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街中ダンジョン  作者: フィノ
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196話 汝は何者なるや? 挿絵あり

「御仁・・・、拙者の妻達は人に非ず。しかし、それを!モノ言わぬ彼女達を愛し己の身を捧げ!虐げられる様に打ち捨てられた者達を愛でる事を愚とするか!?」


「そうですそうです!旦那様の愛は深いのです!」


 心地よい声が聞こえるでござるな!誰かは知らぬが・・・、誰!?えっ!拙者実は気絶したぁ!!?大見え切った上に気絶したと申すか!?ど偉い事であろう!いつしくじった?拙者の思いは伝わらなかったのであるかぁ?と、言うか拙者何やらパチパチしているような・・・。


「旦那様、旦那様!私達は旦那様を愛を受け入れお慕いしております!がーんばれ!がーんばれ!です!」


「ぬぉ!そなたはリンドウ!?」


「ハイです旦那様!第四の妻リンドウはここに!それに他の妻達も控えておりまする。」


 ????・・・、ティン!どうでも良い。そう、妻達と拙者がここにいれば後はどうでも良いでは無いか!妻は美しいと言われた、あの月夜の晩に美しき白き人に。妻達は象牙で作成はしていないが、拙者が1から潜り集めた物で生み出した妻達である!ならば今、詮索は無粋!故に拙者が出来る事は唯一つ!妻達の期待に答える事!


「ゆくぞ御仁!妻達の御前、拙者に敗北はない!」


「・・・、はん!来いやオタク!何であろうと叩き潰す!ここにいる限りは何だろうと同じ選手だコラァ!!」


 御仁の目の色が変わる。剣呑な色は潜め明確に敵として拙者を見ている。それは拙者を認めたと言う事ではござらんか?獲物ではなく敵、そう1人の人として対等な者。嬲り貶めそれを嗜好するだけで嘲り笑い日陰者とされた拙者を到頭這い上がってきたと!対等な勝負ができる者と期待しているな?説明のピグマリオンは消えてしまったがそれは些事。何1つ恥じ入る事なく妻達と共に妻達の前で戦えば良い!


 両手にノミを持ちエプロンをはためかせ御仁へ迫る。バチバチと光る雷光は拙者のモノか、頭に浮かぶ説明はさておきそれが成せるのなら後の事はどうでも良い。ピグマリオンとは王の名であり、他者から期待されればされるほど効果が上がるものなのだから!


「雷鳴響かせ感覚を研ぎ澄まし、重いと思う身体ば今はなく新たな門出を踏み出す先は夫婦道!悪いが御仁、押し通る!」


「やってみろや優男!一切の妥協なく、守りきって殴り倒してそん先に進んでやるよ!」


 はたから見れば一切なってないであろう左右のノミから出す突きはしかし、吸い込まれると言うほどに早く御仁のカバーリングに突き刺さる。一度でたりぬなら更にもう一度、一撃が軽いのであれば鎚にタガネを携え更に振るう。ひたすらに堅かろうと、1つのヒビさえ入れば石工は大岩を割、造形師は美しいモノを創造する!


 何度打ち合ったであろう?拙者の武器は残り御仁の武器であろう黒いボディプロテクターとヘルメットは削れてヒビが深く入っておる。やはりこの御仁強い。放電しながら振るうノミはカバーリングでギリギリで防がれ当たった所から流れ込んでいるだろう電流に耐え、時に自身を奮い立たせる為に衝撃で雷を跳ね飛ばす。


 拙者も無傷とは言わず、掌打受けた腹は痛み左肩は上がらず骨が砕けたであろう状態。しかしそれでも尚、互いを見て目を離さぬ。負けぬと誓ったのだ!弱者では、嬲られ虐げられるモノではないと誓ったのだ!


「はぁ・・・、はぁ・・・、スゥー・・・、はぁぁぁ・・・。来いや!こねぇなら、こっちから行く!」


「はぁ・・・、応とも!」


 言っては見たがそれは、その手に持った大斧は反則ではござらんか!?文字通りの重戦士、奥の手ならば粉砕せねばならぬ!何ができて何ができぬのか?多分、中位に至り魔術師となったのであろうが些か時間がなさ過ぎる!互いに薬は飲み底をついた。背水の陣とはまさにこの事。見守られ、期待されてもまだ御仁に届かんか・・・。いや・・・、拙者が届こうとしておらなんだか・・・。同列とはなった、ならばその先の強者として御仁の前に立つ覚悟がなかったのか・・・。


 弱者でいるというのは心地が良いのだ・・・。傷を舐める相手もいれば、同じ傷を持つ者と共に泣ける喜びがある。それは決して負け犬達の手慰みの様なサーカスではなく、その弱者の囲いから出たくないと思わせる夢物語であり儚き幻想。ならば拙者はこの時より強者となろう!


「旦那様、私達も共に参りましょう。旦那様のいる場所が私達のいる場所なのですから!」


「ふが・・・。否!ありがとう共に征こうぞ。」


 大斧をまるで指揮棒の様に振り回しているが・・・、共に戦場駆ける嫁達となら恐ろしくはない。拙者は造形師、ならば出来る事を出来る様にすればよい!造形せし道具は我が手に!作り生まれい出た嫁もここに!ならば、勝てるモノを更に作り出そうぞ!


