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街中ダンジョン  作者: フィノ
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17話 おっと

1話9千文字想定ですが、戦闘シーンが思ったより短くなりました

「空を飛ぶ・・・私は絨毯ですかね?乗ってみたい。」


「風船は怖いですね。と、言うよりも隊長、うち等ヘリですよ、ヘリ。空飛ぶなら当然、空挺レンジャー訓練もパラシュート降下訓練もしてるんですから。」


「しかし、ファーストの魔法のイメージはフワフワしてファンタジーと言うか、メルヘンチックなんじゃないか?ドラゴンとか言うし。」


「副官、彼女が前回飛んだ時は何かに乗っていたのか?」


「・・・刺又です。」


 やいのやいのと話していた兵藤達がこちらを見る。アレはそれしかなかったし、まぁ、気に入ったから良かったと思う。民衆相手に攻撃など以ての外、派手な魔法など無くとも空を飛ぶだけで十分だ。


「バイデントはお嫌い?」


 刺又を取り出しクルクル回した後、腰掛けてフワリと浮く。飛ぶイメージは固まっている。既に空も飛んだし、墜落はない。しかし、他人を運ぶとなると訳が違う。下手に墜落のイメージを持たれると、本人のイメージに引っ張られて落ちる。それはまるで、翼を失ったイカロスの様に。


「クロエは何で飛ぶのがオススメだと思いますか?初の魔法飛行だ、取っ掛かりがない。」


 ふむ、箒があればそれがイメージしやすいが、生憎持ち込んではいない。馬が居ればペガサスでもイメージすればいいが、あれも置いてきた。不思議植物は箒に出来無い事もないが、彼らの墜落のイメージが勝る可能性がある。かと言って、ドラゴンなんかは的にされるかもしれない。なら、これかな。


「高槻が言う絨毯でどうかしら?大きくはないけれど、エスコートするなら引かなくちゃ。ハンカチなら有るでしょう?」


「これで飛ぶと?」


 それぞれがポケットから、ハンカチを取り出す。何の変哲もないハンカチだが、今のままだと危ないのでイメージを補強しよう。


「風に揺られてユラユラり、姿を変えてひとっ飛び、フワフワ浮かぶその布は、羽も有れば宙も行く。」


 イメージを言葉に出し、彼らの前でハンカチを空中で飛行機や鶴のように折、飛ばして回し最後に広げてフワフワと浮かべ、落ちる事なく宙を漂わせ、足元に止まらせる。


「空飛ぶ絨毯の出来上がり!私はジーニーではないけれど、空を飛ぶのはお手の物。さぁ、どうぞ?隊長さん、貴方は自分で飛んでみる?」


 高槻や他のメンバーは、おっかなびっくりハンカチに手をかけ、ハンカチの上に座って浮いた。うん、落ちる事はない。これなら運べる。


「その、飛べるんですか?」


「飛べるわよ?フライボードがあるじゃない。水を出してかっ飛んで、ピュンピュン進む雲の海。防弾チョッキをボードにしたら?」


 兵藤は防弾チョッキを脱いで広げて地面に置き、その上に両足で立つ。上手くイメージがまとまっていれば、バランス感覚はいるかも知れないが、空は飛べる。 


「うお!飛んだけどこれは!」


「フフフ、隊長さんボードは足に固定するものよ?」


 水を噴射して飛ぶイメージだけしたのだろう。防弾チョッキは兵藤を置き去りにして、天高く舞い上がってドサリと落ちた。まぁ、あれだけ高く飛ぶ出力があるのだから大丈夫だろう。


「さぁ、もう一度。怖がらないで、貴方は翼を使って巣立つのだから、空の散歩を楽しみましょう?」


「分かりました。固定・・・ボード・・・スケボー、違う。スノーボード?ボードはボードか・・・。」


 ブツブツ言いながら考え込んでいた兵藤が、おっかなびっくりだが俺達を水浸しにして、宙に舞い上がった。勧めた俺が言うのも何だが、被害は甚大である。しかし、俺の感想とは裏腹に、他のメンバーは兵藤を羨ましそうに見ている。


