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街中ダンジョン  作者: フィノ
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18話 忙しいな

 ゲートを出てそのまま警視庁へ。今更だと思うが、特定害獣対策要員に残業代は出るのだろうか?出ないならブラックである。まぁ、秋葉原ゲートが落ち着くまでは、粛々と労働に勤しもう。タバコを吸って、キセルを吸ってとプカプカしていたら警視庁についた。望田さん、いつもより煙たくてごめん。


「とりあえず、シャワー浴びてください。その間に千代田と話してきます。上がってもウロウロしないでくださいね。」


 そう言葉を残して、背中のファスナーを下ろしてくれた望田はさっさとシャワー室から出ていった。シャワーは浴びたい。兵藤に水浸しにされて気持ち悪いし、汗等はかかないので下着が汚れる事も無いのだが、埃はつく。問題なのは替えの下着もバスタオルもない事。再度同じ物を着けるのも嫌だしな・・・。まぁ、望田が迎えに来るのだ、長めにシャワーを浴びて待つとしよう。


 頭から被るシャワーの温かさが心地良い。アメニティはないので、手で頭や体を洗う。プニプニボディは今日も変わることなく平常運転、腕が無くなったのは驚きもしたが、文字通りの巻き戻しですぐさま元通りになった。痛いのは痛いし、腕の中を金属糸が這い回る感覚はゾワゾワするが、無くなるよりはマシである。今回のゲートでの出来事をまとめながら、ボケっとシャワーを浴びて暫く経ったが・・・望田が帰ってこない。


「ファースト帰ってきたって聞いた?」


「本当?何日か見てなかったけど?」


「さっき望田さんが車回してたから居るはずよ!」


「いいなぁ、会って抱きしめたいわぁ。」


 当然といえば当然だが、ここは女子シャワー室である。個室に突入される事はないが、他の人も入ってくるわけで・・・。ちょうどいい。


「すいませ〜ん、シャンプー貸してもらえませんか?持ってなくて。」


「いいわ・・・誰?」


「えーと、ファーストです。上から投げてくださ〜い。」


 人に呼ばれるのはいいが、自分で言うのはこそばゆい。何だかあだ名を自分で名乗っているような感じだ。シャワー室の上も空いてるし、そこから早く投げ込んでほしい。


「どうぞ!」


「ありがとうござ・・・。」


 扉が開かれた、片一方から抱きつかれた。もう片方から頭を洗われた。何なら身体もボディーソープで丁寧に丸洗いされた。そして出ていった。台風のように突入してきた、裸の婦警さん達は満足していなくなった。不法侵入とセクハラでは?


 莉菜、ごめんよ・・・。女風呂に入るのまでは想定してたが、もみくちゃにされて洗われるのは想定してなかった。多分、エステってこういうものなんだろう、気持ちよかった。婦警の行動力を見誤った俺の落ち度である・・・。


「上がりましたか?何で体育座りで座り込んでるんです?早く服着てください。」


 遅い望田が帰ってきた。ちょっとイラッとしたが、終わった事は仕方ない。被害はないし、身体も綺麗になった。


「望田さん、ここはホテルではないんですよ。タオルも服も下着もない。」


「えっ!指輪に入れてないんですか?」


「入れてあれば、今頃着替えて一服してますよ。すいませんがお願いします。」


 そう言うと望田は再度出て行き、すぐさまタオルと袋を持って帰ってきた。流石に警視庁に替えの服が有るとは思わないが、車にでも積んでいたのだろうか?身体を拭いて袋の中から出てきたのは、黒い下着にタイツとカソックの様なワンピース。ケープの様な物も入っているので、多分これも着るのだろう。初夏でこれは暑くはないのだろうか?個人的にはTシャツ短パンでいいのだが。


「着方合ってます?」


「合ってますよ、髪結びますね!」


「ありがとうございます。邪魔なので助かります。しかしこの服、望田さんが買ってきてるんですか?」


「違いますよ?下着は私ですが、服は警視庁の有志が揃えてます。そのうち衣装部門とか出来るんじゃないですか?知りませんけど。しかし、いゃあ、何着ても似合いますね。」


 後頭部辺りで、大きめの黒いリボンで髪を結ばれて準備完了。うなじに髪が掛かる事もなく、風が通って意外と涼しい。ゴスロリよりはマシなのか悩む格好だが、ヒラヒラが減ったのでいいだろう。しかし、有志とは一体・・・。


「では、手を繋いでください。」


「いや、後ろを歩けばいいのでは?」


 そう言うと、望田は手で顔を覆い首を振る。呆れられている訳では無いと思うが、警視庁で迷子になる程俺も落ちぶれてはいない。まぁ、会議室と個室と売店ぐらいしか移動した覚えはないが、方向音痴ではない。


