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街中ダンジョン  作者: フィノ
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149話 庁舎の中を見よう

 温泉で身体を洗い合ったり取り留めもないが、必要な会話をして時間いっぱい堪能した後、ホテルで2時間ほどしっぽり過ごし、家に帰り息子を起こさないように寝室に行って就寝。ホテルも天然温泉を引いている所だったが、湯当たりの心配がないのはいい。ただ、温泉でもホテルでも身体の洗い方や髪の洗い方が雑と苦言を呈された。


 おかしい。言われた様にタオルなんか使わずに手で洗うようにしたし、髪もなんか知らんけど高そうなシャンプーとかリンス使ってるのにまだ雑なのか?風呂は好きだがゆっくりと適当に洗って過ごしたい・・・。何なら今でも駐屯地で風呂入る時は洗われているので、いっその事誰かに任せた方が・・・。いや、それは人として駄目だろう。出来る事は自分でする。しなくなったらどこまでも物臭になって苔生える置物となる。


 ただ、わきの下から肉を集めて胸に送る作業は俺には要らないかな?バストアップするらしいが、そもそも肉がないのでどんなに集めようと皮膚が引っ張られるだけだし、ギリギリBあるかも怪しい胸はそのまま育たなくてよろしい。と、言うか妻よ。やろうと思えば胸も細胞を増殖させてHでもIでも何なら限界突破のZでも盛ってしまえばいいのではないか?


「さて、今日はなにかしたい?久々に帰ってきたんだしどこか出かける?」


 渡した写真集を嬉しそうに妻が見ているが、そうマジマジと見られると居心地が悪いな。着る際はメンバーの誰かも道連れに似たような服を着せたから多分ノリでコスプレとかした服と取れば大丈夫だと思う。


「ん〜、莉菜に会うのが1番の目的だったしなぁ・・・。そう言えば、本部庁舎って中見れるの?そのうち通う事になるけど、図面でしか構造見てないんだけど。それと、そんなに見ないでくれ恥ずかしい。」


「綺麗だから堂々とするといいわよ?売るなら買い占めようかしら?と、庁舎は近くまで行けるみたいよ?釣りする人が足繁く陸の孤島に向かっていって、たまにお裾分けしてくれるわ。イカもブリもアジも海遊してるから絶好のスポット見たい。」


「スレてないだけかもしれないな、最近出来たポイントだし。まぁ、それはいいけど近くで見れるなら行ってみて、外からでも近くで見てみようかな。その後は適当に昼を食べてドライブでもしようか。」


 今日は平日なので息子は学校だし、見学したらどこかに足を伸ばすのもいいかも。内部検証の件は千代田に明日したい旨を送ると了解したとの返答が帰ってきたし、人選は任せている。多分、捕まるならエマか高槻他、駐屯地の場所を知っているメンバーかな。


 一応、講習会メンバーは順次駐屯地の場所を見に行くようにしているが、忙しくて行けてない人もいるし馬で移動した際にイメージが足りないのか、似たような大きな木の近くに連れて行かれる者もいる。全員が来れるようになれば、それぞれの配属地から回復薬を取りに来れるので皆真剣にやっている。 


 他の所で言えば電波塔は業者が設置工事をするかと思ったら、駐屯地の秘匿性の問題から自衛隊の施設課が行う事になり準備しているとか。問題なのはクリスタルリアクターを企業が買い漁ったので、在庫ががなく取り敢えず外観だけ作ってリアクター出土と同時に組み込み稼働させることだろうか?


 少なくとも20階層近くまで行かなければぼちぼちクリアな通信は出来るので、急ぐならその奥だろう。明確に何本いるかは別として、なにかの際の目印にするなら電波塔にも固定処理以外の何か細工がいるな。なにか人を集められて、一発でイメージしやすいものとか。何か有ればいいが、なんかあるかな?


「莉菜、何か目立つものってある?ゲート内に置きたいんだけど。」


「なんでもいいの?大きさとか色とか形とか。」


「ん〜、固定処理すれば残るからある程度は大丈夫だと思う。オフレコで言うと、ゲート内に駐屯地もあれば会社もある。そんな所へ行く為の目印なんだけど・・・。」


「なら、写真集の写真を大きくして飾ったら?駅前の横断幕みたいに。」


 あー、魔性の女か惹き付ける者か。確かにこれならイメージもしやすいし、どの服とか指定すれば多分そこまで馬が連れて行ってくれる。払う代価はゲート内に俺のコスプレ写真が飾られる事・・・。いや、アイドルとかでいいなら俺でなくてもいいのか。何なら企業広告とかでもいいだろうし。


「写真集のデータは消去済み。再販とかないしあっても買わないだろ?まぁ、1つの案として参考にさせてもらうよ。」


 アイドルが駄目なら試してみるしかないよな?国旗とかでもいいけど、ゲート内で国土争いとかしだしても面倒だ。自衛隊の国旗はあくまでここに基地あるよ~と知らせているものでしかないのだし。そんな話をしているうちに庁舎へ到着。ちらりと見えた救護所は大盛況と言う嬉しくない状況だが、そんなに怪我しまくってるの?たまに高齢者や子供も見えるんだけど・・・。


「なぁ、救護所ってスィーパー以外も来る?」


「いっぱい来るよ!知らない間に病院扱いみたいになってて、下手すると外科医が無理な人とか運んでくる。まぁ、最初の頃に事故で重症の人受け入れたらそこから噂になっちゃってね・・・。右足切断だったんだけど、増殖と再生で繋げて増血剤飲ませてってしてたらすぐ歩けるようになって、その日のうちに元気に帰宅してそっからかなぁ。普通の人が来るの。おばあちゃんとかは普通の病院より安くて確実って通いだして、今では救護所の一員になってる。凄いのよ!引退した看護師さんとかもボランティアで来てくれるしね。」


