表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街中ダンジョン  作者: フィノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/869

195話 夫と妻達 挿絵あり

「さてさてさて!!一回戦が終わり復活者も決定しました!後2つ!19名の枠まで行けば本部長の席が見えてくるぞー!!!」


「ラストの脱落1名は勝負内容によって扱いが変わりまーす。基本は副長枠で好きな本部長の下について貰う予定ですが、私、赤峰本部長、木崎本部長、剣崎本部長は例外でーす。宮藤さんは講師枠として独立していまーす。橘さんは本部長ですが、都道府県に配置されずギルド監査本部長として不正がないか見て回るそうでーす。」


 最終案として名前の上がった人達は例外となった。俺には望田、赤峰には井口がつくし、雄二と卓は流石に大会参加者から副長をつけるのは早計だと言う意見が上がった。実際、2人もそれは重々承知しており、少なくとも25〜30までは副長人事は政府に任せるそうだ。2人の任地は東京に近い所を2人共希望した為、ギルド稼働までは千代田さんが面倒見てくれるそうな。


 実際、元公安室長で松田や俺達とズブズブな関係なので妥当と言えば妥当だし、他の適任を連れてこいと言われてもゲート開通当初から走り回って裏を知る人間と言うのは少ない。それに、ダミー会社もスィーパー関係の所なので渡りに船だろう。


 宮藤は今回の本部長達を鍛えつつ教導官として独立予定。元々先を目指して欲しいとお願いしていたし、英雄として名を馳せてしまったので、流石に1職員として連れて行くのは憚られる。そこで、最終的に後輩の育成をメインとしたギルド部門の長として今回の参加者を鍛えた後、非常に心苦しいが海外からの教育オファーを引き受ける窓口になってもらった。


 権限としては本部長と同等で、更に言えば弟子が世界中に広がる可能性があるので、彼が一大勢力を築く事も可能。まぁ、俺が地元に戻るまでは行ける所まで一緒に行くし、地元に帰っても集合はゲート内で出来るのでなんだかんだで一緒に潜る事は多いだろう。


 そして、橘である。本部長は本部長でも警察内ギルド監査及び対スィーパー犯罪者スペシャル特捜部本部長。長ったらしい肩書になりそうだが、要は各地を飛び回ってギルドや所轄との連携を取る立場。まぁ、民間本部長も誕生するのでどうしてもこの役割は外せないと白羽の矢が立った。実際うちは望田がいるからいいが、自衛隊出身本部長もその辺りは疎い部分があるので願ったり叶ったり。本人も鑑定課よりはマシとOKを出している。


「ハッハッハ・・・、不肖望田!クロエの副長の座は誰にも渡さんぞ〜!」


「頼りにしてるよカオリ。米国でも頑張ってもらったからね。」


「おぉ〜、クロエがデレた!そのまま気持ちよく第2回戦スタートです!」


 アラームが鳴り、試合が始まる。実質準決勝だが派手にやるのかねぇ?今日はこの試合で終わりだし備えるにしても一晩ある。なら、切り札以外は出し惜しみなしかな?まぁ、流石に一回戦突破した猛者に手加減というのはあまりにも失礼だろう。無論、一回戦目が手抜きとは思わないが・・・。ただ、トンコツの人、藤だったか。それと対戦相手はある意味対極だな。パッと見陰と陽の様に交わらない感じがする。


「おほ!強そうな御仁であるな!?」


 筋肉よし!巌の様な顔よし!茶髪刈り上げツーブロックに見えるはヤンキーと証のタトゥー。う〜む、拙者アレのかっこよさばかりは分からぬ。鼻と耳にピアスして、拙者を一瞥して首をコキコキ鳴らしておるが、この感じはラーメン屋とは別物よのぉ・・・。知っているでござるよ、その目が何を言わんとしているかを。きっと、それに意味はないのでござろう。気に食わない、目障り、生理的に受け付けない等々・・・。そっとしておいて欲しいが何故かこういう人種は拙者達が大好きでよってくる。


 体のいいカモ・・・、金銭を要求するにはいい獲物でござろう。前なら、鍛えてもおらず買ったフィギュアを守るように丸々亀でしかなかった。でも、そんな拙者でもこうしてこの場に立つほどに潜った。でも、精神的な恐怖は拭えんな・・・。頭をボールのように蹴られ、腹を踏みつけられ、笑いものにされながら奪われた財布から金を抜かれ、守り通そうとしたモノさえ砕かれた恐怖・・・。