「貴女、シャワー室で何かありませんでした?」


「シャンプーは借りましたよ?抱きつかれて全身洗われましたが。」


「それです。いいですかクロエ、貴女は今や世界のアイドルなんです。警視庁にも大勢ファンが居ます。前に売店に行った時の事を思い出してください。」


 そう言いながら、望田はピシッと俺を指差す。人を指差すな行儀の悪い。そう思いながら過去を振り返る。・・・カルガモの親になり、サインをねだられた。いや、タバコ買ってたし外見のせいで補導・・・。いや、海外でもファーストの名前が出てるんだ。諦めよう。


「分かりました、手をつなぎましょう。」


「ええ、望田Pに任せてください。」


 彼女はいつの間にか警官を辞めて、プロデューサーになったらしい。しかし、この場合一般人の彼女に連れて行かれるのは普通に拉致なのでは?手を引かれてシャワー室を出る。


 狭くはない廊下に人集り。警官よ過労死しろとは言わないが、仕事はしてくれ。愛想笑いを浮かべながら人混みを掻き分けて着いた先は何時もの会議室。シャワー浴びて、リフレッシュしたはずがなんか疲れた。


「お疲れ様です、クロエ。いい服ですね、似合ってますよ。」


「ありがとうございます、千代田さん。やつれました?」


 椅子に座る千代田は七三に分けられた髪も少し乱れ、隠しているであろう目元にも薄っすらと隈が見えるが、俺達がゲートに突入して以降、何かしらの動きがあったのだろう。調整役と言う名の理不尽受付係は大変である。お互い挨拶をし望田が退出してから話し出す。


「各国の大使からも色々と話がありまして。・・・大丈夫です、90%は貴女の事で10%はゲート絡みです。」


「・・・それは大丈夫ではないのでは?」


 何がとは言わないが、恨めしそうに俺を見る千代田にも同情の余地はある。発起人は俺なのだから、ある程度の要請には答えよう。


「総合すると100%貴女・・・では無くゲート絡みですから。」


 本音が漏れている、お互いの仕事量から考えると目を瞑ろう。彼が結局何者かは知らないが、今更問いただしても仕方ない。大使と話をして、警視庁をウロウロして・・・。まぁ、政府の人間だろう。


「・・・そうですか。では、今回のゲート内での事で問題が発生しました。」


「問題ですか・・・状況の悪さは?」


「不明ですね。アレが秋葉原ゲートから溢れる確証はないですが、内部に約15m程のモンスターを確認しました。それと、モンスターは確実に人を襲います。」


 話を聞いた千代田は難しい顔をして、一枚の資料を取り出してこちらに寄越した。内容に目を通すと、そこにはゲートの寸法等が記載されている。


「ゲートの直径は7mですか。発見したモンスターよりは小さい、内部に巨大モンスターがいる事を考えると、ゲート正面からのパレードだけとは考えられないですね。」


「溢れる事に関する情報は他に無いですか?」


「1つ、溢れる時にはアナウンスがあるようです。どういった物かは分かりませんが・・・。」


 お互い押し黙る。想定をするなら、最悪を考えないといけない。この場合の最悪とは完全ランダム転移だ。世界中のそこかしこにモンスターが突然現れる。これが一番悪いパターン、これをされると、現地対応で被害の程はうなぎのぼりになる。


 次の想定がゲートから一定距離の転移、これなら範囲にもよるが、対処のしようがある。その範囲を封鎖して職に就いた人々で駆逐すればいい。被害想定としては、0ではないにしろかなり抑えられる。


 最初の2つで更に怖いのは、転移でモンスターと人がぶつかる事。そうなると何だか分からないオブジェが出来上がる。寧ろ、押し負けて突然人が死ぬ。そして最後に、一番の軽いのがゲートからのパレード。これなら正面から職に就いた人々総出で叩いて潰せばほぼ被害がない。


 ・・・秋葉原ゲートへ突入して、間引きを試すか?あれだけ広い空間があって溢れるのなら、その数は計り知れない。死にはしないが、溢れるまでに間に合うかは微妙な所だ。脱出用のアイテムを使う?時計を見て行動すれば可能だが、破損状況によるラグは分からない。


 腕は瞬時に戻った。一度ダイナマイトなりで吹っ飛んでみる?ん〜、痛いだろうなぁ・・・。必要なら安いが・・・ん〜、残り約2日、俺1人で殺し尽くす訳では無いが、木っ端微塵から2日で戻らなかったら目も当てられない。賢者も魔女も聞いても知らないと言うし。


