257話 失敗?
「小さいって言ってもどれくらいなんです?まさか小指ほどではないでしょう?」
「流石にそれは小さすぎます。物はコレ、大体成人男性の指先から肘までの長さの棒です。まぁ、棒って言ってもこれの中に有るのは制御ユニットでこれを差し込んだ先が稼働して自動修復ユニット全体になると思って下さい。」
「つまりはメインコアから司令を受けて動く物で独立はしていないと?」
「コレ単体ではそうなりますね。勝手に修復し続けたら暴走した時に膨れ上がって原型が分からなくなるでしょう?人体に例えるならオンオフ可能な免疫機能だと思って下さい。」
「なんか不便そうですねそれ。『壊れた!なら即自動修復だ!』で済む話だと思うんですが・・・。」
そこまで自動で作れなかったのか?或いは常時修復してれば破損しても墜落しなかったんじゃないのか?自動修復装置が壊れて元々ガタが来ていたらしいが装置その物を一気にとは言わないが徐々にでも修復出来ればいいのではないか?それとも修復機能は修復出来ないとか?いや、オフの時に壊れたら何もできないのか。
「これは自動で修復する機能で、元に戻すとは言っていません。それならオンにし続けたら余計ななにかが作られると思いません?有り体に言えばかさぶたとかがん細胞とか。」
「え?いや、元の物より膨れ上がったらそれこそ本末転倒でしょう?重くて飛べませんとか、荷物入れるスペースまで塞がっちゃいましたとか。」
「ええ、なのでオフにする機能です。機械だと考えるから不要と感じますがコレが生物を元にモデリングしたものだとすると理にかなってるんですよ。例えばアレルギーは免疫機能の過剰反応です。人の身体では機能と名が付いていてもオフには出来ず、常時反応して止まることも休む事もないトルーパーです。それを個人で停止できたなら?」
「花粉症も蕎麦アレルギーもなくなりますね。反応しないんですから・・・、更に必要なコストが減る分長期的に運用できて燃料を食わなくて済むし、必要な時に必要なだけ修復出来れば使用しない分タスクが他の事にさける。それにこの船自体経年劣化のペースが遅いなら常時オンである意味がない?」
「ええ、当たりです。時間というものは止められるものではないです。なら、不変であるモノもまたない。なら、それを如何に延命して効率的に元の状態を維持できるか?そう考えると不必要な時は停止している方が効率がいいんですよ。よく漫画とかでナノマシンで修復だ!って話がありますがそのナノマシンもまた不要な時は停止しているでしょう?結局永久機関は作れないと言う事です。逆に自動修復機能をオンにし続けると別の形になる、つまりは進化する可能性はありますが・・・。」
どうやら斎藤的には永久機関はないらしい。無いらしいが俺の身体は巻き戻って寿命もない。つまりは何かしらのコストを払い続けているのか帳消しに・・・、してるな。観測出来ないものが身体の中に入っている以上、変化もまた観測出来ない。故に不変で永遠。言わば停滞と言ってもいい身体。そうなると、永久機関は作れるよなぁ。まぁ、哲学的なものになるが。
「永久機関を発明した人が死んだ後にそれが止まってもそれは永久である。」
「ん?なんですかそれ?止まったら永久機関ではないですよ?」
「いや、モノの見方の問題かなぁと。世界は5分前に作られたやら水槽の中の脳って話があるじゃないですか。それに永久機関を当てはめると作った観測者が死んだ後、1分でも1秒でも後に壊れればいなくなった観測者からすればそれは永遠なのではないかと。まぁ、チェック出来ないモノはある意味永遠ですね。」
欠陥なのかどうなのか?不死の薬に不老は含まれていない。ならば何をもって不死とするか?観測者不要で自己観測を続けられるならそれは不死だよなあ。不死=富や名声がある必要はない。必要なのは死なないシステムであって自分が生きていると認識し続けられるならそれは死んでいない。
悪趣味で対話の相手もいないが独り言は呟ける。くわばらくわばら、それはもう精神的な怪物であって人と定義出来るかと問われれば逸脱しているようにも感じるが・・・、人のまま不死に成れるとは確かに言っていないんだよな・・・。そもそもソーツ含めて肉体いらない派だし・・・。
「反証可能性ですね。科学的理論は自らが誤っていることを確認するテストを考案し、実行することができると言う話ですがテストする人間がいなければ科学と非科学を分ける事は出来ません。なので、学者と言う立場から口を開くならクロエさんの考えは非科学に分類されるでしょう。」
「非科学と言うなら人が光避けてる時点で非科学ですけどねぇ。まぁ、配信動画で『ビーム回避余裕でした(笑)』なんて言う名前に反して興味深いものもありましたが。」
「いやいや!一般人?一般スィーパーなにやってるんですか!?命は投げ捨てるものじゃないんですよ!?」
斎藤が叫んでいるが内容は確かに興味深いものだった。モンスターに真正面から歩いて近付き特定の距離毎で回避をするというものだったが、そんなに上手く行くはずもなく距離は結構あやふやな所がある。ただ、そのあやふやな中でもどこまで余裕を持って回避出来たのかと言われれば職による。まぁ、格闘家と鑑定師では身体能力ブーストが違うので仕方ないが、少なくとも格闘家なら来ると分かっていればギリギリ接近戦圏内までは回避できる。
あくまでギリギリなのでぶち当たる事もあればかすめるにとどまる事もある。配信者的にはインナーの性能テストも兼ねていたらしいので、被弾したら仲間が助けてくれるらしいが本当に命賭けてやがる。ただ、安全距離は5mくらいと連呼していたが慣れや経験もあるのだろう。最後の方はジリジリ近寄りながら回避に専念すれば30cmは短縮した!とか叫んでたし。
「気になるなら見るといいですよ。最近の配信サイトはインモーラル・センシティブが甘くなってますからね。性的なものはそのままですが。」
「まぁ、ゲート動画上げると高確率で肌色と血が見えますからね・・・。それと人名みたいに言わない方がいいですよ?」
「発音ってあんなじゃないんですか?まぁ、それはいいとして本題に入りましょう。これを稼働するって事でいいんですよね?」
「ええ、メインコアは外したまま自動修復ユニットだけを復旧出来れば勝手に飛び立つこともないでしょうからね。外部装甲板は一応修復材料になればと取り付けてます。修復の仕方も分かりませんからね。」
「なるほど、そう言えばこのパイプの中身ってなんなんです?」
「一部は指令伝達用の超純水です。穴開けて大丈夫か心配は十二分にあります。不純物のせいで信号がおかしくなるかもしれませんからね・・・。残りは液化クリスタル。多分これをエネルギー源に動かすんでしょう。外部にも色々ありましたが損傷が激しくてよく分かりません。では!」
そう言って斎藤が棒を差し込む。これで劇的な変化が!と、思ったが当たりは暗いままで特に代わり映えもしない。ん〜、まだ修理状態が悪いのだろうか?そんな事を思っていると何やらタブレットと棒をコードで繋いで操作しだした、有線操作で信号を送るのかな?
「ん〜・・・、一応はレコーダーを見ながら信号を真似て作ったプログラムなんですが上手く行きませんね。」
「どんなプログラムなんですか?やっぱり修復しろーとか?」
「そんな感じです。どこか書き間違いがあるのかなぁ・・・。元々地球の物とこれって全く違う原理のモノを無理やり読み取って書いてるから難しいものは作れませんけど、簡単なものなら行けると思ったんですが・・・。」




