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街中ダンジョン  作者: フィノ
257/849

200話 激突 挿絵あり

「やってまいりました最終日!残ったのは古強者!激闘の末に本部長の席に就くまで後2つーーー!!!!武器は整備したか!?職を使うイメージは十分か!?さぁ!新たな本部長候補達よ!その腕っぷしで生を掴み取れ!!実況の望田です!」


「朝風呂してテンション:並。私は新しい中位を祝福し、その誕生を阻むものがあれば全霊を持って対決しよう。喜べクロエ、私の願いはようやく叶う・・・。のクロエです。教皇猊下がモンスターを悪魔と認定したようですが、ゲートは地獄の門ではありませーん。ついでに言うと私を聖人認定して聖女扱いするのはやめて下さーい。」


 朝一番、顔を合わせた千代田に言われて久々に何をどうしたらいいのか分からなかった案件。多分、旗印とかにしたいのだろうが、勝手に認定して旗印にするのは辞めてもらおう。モンクなら格闘家出そうだが、今時武闘派僧侶とかいるのかな?昔僧兵も日本にいたし歴史だけ見ると、僧侶ってどこへ行っても武闘派ではあるのだが・・・。テンプル騎士団だって本質を見れば騎士修道会の人間だし。ただ、俺にそれを割り振ると麻婆神父にしかならんぞ?次点でフォロミーと叫ぶ映画のジャンヌとか?取り敢えず、モンスター見つけたら突撃しかしない。


 ただ、ちょっぴり聖遺物という言葉に惹かれて、実はなんか凄いもんあるんじゃね?と、言う少年の部分はくすぐられる。仕方ないだろ?失われたアークとか最後の聖戦とか嫌いな子供はいなかったんだよ!絶対今あの映画は撮れない。あの時代のあの空気だからよかったんだ!今見るとチープなCGだが、だがそれがいい!


「美しいですが聖女ではないですね、お転婆姫です。」


「姫でもありませーん。巻き込まれた一般人でーす。」


 無理だと分かっていてもアピールは忘れない!諦めたらそこで試合終了!何年も言い続ければきっと一般人として見てくれるはず!2回戦以降はシャッフルはないが代わりに2面で行われ、より選手達がよく見える。要人達は何やらカメラを全員持参しているが、昨日の藤のせいかな?テレビ中継されてはいるが、角度によっては見えない所もある。まぁ、払った金額でいい席を取った所とそうでない所があるので仕方はないだろう。残念な事に世の中は大抵理不尽に出来ている。


 開始のブザーと共に最初の選手達が位置取りをした後に戦い始める。ここで負けても副長として雇用される目もある。38人から19人。次の脱落1名で18人が本部長。1名の決定方式は19名による総当たり戦で最も負けが込んだ1名が脱落となる。1回戦のカードはラーメン屋と爺様か。追跡者とオカルトだが老齢な探求者が勝つか、若い狼が勝つか。ある意味見ものだな。もう一面では奏江さんが相変わらずファーストメイクして現れ、相手は確かスクリプターだった男性。最初に魔法合戦していた片割れだが、職の扱い自体は悪くなかったと思う。純粋魔術師と現実を均す編集者。戦いの結果は予測がつかないな・・・。



________________________


       御堂 喜助vs五島 源二

 

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  挿絵(By みてみん)


 デブ・・・、藤の奴は至りやがった。中位だ。羨ましくないと言えば嘘になる。序に嫁達が綺麗だから余計腹が立つ!何でだよ!オレにも少しはいい思いさせろよコンチクショウー!いや、ファーストさんと会えたのは中々いい思いなのでは?親父、ラーメン屋しててくれてありがとう。気合を入れるお気に入りの黒い服。実は族とか怖くて入った事もなければ、バイクはスーパーカブしか乗った事がない。いや、中型とか大型とか怖くって・・・。でも、ここまで来た。最終日だ。ここで勝って最後を乗り切れば本部長だ!夢みたいで、怖さもあるけどあの強さは憧れる。


