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街中ダンジョン  作者: フィノ
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188話 前夜祭 挿絵あり

 銀ブラ事件とは簡単に言うと、昭和天皇が学生時代に友達とこっそり銀座に出かけてコロンバンという店でアップルパイと紅茶を楽しみ、門限を破って警察やらが緊急配備された事件である。その店自体は今は原宿にあるとか。まぁ、学生ならヤンチャしたいよね?銀ブラだけ言うと銀座をぶらぶらするか、銀座のカフェーパウリスタでブラジルコーヒーを飲む事になる。


「昼飯はいいとして、アップルパイとブラジルコーヒーどちらがいい?」


「それは軽食の部類だろウ?私達は若いんダ、ガツンとしたものを食べようじゃないカ。ジョンだって若・・・、何歳だ?」


「32程度、正確には知らない。と、言うよりも1年から半年、1日なんてのも飲んだ。お陰で数日は流動食と言うか水分だけで過ごせたな。長いものは探せばまだ出ない事もないが、本数が少ないので中位の高齢化に対する保険として残してある。」


 どうやらエマが永眠できるのはかなり先になるらしい。まぁ、俺も人の事は言えないのでなんとも言えないが、10年後に10年若返れば今の姿になりまた10年過ごせる。スタンピード以外でも中層の掃除と後進の育成を考えると猶予は多い方がいい。まぁ、それでもモンスターと戦えば死亡のリスクはあるのだが・・・。


 本当に100歳超えの少女、ロリババが現実になるな。米国が死物狂いで潜っているのか?それとも教育に力を入れて育てながら潜っているのか?他国の事情は分からないが、少なくともスタンピード参加者を使い潰す事はないだろう。何せ、あれだけモンスターを見て戦えばそれなりになにか思う所があると思うから。


「ガツンとですか・・・、色々と食べ歩きはしましたが、ガツンとなら肉でしょう。」


 そう言ってスマホで検索して何軒か候補を上げる。何気に日本はミシュランの星が多いので、旨い物を食おうと思えばすぐに見つかる。ただ、そう言う店はお上品な所が多いのでどうも馴染めない。食べるなら下町中華や大衆的なラーメン屋の方が落ち着くんだよなぁ・・・。前に飛び込みで人の居ないラーメン屋に入って食ってた時は店主からかなり恐縮されたが・・・。


「千代田に連れて行かれたトンカツ屋にしよウ。あそこなら色々と融通が利くだろウ?それに1人でも食べに行ったガ、やはり美味かったゾ。」


「ならそうしましょうか?個室で恐縮される事もなければ、ダラダラしても文句は言われないでしょうし。」


「ニコルソンさんはトンカツがお好き!メモして後で記事にしよう。しかし、この街は仮面をつけた人が多いな。日本のスィーパーは顔を隠すものなのか?」


 エマが指輪から車を出して乗り込みトンカツ屋へ。一応、千代田にLINEしたので対応してくれるだろう。流石に食べ放題の焼き肉にジョージを放り込む訳にも・・・。いや、若い胃なら昼から焼き肉もいけるのかな?俺はどんと来いで時間いっぱい食べる自信があるが。


「防犯対策ですよ。要人は全員仮面付き。なら、裏を返せば仮面を付けていればその人は要人。なので、不特定多数の人に仮面を付けさせてその中に紛れてもらうそうです。追跡者なら要人の追跡も出来ますし、何より仮面を付けているのはスィーパーの私服警官とかです。大会当日になるに連れ、仮面付きの人は更に増えるみたいですよ?」


「仮面への細工か。私はクルー枠なので隠さなくてもいいが、要人枠なら窮屈だったかもしれない。ただまぁ、私服で仮面を付けてうろうろ出来るのはハロウィンの様で心が踊る。」


「ハロウィンか・・・、懐かしいものダ。その日だけはお菓子を思いっきり食べていたナ。」


「それ以外は?」


「体重管理と様々なレッスンで食べる気にはならなかっタ。そもそモ、各家を回る時でさえ顔を出して媚びを売るように笑顔を張り付けて回っていタ。まァ、当時の私にはそれが普通でとても自然な事だったんだがナ。」


「うわぁ~、私も色々やりましたがお菓子は別腹枠でポテチとさきイカ、煮干しはマストでしたよ。何もなければ勝手におにぎり握って食べてましたね。学年が上がったら晩ごはん前にチャーハンとか作って食べてましたし。」


