装置。間違っても橘が使う物を量産はしていない・・・、多分。
これはクリスタルリアクターが作れないからではなく暴走や破損時のリスクが大きい為。下手にモンスターに壊されて仲間諸共吹っ飛ぶ事態は避けたいと市販は見送られている。スィーパー自体は特定年齢でゲートに入れば成れるが、その命を使い捨てにするのかと問われれば答えは否。
誰が至り誰が至れないのか?それだけは誰にも分からない。言うなれば可能性の卵を投げ込んで割れなければOKではない。人の分だけ可能性があるので、巻き込み事故でその可能性を減らしたくないから採用していないだけである。まぁ、それは日本だけなので海外は分からない。単純に奥へ行きたいだけなら採用してアシストマシマシで走り回っている可能性もある、
なんたって物販会場でスーツは売り捌いてしまったのだし・・・。アレを鍛冶師に頼んで改造してもらったらそれなりにいいもの出来るんじゃないかな?フルプレートアーマー配信者のチームはスーツを改造したのか、やたらと動きが良くなってフルプレートアーマーなのに山岳地帯を駆け回り、パルクールしているかの様にバク宙やら回転しながらの踵落としでモンスターを倒したりしている。重装歩兵とは一体・・・。まぁ、重装で歩兵だから動きに関しての制約はないのか。
浦橋だって大斧持って走り回ってるし、泰山だって痩せたとは言え大柄な身体でぶちかましている。鬼頭も大柄だが並々ならぬ握力でモンスターの細い部分なら握り潰せるしな・・・。
「国語で狂気山脈読んだけどアレがゲームか。ちょっと人数集めてセッションしたいかも。そう言えば父さんこの人形使う?」
「う〜ん、動かなく出来るか?」
「そりゃ出来るけど動かなくていいのか?上手く使えば柔道の乱取りみたいな事も出来ると思うけど。」
「いや、取り敢えずどれくらいで殴ればいいのかから始めようかと。魔法込みならぶち抜けるけど素だと無理だからなぁ。この前足の小指をぶつけたら痛かったし。」
常時強化していれば多分ぶつけた相手が壊れるんだろうが、何もしていないとこの身体は常人と変わらない。なので素足で小石を踏めば痛いし、にゃん太が甘噛すれば凹む。怪我しても巻き戻るが痛いものは痛いんだよ。なので泥人形を殴れば当然痛い。
ただそこに強化が加わると話が変わる。部位毎に強化して全体を覆って仕上げるのだがモンスターも殴ればぶち抜ける。ただ、このパワーで人を相手にするとどうなるか?答えはミンチ。赤峰に教えた通り卵を割りまくるのが調整には早いのだろうが、せっかく人形があるならそれで試してみよう。
「そっか、父さん細いからなぁ・・・、いや細くなったか。取り敢えずこれの硬さは多分セラミックとかくらいだと思う。土に含まれた物から作ったけど硬そうな物が集まったイメージだから多分それくらい。家の庭って父さんが適当に肥料撒いたりするからなにが混ざってるかよくわからないんだよ。まぁ、他の所も変わらないけどさ。」
「木人ならぬ土人、ギルドに配備してもらえたら使う人は多そうですね。那由多君作るバイトしません?ポケットマネーで払うので試しに1体金貨10枚とかで。」
「いいですよ。ただあんまり難しい事は出来ないんで簡単な命令とかにしてくださいよ?後、壊れたら壊れっぱなしなんで適当な時にメンテしに行く方がいいですかね?」
「その辺りはギルドの鍛冶師がやるからOKです。必要なのは動くイメージですからね、ギルドの人だと武器改造はお手の物なんですがこういった物は不得手なんですよ。」
「継続メンテで定期的に小遣い貰おうと思ったんだけどな・・・。まぁ、試しにやってみて必要なら呼んでください。」
息子と望田が話す横で人形に近寄りポコンと叩いてみる。分厚いガラスを殴っている様な感じなので多分人よりは硬い。ただぶち抜くとそのまま表面は砕けそうなのが怖いな。まぁ、元が庭の土なので簡単に再生出来るだろう。
少しづつ力を上げていき普通に全力で殴る。やはり人形の方が硬くこちらの手が痛い。そこに強化を加え更に殴る。さっきの全力の倍。更に倍・・・。
「割と硬いなこいつ。質感のせいかかなり強化して殴るまで壊れなかった。」
