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街中ダンジョン  作者: フィノ
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176話 橘からクロエへ 挿絵あり

 鑑定師とは何なのか?普通ならソレが何かを判断し価値を決める人の事だろう。この壺いくらや、この絵画は贋作等々。警察なら麻薬の種類や、この遺留品は犯人の物なのか否か。それはわからなくても知りたい事は視るだけでわかる。ひき逃げの加害者に過失運転致死罪が成立する場合には公訴時効は10年、危険運転致死罪が成立すると公訴時効は20年。 救護義務違反そのものの時効はどちらにしても7年間。私の友人が私と別れた後に死亡し、もう時効は成立し法では裁く事はできなかった事件がある。


 本来ならこれ以上の捜査は無意味で、私的感情で動くにしても記憶の風化も遺留品の劣化も、或いは当時のその場所さえ様変わりして忘れ去られて過去となるモノだっただろう。しかし、私は鑑定師となり鑑定術師へと至った。そこから早かった。缶詰の駄賃として遺留品を全てかき集め当時の捜査資料を読み、救護はなされたのか?本当に犯人は捜査線上に浮かび上がらなかったのか?


 偶然か故意か?そもそも事故の要因は正しいのか・・・?足での捜査は必要ない。ただ、私の中にあるのは真実を知る恐怖だった。警官となりこの事件の資料は何度も何度も見て考えて、現場にも行き当時を夢想し犯人の像を作り憎めるだけその場にいなかった自分を憎んだ末、結果は視るだけで出る所まで来ている。そう、視るだけ。


 ・・・、結果に意味はない。警官としての責務で犯人を追った時期は時効と共に終わりを告げ、その後の捜査は単純に私自身の好奇心の為。決して復讐ではない。その場にいなかった私にそれをする権利はない。仮に殴り飛ばすなら時効後にこうして見つけてしまった私自身だろう。グズノロマとありったけの罵倒をのせて。


 そして、米国に来る前の時間で鑑定し結果はでた。車の破片からナンバーが割れ、当時の持ち主を探し出し名前や住所を調べ上げた結果・・・、犯人は死んでいた。老衰だったそうだ。私は地元に戻れない関係上、元部下達に頼みそれとなく犯人の死亡までの話を聞いてもらったが、曰く老衰までの数十年間常に思い詰めたような姿で過ごしていたらしい。


 既婚者であったそうだがある時から車の運転も止め、どこか怯えるような素振りを見せていたそうだ。・・・、そこまで、そこまで怯えて過ごす数十年があるなら出頭しろ!その怯えて過ごした数十年間はお前のエゴの時間であって決して贖罪ではない!悔やんでも嘆いても御しきれる結果ではないが、過去にも戻れずノロマな私はこの結果で過去にケリをつけるしかない。そう、警察官として捜査したケリを・・・。


「武器=攻撃力、補正のない私では確かにそうなりますね。だとしても問題ありません。鑑定術師の戦いをお見せしましょう。」


 身体能力並み、非武装状態の攻撃力並み、或いは底。許された力、武芸百般のみ。余りにもちぐはぐで、いっそ笑いの出る程清々しいピーキーさ。モンスターは速く固くデタラメなのに対して私が出来る事と言えば鑑定した武器を使いこなす事。身体能力は上がらず、自身を鑑定しても疲れにくくするペース等が分かるだけ。そこから至りスクリプターを第2職とした私は戦う手段は増えたが、中層のモンスターとて軽くあしらえるものではなかった。鑑定して使えそうなモノは持ってこれるだけ持ってきた。装備庁の変人達が改造して作った物も持ってきた。


 言わば今の私は人の作りしモノ。サイボーグサイボーグ言われたが、確かにそれには納得できる所もある。人工臓器は無いにせよ、この装備なら理論上宇宙でも活動出来るらしいのだから・・・。眼前には繭を抱えた蛹の様なモンスター。空中で浮遊するそれは多数の随伴機の様なモンスターを連れて漂っている。