「ファーストさんの大食いは昔からか・・・、チャーハンって茶碗1杯?」


「まさか、丼ぶり1〜2杯分は食べてました。」


 みんな小6とかなら食うよね?それでも足りずに冷蔵庫漁ってたし。そのおかげで身長も体格も良くなったなぁ。少なくとも今の姿のとは完全に別物。何なら小6と今の自分でさえ大きさは全く違う。食い過ぎと怒られても、腹が空くもんは腹が空くんだよ。そんな話をして腹を空かせた俺達はトンカツ屋で存分にトンカツを楽しんだ。寧ろ、ジョージがかなりがっついていた。まぁ、気持ちも分かる。


 松田達に連れられて料亭とか行くけど、食うのは俺ばかりで後の3人は酒をちびちびやりながら少し摘むくらい。晩酌ならそれでいいが、やはり料理を出してもらった以上はしっかり食べないと作ってくれた人に悪い。それに、立場ある人間達なので食べ方も大変お上品。まぁ、うちの親父も礼儀にはかなりうるさかったのでその辺りはいいのだが、若くて仲間内なら完全に無視して掻っ込むくらいはしてもいい。


「若い胃は素晴らしい!今ならバター揚げもモリモリ食べられる。あれにメイプルか蜂蜜を掛けて食べるのがたまらないんだよ!」


「私はパスですね。甘いものはあんまり食べないですし、見ただけで胸焼けしそうです。エマは?」


「食べない事はないガ、こっちに来て食性が変わったのか味噌汁とお新香が1番旨く感じるようになっタ。何なら朝は梅のお粥でいイ。瞑想した後に食うと心が豊かになるゾ?」


 それは既に修行僧の部類なのでは?まぁ、身体には良さそうだし薬膳的な見方ならいいのかな?その後も町を見て回り色々と買い込む。米国でも出ている物もあるが値段が違うらしくこっちの方が安いとか。ただ、似たような何かなので性能やら出力やらが違ってたりする。武器のカタログを見ると格闘家の武器に鞭やらヌンチャクがあったりするし、フリーの見出しの武器にはそれこそバラエティー豊かにカードっぽい物や戦斧、果てはスリッパっぽいものまである。


 モンスターにスパンッとツッコミ1つ!それで倒されたモンスターはきっとウケないギャグを叫んだんだと思う。まぁ、それはさておき物販会場の東京ドーム付近は秋葉原以上に賑わっており、仮面の人々が歩き回っている。開会はまだだが、既に展示品は展示されているし、そのブースの企業人は品物のチェックに余念がない。


「そのエナドリは多分相当売れるんで、当日までにある分全部誰かに持たせましょう!うちは一応、第1協賛企業です。量産の目処も立ってるので必要在庫以外は放出状態のフルオープン!商人ではないですが、柱の1つです。そこの大きなポップはよく見えるように!ギルド直々の店と分かりやすく!」


「おや、山口さんお久しぶりです。商人じゃない割に売る気満々じゃないですか。」


「おぉ!お久しぶりです!試供品にエナドリどうぞ!米国行き前の最後の仕上げです。我々と、言うか我が社の晴れ舞台ですからね。飲んでヨシ、身体にはヨシ、お前にヨシ、私にヨシ!全部ヨシで旅立ちにヨシ!大会後に米国に行くんですがあちらの植生は?或いは同じ物でも成分の違いは?工場稼働後は好きな研究していいと御達しが出ているので、回復薬以外の薬の研究も調合もやりたい放題。そもそもですね、若返りの薬と回復薬の違いとは何だと思います?何故、テロメアに効果のある物と傷を回復する物を分けたのか?理由に予想は付きますが、しかし効果を落とせば若返りと回復は同時でも構わないはずなんです。まぁ、先に行けばそれだけ消費して、若くなりすぎると予想したとも考えられますが、なら!ピンポイントに効く薬を出してもいいのでは・・・。」


 相変わらず山口のマシンガントークが撃ち抜いてくる。話している内容は割と重要な事を話しているはずなのだが、矢継ぎ早に話すので一旦録音してから聞き直した方が頭に入るのかもしれない。因みに、高槻製薬として出す店舗は3。大きいブースに回復薬をまとめ、他の場所ではエナドリだけ売るらしい。これは会場内に飲食ブースが少なく、冬場だが水分補給と兼用で健康管理の為らしい。まぁ、時期的にインフルエンザとか流行る頃だしその措置が分からない訳でもない。


 ただ、出資している会社なのでポップというか、目印代わりにエナドリ飲んでる写真で宣伝したいとお願いされ、作った物が今はまだ垂れ幕が掛けられているが掲げられている。松田曰く公式飲料にして継続的なギルド運営資金とするらしいが、俺が思うよりもやはりギルド運営には金がかかるのかもしれない。ん〜、米国からの報酬もあるし、元々集めた資金もあるので稼働と同時に資金ショートはないと思うが、誰が何を持ってくるか分からないからな・・・。


