表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街中ダンジョン  作者: フィノ
230/849

180話 パーティー 挿絵あり

「ただいま、エマ。それに他の方も。小さな約束を果たしに帰りましたよ。」


「よかっタ・・・、本当に良かっタ!おかえリ、カラダは大丈夫カ!?」


 望田と戻り、エマに抱きしめられながら他のメンバーと合流し、ダラスで2泊休養してワシントンへ。先に大統領ジョージからのスタンピード終結宣言は公式になされたものの、映像データ等がない為、何処か浮ついた空気が街には流れていた。


 しかし、それも先程流された公式映像と詳細な被害報告により信憑性が増し、誰もが明るい顔をしながら街は一気にお祭り騒ぎの装いを醸し出す。エマ曰く独立記念日とイースターとクリスマスが同時に来た感じらしい。よく分からん例えだが、日本風なら盆暮れ正月が一気に来たと言う事だろう。この数日はウォーターゲートホテルでダラダラと過ごしている。お忍び観光なんて洒落込みたいが、マスコミが張り付いているので面倒だし、それに大人しくしてほしいとも言われたしな。


 隠れられない事もないのだが、流石に仕事をしているメンバーもいるので、それをするのは悪いしここに残っている望田は別として、橘はおいそれと外には出られない。なので、妖怪食っちゃ寝と化してプールと部屋とスマホを行き来くらい。当然と言えば当然だが、終了後はすぐさま妻に連絡を入れ、ただいまを伝えた。やはり泣かれてしまったが、無事を喜べたので良しとしよう。早く帰りたい・・・。


 早く帰りたいのだが、帰れないのもまた仕方ない。理由はいくつがあるが、1つは祝賀会。死者への弔いは国葬になるらしく準備が必要でまだ時間がかかる。と、言うのも戦地での正式な死亡者数は判明しているのだが、呼びかけられた義勇軍が保証を・・・と、言うか治癒師を求めている。


 金銭的な要求ではなく、怪我や四肢欠損に対する回復。戦場ジャーナリストが夏目達の救護作業を撮影し、その映像も流れた為その施術を求める声が多数ある。どうするかは本人判断だが、小田は乗り気で治癒師を鍛える最高の場所と手を貸しに向かい、嫌がる夏目を連れて行った。まぁ、その夏目は夏目で女性メインで男を相手にしなくていいならと条件を出していたようだが・・・。


 実際、小田の動きに対して戦場帰りの兵士達も動き出し、ほぼ無償でボランティアと共に施術に当たっている。次世代?と、いうか次の中位が出るなら多分この中からだろう。科学と一緒で人もまた戦場でなにかを学ぶのだから。


 赤峰は俺と一緒で早く帰りたい組だ。やはり井口とお腹の子供が気になるらしく、暇を見ては連絡を取っている。ただ・・・。


「クロエさんよぉ、すぐに産まれてくるって事はねぇよな?それこそ、形ができたらスポンと。」


「いやいや、十月十日と言うでしょう?まだ2ヶ月ですよ?後、8ヶ月と10日くらいは待ってください。早く会いたいのは分かりますが。母子ともに健康なんでしょう?」


「いやぁ・・・、回復薬飲んでっから健康は健康なんだがよぉ。そのな・・・、その薬で早々と子供の身体が出来上がって産まれちまうんじゃないかってな・・・。」


「いや、それはまさか・・・。」


 お互い真顔になって見合わせた後、どちらからともなく意味のない乾いた笑いが漏れ出した。さ、流石にないよね?母子健康で産まれるなら問題はないけど、そんなにポンポン出てこないよな?取り敢えず、高槻の連絡先を伝え俺からも連絡を取ってその事は話した。まぁ、ゲート開通以降も出産自体はなくなっていないので、無事に産まれている事は確かだ。そんな赤峰は納得する話が聞けたのか、兵藤に連れられて米軍基地に赴いて兵士達を訓練している。


 開戦前に米兵を鍛えていた2人はそのまま、国家安全保障局のダグラスだったかな?から要請されて帰るまででいいからと頼み込まれたらしい。因みに、講師代は別払いなので頷くだけの額を提示されたのだろう。精神的に疲れていないのかとも思ったが、夏目達にしろ、兵藤達にしろ初期のゲート籠もりに比べれば全然と首を傾げていたが・・・、俺と宮藤はスパルタ兵でも鍛えていた?