 スィーパーを主体とした医療機関のモデルケースか。他の県でもちらほら立ち上がり出しているが、病院との兼ね合いが悪かったりするので、全国的に定着するまでにはもう少しかかるだろう。しかし、こうして民間レベルで職を使う人が出るのはいい。特別なオンリーワンじゃなく、多数の人がいるから多様性も出るし日常に溶け込んでいける。


 そんな話をしながら見る本部庁舎は外観は既に出来上がっており、中の電気工事等で行き来する人間がいるくらい。正面入口は大きめに設置され、横に今日の工事予定が書かれた白板が置かれているが、ぱっと見クエストボードに見える。敷地内には庁舎以外は緑化の木も植えられず4km圏内は芝生しかない。ベンチが置かれている所は多分、4.5km地点だろうか?


 スタンピード対策として範囲を区切るように設計されているので、芝生から外が4km以降と言う安全な生存圏となる。釣りをする人が多いと言っていたが、確かに今でも糸を垂らすアングラーが見えるので、スィーパー以外でも賑わいがあるだろう。


「親子で見物か?ここにファーストちゃんはまだいないよ。完成したら来るらしいけど本当かねぇ?生誕の地は間違いないけど、東京行って音沙汰なし。地方民としては就任して盛り上げてもらいたいけどね。」


 ちょうど休憩なのか庁舎を見ていると、作業着のおっちゃんが後ろから話しかけてきた。ふむ、顔を見せれば中も見せてもらえるかな?


「来ますよ、ここ第5って銘打ってますけど建設自体は1号ですからね。夜景は良さそうですけど、暑いんで間違っても本部庁舎を全面ガラス張りとかにしないでくださいよ?」


「いや、嬢ちゃんがいって・・・、本物?」


「ええ、妻とお忍び視察です。中って見れますか?危ないなら遠慮しますけど。」


「いや、見てくれ!何なら若いのにも声かけてくれ!最初は必ず来るって意気込んで気合い入れてたんだけど、東京での配信見てたらみんな向こうに居着いて来ないんじゃないかって不安になってな。丁寧な作業はしてるが、やっぱり最後は気合と心意気だ。」


 取り敢えず中は見せてもらえるようだ。ぷらっと来て外観だけ見たら退散するつもりだったが、見れるなら見たいし救護所も入るので救護所長の妻の意見も聞こう。普通の医療現場と違ってベッド数さえ揃えられればどうにかなるかな?


 中に入ると割と小綺麗にされており、剥き出しの配線や壁が取り付けられていない所が見て取れる。内装さえしっかりすれば後は落成式となるだろう。図面的には地下もあるし、外から見る限りでもゲートを収納して運用する為かなり大きい。殆どを物資で埋めるつもりだったが、それを差し引いても大きいと思う。


「おーい皆聞いてくれ!なんとスーパーサプライズ!本部長が視察に来たぞーー!」


 おっちゃんの声が庁舎内に響く。密閉率がいいのか中は冬場の海辺なのに寒くないし、何なら声も反響しまくって隅々まで届きそうだ。


「は?マジかよ監督さんよぉ?」


「来るわけ無いだろ?耄碌したかー?」


「そうそう、本部長殿は東京で走り回ってるっての。来てくれたら嬉しいけど、幻想じゃなくて現実見ろよ〜。」


 ざわざわと声が上がるが姿は見えず、何なら監督は夢見がちな中年にクラスチェンジさせられそうだ。横の妻も苦笑しているが、俺が声を上げた方がいいのかな?どの道仕事中なら手は止められないだろうし。


「本当だー!嫌なら見なくていいぞー!俺が案内してお茶してサインもらっとくからなー!」


 キンキンと響く声にやれやれと言った感じで、1人の青年がひょっこり受付台になるであろう机の影から顔を出して目が合った。


「監督見栄張るなよ・・・、えっ、うわっ!ほ、本物!?てかちっちゃ!本部長ちっちゃ!えっ!小学生?いや、タバコ吸うから大人か・・・、飴食べるか?塩飴だけど。」


「おいおい、永松。監督の冗談に乗らなくていいって、ガチじゃん!ガチ本部長じゃん!クロエちゃんじゃん!サイン!・・・、汗臭いけど近寄っていい?」


 永松が騒ぎ出して釣られて顔を上げた青年も騒ぎ出す。若いけど配線いじってるようだし電気工事士かな?汗臭いくらい構わないので、手招きすると受付から転びそうな勢いでやってきた。妻よ、わざわざ抱き寄せなくていい。別にさらわれないから。


「はー、本当にちっちゃいな。確認するけどクロエ=ファーストさんでOK?」


「OKOK、サインくらいいですよ。お仕事お疲れ様です。なにか書くものと、書いていいものありますか?」


「はいペン!背中に書いて下さい!」


 作業着を脱いだ下の白いTシャツに書くが良かったのかな?洗濯したら消えてしまいそうだけど、黒い指輪が見えるのでスィーパーなのだろうか?他にもゾロゾロと集まってきたので、それぞれ握手やらサインをして一息。監督の声で名残惜しそうに作業へ戻っていったが、何も激励する為だけにここに来たわけではないのだが。



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[一言] 溢れると救護所に詰めてる治癒士に片っ端からモンスターが結合される未来が
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