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街中ダンジョン  作者: フィノ
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209話 あの人の帰国 挿絵あり

 大会も終わりゆっくり出来る朝、体内時計がなせる技か朝7時には目が覚めた。テレビでも見ようかと思ったが望田も遥も連日の疲れのせいか、未だに爆睡中の様なのでベッドで布団に包まりポチポチとスマホで情報収集。取り敢えず青山の言ったホングヌスを検索してみたがヒットなし。まぁ、秘密結社か何処かのスパイがHPを開設していたらそれはそれで心配になる。こう言うモノはさっさと橘か千代田に投げてしまおう。


 スィーパーとして、ゲートに関する情報は豊富かもしれないがテロリストやなんやらの情報は流石に待っていない。国際指名手配とかされていれば何か情報があるかもしれないが、それをされる=ある程度有名なのではないだろうか?日本のニュースに名が上がらない以上、秘匿されているか或いは何かの聞き間違いという事もある。まぁ、語感的に日本の組織ではなさそうだし取り急ぐ事もない。


 他に調べるとすればやはり大会関連か。何が面白いのかお色直し衣装特集や切り抜き動画等様々。しかし、真面目な米国での治癒の話をしているのにタイトリングが『エチエチ本部長殿ASMR』と言うのは如何なものか?まぁ、再生回数には目を瞑ろう。グロい話だが、それが好きな特殊な人もいないわけではないんだし。後は大会で活躍したスィーパー達へ独占インタビューしている東海林の映像や変身した藤の映像が多い。


 藤については何やら一部から希望の星扱いされているが、どちらなんだろう?自分が変身したいのか理想の嫁が欲しいのか?まぁ、造形師自体がそこまで多くいると聞いていないので、自分が変身したいなら肉壁の方が便利ではありそうだ。仮に鍛冶師が自分を作成すると喋る鎧とかになりそう。絶対ネタで「兄さん」って言うと思う。まぁ、今の時代あんな大きな鎧じゃなくて橘が着ているようなシャープなモノをイメージしそうだが。


 後はテレビ局に掲載されたフェイク写真は概ね受け入れられた為、過去の経歴は着々と元から女性でしたが何か?路線になっていっている。分岐点は最初の被害者=男性を何処まで後は消せるかだろうが、元々最初の被害者の情報自体かなり伏せられていたので、後は昔の同僚とご近所さんがどう考えるかくらい?妻の居る救護所に行っても旦那扱いだからいいのだが、法律的に夫として見ているのか、それとも元男として夫として見ているのかは悩む。まぁ、藤の変身の件もあるのでこれから変身すれば申請等は必要になるかも。元からかなりかけ離れた姿になるかもしれないしな・・・。


 他は広告で物販は今日までの記事や企業宣伝が主。大会裏でやっていた国会では色々と議論されているようだが、財政と言うか金貨の流通で揉めているようだ。概ね海外と歩調を合わせるとしているが、今回の大会で国内にかなりの金貨が舞い込むので早期に価格固定を行い通貨とした流通させたい急進派と、1枚あたりの単価が確定するまでは流通を控えたい慎重派がバトルしている。まぁ、国際通貨基金も無視できない問題で早期に案を出すとしていたのでそろそろ決まるだろう。個人的にはレート外通貨として欲しいが、どの道今の基軸通貨でいくら問題は付いてくる。


 そんなニュースや動画を見ながら包まっていたが、いい加減タバコも吸いたくなってきた。未だに夢の中の2人を起こすのも悪いので適当に着替えて外へ。LINEやメールのチェックもあるが、メールの方は急を要する件名はないのでは後回し。LINEの方は宮藤からの研修会の案内や高槻から51階層で採取したものを寄越せと言う催促。他は大会お疲れ様でした等々の講習会メンバーからの挨拶なんか。


 ロビーまで降りて喫煙室でタバコに火を付けてプカリ。誰もいないので、ちょっと妻に連絡しておこうかな。大会中もこまめに連絡していたが、忙しくてまとまった電話はできていなかったし。仕事中だと悪いので先にLINEを送ると、直ぐに既読が付いたのでそのまま電話。


