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街中ダンジョン  作者: フィノ
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170話 祈り 挿絵あり

「日本側としては作戦区域内の損失を無視できます。それ以外は一般的な行動なら咎められることはないですね。後は、到着記者会見とかの話もありますがどうします?」


「今日の時点で私はマスコミに追っ掛けられたんで、宮藤さん達だけでいいんじゃないですか?コチラに来る時も私はいなかったわけですし。」


「貴女が隊長なんだから大統領と握手でも交わして、写真撮影されてニューヨークタイムスの1面掻っ攫ったらいいじゃないですか。」


「そんな事言うなら橘さんも来て下さい。好き放題鑑定して米国の情報ぶっこ抜き出来ますよ?」


「エマさんの件で懲りました。それに何故か男女問わず握手やハグを求められるんですよね。クロエまた変な噂とか流してないですよね?企業からフィギュア作らないかとオファーもありましたけど。」


「橘はサイボーグ。米国のスタンダードはこれだガ?フィギュア作るなら輸出してくれ、欲しがる人は多イ。」


「橘さんは仮面ライダー枠だったんですね。7時の卓君に7時30分の橘さん。戦隊モノゴールデンタイムが今ここに実現する?」


「望田君もエマさんも私を色物枠にしないで欲しい!」


「ソレ言われると僕は色物になるんですが橘さん・・・。」


「まぁまぁ、卓。カッコイイ背中見せればついてくる人は必ずいる。お前が恥ずかしがったら、お前を目指した人に失礼だろ?」


「分かってるよ雄二。その為にも赤峰さんから空手習ったりしてるんだからな。ただ、おめでたのせいか最近激しさが増したんだよな・・・。」


「そりゃあ、簡単に強くなる訳ないからねぇ。激しいって事はそれだけ攻めなきゃなんねぇ程お前が強くなってっからだ。」


「小田、攻めの反対は?」


「当然受け!って、なに言わせるのよ。」


「いや、好きだろそう言うの?」


「好物よ悪い?と、夏目は時間空いたらどうするの?」


「兵藤さんに付き合うと、もれなく米軍見回りコースで身動きが取れなくなる。なので、一人散策コースだな。小田も来るなら一緒に回るが?フル・モンティくらいなら見れると思うが、私はストリップの方がいい。」


「フル・モンティ?」


「男性ストリッパーの事だ。映画が元でそういったのが有名になったと思ったが?」


「あ~、私も見るならストリップコースかな。筋肉は講習会で見飽きたし。」


「インナーでバキバキの筋肉が浮き彫りだからな。私は思考の外に追いやった。」


「エマと共に現地で調整役を兼ねるウィルソンです。お会いできて光栄ですよ、ミスター兵藤。」


「こちらこそ、よろしくお願いしますウィルソンさん。と、言っても大半はクロエさんと宮藤さんが調整するんでやる事は少ない。主目的は檻の中で夏目達の回復をサポートしながら動き回る事です。」


 来たメンバーも含めての情報交換。一部遊ぶ予定を話しているがリラックスしているととろう。しかし、橘はスタンダードにサイボーグか。まぁ、私腹を肥やす種なので作ってもらうといい。なんなら、物販で販売したい。公務員の副業は禁止だが、本部長は公務員でもする許可が出ているのでしてもいいし、寧ろ推奨している。頑張って設計図代を稼いでくれよ?


「それで実際、クロエさんとしてはなにかプランはありますか?」


「ん〜、ここに来る際にマスコミに写真とか撮られました?まだなら1度写真は撮ってもらいましょう。全員で写真に写れば少なくとも米国にいる事は確定します。その後は休養を取って砂漠の作戦区域ですね。メディアへの露出が嫌なら直行でもいいですけど。」


「朝4時半頃に到着でしたが、写真は山程撮られたんで大丈夫ですね。クロエさんも含めた写真はないですけど。なにか決意表明的なものでもします?」


「まさか、しないでいいならしたくない。決意表明も何も今回の件の本質は傭兵の貸出です。あまりメディアに露出して下手な事を言えば揚げ足を取られて次へ次へですよ?まいど知らない友人が各国に作られても困る。出来ればこれを機に今後50年くらいは適度にモンスターを倒して各国に戦力増強してもらい、自分達で対処出来るようになってもらうのが望ましい。」


 ジョージの演説が各国で取り上げられたなら、自然とゲートへ入る人間は更に増える。入って戦って、外で日常を過ごしてまた中へ。可能性と言う確率論の中なら間違いなく新しい中位は生まれる。そうなってくれば、こちらへの要請は減り国毎へアナライズされた至るプロセスなんてものも出てくるだろう。


 それはある意味1つの完全な終わりだ。俺を抜きにして回る世界、実に素晴らしい。どこの国がスィーパーを兵士に仕立てて戦争しようが気にしない。まぁ、うちに粉かけるならその限りではないが、少なくとも国外でドンパチする分には勝手にしてもらえばいい。