 空への憧れ。それは数多の人が夢想し、ライト兄弟が実現させた奇跡。歌にもある、空を自由に飛びたいな、と。俺は大衆の前に飛んで現れ、驚きと可能性を示した。そして、その可能性は個人から人々へ繋がった。


 職に優劣はないが、得手不得手はある。しかし、魔法職なら多分イメージさえ固めていけば、きっと誰しもが空も飛べるはず。兵藤はおっかなびっくり操作していた防弾チョッキに慣れてきたのか、ゲレンデを滑る様に体を動かしている。


「なぁ、俺達飛べると思うか?」


「ガンナーが空を飛ぶ・・・人間大砲?」


「下手にイメージすると肉片だな・・・。」


 ガンナー達も空は飛びたいらしい。その可能性は彼らのイメージに任せよう。流石に他人の頭の中は分からない。高槻や副官も何やら考えているが、今は先を急ぐとしよう。


「さぁ行きましょう、隊長さん?空なら雫が落ちるでしょ。雨のハンティングと洒落込みましょ?」


「了解!」


 広く足場の悪い所だが、飛んだお陰でかなり進めた。現在14階層、15階層には退出ゲートがある。兵藤と共にそれなりのモンスターを倒し、モンスターから武器や箱と薬や、これまた武器を回収しながら進むが、かなり順調だと思う。


『おや、君達にとっては面白いモノが見れるよ?』


『面白いもの?』


『ほら、あそこ。』


「ちょっと面白い事があるみたいよ?」


「面白い事?」


 キセルで指された先を空から見ると、かなり遠いが10体のモンスターが、15mはあろうかという不定形な球体と対峙している姿が見える。片や砲撃型、片や不定形に変化する水銀で出来た様な巨大な銀色の玉。砲撃型がビームを放つが、玉は形を変えて投網の様に広がってビームを回避する事なく、そのまま砲撃型に巻き付いて裁断した後。フラフラと何処かへ飛んでいった。


「捕食したのか?」


「いや、食べるならあんなに破片は残さんだろう。縄張り争いとか?」


「そう考えると、この辺りはあの玉の縄張りだと?あれだけ大きいのです。私達ならいざしらず、モンスターが知らずに入るというのは考えづらいですな。」


 見た光景に様々な憶測が行き交う。ここに来るまで、モンスター同士の争いと言うモノは見た事がない。別に1体ずつ現れる訳では無いが、モンスターは人に向かって攻撃してくる。しかし、モンスター同士での争いがあるのなら、数は勝手に減ってくれるのではないか?


『賢者、あれはどういう状況だ?』


『ん?自己の性能テストだよ。この辺りで見れるのは珍しい。作るモノは作るだけ、捨てられたモノの事なんて考えない。でも、捨てられた方は違うよ。自己が作られた理由を探してる。魔女も言うだろ?何モノになるかって。


カレ等、ソーツはひたすらに何でも作るよ、壊すモノも、生かすモノも、助けるモノも、だますモノも。最高で最低で中途半端で曖昧で、今も星の数ほど何かを作ってる。そんな親に作られたモノは、それぞれの納得出来る意味を欲している。腕が砲なら撃ってみたい、観察する機能があるなら調べたい。


でも、箱の中ではモンスターにも限界がある。だから、掃除屋達を襲うんだよ。ソーツ以外から発生した、見た事も聞いた事もない新しいテスト材料が次々来るんだ。定形行動では対処出来ない掃除屋は、彼らに取って一番の興味の対象だよ。』


 傍迷惑な。どうせなら助けるモノとやらを大量に作って欲しい。いや、何がどう助かるか分からないし、蠱毒の様なこの中では武器が無ければ駆逐されるのか。


 小一時間ソーツに生産ラインや、作った物への愛着を説いて物品愛護の精神を植え付けたい。人の文明が大量消費で大変な時にあいつらは!あいつらは・・・資源等をくれたのか・・・。非常に嫌だが、確かに善意はあった。