「もしもし?お疲れ様〜、やっと大会終わった。」


「お疲れ様〜、お色直しの度に可愛い衣装眼福でした。帰ってからも色々着る?ぜひコレ着せてあげてってもらった服が多いのよ・・・。」


「ん〜、ヒラヒラじゃなくて動きやすければ?流石に着せ替え人形になりすぎて当面の間は好きな物を着たい。ダボダボパーカーにジーパンとかでいいよ・・・。割とドレスって腰回りとか締め付けられるんだぜ・・・、コルセットとかで。それに、パニエ?あれも邪魔。」


「戦いに行く時何時もドレスだから慣れたと思ってたけど違うのね。趣味が昔のままなら帰っても今ある服で大丈夫かしら?」


「大丈夫大丈夫、寧ろ夏は短パンとTシャツがあればいいし、冬はちゃんちゃんこと適当なスウェットとかでいい。」


「ちょっと、今もだらしない格好とかしてるんじゃないでしょうね?自撮りを送りなさい。」


 だらしない格好ではないので煙を操作して自撮りをパシャリ。この格好なら文句はないだろう。LINE電話ではないのでそのまま送ると直ぐに既読が・・・。操作が早いと言うかなんというか。


  挿絵(By みてみん)


「そこどこ!?襲われない!?誰かに見られてない!?」


「何を慌ててるか知らないがホテルの喫煙室。他の人もいないし自撮りだよ自撮り。この格好ならだらしなくないだろう?」


「違う!ナチュラルにパンツ見えそうな角度で撮ってたから心配したの!ただでさえ目立ってるんだから気を付けてよね?」


「分かった。と、那由多達は元気か?風邪とかは・・・、まぁ回復薬あれば心配はないか。」


「元気に学校行ってる。大会が見れないって結城君は嘆いてたけど、昼休みとかにコッソリスマホで見てるんじゃないかしら?こっちのニュースでは特別授業として観戦させたりもしてるみたいよ?なんでも将来の選択肢に関わるモノだー!って騒がれてたし。」


「言いたい事は分からないでもないけど将来の選択肢か・・・。自分の手前那由多がそれを選択するならとやかく言えないけど、親としては心配がないと言えば嘘になるな。」


 身を持って体験している分、ゲート内が危険な所だと言うのは嫌でも分かる。しかし、それと同時に進路としてスィーパーを選ぶなとも言えない。今はまだ学生で親として入るなとは言えるが、卒業して進学ではなく就職を選んだ時にその選択肢を選ばせないと言うのは自分勝手すぎる。既に海道の様に16歳でスィーパーとして生計を立て本部長に成ろうという人間もいるんだ。


 自分の息子だからといって、危険から遠ざけるばかりが親というものでもない。そんな事がまかり通るのなら誰も危険を伴う仕事には就かないだろうし、何なら警察官も自衛官もいなくなってしまう。親としての我が儘が通用するのも多分この1年まで。或いは、進路としてその道を選ぶなら早めにゲートを歩かせる方がいいのかもしれない。


「那由多がゲートに入るのはやっぱり反対?」


「親の我が儘が通用するならね。でも、限界はある。俺としては就職か進学かを決めてから入るなら入ればいいと思う。幸い既に職には就いてるからな。」


「そうね・・・、遥はどうしてるの?なんかブランドとかで担ぎ上げられてるみたいだけど大丈夫?」


「講師として頑張ってると思う。まぁ、あの子はあの子で甘えるのが下手だからこっちにいる間に甘やかしておくよ。ただ、社会人として自分の夢見た道を進む大人として、大変な所もあるだろうがよくやっている。我が儘かもしれないけど後は好い人が出来て支えてくれれば心配はないかな。このまま東京に居残るかもしれないし。」


 前はデザインして後は発注でもよかったんだろうが、今はデザイン含め作り手が重要視される。それこそ、ただの服ならパリコレとかの俺にはなにがいいか分からない服を褒めちぎればいいんだろうが、スィーパーの着るもの=生命に直結する防具なのでシンプル且つ機能美があって腕のいい装飾師が作るモノはやはり持て囃される。まぁ、それ以外にも糸の質とかもあるのだろうが、それは横に置いておくとしても、最終的に服として仕上げるのはやはり装飾師。中位に至った分遥の仕事にしろ服にしろ依頼は途絶えない。


「前は県外って言っても隣の県だったけど、今度は東京かぁ・・・。ますますあの子帰って来なくなるんじゃないかしら?これで那由多も家を出たら・・・、襲い放題?」


「・・・、お手柔らかに。」


 妻とイチャイチャするのはいいが、巻き戻るので中にいれるのは割と怖い。指くらいならいいがそれ以上はやはり一旦身構えないといけない。まぁ、感覚も何もかも違うし女の子1年生なので仕方ないし、妻以外とどうこうなる気もない。


