227話 ニュータイプか!? 挿絵あり
「さぁ、出してください!」
「クロニャンの秘宝と聞いて興奮を禁じ得ない!」
「クロニャンて・・・。」
娘よ・・・。その目はやめろ、俺に効く。別に俺が言わせている訳ではない。神志那が勝手にそう呼んでいるだけだ。しかし、ふと思えばあだ名なんて久しぶりにつけられたな。呼ばれる時は下の名前が多くそのまま司か大体つーちゃんとかで落ち着く。変わり者は黒と呼んでいたが、ニャンがつく辺りは時代の流れか・・・。まぁ、猫派だからいいか。
「猫耳キターーーーー!!!ちょっと煽るようにざぁ〜こさぁ〜こと言ってくだされ!」
「ざぁ〜こざぁ〜こ。」
これのなにがいいんだ?人を見るなり罵倒してくれとか・・・。神志那も嬉しがってはしゃいでいるが、千代田に店聞いといてよかった。慌てて手配して客は公安と言われたからある程度は羽目を外せるが、あまり騒いでもねぇ。それはそうと遥は頭に何乗せたんだ?
「遥さん、何でまたスマホ見ながらクロエさんに猫耳カチューシャつけたんですか?」
「天がそうしろと指示したからとか?まぁ、莉菜さんからの指示ですよ。宮藤さんも見れて眼福でしょう?」
「解答に困る所ですね、自分も大分からの付き合いなんで。それよりも藤君もう少し声を抑えて。それと莉菜さんはいつからニュータイプに?」
「はいこれ。」
遥がスマホの画面を俺と宮藤に見せるが、そこには妻からのLINEで『夫に猫耳を付けて写真を送れ』と書いてある。本当に妻はニュータイプになったらしい。多分あの白い筋と独特の効果音が鳴っているはず。と、そんな冗談はさて置き遥以外の面子はスマホを向けるな。代金請求するぞ?藤は連写をやめろ。
「この写真を引き伸ばして使っても?具体的にはラボに垂れ幕として使う方向性で。」
「先生も何言い出してるんですか!?」
「クロエも気づいているでしょう?ゲート内には目印がない。なので、この写真でも目印にしようかとね。写真集を私は買い逃したので患者衣姿の写真しかないですな。」
懐かしいと言っていいのか分からないが、この身体になってすぐの頃病院で撮った物だろう。ん〜、男の姿の写真はほぼ処分されてしまったので、その写真が一番古い本人の写真となる。まぁ、ゲート内に目印がないのは事実で、最悪惹きつける者としての力を使い写真を目印にしようかとは思った。流石にここで使う訳にもいかないので、本気でそれをするなら他の写真を用意しよう。
ただ、仮にこれから先セーフスペースに街ができたとして、何々クロエ写真街とかの名称になったら嫌だな・・・。地元の駅にある垂れ幕は未だに取り外されていないらしいが、そろそろ外していいぞ?町興しは十分だろ。
「おっ!青山氏が嘆きの長文を返してきておるな。今も四つん這いであろう。」
「青山くん?彼もいいよね。抜き取りが上手いとモンスターをかなり綺麗に取ってきてくれるし、欲しい部分やパーツっぽい物もこれですか?っていいながら引っ剥がしてくれるし。」
「流石に銀の玉は無理だったけどにゃあ。やっぱし重力発生ユニットを組み込んでるのかにゃ?飛行原理が分かればあの残骸にしろ宇宙開発にしろ進展がある。流石に今の乗り物はバラしたくないしねぇ。あれがないと私の体力が保たないにゃあ・・・。斎藤さんはどう思う?」
「僕としても意見は一緒ですね。重力ユニットで重量をなくして飛行、瞬間的に増やしてタックルしてるのかも。斥力があれば流体か液体金属なら部分的でも全体的でも変形できるし・・・。」
頭の良い2人が小難しい事を話しているが流石についていけない。まぁ、そんな中でも適当に頼んだ料理も運ばれてくれば飲み物も来る。乾杯とグラスを掲げ一口飲んで料理を食べるが、神志那と斎藤は手を付けずに議論を続行。似た者同士と言うか頭のレベルが一緒なのか放って置くと延々と話し込みそうだ。まぁ、料理は追加できるので食べたい時に食べればいいか。