  挿絵(By みてみん)


「写真いいですか?米国記者のジョンでーす!今度来られる先生には米国民も私も大いに期待しています!渡米する意気込みは?」


「量産に次ぐ量産!生産性を高めつつ品質を向上する!日本の工場計画は基本的に全てトライに割り振られています。なので、無駄な所もあれば、その設計は後でいらなかったなぁ。なんてものも多いんです。なので、米国工場は最新式の設計案を採用して生産性と汎用性をアップした形になりました。まぁ、設計フレームはこちらから持っていくので組み立てと試運転含めれば3月頭から中旬には動き出せますね。」


「最新式とは豪華ですね!稼働すればスィーパー達の負担も遥かに減ります。拡大すれば更に本数を増やせるのでは?」


「それについては稼働してからとしか。今回の規模で1日1000本を目標として、そこからのスタートになります。現地の方達との共同作成が上手くいけば可能ですが、何分精度にばらつきが出る事は許されません。私達の作る薬は命に直結します。なので、増産体制は折を見て増やしていく以外ないんですよ。・・・、そうですね。来年以内に3倍程度迄増やせるなら、次の工場稼働計画が立ち上がると思います。その頃には日本側でも色々進んでると思いますからね。」


 山口の話を聞く横でエナドリを飲みつつキセルをプカリ。ジョージは必要な事を聞いているのだろう。後から山口がジョンが若くなった大統領だと知ったら、どんな顔をするか見ものである。エマも試供品として貰ったエナドリを飲みながら更に欲しそうな顔をしている辺り、3日間でどれだけ売れるか?よりも、3日間継続販売出来るのか?そちらの方が心配だ。まぁ、屋台と一緒で無くなったらSOUL'd OUTの看板でも掲げるか、購入制限をかけるかの2択だろうな。物自体は回復薬の劣化品だと聞いているので、容易ではないが量は多分出来るのだろう。


 問題はパッケージに詰める所だろうし、追いつかなければ清涼飲料水の会社から製造ラインを借りるという手もある。その為に規格のある缶を採用したとも言ってたしな。高槻が動き回っているが、エマが言うには米国からゲート内を移動して来た時に一緒に飯くったら元気にしていたと言うので大丈夫だろう。


 その後、ジョージのインタビューと言う名の詮索は終了し会場内を見て回る。有名企業が軒を連ね、それと同じ様に中小企業も店を出している。売り物も出土品を改造した様な物から本部長達のフィギュア、縫いぐるみ。変わった所ではファーストキセルレプリカなんて見出しも・・・。映像から作ったので仕方ないのだろうが、白く塗られたキセルは紛い物。まぁ、ちゃんとレプリカと書かれているのでいいのだろう。


 目を引くのはメカニカルパワードスーツの様な物が大量に置かれた所で、衣類店が鍛冶師に頼んで作った防具と書かれていた。デモ映像を見ると案山子のように立ったスーツがモンスターからのビームに数発耐える映像が流れている。まって!それ俺欲しい!悩んだ防具問題これで解決じゃん!


  挿絵(By みてみん)


「クロエ、このスーツは輸出禁止に該当するカ?本当にこの効果があるなら大量に欲しいんだガ!」


「私だって欲しいですよ!スペック的には・・・、リアクターは無しで・・・、えっ!筋力で扱え・・・?装備品としては優秀だけど・・・、いや、強化して動くなら・・・。ん、装甲部以外は魔法糸を使用し軽量化を実現したと?」


(あれはゴミの素材が大半よ?虫唾が走るから却下ね。そろそろ諦めなさい?貴女には必要ないでしょう?)


(男の娘の部分が・・・、男の子の部分だ。そこが叫ぶんだよ。カッコイイ装備はとりあえず着けてみたいって!)


(子供でも抱いて戦いなさい?その方が貴女らしい。)


 あの絵の事か!綺麗だったのでそのまま描かせてどうにか補修完了と共に絵は完成した。そして、それのせいか寝ている時に無意識に布団を抱いて寝ていた。ん〜、街を出歩いて赤ん坊見ると抱っこしたくなるし流されている?分からんが自制は効くのでよしとしよう。残念な事にあの絵を消すという選択肢はない。だって美しいと思ってしまったから・・・。


「ワタシィの国に輸出できまァすか?」


「可能ですが、販売は当日になりますね。先行販売はないので当日来ていただくか政府のHPからリンクを辿ってネット販売となります。一応、1番シンプルな物で金貨5000枚からとなってます。」