「千代田さん、そちらで分かった事は有りませんか?私1人では想定するにも限度がある。」


 千代田は難しい顔をしているものの口を開く。何かしらの情報が有るのだろう、少しでもパズルのピースは欲しい。


「様々な調査は行っていますが、芳しくありません。ただ不確定ですが1つ、橘警視からの情報があります。」


「橘さんから?どういったものです?」


「彼は今、出土品の鑑定を行いながら、各ゲートの調査もしていまして。その過程で彼は秋葉原ゲートそのモノを鑑定して倒れました。」


「なっ!大丈夫なんですか!?」


 友人の重篤の知らせに思わず浮足立つ。鑑定師はS職だが、倒れるというのは不穏だ。最上位の回復薬を鑑定しても倒れなかった彼が倒れたと言う事は、凄まじい量の情報が頭に入ったのではなかろうか?


「集中してもらう為に伏せていました。貴女のゲート突入時、彼は昏睡状態でしたが昨日目覚めました。」


「良かった、状態は?」


「今はまだ療養中のようですが、彼からの情報でゲートの転送システム。我々が中と外を行き来する際に、微量のエネルギー波が出るそうです。その範囲は最高で約4km何か思い当たる事はないですか?」


 なにか無いか?取っ掛かり・・・ソーツとの会話は俺しかしていない。橘は偶然か興味本位かは別として、ゲートを鑑定してその情報を寄越した。なら、これは何かしらのピースだ。


 なら、このピースはどこと合う?ゲートは彼等が作った。なら、他に要求したものは?薬、脱出アイテム、資源等目録、違う。これは違う。なら、別の角度から見たら?俺は彼等に、閉じ込められそうになった。効率的に掃除をしてほしいと。しかし、その提案を蹴って外に出た・・・外に出た?あぁ、多分そうだ。確定ではないがそれの確度は高い。


「多分その4km圏内、モンスターは人に重ならない事を条件にランダム転移。これが溢れる先の条件だと思う。」


「ふむ、結論に至った経緯は?」


 千代田が身を乗り出して聞いてくる。お互い話して筋が通れば、多分間違いはない。橘さん、ありがとう。貰った情報は役に立った。時間はないが、出来るだけ療養してくれ。


「彼等は無駄を嫌う。退出ゲートは私が依頼して設置させた。退出時の条件はゲート付近で、人と重なり合わない事。外に出る機構をわざわざ作ったのに、それを使わないという事はしない。それに、ソーツの依頼は掃除。なら、人の居ない所にも多分転送しない。」


「成る程。橘警視の4kmというのは、人と人とが重なり合わない最長距離であると。そして、モンスターの大きさから考えるとゲートからのパレードではなく、人に重ならない範囲でのランダム転移ですか。」


「ええ、確度は高いかと。」


 互いに顔を見合わせる。矛盾は無いか、おかしな点は?今から前提を変えて再度考える?見落としはないと思うが・・・。


『賢者、他の星のゲートに退出機構は?』


『さぁ?でも、多分ないよ?カレ等がゲートを設置する条件は戦力と知性。君達の知性は及第点でしょ?なら、君達以上の技術を持つ者達が、わざわざ出入りうんたらと話すと思う?出入りなんて勝手にするし、モンスターなんて君達の所の蚊と一緒だよ。』


 及第点を悲しむのか、高得点を羨むのか。そうだよな・・・人類って彼らからすれば知性じゃなくて戦う事で認めた蛮族だもんな・・・。交渉の時も途中で切り上げようとしたし・・・。


「どうしました?何か別の角度から答えが出ましたか?私の方はその推論に矛盾は無いと思いますが。」


「・・・いえ、宇宙の広さと及第点に思いを馳せてました。」


「・・・?まぁ、いいです。先程の話で予定を詰めましょう。主戦場は秋葉原ゲート4km圏内、余裕を考えるならもう少し広げましょう。アナウンス有り、モンスターはランダム転移。都市封鎖ですか・・・骨が折れる。そう言えば、モンスターが確実に人を襲うというのは?」


 立ち上がった千代田が、思い出したかの様に聞いてくる。現状でもモンスターは勝手に人を襲っているのだ、その根拠を話すのは後でいい。ゲート退出からのぶっ続けでの話し合い。流石に精神的に疲れた。これは彼に任せよう。