「了解しました、なら砂漠ですね。一応近くの街でも休憩は取れる。ここで待つよりは少しでも近場がいいと思いますが?」


「ん〜、相手の好意を踏みにじりません?今日1日休んで万全の体制で挑んだ方が憂いはないですが。・・・、ウィルソンさんメーターは今どれくらいですか?」


「今朝の報告だと大体10時頃、進みは緩やかなので少なくとも今日スタンピードが発生することはないと思います。米国からの申し出として全員のメディカルチェックと言うのも選択肢に入れて下さい。万全だとは思いますが一応です。」


 メディカルチェック・・・。橘サイボーグ論を終わらせる一手だがナチュラルにクローンとか作られそうで怖い所もある。まぁ、流石にそんな技術ないよ・・・、ね?いや、想像だけなら治癒師あたりが作りそうで怖いけど・・・。


「回復薬やエナドリ飲んでるんで大丈夫でしょう。私は主治医以外に診断させる気もないですし、橘さんを調べたければ本人に了承を得て下さい。他の方は・・・、そもそも治癒師を連れてきた時点で早々対応出来ない怪我も病気もないでしょう。まぁ、受けたい人は受けてもいいですが。さて、皆さ〜ん。裁決を取りま〜す。」


 全員で話し合った結果、一旦休息を取り明日出発という手筈になった。今日来たメンバーはこのまま少ないが、今日1日バカンスを楽しんでもらい明日の朝一で砂漠へ向けて出発予定。本日は完全オフなので騒がれない程度に楽しんでもらおう。スイートフロアを貸し切ったので部屋は自由にしてしてもらい、各々が好きな時間を過ごす。俺は昨日休んだのでそのままホテルで待機予定。その後に及んで何かやる事もないだろう。


 支払いの証書と保証書は郵送で千代田に送り不履行になる事もないし、後は座してその時を待つばかり。願わくばここでまた祝賀会でも開いて全員で帰路につきたい。欠損等が発生すれば流石に帰りは遅れるだろうが、命さえ無事なら再起は出来る。そんなゆっくりした1日は特に嫌な報告もなく過ぎ去り到頭砂漠へ出発の時間となり、朝焼けと共に車は走り出す。


 出発時に待ち構えていたマスコミに、嫌と言う程写真は撮られたが特にインタビューには答えない。まぁ、答える必要性もないし何をしに来たか既に分かっているのだ。個別に答えて時間を無駄にしなくてもいいだろう。約3時間かけてアビリーンに入りそのまま通り過ぎて作戦区域を目指す。砂漠砂漠と言うがアビリーンから伸びる道路のまわりは砂ではなく、低い草が映える草原とでも言えば良いのかそんな感じの土地。話だけ聞けば作戦区域周辺も砂漠と乾燥地帯の間の子の様な感じらしいので、極めて足場が悪いとかギンギラギンの太陽に焼かれるなんて事もないだろう。吹き荒ぶ風は乾燥しているので水分補給は必要だが、全体的に考えれば動きやすいと取れる。


 そして、到頭作戦区域に入る。国連の動きを嫌ったのか作戦区域周辺には高い鉄柵が設置され、入れるのは関係者くらい。突貫工事で作られた看板には『特殊作戦区域に付き、関係者以外立ち入り禁止。許可なく撮影及びドローン等の飛行を確認した場合は撃墜の恐れあり。』と、記載されている。


「エマ、この柵ってどれくらいの範囲があるんですか?」


「ゲートを中心として6kmの地点、次いで5kmの地点にもう1つ同じような柵が設置されていル。開始までのキャンプは5km周辺の柵付近にあリ、四方に1500名ずつ外円組を設置。同じく1500名ずつが開始後打撃を与えて突撃予定ダ。」


「モンスターの出方次第では、どうなるか分からないのが歯がゆい所ですね・・・。て、アレは装甲車やヘリでは?」


「予備兵器ダ。クロエも言っただろウ?ヘリや装甲車は使えるト。戦場を空から俯瞰して指揮をとる為のヘリと負傷兵搬送用の装甲車ダ。秋葉原からシミュレーションを重ねて被害を減らす方法として、刻印された装甲車での救出や俯瞰での指揮は有用と判断されタ。」


 羨ましい限りにやる気に満ちているな。遮蔽物ほぼ0、漏れ出す事を食い止める檻、万全のサポートに戦力。0とはいかないが80%が帰らない戦場ではないだろう。


「それで、このまま作戦本部ですか?」


「その予定です、なにかやっておきたい事はありますか?」


「そうですね・・・、ゲートを近くで見たいと思います。1人で行くのでいいですよ。他の方もなにか準備があるかもしれないですからね。」


 車から降りて指輪からバイクを取り出し、ひと足お先にゲートへ。進んで近くで見ればリング状のゲートの間に赤い光が走り、それが頂点へ向かって伸びている。あの時はここまで近くで見られなかった。今回はここまで近くで見られた。違いは分からないが、またここに戻ってきたという懐かしさのようなものは感じる。


(これの状態がどういったモノか分かるか?)