 まぁ、思い返せば1週間近くゲートに籠もらせて、モンスターを発見したら逃げずに倒せとやらせはした。そして、それ以降もゲートに放り込んでは昼夜なく連戦上等!で有無を言わせず休息休日を挟みながら走り回らせたが・・・。あれ?感覚的におかしかったのかな?よそう、俺はまともだと信じたい。別に体力は削られても他は削られないのだし・・・。


 卓と雄二は宮藤と共に、外遊と言う名の旅行と言うか観光をして回っている。話を聞けば3人共初海外、知見を広めと言う名目の元、姿隠しの魔法を渡したので見つかる事なく元気に今日も窓から飛んでいった。ただ、アライルからの依頼でペンタゴン内を散策して欲しいと言う事もあった。こちらに来た当初、俺の侵入でペンタゴンの警備体制がザルどころかオープン・ザ・ドア状態だった事に危機感を覚え、新たな警備体制を構築するのだとか。


 やり方は予告なしの怪盗スタイルで、アライルに会えば終了。それまでは自由に中を見て回ってもいいらしいが、既に大事な機密情報は何処かに隠したのだろう。当初提示したエマ持ち歩き案とかで。実際、今ペンタゴンのPCを漁っても何も出ない。賢者のイタズラは継続中で、いやらしいのは発動条件がランダムで何処かの自動扉が開く事。その電気信号で一時的にウイルスが活性化しデータを漁るのだとか。漁った内容が怖くて聞けないが、賢者曰く包んでいる合間に見る暇つぶしにはいいとか。


 まぁ、ペンタゴンはいいよ。他国の秘密とか知ってもいい事ないし。どちらかと言えばはしゃいでいる3人を見る方が面白い。ハニトラ対策の名目で初心な雄二を連れてストリップバーに特攻し、宮藤は別として卓も顔を真っ赤にして帰ってきた。まぁ、歳も若いし仕方ないか。実際、今回の件で2人共完全に顔が世界に知れ渡ったので、若い男性ならうちの子と結婚しない?何ならうちに移住しない?しないならパイプがてらに付き合わない?と、言う事態は十分に考えられる。


 事実、兵藤は毎日色々な金髪ガールと食事してるとか。まぁ、全員米軍のと頭についてしまう訳なのだが・・・。だが、この短期間で大恋愛とかは流石にないだろう。0とは言わない。恋とは落ちるモノなのだから。しかし、見た限りでは観光の方が楽しい様でワシントン散策をした土産話ばかりである。


 そんなメンバーをよそに1人くたびれているのはエマ。総指揮官と言う事もあり、軍に国会にパパラッチにファンからの追っかけにと追うはずの者が追っ掛け回されている。元々全米2位の美少女で容姿端麗な女性がヒロイックにモンスターとの戦いを指揮し、援軍まで連れてきて勝利したのだから当然だろう。まぁ、俺もホテルで写真を撮られたりもしているし容姿はいいが、自国の英雄の方が今は盛り上がっている。


 それでも、日本メンバーのフィギュアや人形を作りたいと言う依頼は多数あるらしく、宮藤の私腹は今から肥えるだろう。版権斡旋してる元締めだしね。嫌なら断ればいい話だけらしいが、橘は戦場で見た兵士の証言で完全にロボット、夏目はアメコミのスポーンベース。他メンバーも中々アレンジされているらしい。兵藤フィギュアが水鉄砲の先に付いて手から水が出たり、小田がナース姿なのもまぁ、イメージからかなぁ・・・。