 妻には何が似合う?先に逝った妻達はここにはおらぬ。今いるのはリンドウ、ハナビシ、アゲハのみ。残りの6人は出さぬ。それが出来るほど拙者は上手くもなければ器用でもない。


「リンドウよ、回避は任せた。拙者の為に時間を稼いでおくれ。」


「ハイです!じゃんじゃん法を破るのです!」


 小柄なリンドウだが拙者がひょいと持ち上げる。拙者はゆうに98kgはあったが新作ボディーは軽いのであろうか?いや、それでは無い。材料は何がある?片腕のみで何を作成できる?拙者は嫁達にすべてを捧げたのだ、それほどの覚悟を持って挑んだのだ!なら、新たな職から作れば良い。巨人の様な御仁が衝撃をまといし大斧で通ろうと、構わず破壊の嵐を撒き散らす中、リンドウはよく避けてくれる。


 地面の破片で傷つき今も拙者を小脇に抱え、守りきれないと思ったか片腕を差し出して、かなりの距離を跳ね飛ばされるように2人で転がりながら岩に打ち付けられる。・・・、これに賭けようぞ。拙者の中のオタクが有する知識の中で、これならばあれを打ち倒せるであろう!姿は似ておらぬが、逸話は大食いという部分なら多少は似ていよう。故に偶像を拙者に被せよう。


「リンドウ、リンドウ・・・、無事?」


「片腕くらいなんとも無いです旦那様。悪鬼羅刹との鬼ごっこはおしまいですか?」


「うむ!全ては整った!さぁ、アサガオ、ユウガオもここへ。拙者だけでは足りながら家族総出て巨人を打ち倒そうぞ!」


「なんか知らんがやらせっか!仲間からもらった斧にはなぁ!ここに俺が立つ為にはなぁ!先に逝った奴らの応援があんだよ!それを背負ってここに立ってんだよ!」


 斧を振り被り正面からの特攻!裏打ちされた自信に背負うものを背負った背中は拙者には!明確な敵となり得た拙者には見せられぬと言う事か!ならば、拙者も正面からの打ち倒そうぞ!


「偶像とするはトール!手に持つ鎚はミョルニル!これは妻達との初仕事!めでたきこの日にそれをなす!鏡開きぃ!!」


________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


盛大に殺りあっていたが決着はついたか。藤が御仁、御仁と呼ぶが相手にはれっきとした浦橋 昴大という名前がある。まぁ、勝敗は僅差で藤の勝。鏡開きとか言ってたがそんなイメージでハンマーとか使ってみろ。相手真っ二つだよ・・・。プラズマカッターと言うかプラズマソードで浦橋は袈裟斬りに切り裂かれたが、堅牢のおかげか本人の強いイメージの賜物か斧は確かに藤に届いた。しかし、それをとっさに人形達が身を挺して守り浦橋より後に気絶した。はぁ、取り敢えずこの場を収めあの2人の所に行くか。


「宮藤さん?取り敢えず会場は収めますので二人を確保してください。後、高槻先生にも・・・。ええ、試合は彼等の組が最後なので、次の試合が出来れば続行です。ただ、機器トラブルがないかメンテをしてもらいます。」


「クロエ大丈夫ですか?暗示なしの公衆の面前ですけど。」


「あ〜、藤がロストしたのは痛いけど何とか・・・。」


 今見ているのはクルーと要人しかいない。それに、離れているので顔も見えなければ声も聞こえない。淡々と事実とこの後の処遇を話そう。望田に合図を送るとマイクを取りゴーサインを返してくる。本部席からは飛んでいくか。着物で歩きづらいし。


「先程の試合について大会本部、クロエ本部長より話があります。」


  挿絵(By みてみん)


 武道館のど真ん中。歌手なら憧れるかも知れないが俺は昨日でお腹いっぱいな所。まぁ、喜ばしい事ではあるのだが。全世界に放送しているさなか、全く接点もない人が中位へ至る。それは希望となり得るだろう。


「・・・、先程の試合。大会規定に則り手合違いにより盾師、浦橋選手を勝利とする。」


 この発言でテレビクルー達のザワリとした空気が漂ってくるが、こちらとしてもこれは覆せない。本人達に遺恨が残るなら後で好き放題やってもらえばいいが、これは大会であり参加者は下位としてあるのだ。大会前に中位に至っていればそのまま合宿コースでいいが、大会中に至られると力加減間違って装置を壊しかねないし、何より藤は魔術師:雷。絶対装置的な負荷がヤバい。


「先程の試合を見た人々へ・・・。今この場に希望は示された。彼と私はなんの繋がりもない。そんな彼が中位へ至ったんだ!至る方法に明確なものはない、但し対人戦のみでは至れない。断言しよう!思い悩み感じ苦悩し、挫折し自信をつけ自信を砕き、足りないと切望し絶望してもなお藻掻き、前へ進み自身の道を歩む者・・・。中位へ至ろうとするならば戦闘技術をいくら磨いても至れない。自身の道を歩む勇気を持つ者こそ至る先がある。道踏み外す事なかれ、人との戦でこの力使うことなかれ。」