「ジジイ、腰は大丈夫か?膝は?病気は?頭はボケてねぇーか?」


「ボケとったら本部長にはなれんじゃろうて。はっきりしとるが、病院と言えば多少は手を抜いてくれるかの?持病の癪ががが・・・。」


 腹を抑えてやがるが、見え透いた嘘だな。職はオカルトで間違いないだろう。初日のバトルロイヤルの映像は既にサイトにアップされていて、残った選手を重点的に見た。ギリギリのアップだったんで手の内は分からない。ただ、はっきりしているとすれば、オレが情報を持てたんならジジイも何かしらの情報を持っている。つまり、ここからは切り札の切り合い。無駄に切れば付け込まれ、切らなければ負けてしまう本当の殺し合い。昨日までは小手先の技でどれだけセーブして倒すかを考えた。手の内明かして勝てると思うほどオレは強くない。


「なら帰れ。病院行け。不戦勝なら次まで隠し玉が温存できる。」


「ジジイを敬って華を持たせてくれてもいいんじゃが?」


 にこやかだった顔が破顔し、その目は暗く澱む様に仄暗い。職の名前だけ聞いたならコイツは何処かの魔術結社の人間なんじゃないかと疑いたくなるが、モノクル、シルクハット、マントにステッキと日本人ながらに中々格好いいじゃねーか。特に綺麗に揃えられたヒゲは得点が高い。絶対敵の幹部クラスとか乙女ゲーの攻略対象外なのに人気集めるやつじゃねぇか・・・。


 開始のブザーがなった!左手に黒斗右手に白斗!命名オレ!格好いいハンドガンだから名前は必要!OK相棒!トリガーハッピーパーティーを始めようぜ!湯切りのスナップで手首は和らげぇぜ!


「御託はいらねぇ!」


「いやいや、御託は必要じゃよ!そこの先には本人の真実があるからの!」


 左右のハンドガンから弾を吐き出す。ガンナー程綺麗に撃てない。彼奴等頭どうなってるのか知らないが3km程度なら必中出来る。オレにはそれがねぇが、バラける弾も追尾させれば曲射も跳弾もさせ放題!弾幕はパワーだぜ!と、マントで払いながら普通に歩いてきやがる!?


「知っとるよ、追尾弾じゃろ?何発装填かは知らんしイメージの乗らん攻撃は面倒じゃが、その弾にも道筋はあるじゃろう?」


 緩やかにマントをはためかせ、時に弾を杖で落とし悠々とオレに近付いてくる。上等じゃねぇか!やってやるよ!あの杖は仕込みだ。あれに気を配れば少なくとも即死はない。ジジイならそこまで・・・、体力はないよな?スィーパーは見た目じゃない事は知っているが、オカルトで接近戦が出来るとも思えない。湯切りスナップでリロード完了!ゲーセンにもこんなゲームあったな!


「ほう!次は何を見せてくれる?悪いが雑な攻撃なら刈り取るぞ?」


「雑かどうかは受けてから決めな!」


 左右から2発づつ背後に発砲!ハンドガンの下に刃を着装!ナイフ程度の長さだけど長すぎても邪魔になる。顔をめがけて縦に2発、左右のどちらに飛ぶ?ピクリと左肩が動いた。なら左か、背後に撃った弾を追尾させ左側から回り込む様に2発、頭上と左膝めがけて一発づつ。これで右にしか逃げられなくなったか?後ろから更にハンドガンが弾を吐き出して蜂の巣に出来る?いや、あのマントは邪魔だな。藤もやっていたが弾が魔法糸のマントなら上手い具合に絡め取れる。


 あのジジイがどうするかは分からないが、このまま接近できればナイフ格闘と射撃で追跡者としてはやりやすい距離になる。ただ、何か違和感を感じる。何を見落とした?何か思い違いをした?発見が何かあると反応するような気がするが、それを見つけられない以上、ここまで来て仕切り直すか?職に従うのか?いや、決めるのはオレだ。