「いや穴開けるなよ。不純物マシマシだけど炭素も混じってるから強化セラミックとかダイヤモンドぐらい硬いはずだぞ?」
「ダイヤは割と砕けるぞ?ハンマーで殴れば一発だ。宝石の硬度って靭性は加味してないから瞬間的な力には弱い。だから強化して素早く殴れば壊せる。逆にルビーとかの方が確か靭性はあったかな?」
「それを聞いても『じゃあ素手で殴って壊そう!』とはならないんですけどね、普通・・・。」
「まぁ確かにね。ただ、関節っぽいものがある分外すのは簡単だよ?ほら。」
人と同じ形なので後ろに曲げる様に引っ張るとボロリと外れるように取れる。人でやったら大惨事だが人形なので取れた所で中の土が見えるくらい。ただ、外れた腕の所から土が落ちるので血が流れている様に見えない事もない。
「う〜ん・・・、一回作り直すか。練習相手になればいい程度に作ったからそこまで作り込んでないし。」
「ならいいものをやろう。」
取り出したのはマイクラ宝石。売ればそこそこいい値段なのだろうがゲートからそれなりに出るので稀少性という言葉が消えかかっている一品。だってこれから切り出しただけで山の様に指輪作れるし・・・。デカければいいってもんでもないんだよなぁ。宝石なんてジュエリーくらいしか使い道がない石だし、それから稀少性が消えればただの石ころ。
なんか裕福層はこれで壁を作ったり床に嵌め込んだりしているみたいだけど、ウチは一般的な家でしかないのでコレをはめ込む場所なんてない。仮にやるなら砕いて息子に窓ガラス補強してもらうとか?クリスタルガラスならぬダイヤモンドガラスが作れるだろう。ただ、風で小石が飛んできたら砕けそうではあるが・・・。
「なんだろうなぁ・・・。俺も古い人間なのかなぁ・・・。いいものってレベルじゃねーぞ父さん・・・。」
「いや、いっぱいあるし。カオリも持ってるでしょ?」
「開けてない箱を考えるとかなり・・・。元素周期表にあるものはコンプリートしてるんじゃないですかね?ただ、炭素と宝石は別物なんで真っ黒い塊が出た時は微妙な気持ちになりますが・・・。」
「あるあるだね、那由多も潜るんなら気をつけろよ?箱開けて中身が爆発する事もあるし。」
「相変わらずゲートの中は殺意高いな・・・。トラップとか?」
「いや?単純にニッケルとか黄リンとかが入ってるだけ。開けた瞬間に煙が立ち上がりだしたら直ぐに蓋閉めろよ?ほっとくと本当に爆発するしその後の開封は水中開封だからな?一応数秒は膜でもあるのか中の文字を読む猶予はある。」
指輪に放り込んで忘れるとやべー箱の1つ。一応欲しい物を思い浮かべるとそのものが取り出せるのでいいのだが、開封したかも忘れて箱出ろと思って出した後に処理せずにまた指輪に放り込んで忘れるととどんどん猶予がなくなっていく。選択肢は早めに処理するか開けても大丈夫な所で開封するかである。
海外の配信者はこれで命がけのゲームやってたな・・・。元々は開封動画だったのだろうが水素、メタン、プロパンと銘打たれた大の液体瓶が出てそれを指輪に収納せずに開封して黄リンが出るという大惨事!下手すると辺り一帯ぶっ飛びかねないが、何を思ったのかそこから黄リンの箱でデーモン・コアゲームをやりだした・・・。
幸いチキンが勇者となりゲームを切り上げたので良かったが、あのままやってたら確実に死人が出ていただろう・・・。動画のラストで俺は盾師だからな受け止めれるぜ!と言ってたヤツがいたが周りを巻き込むなよな?テロップでは付与師が爆発規模を最低にしていますって出てたけどさ・・・。
「箱はギルドで開けよう・・・。それで、これ使っていいのか?」
「好きにしていいぞ。試しにダイヤモンドアーマーとか宝石剣とか作るか?」
「宝石剣とか別の次元に飛びそうだから嫌だ。」
「なんですかそれ?」
「ゲームのネタですよ。」
「ただいまー、いっぱい買っちゃった〜。」
「ちょうどいい所に。莉菜〜ダイヤモンドいる〜?」
そんな話をしている内に買い物に行った妻が帰ってきて昼食。昼からはちょっと遠出して長湯に行こうかと言っていたし、運転頑張らないとなぁ・・・。