「どうしましたクロエ、何やら疲れているようですが?」


「いいえ、ちょっとソーツに文句言いたくなっただけよ・・・。さっき見たのは性能テストだそうよ。」


「性能テストですか?」


「ええ、迷子の彼らは自分の道を探してる。親は作ったものに見向きもしない。なら、自分で歩くしかないでしょう?」


 モンスター達、恨むならソーツを恨め。恨むだけの感性があるかは知らんが。


「それがモンスター達が人を襲う理由だと?」


「ええ、籠の鳥は外を知らないわ。でも、興味はあるの。羽があるなら羽ばたきたい、くちばしがあるなら突付きたい。初めましての私達にカレ等は興味津々よ?」


 クソ、迂闊だった。モンスターが溢れる、これは聞かされていた。しかし、どう(・・)溢れるかは知らない。ゲートからゾロゾロ行進する様に溢れるなら、釣瓶落としの様に正面から打ち据えれば事足りた。しかし、あの大きさはゲートを超えている・・・。


『賢者、モンスターの溢れ方は知ってるか?』


『さぁ?見たことないなぁ。』


『魔女は?』


『溢れるアナウンスはあるみたいよ?それ以外は知らないわ。素敵よね、大量のモンスターと遊べるなんて。』


 モンスター退治が楽しいのはいい。魔女が倒したとしても俺も楽しい。それはいいのだが、人が死ぬのは見逃せない。全ては守れないにしろ、最小限にする努力は必要だ。これは、早く出てここに居るメンバー含め、千代田達ともう一度じっくり話す必要がある。


「急ぎましょう。状況が変わったかもしれないわ。隊長さん、横に来て。秋葉原ゲートの事は?」


「・・・一応聞いています。」


「そう、先に言うわ。溢れるけど、溢れ方は知らないの。規模も、状況も分からないわ。」


「あの大きさのモンスターが居るなら、ゲートからのパレードではないでしょうね。」


「えぇ、最悪無作為転送なんて事もあるわ。一応、溢れる前にアナウンスはあるみたいだけど、文字通り出たとこ勝負の可能性もある。ハンティングはおしまいよ。モンスターは見つけ次第撃ちなさい。」


「・・・分かりました、急ぎましょう。事と次第では秋葉原ゲートに強行突入の必要性も出てくる。各員、仕事の時間だ。」


「了解!」


 話が終わり、お互い浮かない顔をしながら空を飛び、漸く退出ゲート近くまでたどり着き、地面に降りた時にソレは現れた。薄暗さは変わらないが、足元は平地になり多少の遮蔽物はあるが、見通しも効く。そんな場所に嫌にメカニカルなモンスターは空から現れた。


 浮遊するソレはコウモリの様な顔に両目はクロスしたシルバーの眼帯で覆われ、腕は左右の6本あり、真中の腕は左右とも手首の部分から先が髪の様に細い金属糸が垂れ下がる。残りの腕は細く、蜘蛛の足のようだが、足先にはレンズが付き、下半身に脚はなく上半身と合わせると砂時計の様に見え、その脚の部分にもレンズが見える。


 顔は似ているがセス氏の動画で見た物とは違う。あれはブレードの無い剣を持っていた。それに何方かといえば動物的だった・・・。だが、検証は後でいい。今は娯楽(・・)に耽ろう。新しくキセルも貰った、コイツも使ってやらないと。一口吸って煙を吐く。


「まぁまぁまぁ!やっと諦めてた小骨(・・)が出てきたわ!先にお行きなさい、兵隊さんには荷が重いわ。」


「・・・ッ!接敵、撃て!」


 急に現われたそれに、兵隊さんは銃を撃つ。でも駄目ね。モンスターのイメージの方が強いから。飛んだ玉は羽虫の様に落とされる。


「クソ、当たっても死なない!通じてるのか!?」


「貫通するイメージを持って撃ち続けろ!!副官!2人の指揮と先生の退出を優先!俺は彼女と迎撃する!」


「了解。先生、みんな進むぞ。」


「クソっ!了解、ご武運を!」


 兵隊さんが走ってく、悔しさ胸に希望を持って走ってく。祈るなら、彼等はきっと強くなる。小骨さん、お待ちなさいな。貴方は私が噛み砕く。煙に捕まり彷徨って、前後の不覚に棒立ちよ?煩わしいかしら?お手々を振っても払えない。