  挿絵(By みてみん)


「まずは本体からと行きたいところですが、先に随伴機を潰さないと不味そうですね!」


 見える範囲で数十ある随伴機は人やモンスターを気にすることなく、働き蜂の様にクリスタルを取っては本体に運ぶ。クロエが言っていた大ボスを作り出すのはまずい、背部のバーニアを吹かし、その光を白いビロードの様に引きながら随伴機に飛びかかる。ハサミの片割れですれ違いざまに1機、そのまま反転して武器を交換して左右の銃から射撃して2機。手袋は狩人の物、ならばそのままトラップとしよう。ばら撒いた銃弾を起爆させ、落ちなかったモノはエコーボールを射出して叩き落とす。ファンネルか、やれと言うクロエもそうだが、やれる私も私で何かおかしくなっている気がする。


 ただ、このボールもあまり出ないので貴重は貴重だが、壊されてもまだまだ量はある。ようやくこちらを敵とみなしたのか、随伴機を差し向けてくるが遅い!数が多いなら文字通り手を増やせばいい。料理人の手は鑑定した。先端なら切り裂けもすれば、なにかを持つことも出来る。


 指先は覚えている。何を持たせるかも回答している。なら、記憶をたどり指輪から出すだけ。すべての手に武器を持ち、更にボールを増やして群れに突っ込む。ボールがモンスターを叩き落とし、手に持つ銃があるモンスターを蜂の巣にし、またある手がモンスターを串刺しにする。


「ちっ!何本か持っていかれたか。」


 モンスターもやはり馬鹿ではない。突き刺したモンスターはクリスタルを取り出せば、損傷の程度にもよるが消えるまでの時間多少残る。そして、ゲート外なら残骸も消えずに残る。秋葉原では復興にもスィーパーを使いモンスターを徹底的に除去し瓦礫はゲートへ投げ込んだ。


 そんな中で倒したモンスターの身体が液化(・・)するというのは見た事がない。串刺したモンスターは確かにクリスタルを出したがそのまま溶けて料理人の手を溶かした。武装らしい武装もない随伴機だが、下手に手を出せば下の米兵達が溶け落ちる。スィーパーならモンスターに触れても大丈夫?武器を溶かす様なモノを浴びて生き残れるならそいつの方が化け物だ。


「ただまぁ、そうそう手をこまねいていても仕方がないんです。まだまだ先は長そうですからね!」


 溶けるなら溶ける前の姿に編集すればいい。エマさんに詫びとして何度クリスタルを抜いただけのモンスターを融通したか・・・。その過程で出来るようになった技だが、面倒な技でもある。鑑定しているのは前提条件。クリスタルはモンスターの中を動き回るので、それを正確に取り出したうえで、今回は無理矢理に傷を塞ぐ必要もある。心臓とも言えるクリスタルがなければモンスターは活動停止するので、無傷の屍を見て変に攻撃されないかだけが不安か。


「エマさん橘です。これから蝶の様な雑魚が降りますが壊さないで下さい。下手すると溶けます。」


「分かったガ、そっちは余裕そうだな橘?」


「まさか、戯れに遊んだ蝶に武器の一部を溶かされましたよ。では!」


 叩き付けるだけのエコーボールではモンスターは倒せない。射撃か貫くか。何方にせよモンスターは倒す。早めに本体を倒さなければ羽化(・・)する。なに、手持ちの武器は山ほどある。なら、それを使い切るまで攻撃すればいい。


 遠距離では編集しきれない可能性もあるが、その程度ならどうとでもする。射撃しながら近寄り編集の追いつかないものは管理した記憶によりタライに乗せて地上へ。群れの中を回転しながら切り込み、クリスタルを抜いて編集出来たモノはそのまま地上へ。望田さんに頼りたいが・・・。