「OKOK!名刺くださァい。アクセスしまァす。」


「大量注文はできる限り店頭でお願いします。生産には限度がありますから。」


 どうやら売り飛ばしていいようだ。いや、売らないと後々不味いのか。商売という面もあるが技術として発展を望むなら大多数で弄り回して回した方がいい。それこそ、今は日本で作っているがメイドインなんちゃら製スーツもそのうち出てくるだろうし。ただ、武器のマウントポジションを無視できるのはいいな。早着替え出来なくとも着て入れば一定の防御は得られるし、剥き出しの武器が邪魔になる事はない。


 価格で驚くが初心者装備と考えて、育成をメインとするなら十分に使える代物だろう。ただ、1番重い物は重量が200kg近く合ってアシスト機能で扱っても50kgは覚悟する事と書いてあるが・・・。ん〜、近接系の職なら身体能力上がってるし、フルプレートアーマーの重さが約40kgだったはずだから、扱えない訳ではないな。


 他のブースにはシンプルな防具は胸当てとか靴とかもある。魔法糸で作られたマントとか、調合師作成の糸で作られた服。オーダーメイド承ります等々、ここ以外にも防具系はバラエティー豊かだ。ただ、やはりというか、ダンゴムシは乱獲されたらしい。持ち込み素材装甲虫(ダンゴムシみたいな奴)高価買取の看板をどこもかしこも掲げられている。確かにそこそこ安全に狩れるし、その割には硬いので扱いやすいのだろう。


「質問だが、日本としてあれは売ってもいいのか?我々は大歓迎だがそれに対してのリターンが少ないように感じる。」


「私からはなんとも・・・。あるとすれば売り抜いてしまいたいと言う考えもあるかもしれません。技術は日進月歩、時期的にスタンピードが発生した後なので一旦売り抜いて新たな開発を行う運転資金として金貨を集めている可能性はあります。それと同時に、この国は最初にスタンピードを体験しました。なら、次の備えを世界に促しているかもしれませんね。まぁ、憶測ですけど。」


 動画で駄目なら現物。利益があるなら売り捌く。不安を抱えているならそれを払拭できる材料を公開する。モンスターは怖いしビームは当たれば死ぬ。だが、ゲートに入らなければジリ貧は終わらないし、スタンピードは何度でも発生する。そう、何度でも。なら、この機会にある程度技術を公開するのも悪い手ではない。何せ各国から要人が来るのだし。


「備えカ・・・、次はいつ頃と予測すル?」


「さぁ?少なくとも私達は中層へ踏み込めるだけ進みました。そして、踏み込むのも大会後に照準を合わせています。なら、そこから猶予を引き出せるだけ引き出すしかないでしょう。」


「米国も鍛えるでしょうね。最初のスタンピードよりも被害は少なかった。でも、何時までも人に頼りっぱなしではいけない。だからこそ、ニコルソンさんには頑張ってもらわないとね!」


 そう言われてエマが頭を抱えているが、事実なので仕方がない。電話くれれば答えもするが、ゲート内を米国まで移動してくれと言われても目印もないしな。まぁ、文書も作ったしそれを元に教育していけば大丈夫だと思う。日本の中位メンバーも卒論の様に、思い思いに至った経緯や職についての考察を書いてデータとしてまとめている。最終的に完成と言うか、誤字脱字の修正だけして公開予定。


 ガチガチに修正された文章よりも、その時に感じたままに筆を走らせた方がイメージを伝えるなら分かりやすいだろう。あくまでビジネス文章を作るのではなく、至る取っ掛かりやニュアンス的なものが伝わればいいのだから。


「さて、最後はここ。約束を果たす時です。」


「これはなんとモ・・・。よく知っていたナ。容姿だけなら補導ものだゾ?」


「ジャパニーズ赤ちょうちん!ミスター波平を思い出す。」


 町外れのガード下。赤ちょうちん灯る古めかしい屋代。暖簾の隙間から漏れる香りは出汁の香りで食欲をそそる。まぁ、当日の出し物の1つを借りてきた。手の込んだ事にキッチンカー仕様で移動販売も楽々。まぁ、半田が自衛隊遠征時に使いたいと言うので買って渡し、色々改造されたらしいので、中身のスペックは分からない。