 人の身体は何れ再生する。今なら薬を飲めばそれこそ傷跡さえ残らぬ。しかし、フィギュアやモノ言えぬ人形達は違う・・・。いくら精巧に修理しようとも、その傷は癒えぬまま中に残り、拙者の頭からは離れない。


「オイ、言っちゃ悪いがオタクは帰れ。家でアニメでも見ながら引き籠もってろ。」


「アニメは大好物でござるが、それはここから帰る理由にはならんでござるよ。そう言う御仁の好きなアニメは何でござるか?拙者は今、市井ちゃんを一番推しているでござるが。」


「あぁ、そう、かい!!」


 構えはわからん。武術の心得などない故、ボクシングか空手かはたまたテコンドーかなど分からぬ。ただ、御仁の目はひたすらに拙者を蔑むモノ。なにがいけないのでござろうか?アニメが好きで漫画が好きでフィギュアが好きな事の何が悪いのでござろうか?離れてはいたが、その踏み込み駿馬の如し。今の拙者では到底追いつけないでござろうなぁ・・・。先に出した素体は軽々と蹴散らされる。ナイフは刺す前にはたき落とされ、銃弾は掴まれ足や腕に絡みつこうと飛びかからせた者達は震脚1つで吹き飛ばされる。すまぬ、名も与えなかった者達よ。しかし、その顔だけは!目だけは潰させぬぞ!


「カモン!マイワイフ!」


 丹精込めて作り上げ、名を付けた嫁達は全部で12人。全てに思い入れがあり個性があり色がある。あの時は完成していないと思った。人に見せるのが怖かったから。手慰みに作る人形ならそれで良かったのでござろうが、嫁とするなら妥協は出来ぬ。故に怖かった。ゲートの薄暗がりを共に歩む人形達と嫁とはやはり違う。だが、この場でお披露目しようではござらんか。本部長殿も美しいと言ってくれた故、自信がついた!


「手数かよしゃらくせぇ!乱闘なんざ日常茶飯事だ!」


「それは当然でござろう!ゲートの中で何時もモンスターと戯れているのだから!」


 伊達や酔狂でここにいるわけではござらぬ。形だけの兵ならそれこそ山ほどある。しかし、事理想とするものまでは遠い。そしてまた、歪んだ拙者を許して欲しい。新たな技術が出れば買い漁り、新たな閃きがあればそれを組み込む。材料と手間をかけない雑兵は、簡単に作成できてしまうが嫁達は違う!出したのは6人で残りは雑兵達。・・・、見誤ったでござるな。一回戦でも正面から殴り合っていた御仁は格闘家にあらず!


「効かねぇよ!ひかりモンにチャカじゃ、オレは止められねぇ!邪魔だ!ゴミカスが!人形遊びなら部屋で1人でマスかいてやっときな。」


「ゴミではござらぬ!拙者の大切な・・・、大切なワイフである!!」


「そうかいそうかい・・・、ならそのワイフとねんなしな。俺にも背負って守るチームの看板がある。ゲートは危ない火遊びだ。雑魚なオタクには任せられねぇな!特に嫁と言いながらそんな人形に守られてるお前なんかにはなぁ!」


 造形師・・・、それが拙者の職。他の者は知らぬが拙者は人形に・・・、妻達に偶像を投影し愛する者。故にピグマリオン王!人ではない事は百も承知!しかし、愛せずには!モノ言えぬ者達を!人の作りし人と同じ似姿持つ者達を愛せずにはいられないのだ! 


「愛故に!愛故に拙者は乗り越えねばならぬのである!」


 1番目の妻、アジサイが飛びかかり2番目の妻と3番目の妻、シャクナゲとアザミが身を低くして御仁の左右から飛びかかる。拙者も征くでござるよ。後の妻達の期待を背後に感じながら正面から!武器は展開した!黒いエプロンに左右の手にはノミ。モンスターさえ彫れるモノを手にその嘲りを込めた目に正面から!


「愛ねぇ?それなら俺はチーム愛だ!仲間を守ってやりてぇし、馬鹿な奴らも引っ張らなきゃならねぇ!モノしかし愛せねぇ変態は帰れ!」


 3体同時攻撃、すまぬ・・・、すまぬ・・・。本当に壊れる訳では無い。しかし、その無惨を晒させる事が何よりも悲しい。美しい君達に無惨を強いる拙者を許して欲しい・・・。 アジサイは触れる事さえ叶わず腕を捕まれ胴を蹴り抜かれ、左右から斬り掛かった妻達は届く剣の一太刀さえ、不動の構えでダメージさえないと言う様に気に留めない。やはり後手、飛び出した拙者ではまだたりぬか!