 話が逸れたがエマはそんな感じで、走り回り次世代を探せと命令が下され至れそうな人材を探し回っている。ただ、自身を選んだ理由を俺に聞いてくるが、俺も魔女に言われて選んだしなぁ・・・。秘話を隠したまま話すのには骨が折れた。


「取っ掛かリ・・・、そウ、取っ掛かりだけでもいいのダ。何かこウ、ないカ?クロエは私を選んだ実績があル。」


「追跡者の発見には引っかからないのでしょう?まぁ、方向性が違うと言えば違うので仕方ないとは思いますが・・・。う〜ん・・・、ならこれはどうです?」


「なにかあるのカ?そろそろ人選写真マラソンが数千になるのだガ。」


 そんなに見せられてるのか・・・、俺なら投げ出すな。話もせずに選ぶなんて実質的には無理だろう。ただ、それをやった実績が俺にも降りかかる。なら、逆に考えて会う方向にすれば多少はマラソンから開放される。


「前置きとして、それは確実でもなければ可能性を見るようなものです。ただ、それが言えるなら目はある。」


「そんな魔法の質問ガ!?何を聞けばいイ!」


「至極真っ当な事です。『アナタの職はなんですか?』この一言で済みます。」


「それハ・・・、私は狩猟者と答えるし他の人間も自身の職名を言うだろウ?なにか意味ガ・・・、そうカ、禅問答の解答カ。私は私自身であリ、何故その職を選んで自身としたかといウ。確かに出た職を全て覚えたうえで、それを選んだ事に答えられるなら至る目も出てくル!」


「ええ、ただ意味を伝えては駄目ですよ?意味を知らせずにただ・・・、そう!挨拶のように聞けばいい。これならスィーパーか否かも自然に分かりますからね。後はそこから適当に質問を投げかけて、本人に進みたい道のイメージがあるかを探ればいいでしょう。」



 この挨拶は後の世にも受け継がれ・・・、それこそ未来世紀まで文字通り挨拶の1つとして受け継がれる。ただ、これの本当の意味を知る者は極少数であり、その少数もまた知っていたとしても意味を話す事はない。なにせ、至れば自然と意味が分かるのだから。



「うム、それがいいだろウ。しかシ、有名人とは大変なのだナ・・・。歩き回る度にカメラがついて回ル・・・。」


「あ〜、税金と思って諦めてください。少佐なら光学迷彩とかでいいんでしょうけどね。そう言えばテレビ見ましたよ?エマを選ばなかった審査員が酷評されまくってるの。一部では裏金があったとかなかったとか・・・。」


「過ぎた事に意味はなイ。真実だろうとゴシップだろうト、今の私はここにいる大佐。寧ロ、昔殴った部下の方が訴えを起こしそうで嫌ダ。」


「その辺りはアライルさんに頼んで揉み消して貰いましょう。面倒事は煙が出る前に取り除くに限る。」


「そうすル。後、約束はちゃんと果たセ。」


 約束・・・、ただいまを言う。1杯奢る。そして、砕けた口調で話す、か。切り替えが難しかったが、その話を出すならまぁ、今からでもいいか。


「はいはい・・・、で。どこで飲む?日本ならある程度分かるが米国はさっぱり。おすすめがあるなら言ってくれ。」


「日本でいいだろウ。それはそうト、かくれんぼの魔法を私にもくレ。流石に煩わしすぎて殴って回りそうダ。」


「あ〜、どれがいい?全身と顔だけとペンタゴン侵入状態。おすすめは全身かな?最後のは帰ってこれるか分からないし。」


「よく分からんガ、全身で頼ム。それを体験出来れば光学迷彩も夢ではないだろウ。」


 そんなエマに魔法を渡しているので、追っかけとの鬼ごっこはエマに軍配が上がっている。公式として場には出るが、それ以外は歩く姿さえ写真に撮られていない。ただ、あまり隠れるのも悪いとウィルソンに文句を言われたらしく、ホワイトハウスへ入る時なんかは写真に撮られている。