(さぁ?私はこの星で初めて見たもの。知る由もないわね。)


(前回は写真だけだったし中にも入ってないからね。入れば分かるかもしれないけど、入って出られる保証もない。気長に行くといい、君の言う戦力が整えば入っている間に発生しても大丈夫だろう?)


 賢者の話を元にすると、下手したら排出中は閉じ込められる可能性があると?ん〜、内部からのランダム転移なら確かに入ったスィーパーを出す必要性はないし、それで排出量が減って誤認させる事ができれば一時しのぎの方法にもなる。それから考えると下手に入らない方がいいだろうな。


 米軍を生贄にして内部調査をしたいわけでもないし、ここで戦力を削ぐくらいなら、次が無いように粛々と掃除をして発生させなければいいだけの話。そう、既に45階層にいるのだ。これが終わって本部長を選べばゲート攻略を本格的にやり出せる。


「ここにいましたか、ゲートに触れてぶっ倒れても知りませんよ?」


「私は鑑定師ではないので大丈夫ですよ。と、その姿で来たんですか?ますます人間辞める事になりますよ?」


「早いほうがいいと思いまして。そう言うクロエだって黒のゴスロリでこんな所にいたら熱中症を心配されて変な勘繰りを受けますよ?それに、この姿になるのは普通に目撃されたので、噂だけならリアルアイアンマンで終わります。」


 フルアーマー橘とゴスロリの俺。奇妙な組み合わせだがゲートでも2人で走り回ったので大丈夫だろう。しかし、2月とは言え多少熱いのも事実。なにかいい服あったかな?確か遥が白い服も入れていたと思うが、砂漠という事でガラベーヤとかかな?エジプトの方の衣装だが通気性が良くて涼しかったはず。バイクと横を飛ぶ橘とでキセルを吸いながら話す。


「戦闘中にゲート鑑定して倒れたりしません?」


「鑑定品は選択もできるんですよ。ゲートは鑑定しない、肝に銘じて記憶にも植え付けてます。ここまで来てぶっ倒れて置いてけぼりにされても困る。」


「その際は悠々と休んで外円指揮でもして下さい。経験者の意見は重要でしょう?」


「それが嫌だからここにいる、それを許せなかったから先を歩む。私が赦せなかったものをご存知でしょう?」


「ならまぁ、始まりまでは休みましょう。始まる前に参られては困る。」


 キャンプに戻り様々な米兵と挨拶を交わしながら、できる限りの準備を進める。米兵指揮の長はエマなので報連相が簡単にできるのはいい。指揮所に残るのは望田と今帰ってきた橘に俺。宮藤とエマは配置を確認する為に籠もり兵藤達は米軍の練度を見ると出ていったらしい。


 成る程、こちらに戻る時に歓声が聞こえると思ったが赤峰辺りが米軍と軽く手合わせでもしてるかな?兵藤達なら生存率を上げる為に治癒師と話しているかもしれないし、ある時間で技術交流するのもいいだろう。


「カオリ、檻の具合はどう?」


「分割は無理でしたけど、硬さと範囲は大丈夫です。防衛職の面目は立ちます。」


「・・・、そう。無理しないで壊れても再度作ればいい。その為に外円がある。出たとこ勝負な所もあるしあまり気負わないで。」


「ええ、でもやれる事は精一杯やりたいんです。」


「分かった、それなら私から言う事はないよ。後1日くらいで始まる。しっかりね。」


「はい!」


 望田の返事を聞きながら早着替えするが・・・、遥め。砂漠に合わせたつもりか、激励で踊れとでも言うのかひらひらへそ出し踊り子衣装を寄越していたか・・・。まぁ、ここにいるのは米軍合わせて1つのチームだ。踊り1つで士気が上がるなら安いだろう?


  挿絵(By みてみん)


夕暮れになり得も知れぬ緊張感の漂う中、ささやかな催しとして酒と歌と魔女にリズムを取ってもらい踊りを披露する。少しでも気が和らぐように、少しでも無事に帰れる様に。その祈りが届くかは分からないが、祈るだけならタダなのだ。いくらでも祈りを捧げて無事を祈ろう。



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[一言] >ナチュラルにクローンとか作られそうで怖い所もある 職は遺伝情報には紐付かないだろうしね ゲート産の設計図には個人の経験含めたコピーを作る道具とかあるかもしれないけど 魔女の助力もあるなら…
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