「弾道というものがある・・・。要は弾の道筋じゃ。なら、それを歩むのも一興と思わんか、の!」


 撃ち出した弾は撃ち出した順で叩き落され、仕込みの刃がスラリと抜かれる。ナイフ格闘とか普通は経験ない。でも、モンスターと戦い対応してモノにした。洗練なんてされない。モンスターは毎回なにするか分かんねーし、形なんかも違う。だからこそ我流、だからこそその時の相手に対応して戦っていく。


 パット見二刀流だけど、危ないのは刃であって片方は多分打撃か引っ掛けるもの。なんか知んねーけど、他の仕込み杖は下に付く方から抜かれてカーブした先は杖の先に付いている。発見は反応しないが、あれで斬られるのはまずい気がする。ガンブレードにしたハンドガンから残りの弾を吐き出しつつ、剣を持った左肩へ突きを!


「追尾は雑にやっても思った場所に導いてくれる。いろんな奴が使っとるから色々と(・・・)見させてもらった。じゃからこうされるとどうじゃ?」


 右手でマントを持ち上げ裾を踏んで簡易的な盾にして、刺そうと思った左肩は左足を後ろに大きく引いて半身になって更に奥へ。このまま追尾する?いや、マントに隠された中が分からないから、無闇に深追いはあぁぁーー!


「逃さんよ?体力が無いとは言わんが、離れられてまた銃撃戦からの仕切り直しは面倒じゃてな!」


 杖の先を首に引っ掛けられて無理やり一歩前へ。斬られる間合いだ!対応しろ!オレの体!予兆を見逃さず発見しろ!マントの下の方が一瞬揺れた!切り上げか!前のめりの体勢だったが、素早く左右のガンブレードを体の前に並べて受け止める。片手の斬撃なら受け止められる。予期しないインファイト!でも、ここならナイフの方が取り回しはいい!


 ガンっ!とぶち当たった刃を身体を回転させながら受け流す、首に杖は絡まったままで擦れて熱を持つが、そんくらいどうってことはない。この杖を外さない限り後ろに下がれないなら前へ!ジジイは片手だ!なら、手数で押せる!それに、ナイフは刺す物だ。切ってもいいが、それは太い血管を切らなきゃ意味はないし、何よりモンスターはちょっと切られたくらいじゃダメージにはならない。


「なら、弾と刃を食らっとけ!」


 左右の刃から刺突と弾を吐き出すけど邪魔なマントと剣の最小限の動きで対応される!?足りないなら動け!動け!!両手は伸び切っている、ジジイの体はそこにない、両腕を開くように切る膝を合わせられて刃の軌道が変わる、追尾させて突き反対の手で射撃しながらの突き、ジジイが杖で首を引っ張りながら丸まり混むように姿勢を低くして回避そのまま持ち替えたのか、杖を引き回りながら反対の手で剣の刃を首へ、撃った弾を剣にぶち当てて軌道をそらし無理やり首を後ろへ引いて額の皮一枚で避ける。切られた痛みも流れる血もある。目に入れば視界が悪くなるが拭う暇はない。


 クソ!このジジイの顔が見えたけどニィっと笑ってやがる!この杖が邪魔だ!首にかけられている分動きの制限が半端ない。振り解きたいけど、前後左右に器用に動かして離す気はないと言わんばかりに絡まりついてくる。姿勢は悪いが、ここでサマーソルトキック!体操選手が出来るならスィーパーにも出来る!


「バク宙蹴りか、そい!中身を暴露せい。」


「かは!」


 蹴りは躱され代わりに縦回転している背中に拳で一撃!ヤバイ!ヤバイ!!ヤバイ!!!今すぐ回復薬を飲まないとヤバイ!殴られて転がりながら薬を取り出し一気に飲み干し少量を顔へ。片手で牽制の為に数発発砲するけど着弾位置が分かる様に歩きながら進んでくる。転がったけどジジイの腕力じゃ距離は取れない。殴られた所の骨が一瞬飛び出るかと思うほど引っ張られたが、薬のおかげかそれも収まった。やっぱ一筋縄じゃいかねーか。