「はっ!破れかぶれか!オラ!」


「ぐぬ!」


 ミノが届く前にアジサイの死体で拙者を叩き、そのまま伸ばした腕を捕まれ肘裏から膝蹴りを入れられ腕が外れる。追撃とばかりに手を離し心臓への掌打と頭への回し蹴り。ギリギリ背後の妻に引き戻してもらったが故頭は無事だが、接近戦一回でこの始末。情けない!心臓はリズムが狂わされたのか身体が悲鳴を上げる。妻に預けておいてよかった。体制を立て直す為に障害物を盾に撤退しながら口に薬を半分入れてもらい、腕に振りかけてもらえば息荒いがまだ戦える!この程度の痛み、散った妻達と比べればなんともないでござろう!


「遅せーよ馬鹿が!パルクールって知ってっか?こんな地形は障害でもねぇんだよ。」


「こ・・・い・・・、名もなき者よ・・・。」


 指輪から出した者達は、衝撃をまとった御仁に触れられずバラバラになり足止めさえ出来ぬ。素材が問題なのか?技術が問題なのか?接続か?薬が効いて思考がクリアになる。拙者は形作る造形師。ならば、全てはやはり拙者の不徳と致すところ。何が違う?モンスターと人、凶悪なモンスターに勝てるのに何故拙者は御仁に追われている?おかしいのではなかろうか?同じ土俵に立っている。職は違えど同じステージに拙者も御仁も立っている!


 ならば足りないのは拙者のイメージであり愛!そう・・・、愛する者は出来た。ならばそれに釣り合わねばならぬ!愛する者が拙者のせいで笑い者になるなど我慢ならぬ!禁じ手・・・、それをここで切ろう。


 障害物を回り込む様に撤退する拙者と直線で追う御仁。妻の足では逃げ切れぬか。追いつかれ傷は癒えたがここで最後でござろう。残りの妻達も姿を表し、ここを最終決戦の場とする。負けてはならぬのだ!拙者の為に!何より妻を侮辱した者を討つ為に!作成せよ!拙者の理想とする偶像を!刮目せよ!ピグマリオンの効果を!それでも尚足りぬなら!妻達に命吹き込めるモノを寄越せ!それ以外のモノなど眼中になし!!


「御仁!最終決戦でござる!」


「そうです旦那様!」


  挿絵(By みてみん)


「・・・、はぁ!?」


________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「カオリ、予測はあったけど実現するとは思ってなかった事態が起きた。」


「ですね、まさか彼がそれを起こすとは思いませんでしたけど。」


 R・U・Rを使って試合をする。安全管理の為に周りに被害を出さない様、装置をセーフスペースで起動させる。何もおかしくはない。そう、おかしくはないがそのおかしくない事で起きて欲しくない事態が起きた。それも2つ・・・。1つは対戦中での中位の誕生。多分、本人はまだ気付いていない。コレはまだ予測の範囲内。そう、範囲内だが予測は全員していた。希望的観測で可能性の域を出なかったが、それは確かにありえると・・・。


 生放送なのでこの事態は世界が知る事になる。間違わないで欲しい・・・。人と戦えば至れるなどというクソみたいな幻想を抱かないで欲しい。これはあくまで、本人が何かを乗り越えようともがいた末の結果であって、ただ蠱毒の様に戦わせればいいというものでもない。この事態の収拾の為に早く至った経緯報告書を政府のHPに掲載しなければ、いらぬ混乱と間違った情報が流れる。


 もう1つは更に確率が低い肉体変化。何やら様子は違うようだが、藤はデブメガネのバリバリのオタク。それが何やらスラリとした美青年?美少年にチェンジして嫁人形とやりあっている。と、言うかなんか放電してる?ん〜、フランケンシュタインとか?取り敢えず、この戦いが終わったら藤は呼んで話を聞くか・・・。ただ、事態は別としてこの場合のセリフも用意しているので、後は見守るだけか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価、感想、ブックマークお願いします
― 新着の感想 ―
[一言] 肉体変化は至った時に起こりうるのかな >対戦中での中位の誕生 これは人よっては色々賭けてるだろうし大一番では至っちゃう人もいるでしょ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