表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街中ダンジョン  作者: フィノ
186/850

144話 やる気復活 挿絵あり

「何はともあれ信頼を得たと思おウ。無論、口外が許されるまでは胸にしまっておク。」


「そうしてもらえると助かります。まぁ、数年もすれば殆どのプロフィールは意味をなさなくなって、残るのは年齢と名前くらいですけどね。」


 戸籍も女性になってるし、色々と足跡は消されてそんな事になってるの?と、言いたくなるプロフィールが出来上がっているのもまた事実。出身や妻、両親は変わらないが出身校がいつの間にか廃校の名前にすり替わったり、学生時代は保健室登校で友人は疎か、その学校に在籍していた事を知る人さえいない状態になっていたりする。


 まぁ、過去にあまり興味はないし学歴も職歴も、昔とあまり変わらない程度のものにすげ変わっているので良しとしている。優先するべきは過去ではなく今だしね。ただ、寂しいのは昔馬鹿やった友人と連絡を取れない事かな?なにかの拍子にウチに遊びに来ていて鉢合わせしたなら話すが、そうでない限りそうそう会う事もないだろう。


 ただ千代田よ、最初に提示した高校は名前で選んだんじゃないか?確かに出身県ではあるが聖母の騎士高校は男子校でミッション系だ。少なくともウチは仏教徒なので嫌だと言った。別に悪い高校ではないと思うが、全く概要も知らない所を提示されても困るし、男子校の時点で本末転倒だろうに・・・。


 因みに、自衛隊に在籍していた事実も最近抹消され、認番も欠番扱いになったとか・・・。まぁ、された所で技能や知識は残っているので問題はないのだが、ある時期から急に色々といじられ出したので、その時期ぐらいから海外から何かしらのよろしくないアプローチがかかっていたのだろう。


「今のツカサのプロフィールってどうなってるんです?」


「確か出身や生年月日、名前は一緒。婚姻歴はそのままだけど、法改正までは事実婚扱い。仕事は在宅ワークでたまたま仕事で訪れて最初のゲートに入ったとか?昔の職場の人は全員栄転してバラバラになったらしいから足跡不明かな?興味がないから多分、こっから先適当な事を言って過ごすと思う。」


 工場警備員が大出世して、希望の土地でなんかいい役職に就いて仕事してるらしい。ただ、条件は同一県不可の九州から出来るだけ離れる事とか。家も仕事も用意された新天地に割りとすんなり向かったらしい。どうやって仕事まで変えさせたのかは、ちょっと怖くて聞けなかったな・・・。


「嫌ではないのカ?過去が改ざんされるのハ・・・。」


「コギト・エルゴ・スム。残ったのはそれですし、逆を言えばそれしか残らない。まぁ、自分より莉菜を優先しますけどね。」


「コギ・・・、コギ?」


「エマ、なんかゆるキャラの名前みたいになってますよ。」


「カオリは意味が分かるのカ?」


「ほら、アレですよアレ・・・、なんかパンの名前とか?コムギ・エスカルゴ・ツツム?」


 望田がチラチラこちらを見てくるが、パンでもパイでもないぞ〜?そもそもカタツムリの入っはパンなんて食べたくない。海の貝はいいが、陸の貝はどうも昔捕まえたカタツムリを思い出して食べる気になれない。それに話の流れ的に残るのは貝殻であって莉菜は残らないだろう・・・。


「コギト・エルゴ・スム。日本語で言うなら我思う故に我あり。乱暴に言うなら、いろんなモノを取っ払って行った先に残るのは、考えている自分と言う事。ふむ・・・、解釈によってはロゴスに通じる所がある。単純に言葉が違うだけで意味合いは・・・。」


「ほら、ツカサ!モンスター来てます!私達を囲っている状態で檻を展開してますけど、さっきから結構な数が押し寄せてるんですよ!」


「そうダ、クロ・・・、ツカサもモンスターを倒そウ!」


 望田とエマがモンスターを倒そうと急かす。考え事をしていたが仕方ない、取り敢えずさっき絡め取った霧のモンスターを煙を纏わせて特攻させる。付いて来いと言ったが、思ったよりもスムーズに動かせるな。コードを使わないモンスターも扇動出来るのだろうか?出来るなら色々出来そうだが、さっき惑わそうとした魔女さんや。


(貴女、赤子を思い通りに動かせるの?)