「その件は兵藤さん、特殊作戦群の方から聞いてください。大型モンスターを見つけた経緯とリンクします。補足が必要なら呼んでください。」


「分かりました、どの道自衛隊とは共同戦線を張る予定です。赴いた際に聞くとしましょう。貴女はこれからどうします?」


 これからか。休みたいが時間がない。こちらの主力の程度もどれくらいか気になる。流石にまだ誰も中位は居ないだろうがワンチャン橘が至った可能性はある。ゲートなんてド級の物を鑑定したのだ。可能性は0ではない。


「橘さんに会えますか?会えるなら見舞いに行きたいです。」


「多分、貴女なら可能でしょう。場所は望田君が知っています。連れて行って貰ってください。では。」


 千代田を見送りタバコで一服。スマホをポチポチ操作して、ゲート関連の情報を仕入れる。動画にしろ掲示板にしろ、様々な情報が飛び交っている。誰だ少女が空を飛ぶとか書いた奴。口挟みたくなるじゃないか。


 生き残ったセス氏は、何でまたソロで走り回ってるんだろう?スキップ機能で飛んだか暴発したかは知らないが、また馬を蹴り倒して食っている。気に入ったのか?旨味はあるし。


 日本勢の動画は・・・なんだファーストメイクって。ゴスロリ着た舞妓メイクは違和感しかないぞ。ご丁寧に魔術師なのは芸が細かいが。


「クロエ、迎えに来ました。」


「あぁ、望田さん。では行きましょうか。」


 警視庁の中の人混みを抜け、望田の運転する車で行き着いたのは自衛隊病院。変装になるかは知らないが、とりあえず渡されたサングラスを掛けて、望田の後を着いていく。そう言えば、これはお願いしておこう。


「望田さん、バイクを用意してください。物は、GSR250S色はトリトンメタリックブルー1色で。」


「いいですが、何に使うんです?」


「秋葉原ゲート関連で使います。モンスターが何処に出るか分からない以上、陸路で小回りの利く物は必要でしょう。」


 尤もらしい話だが、半分は趣味である。色々やってるんだ、これくらいご褒美があってもいいと思う。まぁ、本当に陸路での移動手段は必要で低空を飛んだ場合、音がないので誰かにぶつかる可能性もある。バイクで轢いたらどうするって?轢く前に飛ぶよ。


(そうなんですか?)


(ええ。彼女は何方かといえば、小市民なんですよ。)


(何だか微笑ましいですね。)


 連れられて来た扉には面会謝絶の文字、横の表札には橘 亮二と書かれているのでここで間違い無いだろう。中から話し声が聞こえるので、どうやら起きているようだ。軽くノックすると中から看護師さんが出て来て、面会謝絶と言われたが望田のおかげですんなり入れた。


「お久しぶりです橘さん。お加減どうですか?」


「黒江さん、お久しぶりです。今日も似合ってます・・・くふ。」


 元の姿とのギャップに、笑いを堪えているのだろう。堪えきれずに笑いが漏れているが、まぁ元気そうで何よりだ。望田は気を遣ったのか、外で待つと言い入って来なかった。手頃な椅子があったのでそれに座り、患者衣の橘を見る。特に外傷は無いようだし、受け答えもはっきりしているので大丈夫だろう。土産にダンジョン産の馬の肉と、目玉わらび餅をコッソリ置いておく。


「倒れたと聞きましたが大丈夫でしたか?あと、私を呼ぶと時はTPOを守るなら、クロエのイントネーションで呼んでください。敬称は不要です。」


「分かりました、身体は大丈夫ですよ。ただ、あんな物鑑定するなと、過去の私を殴りたい気持ちはありますが。」


「なにか問題が?」


「今はいいのですが、倒れた当初はかなり危なかったと。危うく脳が駄目になる所でしたよ。幸いゲート出土品の回復薬で事なきを得ました。」


 中々にヘビィな体験をしたようだ。まぁ、こうやって話せるのだし本当に大丈夫なのだろう。まぁ、しかし。


「後遺症が残って必要な時は言ってください、回復薬を出しますので。ゲートの情報は確かに受け取りました、多分秋葉原ゲートの件は、千代田さんと話し合った内容でほぼ確定になるでしょう。」