「ほう!薬なら抑えられるか。」


「さぁな・・・。うっし、杖は外れた。仕切り直しと行こうじゃねーか!」


 さっきの戦いで見て体験した戦法に対応しろ!刃は納刀され、ただの杖に見えるけど多分なにかまだある。いや、収集した情報から発見しろ。何かないか何があった、ジジイはバトルロイヤルで何をしていた?情報は少ない。バトルロイヤルでは魔術師に負けて脱落した。その時も仕込み杖で切っていたが・・・、あの杖は上下好きな方から刃が抜ける。魔術師と戦った時は居合の様に普通に下から抜かずに切っていた。なら、両方から抜く事が出来るのかもしれない。


 他は?動体視力がいいのか弾も弾き飛ばせば、インファイトでもこちらの動きが分かっているかの様に避けられる?いや、ジジイは殆ど攻めてない。隙を突いて切りかかったり殴られただけだ。なら、それがオカルトの戦い方?誰も喋らなかったのか、単純に人数が少ないのか新しい職として名前に出たこれは分からない事の方が多い。・・・、戦い方を組み替えるか。スタートは発見から!モンスター相手なら対応からがいいけどここまで来たなら未知のモンスターと戦うと思い、探りからやり直して組み立て直すか。


「ほれ、インターバルはいいがこんのか?」


「老人は敬うもんだろ?先手を譲ってやろうか?」


「なら、いただこうかの。」


 ニィっと笑いながら一歩。先手を取れるだけの何かがあるのか?歩く辺り遠距離の持ち合わせがない?いや、職の補助もなしに撃っても躱されると捨てた?更に一歩踏み出すに合わせて一発発砲。くるりと回転して弾をやり過ごされる。間違いない弾道は読まれている。


 続けて2発発砲。片方は追尾を付ける。ただの弾は躱され追尾弾ははたき落とされる。追尾も読まれている。読んでいなければ的確に追尾弾をはたき落とそうとは思わない。ガンナー由来の武器はガンナーなら弾はいじれるらしいけど、オレは無限弾倉としてしか使えない。ただ、発見は出来た。軌道は読まれ弾の性質もこのジジイは分かっている。


 手数を増やしてもマントで防がれるなら遠距離戦は止めだ。腕2本に足2本条件は同じで後は何を使うか?武芸者の玉は高いし数がなくて買えなかった。最近ずっと売り切れって酷くね?重火器型の武器もあるけどあれも俺向きじゃない。なら、単純に槍で行くか!そもそも、オレが追跡者の武器として出たのってブーツみたいな靴だしな!


「そりゃ!」


「はっ!」


 両手に槍持って左右の突き、さっきと違ってインファイトはなしだ。長い分ジジイが近寄りづらくなるし、何より両手で使えば手数も増える。素人だろうと追尾しながら突けばある程度狙い通りに突けるし刺さればそれでダメージも出る。緩急つけて左右からの連続突き、軌道は読めても近寄れないだろう。2歩下ればこちらが1歩引く。1歩踏み出すならこちらも1歩下がる。付かず離れず間合いを切らず、息が上がったならそこに合わせず休ませず。何かを取り出させる隙は渡さない!


「多芸じゃの!」


「伊達にモンスター狩って奥を歩いてる訳じゃねーんだよ!


「じゃろうな!」


 杖を添えて穂先を逸らし、時に回転させ或いはタイミングよく打ち付けてくる。小刻みに足を動かしながら前後左右とジジイが動くが躱しきれずに小さな傷が積み重なっていく。致命傷はないけど、一応押せている?背中に受けた一撃が未だにどういったモノかは分からないけど、ここで押せているなら焦る必要はない。


「ふむふむの・・・。大分単調になってきた・・・、その手のひらをさらけ出せい!」


「なっ!」


 杖から一閃、左右の槍に剣が触れた瞬間に強制的に両手が開かされる!これが職の能力?迷っている暇はない!がら空きの両手じゃあの剣は止められない!槍1本分の距離はジジイでもすぐに詰められる!とっさにハンドガンを出しながら後ろに飛ぶが、邪魔だと言わんばかりに片方は弾き飛ばされた!


