155話 パンドラ 前
忙しくて短いです
「あの取材いつ受けたんですか?と、言うかよく受けましたね取材。改まってカメラの前で話すの嫌がるかと思ってましたけど。」
「全くダ。素材はあるがあのインタビュー内容なラ、どの国も目の色を変えて押し寄せて買いに来ル。定時報告ではウィルソンが泡を食ったように買い尽くせと叫んでいたゾ。」
「私はあの顔かなぁ〜。お父さんいつからあんな女王様みたいな笑顔を浮かべるようになったの?お母さんが『司が新しい扉を開きに走った!』て電話で叫んでたよ?悪い事したくてもしたら何されるか分からない強さはあったけど。」
エマに自身の告白を終えた後すぐに地元に帰ったが、その間にエマと遥の間で話し合いがあったのだろう。普通にエマの前でも俺の事を父と呼ぶ。まぁ、法律的にも父親役で登録された書類があるのでその呼び方は間違いではない。しかし、実際呼ばれる姿を見るエマは当初は違和感に苛まれていたようだ。
まぁ、見た目女児の俺に成人女性の遥が父と呼んでいる光景。ごっこ遊びと思えば微笑ましいかもしれないが、何処にも嘘がないので余計なややこしさがある。事実は小説より奇なりとは言ったものだ。
そんな事を考えていると、移動する車内でそれぞれの声が上がる。休みが終わって数日、とっ捕まって受けたインタビューは、一回放送するだけでいいものをなにが面白いのか連日の様にテレビで流れている。まぁ、殆ど伏せられていた選出戦の情報が開示されたので仕方ないと思いたいが、それなら政府のHP見ろよ。
インタビュー放送と共に政府のHPが更新され、特設サイトとして選出戦のガイドライン等が設置された。歳を取ると文章にしろ作るものにしろ何処か定型文めいた固さと言うモノがあるが、政府の役人が作ったにしては設置されたサイトは若者向けなのか割とポップでファンシー。大きく区分を分けるなら賭けをする為のガイドライン、選出戦を行う時に使うR・U・Rの安全性と使用デモ動画及び、協賛してくれた佐沼の会社へのリンク、物販会場での取引方法等だろうか?
ゲートに付いてのガイドラインは開通してから少ししたくらいに政府が突貫工事で作り、常に最後の文章はCOMING SOONで締めくくられているものの、法令にしろ本部庁舎の各都道府県の所在予定地などが日夜更新されている。ただ、橘から貰った俺の配信アカウントに飛ぶアドレスを貼るのっていいの?配信者と言っても個人勢(?)の弱小配信者。アクセス数だけは日夜増え続けているが、何だか少しくらいサービスした方がいいのだろうか?
まぁ、サービスは置いておくとして、政府起用の見知らぬアイドルならぬ。アニメの市井ちゃんがそのまま3Dモデルでサイト内を案内していたり、政府から流された選出戦の応援キャラクターが市井ちゃんと言うのもなにか作為的なものを感じる。千代田に問い合わせると、松田が起用を決めたらしくクロエじゃなくて、アニメキャラクターを起用するのは日本らしいでしょう?との事。
確かに俺ではないと認めたし、似てはいるが別物の市井ちゃんなら文句も言えない。そんな市井ちゃんが物販紹介のページに行くと、俺の写真集に目を輝かせる演出をしながら紹介しているのは如何なものか?そして、下に小さく書かれた部数・・・。100万部限定・・・って、既に限定というよりはただの目標売上部数なのでは?日本の写真集最高売上部数より倍は多いし、これ売れ残ったらどうするんだよ・・・。1人3部までとか制限つけなくてもそんなに買わないだろうよ。仕方ない、任せたとは言え誤発注も良いところだ、いくらかは引き受けよう。
「突撃インタビューだ。元々は違う取材だったが、断定されては逃げ切れない。騒がれても事だから条件付きで応じたまでだ。」
取材要請はないが、張り込みは増えた。まぁ、なら違うコンビニなりスーパーに行けばいいので問題はない。流石にホテル前での張り込みは黒服が怖いのかしていないし、移動はもっぱら車なのでそうそう捕まらない。後は東海林のガッツ次第だろう。そんな話をしながら駐屯地に集まり今日も今日とてゲートへ。と、言いたい所だが本日の予定は別にある。皆と言う訳では無いが箱の開封を先延ばしにしているメンバーがかなり多く、かく言う俺もその1人。橘が潜りだして合流はまだしていないものの、追い付こうと警察側のメンバー達と動き回っているのでその関係で顔を合わせる機会が増えた。
なので、一旦溜まっている箱を開封して物販に回せるものや、皆が欲しがるリアクター等を探そうという運びになった。現状、中位の鑑定術師は橘しかいないので、彼が鑑定出来ない=危ないものと判定できるし、判定機の判定品目増大の為にもどこかでやっておきたかった。やる場所は駐屯地の体育館で品数が多いなら寒いがグランドまで使う予定だ。
「そう言えば、エマはなにか橘さんにお願いしたんですか?」
「色々迷ったガ、装備品の使用許可で手を打っタ。色々とイメージを作るなら自身で使ってみるのが早イ。許可のでないモノもあったガ、反応装甲を作るのに役立っタ。」
お願い権は装備品の貸出か。警視庁で待っている間に橘と話したのだろう。一概に許可は出ないだろが、他国の装備品を合法的に使えるとなると中々有益だろう。多分、同盟国じゃなければ国としても許可しなかっただろうな。
「装備品かぁ・・・、お父さんもう1つ料理人の腕みたいなのがあったらちょうだい。」
「いいがまだ腕を増やすのか?あまり増やしすぎると蜘蛛からウニへランクアップするぞ?」
「効率を考えるといくらあっても足りないの・・・、必要数は数千着でしょう?スタンピードの件は聞いてるから、私が預かってる生徒達にも量産してもらってる。ただ、どうしても手直しが必要な所もあるから、それを補強しながら私は糸を布にしながら服を作って作業してるとどうしてもあと1つは欲しいかな・・・。そう言えば、なんか政治家にもこの服って回すの?松田って人が4着持ってったけど。」
松田かぁ・・・、千代田に渡したからそれを契機に欲しがったのかな?松田本人はスィーパーだし残りは黒岩と大井。残りは多分斎藤に渡っているはず。流石にこの面子に死なれると後々会談を開く時に面倒だ。今の所売り物にする予定もないし、スタンピードで配備される人達に渡す予定だが、4着くらいならいいだろう。
「いいけど、その4着限り。更によこせって言ってきたらこっちに話回して。」
「分かった。作業速度は悪くないけど、本当に腕ちょうだいね?」
「はいはい、出ればね。似通ったナニカでも確保はしておくよ。」
「駐屯地が見えてきました、今日はそのまま体育館の近くに停めていいんですよね?」
「許可は貰ってるからそれでお願い。」
さてはて、箱開けは怖いけど開けないと始まらない。ほとんどは個人のものになるけど、設計図がなぁ・・・。千代田も見に来るらしいし、話し合いながら買い取るなら価格設定もして行こう。