 そう言い終わり足早に飛んでその場を立ち去る。噛んでないから良し。影武者夏目を本部席に座らせ。近くのゲートに入りセーフスペース内の会場へ。現場には宮藤がいるし東海林も騒いでいるだろうがそれは後回し。馬を捕まえて装置の場所をイメージして走り、現場に着くとハーレム野郎がいた。うん、分かってる。藤である。5人?5体?どちらでもいいが、膝枕されてご飯食べさせられて腕とか足とか揉んで貰っている。これが今の姿になる前の藤なら事案なのだが、今の姿だとしっくりきている。


  挿絵(By みてみん)


「テブ!・・・、デブ?いや、エロゲ主人公?」


「前髪で顔が一切見えなかったらそのルートはあったでしょうね。或いはここからスクールでデイズな世界に行きますか?」


「いや、それアイツ首切られて誰かが『中に誰もいませんよ?』って言われれれれーーー!!本部長殿!?」


「はいそうです。」


 ラーメン屋もそうだが、他の選手も一部始終見ていたので、色々と聞きたい事はありそうだが、取り敢えず勝敗については本人達に伝えないとな。


「藤選手と浦橋選手の試合・・・、浦橋選手いますか?」


「クロエさんこっちです。さっき気絶から目覚めました。」


 宮藤が呼ぶのでそちらを見ると。無傷だが項垂れる浦橋の姿。まぁ、負けたと思ってるんだろうな。事実、藤が中位に至って本当に負けたし。だが、裏を返せば同じ土俵なら浦橋の勝ちだっただろうし、至ったばかりとは言え中位にあそこまで迫れるなら十分下地はあるだろう。


「では、先程試合結果ですが手合違いで浦橋選手の勝利とします。」


「なっ!」


「そうなっても仕方ないでござるな。」


 座った藤は納得したように頷いているが、浦橋は青筋が浮かんでいる。多分勘違いしてるだろうなぁ。正式に戦って正式に負けたとか言い出しそうだし。こんなゴツくてイカつい見た目なのに現在は介護師専門学校に通う学生だし・・・。真面目なのか、再起しているのかは知らないがまぁ、話してからだな。


「おい!ファーストさんよ!俺は負けたんだ、コイツにこのデ・・・、元デブによ。それが何で勝ちなんだよ。」


「大会規定、試合中に中位となった場合は出場停止し対戦者を勝利とする。このルールにより浦橋さんの勝利となります。藤さんについては取り敢えずこれからメディカルチェックです。それで、中位に至り魔術師:雷と造形師はどうなりました?」


「付喪と成っておるな。それと、ピグマリオンが消えているのだが・・・、これは自然な事であるなぁ。」


 藤が話し終わると嫁達が拍手したり抱き着いたりしているが、嫁と言うかファンクラブの様な・・・。まぁ、本人の自由なのでどうでもいいか。後は浦橋が納得するかなんだけどなぁ・・・。


「・・・、納得できないって言って蹴ったらどうなる?」


「棄権扱いで勝者なし。ただまぁ、貪欲でいいと思いますよ?ねぇ、宮藤さん?」


「そうですね。拾えるものは拾う、使えるものは使う。当然の事で納得するには時間がかかるかも知れません。ですが明日までは時間があります。それに、負けて諦めるくらいなら負けても先に進みましょう。ゲートに入るならそれくらい分かるはずです。」


「・・・、うす。」


 浦橋が納得したかは分からないが、答えた目は死んでもいなければ精気も宿っている。赤峰あたりが気に入りそうな肉体派で気合の入った感じだが、ここを勝ち上がっても次がある。勝てるかは分からないが職員として採用できるなら合わせてみても面白いかもな。さて、この場はいいとしてさっさと藤を連れて行くか。俺自身は捧げ物をしてこんな姿に成ったが、藤の場合自身を作成したのだろう。それに魔法が加わっているので何がどうなっているか分からない。いきなり死ぬ事はないと思うが検査は必要である。


「では宮藤さん後は任せました。装置に不具合がない限り続行してください。私は藤さんを連れて高槻先生の所へ行きます。」


「分かりました、佐沼さんからの連絡待ちですね。一応、こちらの情報は渡していますが放電等はなかったので職の暴発はなかったモノと思います。まぁ、それでも危惧するなら予備を使うしかありませんね。」


「了解です、外では私の代わりに夏目さんが影武者しているので大丈夫でしょう。さ、行きますよ藤さん。馬で行くのでついてきて下さい。」


「了解した本部長殿!」


 馬を捕まえて走らせラボへ。元々なんかあったらお願いしますと言っておいたので対応はスムーズ。高槻本人が出迎えてくれたのでそのまま中に入り検査室へ。さてはて彼の身体はどうなってるのかな?妻達も一緒に検査を受けるようだが・・・。 


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