「悪いが小僧、その手も貰うぞ?」


「やらねーよ!」


 左手に残ったハンドガンでとっさに発砲するけど、右に体を落としながら捻って一閃、その後ジジイが納刀してるがハンドガンを持った手首から先が切り飛ばされた!くっそ痛ぇ!モンスターと戦うなら刺されるのも肉をえぐられる事も多々ある。だから!


「片手失くしたくらいで諦めっかばーか!」


 止血はあと回し!貰った武器はブーツみたいな靴!いい感じにアドレナリンもキまって来た!指輪は切り飛ばされた手に嵌めてっから回復も武器もこれ以外ない!体のバランス?そんなもん既に対応済みだ!蹴り上げから踏み落とし、半歩下がるか!なら、そのまま回し蹴り!


「小癪な!」


「いいとこの育ちじゃないんでな!」


 蹴りを杖で受け止め反動で左へ。もう一丁回し蹴りで更に左へ!槍を落とさせられた時の強制攻撃はない。何かルールがあるんだろうが、知らね!殴り掛かるフェイトを入れて前蹴り!やっべぇ!蹴りじゃなかったら半分抜いた剣で二の腕までぶった切られてた!


 しかし、何でこんなに蹴りは当たる?発見だ!戦いを思い出せ!何でジジイはマントと杖を使い分ける?手数が多いからマント?それもあるだろうが追尾したものだけは正確に把握出来る?なら、裏を返せばそれ以外なら読みづらい?蹴り技主体で攻める!ハイキックはない!身体固くて足上がんねー!だから攻められるのは胸まで!対応と発見だけ!杖の動きを見て初動を確認しろ!!足を見て動きを見ろ!!!


「おら!ここか!」


「ちっ、足癖の悪い!」


 ただの蹴り技で太ももに2発腹に1発。武器の靴だから剣も受け止められる。肋骨にヒビくらいは入ってっかな?蹴った感触でそんくらいはいったと思うけど?ただ、血がヤベェ。ろくに止血せずに動いてるからなんか目が霞むし体は重い。負ける気はねぇけど、なんか決めては・・・。バックステップで離れてクソジジイは悠々とお薬タイムかよ!


「肋骨3本じゃな。悪いが治させてもらった。」


「・・・、オレも1本、お前も1本。イーブンじゃね?そろそろヤバいから決めに行く!」


「よかろう、介錯くらいはして進ぜよう。」


「・・・、自分の首切れクソジジイ・・・。」


 足が若干おぼつかないがまだ立ってる!ここで負けるくらいなら全部出し切ってやる!まだ、流れてる血は使えっかな?体が動くうちに走り寄って飛び蹴り!半身で躱されたならそのまま切られた手首を地面に押しつけてから足払い、杖が抜かれて右頬と耳が切り飛ばされる!まだ意識はある!首傾けて避けなかったら顎から脳天までまで真っ二つかよ!掲げた剣をジジイが振り下ろしてくるけど、靴に剣を追尾させて蹴り払う。ジジイの攻撃中なら追尾しても大丈夫か?いや、さっきのは避けられないタイミングか。くっそ顔もいてぇ!多分肉がなくなって歯が見えてる。


「痛かろうて、楽になれ。」


「・・・、ひははへ!」


 空気が漏れて上手く喋れてねぇ・・・。一か八かで行くか・・・。他になんかあんならそれで負けだ。やりきったんなら仕方ねぇか。隠す為に蹴り技をフル追尾で放つ!無理な体勢、無理な姿勢なんだから体のあちこちから嫌な音がする。だが、一瞬でいい。このジジイが一瞬気を緩める隙があればいい!