 そう言うと、橘はタバコを取り出し火をつけた。病室で良いのかと視線を送ると、軽くタバコを上げたので多分大丈夫なのだろう。俺もご相伴に預かり一服。


「目算で約2日、間に合わせます。」


「療養した方がいいのでは?」


「いえ、幸いな事に高槻先生もいる。ここまで来て、置いてけぼりはごめんです。」


「そうですか、無理はしないでください。そう言えば、ゲートの鑑定結果はあれ以外何がありましたか?」


 腕組みをした橘は暫し考え込んだ後、ポツリと思い出したように口を開いた。


「頭の整理がまだ出来てはいませんが、溢れるモンスターの傾向というのは、ぼんやりとですが分かりました。」


「傾向?単純に量が出るわけではないと?」


 頭痛がするのかこめかみを押さえながら、言葉を確かめるように橘は口を開く。傾向が分かれば対策も立てやすくなる、辛いだろうが頑張って貰おう。


「量は確かに出ます。ただ、モンスターにも等級・・・とでも言えばいいのか。モンスターを倒すとクリスタルが出ますよね、能動的に動くモンスターは、あれを体内に取り込む傾向があります。融合するのか、ただ体内にあるのかは、分かりませんが・・・。そして、取り込むと他のモンスターの何かを引き継ぐらしい。」


「それはモンスターとしての進化では?」


 話を聞く限りだと他者を取り込み、自己進化しているという事で間違いないと思う。賢者は言ったカレ等は、意味を探して彷徨っていると。ソーツは言ったモンスターがどう生息しているかは知らないと。


 なら、進化に意味を見出した?これはあまりいい情報ではないが、魔女は贈り物と戦利品とも話していたし、単純に集めた結果の進化なのかもしれない。しかし、溢れる事と進化がイマイチ繋がらない。


「このクリスタル、クロエはなにか聞いてますか?」


「いえ、ほぼ秋葉原ゲートに掛かり切りで、出土品まで手は回ってないですね。これが問題だと?まぁ、これで進化するなら倒したら持ち帰りは必須ですが。」


 橘は取り出したクリスタルを手の中で弄びながら、俺に手渡してくる。受け取って眺めるが、ただの真っ黒いクリスタルだ。 


「前に警察署で受け取って分析に回した結果ですが、これは端的に言うと高エネルギー結晶体です。圧力を掛ければ一定数で発熱し、高速で回転させれば発電する。他にもまだ有りそうですが、それはまだいい。」


 魔女曰くソーツからの贈り物。エネルギー関係はこれでどうにかなりそうだ。燃料電池代わりに小銭稼ぎとして、持ち帰りは必須になってくるだろう。


「クロエ、貴女は今朝方までゲートに居ましたね?モンスターは多いと感じましたか?溢れるほどに。」


「いや、ゲートの中は広い。出入り口が複数有るにしても、そうそう満タンになるものではない・・・?」


 ソーツはモンスターの管理はしない。管理はしないが溢れる事は知っていた。なら、何かしらの察知する方法がある。ライン生産なら特定数で容量が分かる。しかし、本人達が管理していないモンスターが本当に溢れるか確証が無いし、行動が無駄になる。なら・・・。


「クリスタルがマーカー代わり?個体数判別の。」


 そう聞くと、橘も頷く。彼も同じ結論に至っていたのだろう。なら、溢れる傾向というのは・・・。


「エネルギー容量か数ですか?」 


「私は両方だと感じました。特定のモンスターが強くなりすぎれば掃除は出来ない。しかし、雑魚ばかり排出してもゴミは減らない。ゴミ箱の中に強力なゴミを留めるならまだしも、外部に排出して依頼した掃除人達が全滅してしまっては、また手間がかかる。」


「つまり、ギリギリのラインで強力なモンスター数体と雑魚が無数に出てくると。」


「ええ、多分その傾向で間違いないかと。」


 試験ではないが傾向が分かれば対策が打てる。クリスタルを取り込んだモンスター、まぁ進化としよう。進化したモンスターは何かしら他のモンスターの特徴を引き継ぐ。セス氏の動画で見たモンスターと小骨は同型で、進化した個体なのかもしれない。顔は似ていたし。


 単純に考えるとボスモンスターというよりは、ユニークモンスターという感じか。他とは違う他と似たモンスターが居た場合は警戒するように伝えた方がいい。そして、今回橘の情報はかなりポジティブだ。


「橘さん。情報が正確で確証が出れば、これから先モンスターが溢れる事態を抑制できる。」


「ひたすら内部に入ってクリスタル集めですか。確かに、今回の情報がある程度検証されれば出来ますね。」


 うん。今回どうにかできれば、かなりいい方向に向かう。モンスターが溢れさえしなければ、後は内部でひたすらハンティングするだけ。ただ問題があるとすれば・・・。


「ただまぁ、どの道下には降りて掃除しないと溢れるんですけどね。地下で進化した個体が溢れるなんて考えたくもない。」


「ソーツでしたか、よく考えられたシステムですね・・・。」 

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[気になる点] というか、自衛隊出身者なのに洗濯経験が無いとかないわな [一言] これだから家事をした事がない男って 魔法で洗って干して乾燥させなさいよ!ついでにアイロンもな!!
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