 むしろ、マスコミの執念が凄いよな・・・。このホテル前にも大量のマスコミ。出現しそうな所にもマスコミ。人海戦術とは言え、それだけのマンパワーを統制して使えるのが凄い。日本でもマスコミは凄かったが、消えられると分かってからはそこまでしつこくなかったし、多分公安や警察、政府からの圧力もあったのだろう。各メンバーはそんな感じに動き回っている。


「ここにいましたか、缶詰とは言えこのホテルは広いんですよ?望田君と探すにしても骨が折れる。」


「まぁまぁ、凄く可愛い水着着てますよ。」


「知ってます。前もプールで見ましたからね。今日は白ですか。あんまり水着でいると写真がばら撒かれますよ?」


「泳ぐくらいしかすること無いんで。普通にここにも泊まり客は来るんでどうでもいいですよ、減るもんでもなしに。で、いつまでセンサーアイは壊れてるんですか?」


  挿絵(By みてみん)


 そのホテルスイートの階ごと貸し切りではあるが、他の階は普通に営業している。最初はホテル毎封鎖するかとも言われたが、メンバーと話し合って流石にそこまでしなくていいと取りやめた。なので、このホテルは毎日満室満員御礼。近づくマスコミこそ止められてはいるが、写真はかなり撮られている。まぁ、元気な姿を見せる工作作業である。


 全面ガラス張りのプールサイドで椅子に座って泳ぐでもなく、ジュースを飲みながらダラダラしていると橘と望田が来た。橘は目隠しと手袋をしているが歩みに迷いはなくポーズとしてか望田に手を引かれている。まぁ、折衷案としてのこの姿なのだがエマを間違って鑑定したのが響いている。視るだけでいいと言うのは、裏を返せば視えなければいいと言う事なので目隠しで、目を隠しての何も見てませんよアピール。


  挿絵(By みてみん)


 割りと米国の偉い人達の中では扱いというか、戦闘後のもてなし方で意見が割れたらしい。らしいと言うか、そのまま鑑定される前に追い返したい勢が多数だったらしいが、それを推しても救国の英雄を無下には出来ないと言う事でこの姿。言いたい事は分かるが1人でもスタスタ歩く橘が目撃され、サイボーグ扱いは終わらない。メディカルチェックを米国で受ければ一発で人間と分かるのだが、橘と日本政府が拒否したので話は流れてしまった。


 だが、話は流れたが装備庁の装備品には米国も興味があり、ついでに言えば米国の次の中位は鑑定師狙いらしく、色々と話を聞かれていた。俺への話?英語わっかりませーんと言う話でゴリ推した。実際、日本政府もはよ帰ってこいとは言っているので、祝賀会までならと承諾したのを蹴られたくないのだろう。帰ると言えば全員帰国、そうなると今ある短いながらも中位から受けられる指導が消えてしまうのだし。


「センサーじゃありません人の目です。これだけ言われると私も私が倒れた時に病院で改造されたんじゃないかと、疑わしくなってくるんですからね!」


「もしかして、あの時渡したカードって手術承諾報酬なんじゃ・・・。気前よく渡してましたけど。」


「望田君もやめなさい。ここではなんです、一度部屋に戻りましょう。重要な話ですから。」


 そう言われて着替えて部屋に戻る。この期に及んで何かあったかな?モンスターは倒した。ゲートはワシントンに後日戻される。政治関係に俺はノータッチ。祝賀会でなにか話せとか?緊張するので嫌だなぁ・・・。


「耳目を塞ぎ眠りにつこう・・・、ここは静寂何人たりとも見えない夢の中。」


「ありがとう望田君。これで外部遮断は大丈夫だね?」


「ええ、私の耳で拾える機械音もありませんから大丈夫です。」


「そこまでまずい話なんですか?」


「ええ、不確定でまずい話です。」


 キセルをプカリ。望田が入れてくれたコーヒーを一口飲んで話し出す。さて、そこまでまずい話しと言うと俺個人の問題ではないだろう。このタイミングでまずい話・・・、スタンピード後にまずい話・・・、箱? 