「それは見切っとるぞ?」


 膝蹴り、手で受け止められる。殴りかかっては躱される。まだ動ける!頭突きはどうにか当たったけど、これじゃジジイは倒れねぇか。首筋狙いの噛みつきはバックステップで躱されたけど、多分ここだ。ここでジジイは剣を抜く!そして案の定剣を抜きやがった!ここだ!ここで踏み出すんだ!そうすれば斬撃じゃなくて突きになる!この突きに対応しろオレの体!


「小僧、臓腑を撒き散らして暴露せい!」


 心臓めがけて突き出された刃は寸分違わず胸に吸い込まれた。だけど、心臓はそこにない。無理やり内臓逆位にして心臓はずらした。ただ、口と言わずケツと言わず、体の中身が飛び出そうになる。まだ、対応が働いて元の位置にあるが時間がねぇ!でも、このタイミングが最後の勝機だ!手を伸ばしながら刺さった刃を更に差し込み、抱き着くように前にでる。


「お・・・、れ・・・。」


「次も勝ってやる。安心せい小僧。」


 がっしりと抱きついた・・・、このジジイにも人らしい心はあったんだな・・・。内蔵ぶち撒けてもうすぐ死にそうで、筋肉で抑えているのも限界・・・。だから、最後の勝負!地面に漬けた血は切り飛ばされて転がったオレの手を追尾していって入り込んだ。なら、その血はまだ動かせる。その血の入った手は動く!


 職は叫ばなくても声を出さなくても使える。これはスィーパーの常識だ。別に格闘家が毎回殴るぞと言って殴らなくてもいい様に。そして、オレの手は当然オレの物だ。なら、血液をフルに動かしてそこが動けばいい!


「がっ!」


「か・・・、ち・・・。」


 切れた手に血液を這わせてオレの手首に戻す。経路は決められる。無理やり指を動かしてジジイの後頭部に合わせて一発。回復して動きもいいだろう、だけど抱き着いて動きは止めた。自分の職に自信があって勝利を確信しただろう?だからオレが近寄るのを許した。背中に一撃貰ってなかったら、これには対応出来なかった。だけど、もらったからこそ対応出来た。


 終了のブザーがやけに遠くで聞こえる。オレにはまだ意識があるから・・・、多分・・・、オレの・・・、か・・・、ち・・・。


________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 第1試合は御堂と奏江の勝利。御堂は酷い有り様だが、最後の最後まで意識を保って爺様の後頭部をぶち抜いた。奏江も結構酷く、相手のスクリプターが電気対策をガッツリしていた為かなり分が悪く、絶縁体やら避雷針になりそうなパイプやら、果ては絶縁体にアースを付けたような装備やらと取り揃えていたので、攻めあぐねた上でスクリプターの能力で魔法やら斬撃、打撃を重ねて来るのだから早々に薬を飲み干してしまっていた。


 決め手としては奏江のガッツかな?御堂もガッツがあったが、奏江のラストは自分の腕をプラズマ化し焼き落としながらのぶん殴り戦法。絶縁体にゴムを選んでいたので相手はこれに対応術がなく、水魔術を重ねた所で蒸発してしまい、そのまま腹や頭が炭化して終了となった。どちらの試合も見所が多く、手に汗握るとはまさにこの事だろう。初戦から激しい戦いが繰り広げられているので次の試合も楽しみな半面、後遺症はないし仮想現実だとしても相当な負荷がかかっているのではないかと心配になる。


「第1試合終了でーす!見所が多い試合でしたね。奥に行けば奥に行くほどモンスターも強くなって怪我も増えます。その怪我の中でも食らいつくガッツ!今回の試合で見せていただきました。」


「そうですね、激しい試合、技工を凝らした試合。色々な試合がこの後も続きますが、絶対にR・U・R仕様時以外で人には向けない事。3日間を通して分かっていると思いますが、職に就くというのは常に凶器を持っているのと同義です。力に溺れる事なく、その力の意味を理解して下さい。」


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[一言] 雷がプラズマまで届いたなら当面同系統の中では強いな 取りあえずはプラズマカッターだな 将来はプラズマ人間か
[一言] 本編200話おめ!
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