「通信傍受しました!出来る限り橘さんの辺りに屋根を付けます!存分にやって下さい!」


「ナイスタイミングです。なら、さっさと始末しましょう。」


 雑魚はあらかた倒したが相手も考えたのか、触れる直前に勝手に溶けて飛びかかる様なモノまである。そのせいで鎧の一部が溶けて砕けてしまった。だが、羽化まではまだまだエネルギーが足りないようで詳細までは読めないが、残り20%程度といった所。だが、それを待つほど私は優しくもなければ気長でもない。


「前回は融解しましたが、今回は大丈夫ですよね?装備庁の方々。」


 背部に砲身を指輪から転送し、作ってもらった屋根に降り立ち体勢を整える。窮屈だが仕方ないでしょう。顔を上げれば私の頭も無事では済まない。引き金が戻らないトラブルから一新、戻らないなら戻さなければいいと言う、使い切りの装備。クリスタルの液化方法何て見つけられなければよかったのに・・・。


 しかし、相手もエネルギーを感知したのか急速に羽化を開始する。それは死への飛翔か?或いはそれで十分と判断したのか?繭を抜け出し現れたのは蝶のような姿のモンスター。下半身の形成までエネルギーが足りなかったのか、脱ぎ捨てた身体にはまだ繋がるモノがある。


  挿絵(By みてみん)


 だが、なにかをされる前に、こちらが先に仕掛けて倒してしまえばいい。空にできた不可視の屋根に降り立ち、自身の中にある砲撃の記憶を呼び覚ます。クロエに見捨てられそうになった時のモノ、実験で初めて見せられて『はいこれ、使って下さい。』と理不尽に渡された事・・・。良い記憶がない。編集して捨ててしまいたいが、それをすれば私の武器が減ってしまうもどかしさ。


「これは、小田さんのそれより強力で人が作ったモノ。悪いが理不尽は過去に置いてきたんで、代わりに受け取って下さい!」


  挿絵(By みてみん)


 背面から発射される砲撃に記憶を重ね思いを重ね、2発を4発に4発を更に8発に増やして時間差でモンスターに直撃させる。一瞬消えたように見えたビームの先は、結局は消されきれずモンスターを貫き上下に分けて中のクリスタルを外に打ち出す。撃ち出した砲身自体は融解して編集して戻そうとも撃ち出す燃料も無ければ、ただの邪魔な筒でしかないので指輪に収納し次の戦場へ。今の記憶も管理して編集しよう。アレを編集して呼び起こすのはかなり骨が折れそうだが、それが出来ればまた1つ戦う力が増していく。


「モンスターが共食いをしだした?いや、これはクロエの仕業か?」


ーside クロエ ー



「アハハハ・・・、1つ潰して後2つ。さぁ、どれくらい保つかしら?」


 飛び出して3体を空に上げて、一体は早々に頭を砕いてクリスタルを取り出して処理した。それだけではなく、後続で出た飛行型も煙で巻き込み扇動してクリスタルを取り込まないように共食いさせた。犬を倒す用意はある。なら、中層のゴミを処理するイメージもある。ただ、余りにも魔女が楽しみすぎる!


 (手早くやれ、嫌がるなら最後の1はやらん!)


「せっかちねぇ。でも、飽きて来たから潰してあげる。」


  挿絵(By みてみん)


  挿絵(By みてみん)


 既に第2形態とでも言えばいいのか、クリスタルを吸収して形が変わったモンスターは犬の様に空間毎切り取っても来れば、ビームに触手他は手下のような小型のモンスターが特攻して来たり、衝撃波に爆発と中々の大盤振る舞い。ただ、全て視界に収まり姿変わろうとも見えている。


貴方(賢者)が視て、私が感じて貴女()がイメージする。私達は所詮は職だもの。従順に従順に。」


  挿絵(By みてみん)


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[一言] これからのこの世界は鑑定師が警察にいると延々と追われかねないんだな 職持ちはゲートで討伐刑なりで良いだろうけど一般人の刑務所行きも維持コストやらの問題で最終的にゲートに放り込まれたりするんだ…
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