「モンスター討伐しながら確認した箱が一部持ち去られました。多分、持ち去ったのはウィルソン=スミス。彼は檻がなくなった後に地雷調査として、すぐさま追跡者達を連れて戦地に入りました。その過程で箱を偶然か或いは、指示を受けて回収したのでしょう。全てとは行かなかったようですが、他のメンバーの証言と統合するとやはり数が少ない。」


 アライルか。そこにたどり着けるのはスタンピードではなく、溢れると言う言葉を知るアライルくらいしか思い浮かばない。他の可能性を考えるなら、戦闘中に米兵が発見した事も考えられる。しかし、開けて薬を漁るなら分かるが、箱ごと指輪に収納しては中身が不明で使い道がない。まぁ、生き残って売りさばくと言うなら分からないでもないが、生死がかかった中でそんな事をするとも思えない。


「一部と言う事は大半は日本メンバーが?」


「ええ、中身は危ない設計図の可能性もありましたからね。私は日本を出る時にそれの回収の密命も受けていましたが・・・、どうするのがいいと思いますか?」


 そんな政治的な話を持ってくるなよ・・・。日本政府としてはブラックホールエンジンの設計図見つけて、ヤバいからどうにかしたいと言う本音がある。しかし、それはあくまで日本政府としての見解で米国の見解は知らない。仮に、持ち去られた箱の中にそれに類するモノがあったとして、それを封印して目を逸らすのか作ろうと動き出すのかはその国次第。それに、そもそもそれがあるかも分からない。


「それを私に聞かれても困る。ただ、1番は知らんぷりじゃないですか?」


「やはりそう思いますか?こちらが回収した箱は約30。米国に回収されたと思われる個数は10。多分それ以上は無いでしょう。最初の地雷で吹っ飛んだなら分かりませんが。」


「1番嬉しいのは設計図が地雷で吹っ飛んだ事でしょうけどねぇ。」


「そんなにヤバいんですか?その設計図って。」


「カオリは知らないのか・・・。そう言えばあの時はいなかったんだった。まぁ、副長になるから知っておくといい。秋葉原でスタンピードが発生した際、奥の箱も一緒に出た。そして、その中にブラックホールエンジンの設計図があった。」


「ブラックホールエンジン?」


 望田はSFには詳しくないか。色々映画見せたけど、ブラックホールエンジンの話が出るのはゲームが多いし、最近は動力の話をする漫画やゲームも減ってしまった。設定資料集とか読めば分かるかもしれないけど、望田に必要なのは音である。


「ざっくり言うとブラックホール作ってエネルギーにしようぜ!って言うヤツ。当然その過程でブラックホールを作るもんだから失敗したら地球が飲み込まれる可能性がある。まぁ、眼の前に現れた時点で即死なんだけどね・・・。」


「ガチヤバな設計図じゃないですか・・・。えっ!日本作ってるんですか!?そんなもの!」


「作ってないよ望田君。どちらかと言えば設計図を無くしたいというのが日本の方針。だから、私も選ばれた際に話を聞かされて密命を受けた。無論、宮藤君もね。しかし、知らんぷりはまずいのでは?」


「私に話を持ってくるのもまずいと思いますけどねぇ!中身不明ならそのまま預けるしかないでしょう。後は政治です。勝手に交渉して秘密を共有してもいいし、藪蛇でそんなもん有るの?と勘繰られでもしたらいい。私が言えるのは突付けば突付いただけ情報が漏れるという事です。」


 寄越せと言えば理由を聞かれ、知らないと言えば秋葉原では無かったのかと詰められる。1番はお互い知らん顔する事だろう。それこそ、最高機密にでもして永久にその機密には触れないとか。まぁ、ゲート内で好き放題してもいいけど、間違っても壊すなよ?ガチで人類全滅エンドだからな!