「優しくしますとも!と、そろそろ洗濯機止まるから切るわね。そう言えば、庁舎の方は4月くらいには稼働できそうだって。」


「分かった、諸々準備しておくよ。」


 4月か。前に千代田と話した時は1年から1年半見てくれと言う話だったが、かなり早まったな。まぁ、従来の建築様式にスィーパーや出土品なんてものが加われば嫌でも早くなる。基礎どうする?採掘家に穴掘ってもらおうぜ!コンクリどうする?調合師に任せようぜ!建材を運ぶ?格闘家でも盾師でも力仕事はどんとこい!今なら一夜城も夢じゃない。


「ここにいたのカ、探していたゾ。」


「お早うございますエマにジョン。探していたって何かあったんですか?」


 時計を見ると9時を周っている。ベッドでのゴロゴロタイムを考えても割と話し込んでいたな。まぁ、今日はオフなので何をしていようが構いはしないのだが・・・。そう言えば朝飯も食べ損なったな。


「うム、ジョンが明日帰国するのでその前に企業ブースを見に行かないかというお誘いダ。私も後一週間で帰国となル。要は近くて遠い国となりつつある日本を観光しようと言うお誘いダ。」


 エマが笑いながら話、その背後には記者が板に付いてきたジョージがペンと手帳を構えて見せる。設計図の取り引き動画は既にネットにアップされ削除はもう出来ない。後はジョージが帰国後に若返り時の映像を流しつつ会見を行うそうだがまた一波乱ありそうではある。具体的に言えば写真集の高騰とか?鍋敷きルートから何故か国益ルートと言う、昔のガンホー株もびっくりな値上がりになりそうなのだが、本当に大丈夫か?世界よ・・・。


 少なくとも指輪にはそれなりの数の在庫があるので、仮に交換申請があっても大丈夫なのかなぁ・・・。まぁ、それはさて置き大会中は忙しくて殆ど見られなかったが観光のお誘いなら喜んでお供するとしよう。俺が運転すると言うと2人共かなり慌てたがちゃんと免許は持っている。ただ、車が望田の指輪の中なので諦めてタクシーで会場へ。到着して周りを見渡すと大会中よりは人は疎らだが賑わいはある。


 顔も姿も隠して騒がれないようにしているので大丈夫だが、客層としてはサラリーマンよりも仮面を着けた要人が多いようだ。多分、これが最後の買い物と勇んでいるのだろう。松田に聞かされた要人の滞在日程は大会終了後2日まで。長くても明日には仮面の人々はいなくなる。その他は多分スィーパーだろう人達が防具やらを買ったり、閉店してしまった遥のブースの前で立ち尽くしたりしている。回復薬を売っていた山口も居らず、飲食ブースももうないので物悲しさがあるな。


「そう言えば、大会終了後に山口さんが米国へ行くって言ってましたけど受け入れって大丈夫ですか?」


「それは大丈夫だとも!私がエスコートして丁重に持て成す予定だ。彼女もエアフォース・ワンに乗れるなら文句はないだろう?」


「えっと・・・、エマ?ジョンの帰国って・・・。」


「エアフォース・ワンだ。フライト後、降り立ってすぐに会見を行いその場で自身が誰かをバラす予定ダ。ただホワイト・ハウスで会見を行うよりもそれの方が信憑性は増し疑われる事も減るしナ。」


「使えるものは使わなければ意味がない。人間関係然り、航空機然り。国費だって必要ならどんどん投資するさ。ここで買える物で兵士達の生存率が上がるならね!と、あのスーツ格好良くないか?流石にパワーアシストハンドだけの様だが私も着てみよう!」


 嬉しそうにスーツを付けていくが、緑の動く棺桶の様なフォルムなので生存率が厳しいような・・・。片方の肩が赤く塗られてても死ぬ時は簡単に死ぬぞ?ソレ。まぁ、エイリアンに出てくるパワードスーツよりはシャカシャカ動いているようなので、装甲という面では優秀なのかな?まぁ、むせるので使わないが。