「大将来ましたよ〜。」


「おう!やっぱり一回は火を入れねぇとな!長年の味ってわけじゃねぇが楽しんでくれ。そっちの外人さんは、エマさんと誰さん?」


「特派員のジョンです!エマさんのインタビュアーとしてついて回っています。えぇと?」


「しがない料理人の半田ってもんだ。おでんを今は作ってっがメニューはない。嬢ちゃんの頼みで食材もたんまりあっから食いたいもんいいな。」


「それは楽しみだナ。符号料理でも頼むカ。終ぞ食べることはなかったからナ。」


「エマ、それを食べるなら内容聞かずにこちらがオーダーしたものを食べないと。」


「富豪料理?私も食べましょう!楽しみだ!」


 ジョージは勘違いしていそうだが、自分で言ったのなら食べてもらおう。これが毎回暗号にされる訳でもないが、一度食って知っておけばなにかの際に役立つかも知れないし。おかもち持って暗号デリバリー、シュールだが、ある意味バレる可能性は限りなく低いんだよなぁ・・・。まぁ、毒見役なんて言う古風なものを新しく立てる必要性はあるが、昔とは違って回復薬あれば即死の毒でもない限りギリギリ生きてると思う。だって、毒には吸収すると言う過程が必ずあるのだから。


 一旦エマとジョージが暖簾を出て、染み染み大根と卵をそれぞれネギ味とコーラ味に。卵の黄身だけいじれると言う事でバニラアイス味に変えてコーラフロートとする。色はそれっぽい茶色い卵なので、そこまでバグらないかな?匂いはおでんのままだけど。


「それで、当日は普通に料理出していいんで?」


「それはもちろん。すいません、美味しい料理をおもちゃの様に扱ってしまって。」


「いやいや、これはこれで新しい味ってやつ?おにぎりには塩か梅。だけど今じゃツナマヨでもチーズ猫まんまでも何でもあり。古い考えじゃあ旨いは続かない。なら、これもその旨いを見つける作業でさぁ。前は食材の食感と味が有って調味料で味を付けた。でも、今じゃぁ0から旨いが作れる。なら、楽しまんと損でしょう?」


 食材を生かしたものが旨いのか?それとも全て数値に表してそれと似たような料理を作る方が旨いのか?やり様は色々ある。まぁ、妻や家族と食べる料理はプライスレスの旨さがあるが。


「そろそろいいカ?」


「ええ、どうぞ。」


 その声で2人共席に着いて食べだす。まぁ、ジョージは『何でこれが富豪料理?』と不思議そうな顔をしていたが、一口食べた後に何とも言えない顔をしながら大根と卵を見比べている。エマの方は卵はありだったのか、その勢いで大根を食べて悶絶しているが、ネギはネギでも辛味ネギ味にでもなってたのかな?


「鼻と舌ガ!」


「富豪は符号か!なるほど卵はいいが大根は2度目はない。・・・、そっちのおでんは大丈夫?」


「流石に全部で遊ぶなんて愚策は犯しませんよ。さて、普通に食べましょう。見た目も味も同じ料理でね。」


 その後は和気あいあいと料理と酒を飲む。途中からジョージが歌い出したりもしたが、本当にお忍びで肩書無く遊んで回れるのはこれが最後だろう。米国に戻って薬を飲んだ事を公表すれば他の国の要人も真似するか、或いは要注意人物の過去の写真間で探し出す。世襲議員など良い的だろう。家族の仲良しアピールに集合写真とか公開している人もいるし。


「〜♪〜♪ハッハッハッ!学生時代を思い出す!日本酒と焼酎におでん!身体も温まる。ニコルソンさんその焼鳥もらっても?」


「これは牛スジだ。焼鳥はクロエがさっき焼き上がったのを殆ど食っタ。大将、私はボンジリ2ツ。」


「焼き鳥を冷やすなんてとーんでもない!塩でパリフワ、冷えたらガチガチになって質が落ちる。屋台で食べるなら戦争です。」


「なるほど!大将私にも焼き鳥と・・・、カリカリベーコンのマカロニチーズ、後は塩で炒ったアーモンドを。その白いのははんぺん?なら、それも貰おう。」


「あいよ!いい食いっぷりだね旦那。じゃんじゃん食ってくれ。」


 さてさて、前夜祭のように楽しんだがいよいよ本部長戦が始まるな。総勢150名。3日間で行われ、よほどの事がない限りその上位者から本部長となり、ギルドが正式に稼働しだす。実際、庁舎建設も順次始まり最後の庁舎も年内にできるとか。それまでは合同庁舎となるようだが、まぁそれはいい。終われば晴れて帰郷!これが一番大事なのだから。


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[一言] そのうちパワード・スーツと結合するぶっ飛んだ奴も出てくるんだろうなぁ 腕の欠損とかなら武器腕の選択もわるくはないか、ガチの最前線組なら
[一言] 男の娘…赤ちゃん… 徐々に女性化が進みつつもいやいや男だろと再認識する これぞTSの醍醐味っすね!
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