「はぁ~、私もこんな密命受けなければよかった。黒岩さんが『箱あったら回収してね』って軽く言うから了解しましたが、行く直前に中身教えられたんですよ・・・。」


「ご愁傷さまです。強く生きてください。私とカオリはこの件にノータッチ。何ならこの会話もなかった事にします。」


「そうしましょう。私も胃が痛くなってきました。偉くなったら回復薬が何本でも必要になるんですね・・・。夜眠れなくなる・・・。」


 望田がウンウン唸っているが割りと図太いので酒飲んで寝たら大丈夫だと思う。


「普段は秘密を暖炉の中の壁の穴にしまい込み、お祝いの時に思い出せばいいんじゃない?」


「なんですかそれ?」


「「バルス!」」


 橘とハイタッチしてこの話は終了。松田辺りなら『はっはっはっ、何処へゆこうと言うのかね。』と、拳銃持って追いかけてきそうだが逃げ切る所存である。そんなこんなで米国スタンピード発生から約10日、月は替わり2月になり帰らないとそろそろ選出戦の準備やばいんじゃない?という中で祝賀会が行われた。場所は人数を考えてホワイトハウス前広場を使っての大々的な立食パーティー。


 それぞれオーダーメイドのタキシードやドレスに身を包み、会場入りする。はっはっはっ!ついに勝った!ゴスロリ卒業!結局はドレスだが、そんなにヒラヒラしていない。魔女もこれならいいと言っていたので大丈夫!ただ華が足りないので華をつけるとかなんとか。まぁそれはさておき立派?に大人としての対応をしてもらっている。


  挿絵(By みてみん)


「我々は戦った・・・、戦い抜いたのだ。そして、勝利をつかんだ!戦った兵士諸君、ありがとう!そして、同盟国から来た勇敢なる者達よ!本当にありがとう!ささやかだが、本日は楽しんで欲しい!」


 ジョージが乾杯とグラスを上げ、俺達もグラスを上げてパーティー開始。今回参加した日本メンバー全員へ大統領自由勲章をくれるというのでそれを貰い、エマはついでに名誉勲章も貰っている。俺達はここに残る訳ではないが最高勲章らしいので大切にしよう。立食パーティーなのでさっさと食事に向かおうとすれば、背後から呼び止める声が。


「クロエ=ファースト・・・、さん?」


「呼び捨てでいいですよ大統領。畏まられるほどの人物ではないですから。」


「ならば私もジョージと。美しい美しいとは思っていたが、本人を目の前にすればやはり映像は霞む。いやはや、これでお互い未婚なら片膝をついて求婚しているところだ。どうだい?今からでも米国国籍を取らないかい?税金免除でも何でもありだよ。」


 画面越しでも分かっていたがグイグイ来るなこの人。税金免除に惹かれるものはあるが、それでもやるべき事は残っている。やんわりと失礼ない範囲で断り日本に帰る算段もつけよう。流石にこれ以上はこちらに残れない。


「ありがたい申し出ですが、国に愛する人を待たせています。そこが私の帰るべき場所で、私のいるべき場所です。なので、申し出は丁重に辞退させていただきます。」


「そうか・・・、大統領としての私ならここで是が非でも引き止めて置きたい。しかし、一個人の既婚者として、貴女の言葉は理解するに値する。無理のない範囲で楽しみ、これからも国として一個人として仲良くやっていこう!ハッハッハッ・・・!」


「は、はぁ。」


 話は終わったのか陽気にマティーニを飲みながら歩いていってしまった。まぁ、何事もない社交辞令だろう。俺もグラスを傾け食事へ。今日は湿っぽいのはなしで楽しもう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価、感想、ブックマークお願いします
― 新着の感想 ―
[良い点] 少なくとも表面上は楽しそうに話して、二番目の方の申し出を「明確には拒否されていない」というのが大事。未練がましくその場に残らず素早く立ち去って……プレジデントはしっかりミッションコンプリー…
[一言] 確かに回復薬を遠慮なく飲める立場にいる妊婦なんてほぼ世界初だろうし、母体を通して胎児にも薬の影響が有るのは事実だし、心配だわな 薬の影響が胎児にも出るなら不死薬と若返りは妊婦禁止だね ブラ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