「そう言えばエマも反応装甲作ってましたけど完成しました?」


「全身アシスト含めたピンポイント式が1番しっくり来たのデ、それのイメージ構築だナ。受け渡せるモノでもないが好きに弄るとしよウ。場合によっては魔法の様に鍛冶師や装飾師なら固定や作成でどうにかなるかもしれないガ、何事も向こうに帰ってからになル。」


 はしゃぐジョージを見ながらしんみりとエマが話す。こちらに来て半年くらいだが中々濃い時間を共に過ごしたので、冬の寒さも相まって少しおセンチなのかもしれない。まぁ、本当にその期間で様々な事があったしな・・・。向こうに帰ればまた、教官やらの任務に就くのだろうしおいそれと遊びには来られないだろう。


「ゲート内で目印があれば行き来はできます。必要な時は頼って下さいね?師匠として微力ながら手助けはしましょう。帰る前に51階層にも行っておきますか?山口さんからの無茶振りがあるかも知れませんから。」


「それも含めてお願いすル。魔法の解説は好評な様だゾ。フルイメージで法を破るより区切った方が成功率は上がるようダ。まぁ、操作での躓きは未だにあるようだがナ。」


「そこは修行ですね。何事も積み重ね、一足飛びで強くはなれませんよ。」


 はしゃぐジョージが他のスーツも試し、ネットで色々ポチりながら会場を歩く。防具関係はやはり人気でどの国のというか、仮面をつけた人がブースの前でスマホとにらめっこしながら現物を見ている。国力と言うか、金貨がモノを言うので抱えているスィーパーの人数や質が問題になってくるのだろう。


 未だに軍人しかゲートに入れたがらない国もあるし、逆に勝手に入れと言う国もある。まぁ、その辺りの方針は考え方の問題なので俺は口出ししない。内政干渉、内政干渉。俺もスマホで武器やモンスター素材の売れ行きを見たが、素材は完売。武器は若干の残りがある。宮藤や神志那が乗り回すルンバが欲しかったがそれも売り切れ。バイクがあるので我慢するか。他は急遽新設されたR・U・R体験会場が増えていた。


 体験と言っても武道館の様に大々的には出来ず畳5枚くらいのスペースに装着者の像が浮かぶくらい。ただ、買い手としても体験できるならしたいと長蛇の列。それを横目にジョージが勝ち誇った様な顔をしている。エマが体験して贈与も決まっているので高みの見物気分なのだろう。実際、いの一番に買い足したと聞いたしな。


「あらかた見ましたがなにか気になるものってありました?」


「企業ブースも気になるがファーストさんの出資するラボも気になる。何か技術を隠してないかい?」


「さぁ?うちは回復薬作る会社ですからね。その延長線でおかしな物が出来てもどうとも。交換した設計図だって中身まだ見てないんですよ?」


「なるほど、果報は寝て待とう。しかし、これから先世界は更に狭くなるが人は更に広がるな。ファーストさんのラボでギルド会議をする時はエマ大佐を向かわせるとしよう。」


 そんな話をしながら会場を後にして本当に日本観光へ。大衆食堂で飯を食いスカイツリーを登って街を眺め、3D広告を見物して雷門の提灯をバックに記念撮影。ここに居るのは大統領としてのジョージではなく、記者としてのジョンなのではしゃぐはしゃぐ。バラすまでのモラトリアムとして楽しめるだけ楽しんでもらおう。


 早い日暮れを前に焼肉屋に入り肉を食べながら一杯!個室を指定したのでいいのだが、姿を見られて多少騒がれた。まぁ、それでもこうして飯を食えるならいいか。入口に前に撮った写真が飾られていたので、次もまたお願いされるかも。ラーメン屋に続き大統領お忍びの店として名を馳せるかもしれない。


「量が!肉の山が!若い胃にはこれでいい!」


「生焼けは食べないで下さいよ?中には腹壊したら回復薬飲むって言って勝手にユッケ作って食べる人もいるみたいですけど。」


「それハ・・・、生卵を食べる日本人ならやりそうだナ。刺し身にしろ玉掛け悟飯にしろ生は好きだろウ?ボーイ、生追加ダ。」


「否定できないのがなんとも。鳥のタタキとか好物ですからね。ステーキはレアがいいですし、ローストビーフも赤身いっぱいが好きです。」


「私は何故か日本に来て精進料理が1番旨く感じているのだガ?今朝も梅粥と漬物だっタ。」


 瞑想しているとは言っていたが、本当に出家しそうな勢いで質素なもの食ってるな。まぁ、好みなのでその辺りは好きにしてもいいし、隣のジョージは焼いた側から肉を食っている。未だに毒味とかあるかは知らないが、毒での暗殺を恐れるならこんな所でホイホイ飯も食えないだろう。