「隊長さん、貴方も逃げた方がいいわよ?あれは小骨、でも喉に刺さると痛いでしょ?」


 飛び退いた、小骨が、お話の途中でビームを撃ってくる。ピカピカ光る4つのビーム、くるりと交わして空の星。割込み禁止、まだまだ隊長さんと話さなきゃ。


「護衛対象を置いていけませんよ。・・・足手まといですか?」


 水に乗り滑る隊長さん。でも危ない!後から糸が追ってくる。キセルで殴って逸らして、地に落とす。無粋ねぇ、淑女のドレスを破るだなんて。袖ごと左腕が細切れよ!悲しいけれど元通り、隊長さんは見ていない。


「したい事をすればいいわ。でも、忠告よイメージする時に、絶対や無敵なんて脆いモノをしてはダメ。思うのよ、貴方にとってそれが当然(・・)だと。」


 振るう両手に、光る腕。ゆらゆら躱し魔法で爆発。あら残念、思ったよりも硬いわね。こういうのはどうかしら?揺蕩う煙は巻き付いて、貴方の腕を押し潰す。ほら1本、右上腕が無くなった。


「・・・了解。水よ!殴り飛ばせ!」


 左下腕が潰れた小骨さん。まだまだ元気な小骨さん、糸を束ねて結って剣にして、無我夢中で振ってくる。キセルで叩いて逸して・・・あら駄目ね。小骨さんの方が早かった、飛び退いて避けたけど、ドレスの裾が太腿より下で無くなった。


「残るなら楽しみなさい?恐怖は貴方を食い殺す。今はまだ難しいけれど、貴方だけの宝物を見つけなさい。」 


「それより怪我は!」


「ないわよ?そんなもの。邪魔ね、破りましょう。隊長さん、気が散ってはダメよ?貴方は貴方の成すべき事をなさい。」


 離れたら遠くで剣振る小骨さん。あら、あれは駄目。隊長さんが死んじゃうわ。守りの盾は硬くて重い、地より伸びて広がって見えない刃を受け止める。


「歩きなさい、走りなさい、交わして避けて踊りなさい?舞踏会に棒立ちは無粋よ?」


「御尤も、小骨とやら。俺とも少し遊んでくれよ?水よ・・・水よ!叩いて潰して押し流せ!」


 素早い水の蛇、小骨さんに巻き付いて、地面に叩きつけて、押し潰す。地面にポッカリ穴が開く。ボロボロの小骨さん、両の剣しか無くなってバチバチしてる小骨さん。そろそろ私も満足かしら。


「そろそろ終幕ね、楽しかったから物悲しいわぁ。」


「あれで倒せないんですか?」


「ええ、でも小骨さんも限界よ?さて、何がいいかしら?最後を飾るならキレイな方がいいわよね?」


「・・・、危なく無いのなら。」


「大丈夫よ?暗い穴、開いて閉じて飲み込んで、消えてしまえば事もなし。」


 小さくなっていく小骨さん。小さく小さく丸まって最後にポンっと音がする。あぁ、楽しいわぁ。先のゲートはあるのだけれど、彼が駄目だと言っている。仕方ない。


「危ない物では無かったでしょ?隊長さん紙巻1つくださいな?」


「どうぞ。終わったんですか?」


「ええ、終わったわよ?見ての通りなくなった。さぁ帰りましょう?」


 タバコで一服。どうやら魔女は満足したらしい。俺としても先に進んで娯楽に耽けりたい気持ちは有るが、流石に今回の事で話し合わないといけない。スタスタと兵藤を連れて歩いて進むが、彼の視線が忙しない。あぁ、それもそうか。


「兵藤さん、間違いは無いと思いますが、後ろを向いて貰えますか?服を着替えますので。」


「うぉ、えーと、はい。」


 外には多分大勢人がいる。パンチラはないと思うが、ここまで裾の短いスカートで歩きたくはない。スルスルと服を脱いで予備のドレスを着込むが、これの厄介な所はファスナーだ。背面に有るので自分で上げるのは面倒この上ない。