藤は残念なイケメンになったが、食べる量は変わらないのか結構量を食べている。遥達も食べているしもう少しすれば一息つくだろう。そうして温かいものを温かい内に食べてキセルをプカリ。神志那が興味深そうにキセルを見ているが渡す気はない。渡せば勝手に吸ってしまいそうだしね。
「さてと、そろそろ本題に行きましょうか。その為に宮藤さんにも来てもらいましたからね。」
「ん?自分にも関係あるんですか?てっきり普通に飯くおうぜって話だと思ってたんですが。」
「51階層・・・、ここで最適化のアナウンスを受けたのはこの中だと宮藤さんしかいないでしょう?私は受けてませんし。」
何でアナウンス受けないかって?頭空っぽだからだよ!多分夢詰め込めるからこれでいい。と、バカな考えはやめて真面目な話、脳がないので最適化するものがないからだと思う。高槻のデータから見るに俺に適応出来る最適化ってないんだよね・・・。巻き戻る関係上宇宙線に曝されようがマグマに突っ込もうが、何なら身体1つで大気圏突入しようが大地に立てる。
それはいいとして、望田は何となく感覚でコードが分かっていたし、より明確にコードを発しているこのビーコンの情報が正確に読み取れるなら、それも含めての最適化といっていいだろう。職が使いやすくなったならその辺の部分もグレードアップしてないとおかしいし。そう思いつつ救難信号を出していた方を取り出す。ふむ、前は助けてー、修理してーだったのが今はちゃんと聞こえると、言うか読み取れる。
『当機は不慮の事故により損傷し飛行及び修理不可能。回収して修理可能ならば修理されたし。回収されない場合は廃棄とみなし各ユニットは還元変換される。繰り返す・・・。』
「藤さんと遥と先生分かる?」
「助けてー?」
「修理してー?」
「そんな感じでござるな。」
遥達は初期の俺の様な状態かな?大雑把に受信して細かな所は分からない様だ。斎藤は『えっ!そんな事言ってるの?』と言う様な表情をし神志那も似た感じ。ただ、神志那ならワンチャン触れば分かるかもしれない。ただ橘がゲートを鑑定してぶっ倒れた事を考えると不用意な鑑定は避けた方がいいかもしれない。
「宮藤さんは分かります?」
「事故起こした相手を探せと言うなら確かに適任は自分ですけど、ゲートの中なんでしょう?残念ですがモンスターに殺られたと諦めてください。」
宮藤は概ねあっている。受け取り手側の問題だろうか?全く同じ言葉を聞いているか分からないので、後で書き起こしてもらうかな?それの照合が出来ればニュアンスで受け取っているのか同一文章で受け取っているのかが分かる。ただ、同一イメージを繰り返しているので、これで一致しなければまた別の方向から考えなければならない。
「それにしてもこれがコアないし制御系統なんですね。」
「違いますよ?これは救難信号を出してるだけです。多分もう一つの方が制御ユニットでしょう。」
元々フライトレコーダーだと思っていたので感覚的にはもう1つの方が重要な事を話していると思う。まぁ、そちらを渡すのは追々考えるとして救難信号の方は渡しても大丈夫かな?機能としてコレを付けていると言う事は何かが回収に来そうでもあるが、今までそんなモノは見た事がない。まぁ、該当しそうなのはガーディアンだが、アレ自体はモンスター持ち出し対策の番犬だしな。
「コレを貸し出し願えますか?まだ僕には分からなくてもいずれ分かる様になればもっと進展しそうです。それに、中位の方達でも受け取る情報に差があるのは?」
「斉藤君、それは私の分野ですな。スィーパー科学や脳の変化。更には中層に入る時に発生する最適化・・・。ゲートとは我々が思っている以上に不思議な場所なのでしょう。」
「私も色々情報整理したりしてるけど、お前ら宇宙へ来いよとか、手本くらい見せてやろうか。みたいなものは感じるにゃあ・・・。真面目な話、私達は今地球規模全員でチートしてる。どれもコレも差し出されるのは未来の技術だからね。」