「エマの場合帰国後が怖いですね。胃もたれとか脂っこすぎて食べれないとか。身体が基本なんですから変に食事制限とかしないで下さいよ?」


「分かっていても私も女性だったと言う事ダ。せっかく若返ったんダ、お洒落の1つも楽しんでいいと思えるくらいには前向きにもなれタ。」


「それは良かった!なら、次は全米美人コンテストにでも出ます?目指せミスユニバース的な。」


「いヤ、コンテストはもういイ。何をしようと私は私ダ。この顔とこの身体で生きていくサ。」


  挿絵(By みてみん)


 吹っ切れた様に笑顔を浮かべるエマは元が良い分美しく、中々魅力的な笑顔を浮かべる様になった。思えば来た当初はしかめっ面が多かったが、これも成長して前向きになったと言う事だろう。焼肉屋で飯を食って記念撮影をしてタクシーでホテルへ。そう言えば、エマはこの名に心当たりはないかな?


「エマ、ホングヌスと言う言葉に聞き覚えはありませんか?語感的に大陸の方だとは思うんですが・・・。」


「ホングヌス・・・、表立ったテロ組織なら聞き覚えはあるガ、生憎と聞き覚えはないナ。仮に知る者が有るとすればCIAやFBI、日本なら公安だろウ。ペンタゴンで遊んだ時もそれに類するモノがなかったのなラ、後は千代田に聞くといイ。」


 ペンタゴン資料か、ゲートに関わりがありそうなモノは見たがそれ以外は御国事情に関わると見ていない。賢者と千代田に聞いてみるか。取り越し苦労なら問題ないし、何かあるなら早めに対策を立てて準備はしておきたい。


 そんな焼肉屋での会食を経てジョージが米国へ帰る日。他の要人達を送り出した後に入れ替わるようにエアフォース・ワンが着陸し最後のお見送りとなった。空港に来たのは俺含めて千代田や橘、他は望田や米国へ行ったメンバー達。元々要人警護の一環だったが錚々たる顔ぶれである。


「今回の大会、ハプニングはあったが大変楽しめた。礼を言うありがとう。山口女史については私含め米国を上げてサポートしエスコートするとしよう。」


「ええ、お願いします。私も貴方が若返って来るとは思ってもいませんでしたよ。良好な関係、これが続く事を切に願います。」


 ビシッとスーツを着こなし髪をセットした若い大統領のジョージと握手を交わす。実際設計図の事もあるので関係が拗れるのは避けたい。まぁ、帰ってからの記者会見で仲良しアピールはめいいっぱいしてくれるだろう。


「クロエさん!この方大統領なんですよね!?わ、私なんかがいいんですか!?これ大統領専用機ですよね?ちょっと向こうに行って薬作るだけの私がこんな待遇とか!えっ!高槻製薬って到頭大統領相手に商売始めたんですか!?私は研究さえ出来ればいいので静かな任地だと思ってたんですけど、パーティーとか歓迎会とかいっぱいいっぱいでなにが何やら!稼働したらちゃんと社長もこけら落としに来るんですよね!」


 握手する横で相変わらず山口がマシンガントークを乱射している。これが英語でも乱射出来ると言うのだから凄まじい。向こうの研究員が蜂の巣にされすぎて蜜の様にドロドロにならないか不安だがまぁ、向こうの研究員強く生きろよ?


「高槻さんは行くんじゃないですか?51階層の方に目がかなり行ってますけど。」


「その場合・・・。」


「ええ、新所長である山口さんが表舞台です。私は株主なだけで会社の方針には口を出さないのであしからず。」


「そんなぁ〜!」


 山口が上がり症かは知らないが、強く生きてもらおう。俺だって上がり症でなんとかやれたのだからイケルイケル!そんな2人を見送って握手した手の違和感を確かめると、手の中には折り畳まれたメモ用紙。内容は後から見るか。わざわざこのタイミングと言う事は他には知られたくないんだろうしな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 那由多もゲートに潜ってると女性に 子を作ってから女性にるのか同性で子をなせる世の中になるのかはともかくこの一族の男子は代々性転換するのであった
[一言] こいつの肩は赤く塗らねぇのかい?
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