(OK、言いたい事は分かった。)


 馬の耳に念仏、猫に小判。対話できるだけの知性が必要と言う事か。意味が理解できないのにいくら言い聞かせても無駄という事だろう。確かに、まだコードは感じるくらいしか分からないので、相互理解には程遠いし逆に言葉を知らないモンスターはいくら話しかけても回答しない。今の所は人には使えてもモンスターに使うなら、魔法なんかで無理やり言い聞かせるしかない。


 いづれ・・・。そう、いずれ理解出来るようになれば、モンスターに言い聞かせる事も出来るようになるかもしれない。まぁ、犬なんかが大人しく従ってくれるかは未知数でしかないが・・・。しかし・・・。


「ツカサ!モンスターが多い!手伝って!」


「ええイ!妙に硬いのもいるシ、霧はとらえどころがなイ!訓練にはいいガ、数を減らしてイメージを固めたイ!」


「分かった!派手に行こう!」


 霧は煙とともに付いて来る。見られたくなかった巻き戻りは、今回に限ってかもしれないが、受け入れられない材料にはならなかった。本当は妻との秘密にしておきたかったが、それは次に会った時に謝ろう。思ったよりも問題は小さく、心は軽く俺はまだ人の輪の中にいる事が出来るらしい。


「心は軽く軽やかに、歩みは早く風の様、荒ぶる風は隙間風、さぁ、刻まれなさい?」


 先程自身が刻まれたのだ、霧も合わさればイメージもしやすく傷は付けられる。しかし、流石に一撃とは行かないか。回復はしないようだが、2人が叫びたい気持ちもわかる。囲いを外したら割と強めのモンスターに囲まれてたんだしね。


 ヒラリヒラリとビームや触手を躱し、纏わり付く別の霧は煙と混ぜて更に数?を減らして対処する。ただ、煙と混ざった霧から時折バチバチと放電するような音がするので、実態としては小さな機械の集まりなのだろうか?倒した判定は付きづらいが、砂のような小さな粒のクリスタルがたまに見える。


「綻び有れば継ぎ目有り、離れる隙間はそこにある。さようなら、さようなら、離れ離れの身体達。」


 魔女ではないが気分がいい。最初に傷付いた所からどんどん裂け目は広がって行き腕や触手が千切れ飛ぶ。霧は集めて煙とどんどん混ぜよう。何でできているか知らないが、犬のように従えられるなら煙で出来ることが増える。


 近くに飛来した銀の玉は蹴っ飛ばし、横のモンスターは魔法で作ったシールドを手に纏わせて、触手を掴んで引きずり倒して頭を凍らせて打ち砕く。離れようが、近づこうが如何様にでも料理の仕様はある。既に煙は立ち込めているのだ。ならば火の手が上がろうが氷の冷気が溢れ出そうが、或いはもっと単純に爆発した後の結果としてだろうが、逆説的にイメージできる。


 しかし、数が多いと言うだけあってどんどん押し寄せてくる。ゲートの中に囲いなんてなかっただろうし、少々モンスターの興味を引きすぎたか。何せ奴らは人間大好き腕試しさせろと意味を探しにやって来るのだから。チラリと望田とエマの方を見るが、望田は流石というか安定している。と、言うか不動。自身をボール1つで完全に音で防衛し一方的にモンスターを倒している。


「さて、オン・ステージです!聞き逃しは許しません」


 ただ、見たことないものも交じるので一瞬対処に迷う所があるようだ。ただ、それでも瞬き少なくモンスターを上面から見続けられるのは、自身の職と裏打ちされた経験があるからだろう。犬との二人旅は決して楽なものではなかった。犬は話さないし、モンスターは突然襲ってくる。事前に無理なら犬に任せろとは言ったが、本人はそれを良しとせずに犬に頼ったのは移動くらいでひたすらに自身でモンスターを狩り続けた。


 実際、赤峰達と別行動で先を目指して潜った時の討伐数MVPは望田である。他の班は人数がいたと言う事もあるが、それを差し引いても取り憑かれたように寝る間を惜しんでモンスターを狩っていた。精神的にも体力的にも望田は決して弱くない。歳下だが、見習うべき点も多々あると思う。そして、エマだが・・・。


「狩猟者は狩り場を選ばなイ。そしテ、狩る事を諦めなイ!トラップ!」


  挿絵(By みてみん)


 反応装甲なのだろうが、橘2号になってらっしゃる。ただ、橘と違う点としては全てイメージの産物なので卓同様好きなようにいじれる。真反対だけど騎士甲冑とか着ないかなぁ。似合いそうなんだけど・・・。まぁ、実用的か否かで考えるなら旧世代の甲冑をイメージしても、俺個人としてはあまり意味を見いだせない。余程それに何かしらの思い入れがあるのなら色々イメージ出来そうだが、俺からすると西洋甲冑は重い、動きづらい、殴られたら割とアウト言った所だろうか?


