231話 禁煙理由
忙しくて短いです
「ここは私の執務室ですよね?禁煙の撤回を要求します。寧ろ誰がこんな指示を?」
「10日程度は我慢してください。それ以降は吸っていいですから。一応これにも理由はあるんです。」
「一応の理由?納得できなければ勝手に吸いますよ?」
タバコと言う物は百害あって一利なし。身体には悪いし肺は弱るし煙たいし口の中もヤニ臭くなる。でも、今は身体を考えずに好きなように吸える。まぁ、元々分かって吸っていたので今更止める気はなかったが、わざわざそのタバコを制限する理由とは?別にタバコやキセルが無くとも魔法は使える。しかし、補助具の名の通りあるとイメージがしやすいのだが・・・。
「表向きの理由として、来客者やスィーパーにタバコを吸わなくても仕事が出来るとアピールしてください。貴女がパカパカタバコを吸うせいで喫煙者が増加した事に対する抑止です。」
「うぐっ!そっ!それは私だけのせいじゃないしぃ?吸う吸わないは個人の自由だしぃ?JPとかは売れたら嬉しいしぃ?」
「事例では未成年のスィーパーがお守り代わりに1箱欲しいと買いに来たと言うのもあります。」
未成年の喫煙ダメ、絶対。成人したら好きにすればいいと思うよ?うん。まぁ、人の事はあまり言えないがTPOと喫煙マナーさえ守れば警察のお世話になる事はない。ただ、タバコはお守りではないので未成年も買おうとしない。したとしても売ってもらえないだろうけどさ。
「表向きと言う事は裏はなんです?裏は?」
「この建物のファイアーウォール検査です。」
「ファイアーウォールって言うとPCウイルスに対する防壁ですよね?私が言うのもなんですが毎日新しいウイルスが作られてるので検査した所で厳しくないですか?最新型も明日には旧式になってもおかしくない。」
「それを踏まえたうえでの検査です。貴女が魔法を使う時は煙が漂う。先入観を誘うものですがコチラとしても登録されたスィーパーの情報流出は避けたい。なので10日間でわざとハッキングを受け、行動を起こした国を出来る限り特定し対策を講じます。無論、その間に登録されたデータは国として責任を持って管理しましょう。要は仕事中に煙を漂わせないでいただきたい。」
責任を持つと言うが具体策は?技術的には転換期で対魔法用ファイアーウォールなんてモノが作れているなら責任と言う言葉を使ってもいいが、それもないのに責任なんて持てないだろうし、失敗して流出なんて事になれば目も当てられない。魔術師がハッキング出来るのか?痕跡は見つけられるのか?問題は先ずそこで何らかの指標でもない限り俺がやった方がマシと言える状況もある。
「具体策は?今やPCなしに仕事は出来ない。そのうえでハッキングを受けると言うなら先ず納得のいく策そのモノを説明してください。」
「ゲート開通当初、警察及び自衛隊で身分と職の確認をして回ったのは覚えていますね?」
「忘れられませんね。私がした訳では無いですが、この管理がなければ状況はかなり変わっていた。」
「その際のデータは全て手書きです。復興等で入力作業が滞っていますが、それが逆に良かった。ギルド開通当初にPCに入れるデータは全てフェイクとし、10日後に真の物と入れ替えます。」
「つまり電子データそのモノが10日間は全て偽データであると?」
「ええ、10日間で延べ数百万の偽データを生成し続け放出します。我が国は偽情報を流すのには慣れている。なのでそのまま偽情報を流し真実を埋もれさせます。」
リスクが少ない作戦と言えば作戦だな。魔法を警戒せずに誤情報発信装置を組み込ませたPCを使い折を見て真実と入れ替える。本当に情報が欲しいなら直接乗り込んでくるしかないが、乗り込んで来た所で真贋の確かめようがない。まぁ、コレで隠しきれなかったら高槻を見習ってタイプライターを使うか。少なくとも物理的な紙媒体なら盗まれでもしない限り流出は起こらない。
つまりは情報漏洩対策の為に稼働後10日使っても万全を期すと。スィーパーか至る都度、報告の義務がない分それはまるっと国の隠し戦力となる。名前が知られるだけでも結構リスクがありそうなので、先入観まで使って隠したくなる気持ちもわかる。仕方ない、公には10日間禁煙するか・・・。
「話はわかりました。公の場での禁煙は了承しましょう。喫煙室ではいいんですよね?」
「吸わなさすぎてもまた不審がられるのでそこでお願いします。」
「対策として穴がありそうですが仕方ありません。一応私の方でも稼働後の調査はするとしましょう。」
個人技能で毎回呼ばれるのも面倒だが、安心安全を考えると仕方ない。なにもないのが一番だが、こればっかりは受け身にならざるをえない。さて、不快な紙は丸めて捨てるとしてギルド稼働に当たっては特に問題がないだろう。しかし、国連も人にちょっかいかけるくらいなら各国に至ったら報告する義務くらい出せよ。そうすればここまで頭が痛くないのに・・・。
「建物自体は問題なかったと思いますが千代田さんはどう思います?」
「私の方としても大丈夫と判定しましょう。因みにギルドの動力源は本部長席の床下にあります。」
「どうせクリスタルリアクターとかでしょ?駐屯地よろしく完結性を持たせるなら外部からここに電力を引くとも思えない。」
「正解です。改造型クリスタルリアクターを配備してあります。」
「改造型?既存でいいんですけどね・・・。だれが作ったか分からない超級爆発物とかの上に座りたくないんですけど?」
「作成者は斎藤さんです。既存のものに対して発電量を5倍、安全装置の改良等が施されてます。常時2基稼働し1基は予備ですね。」
モンスターと自爆エンドするつもりはないが、過剰電力のような・・・。まぁ、あるに越したことはないしいいのかな?R・U・Rの設置も考えると多分必要なのだろう。24時間稼働という話だしな。電力までクローズしたならハッキング自体はネットから以外考えられないし、外を見た感じ有線で何かを取り付けてもすぐバレる。
「これの操作も本部長ですよね?クリスタルの入れ替えくらいでしょうから大丈夫だと思います。一旦出て後は稼働後に問題点があれば話し合いましょう。」
そう話して外に出る。見上げた建物は大きく今はまだ黒いモノリスだが動き出せば観光名所にもなるだろう。そんな事を思いつつ車を出して救護所へ向かう。