「終わったんでいいですよ、ただ、お願いが。」


「何ですかって、ファスナー降りたまま!」


「ええ、そのファスナーを上げてください。何時も着せてもらってるので、上げるのが面倒でして。」


 静かなゲート内にファスナーを上げる音がする。今回は中々収穫があったと思う。セーフスペース然り、モンスター然り。他の職についても戦闘を見れたのは、溢れた時にどう連携を取るのかのいい指針となるだろう。


「どうぞ、終わりましたよ。」


「ありがとうございます。それから、クロエと呼んでください。背中を預けた仲ですから。」


 退出ゲート向かって歩く。心なしか兵藤の顔が赤いようにも見えるが、いい大人なのだ、自分でどうにかしてもらおう。


「いいんですか?嫌がっていたようですが。」


「ええ。本名なので余りその名で呼ばれると家族に迷惑がかかります。TPOさえ守っていただけるのでしたらどうぞ。」


「成る程、クロエの場合身バレすると大変そうですからね。」


「ええ、既に家族は千代田さんに保護してもらってますよ。はぁ、早く終わらせて妻に会いたい、温泉入りたい。」


「奥さんってそんなにいいものですか?」


 そう聞くと言う事は彼は独身なのだろう。妻がいいかって?当然である。彼女は俺なんかを好いて結婚してくれたのだ、大切な人以外にありえない。


「いいものですよ。個人差はあるでしょうが、妻も家族も私の宝物です。」


「そうですか・・・仕事柄難しいですが、そうか・・・結婚か・・・。」


 結婚は墓場だと言う人もいるが、少なくともした当初は幸せの絶頂だ。後はその幸せをどう守るかしかない。こんな姿になってしまったが、妻は認めてくれたし、子供達も大丈夫。なら、さっさと仕事を片付けよう。


「さて、出ましょう。お疲れ様でした。」


「ええ、お疲れ様でした。」


 さて、外は夜か昼かはたまた早朝か。ゲート内は変化が少ない為時間感覚が狂う。退出ゲートを潜った先は多分昼頃。


「おい!ファーストだ!」


「本物初めて見た!手を振って!」


「ファースト!俺だー、結婚してくれ!」


 次からは時間管理をしっかりして、深夜にでも出よう。あの衣装のまま出なくて良かった。辺りは、黒山の人集りである。白黒なのでパンダに共感を覚える。愛想笑いを浮かべ手を振っていると、望田が素早くやってきた。


「クロエ、行きましょう。パニックになります。」


「ええ、そうしましょう。隊長さん、また何かの機会に。」


「ええ、何かの機会に。」


 何かの機会・・・それは多分溢れた時だろう。彼も魔法が上達したし、彼から習う自衛官もまた、十分に戦力となるだろう。望田の車に乗り込みタバコを一服。一息つくが、やることは多い。


「高槻医師達は?」


「先に出た方達なら、特殊作戦群の方は駐屯地に引き上げました。高槻さんも自衛隊病院にいますよ。」


「それぞれの場所に帰った感じですね。」


「ええ、大変だったんですよ!先に出た方達は決死隊として入ろうとするし、それを見た一般の方達も入ろうとするしで。何があったんです?」


「小骨ですよ、小骨。喉に刺さると痛いアレが居ました。討伐は完了してるのですが、一体とは限らない。千代田さんは?話したい事があります。」


「千代田は警視庁で調整役として詰めて居ます。行けばすぐ会えますが、どうします?」


「お願い致します。それと、警視庁にシャワーありましたよね?貸してください。後、ゲートに入って何日経ちました?」


「2日経ちました・・・。溢れる期限まで約2日です。シャワーは任せてください。」


 あと2日、泣いても笑っても時間は過ぎる。休みたいが、休む暇はない。正念場と言うやつだ。最大の戦力は多分いや、間違い無く俺だろう。なら、それに恥じぬようやってやろうではないか。


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