「ツカサ、そっちに集まってますよ!」


「モンスターも美しさが分かるものなのカ?それとモ、EXTRAはモンスターを集めやすイ?」


 確かになんか他の2人よりも、コチラに来るモンスターが多いような気がする。まぁ、多くてもやる事は変わらない。ここで色々とやっているが、まだ宮藤達に追いついてさえいないんだから、さっさと始末して先を急ごう。


「2人共後ろへ。纏めて潰しましょう。火のない所に煙は立たぬ、煙あるなら火事がある、あら?(・・・)吹き出す煙は星の息、ため息1つ下さいな!」


 立ち込めた煙を一気に火山の噴火に見立てて、集まったモンスターを打ち上げる。当然その煙は熱く、火山流をイメージするなら400〜700℃。いくらかのモンスターはそれでクリスタルになったが、残りはまだ上空。ただ、噴火して上空に煙があるならそれは・・・。


「暗雲立ち込め稲光、入ればそこは災禍の渦。打ち据えられて灰になって、後はキラキラ降ってくる。」


 残ったモンスターも雷に打たれてクリスタルになる。噴火に雷は付き物だ。これでかなり数は減らせた。3人乗りはどうかと思ったが、今はそうこう言っている場合でもない。モンスタートレイン状態になるかも知れないが、撃退は2人に任せて俺は運転とシールド張りに注力しよう。馬と違ってバイクはあくまで自身で操作しているので、回避も防御も何なら空中走行もギリギリ行ける。


 指輪からバイクを取り出し跨り、2人の方を向いて声をかける。後ろに2人載せて3人乗りなら視界は大丈夫!ただ、仕様的に2人乗りなのですし詰め状態は仕方ないと諦めてもらおう。


「乗って!あらかた倒したけど、まだ湧きそう!一旦離れるから、2人で追ってきたモンスターを倒して!」


「分かりました!エマ、私がツカサの後ろでいいですね?」


「いヤ、合理性を考えるならカオリが1番後ろで後方防御だろウ。私はツカサを後から合法的に(・・・・)抱き締め攻撃に徹すル。」


「なっ!嬉し恥ずかしハプニングを独り占めする気ですか!?」


「軍人として当然の意見ダ!」


 言い合うのはいいが早く乗ってくれないかな?あらかた倒したとは言え、クリスタルにならずに地面に激突したヤツもいるからね?と、言うか無駄な時間を使うくらいなら置いていくか。何だかんだでこうしてモンスターとも渡り合えるし、2人なら大丈夫だろう。


「さっさと乗る!乗らないなら置いていく。そもそもこの状況で胸を揉もうが尻を触ろうが、気にするわけ無いでしょう!」


 死にかけの人がいたらガンガン心臓マッサージするし、ハンカチ越しとかで感染予防出来るなら人工呼吸もする。優先すべきは安心と安全。モンスターから離れようという時に、身体を触られるなんて些細な事を気にする事はない。寧ろ、これで乗らないなら煙を巻き付けて水上スキー宜しく立ったまま平行移動してもらおう時速700km/hで。


「私は乗るゾォォォオ!」


「ズルい!前も2人で乗ったって自慢してたのに!」


 結局、俺、エマ、望田の順で乗ってフルスロットル。身体が小さくてよかった。タンクに股間が押し付けられて痛いが潰れるモノも無いので我慢しよう。わーきゃー言っていた割にエマは普通に腰に手を回すだけで、随時浮遊機雷やらドローン、セントリーガンを設置して追ってくるモンスターを妨害し、望田は最後尾で籠目歌を口ずさんで防御に徹している。


 音単体よりやはり歌はイメージしやすいのだろう。望田が振り向かないかぎり、後ろの正面が誰かはわからない。それはつまり、シュレディンガーの猫の様に攻撃が当たるのか当たらないのかと言う確率世界の問題になっていくだろう。ただまぁ、それは極まったイメージの産物で、今は横で銃声も爆音もしているので、多少当たりづらいとか或いは、籠の中なので早々外敵の攻撃は届かないとかだろう。


「このまま次の階層へ行きますよーー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価、感想、ブックマークお願いします
― 新着の感想 ―
[一言] まだ「危険地帯」という認識が強いからイメージの防具は重装備になるのかな そのうち見た目軽装甲が増える?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