142話 籠目 挿絵あり
明日からは通常の文章量に戻ります
5〜9千字想定です
炮烙の刑というものがある。中国の古い時代、地面に作った柱に罪人を縛り付けて焼き殺したという説や、穴を掘って銅の柱に油を塗って橋を作りその下でガンガン火を燃やして落ちるさまを楽しんだなんて言う説もある。妲己のお気に入りだったとかなかったとか・・・。
それはいいとして、魔女のやつ確かにイメージを見せるとは言ったが、拷問器具展覧会をやるとはな・・・、考えていたがアイアン・メイデンに奥の方にはファラリスの雄牛、宮藤が作るウィッカーマンにあれは五右衛門の釜茹で?ん〜、リッサの鉄棺は鳥籠っぽいけどそもそも1人しかはいらないし、それでは全然足りない。攻撃なのでクリスタルにするまでは確定として、一体づつに出していてはキリがない。もっと纏めてざっくりと数を減らす為には蠆盆の方が向いているが、あれは毒殺なので時間がかかる。
(駄目だな、もっと効率的かつ迅速にモンスターを倒せるモノが欲しい。その為に人を用意したし、出来るイメージを育てようとした。これでは余りにも時間がかかりすぎる。)
(凶暴ねぇ。さっさと周囲をまるごと吹き飛ばそうかしら?)
(却下だ。外でそんな魔法が使えるか!もっと広範囲を隔離して中を吹き飛ばす。オーダーはこれだ。何なら落とし穴作って爆弾でも投げ込んだ方が効率的だ。幸いゲートは爆弾ではびくともしないからな。)
(はぁ~、注文が多いわね。)
「なァ、カオリ。これだけピンポイントで攻撃するなら私はお役御免ではないカ?」
「まあまあ、倒せてますけど1人でやってしまったら、スタンピードの度にクロエを頼る事になっちゃう。それだと本当に他の人が何もせずに、1人が犠牲になる世界が組み上がって結局先細りの世界になる。出来る事は自分でしないとね。でも、檻かぁ・・・。檻と言うより閉じ込めて外に出さなければいい?出現範囲は分かってるから、その範囲を覆い尽くして漏れ出さない・・・、何で外に出ないの・・・?」
「ム、なにか大掛かりなモノがありそうカ?」
「イメージを固めるとか、分かりやすく知らせる。私は歌人で歌のイメージで事を成せます。だから色々歌を聞いたり、映画を見て音を増やして対処の引き出しを増やしました。なら、その歌で閉じ込めるものがあれば、或いは外に出さないものがあればいい。成る程、歌えばいいその歌を。」
望田とエマが拷問器具博覧会を見ながら横で話している。こちらとしては、魔女に文句を言っている所で、何なら賢者の方がもう少し効率的なイメージを持っていたのではないかと思う。確かに、魔女のだした拷問器具は俺の読んだ本の中に全て登場するが、拷問器具とはあくまで個に対して使うものであって、多数の対象を相手にするならウィッカーマンくらいだろう。ん〜、最初から練り直して火山の火口とかイメージする?複合するなら溶岩ドームで外を覆って中の溶岩で焼き殺すとか?
いや、1人でするからそうなるのであって、もう少し他の要素を引っ張ってくればなにか出来ないか。拳で握って中の爆竹を爆発させるイメージとか?確かに火力はありそうだが、檻を手の平とした場合包みこんでいるので2回目はないな。
ん〜、ただ倒すと言うイメージならボロボロ浮かんでくるが、範囲限定戦となると、その範囲を内で完結させないといけない。そうなると、余りにも凶悪なイメージだと望田の檻を壊してしまいそうで嫌なんだよな。まぁ、その為にエマを連れてきているのだが・・・。
「クロエ、試して下さい。」
「ん、どうぞどうぞ。元々はカオリとエマのイメージを作るためだしね。いいイメージが提供できなくてごめんね。」
「いえいえ、個別の範囲なら個を対象としたイメージ。それが拷問具だったんですよね?似合いすぎてちょっと怖かったですけど。なら、広範囲を対象にするなら歌ですよ!」
そう言うと望田は笛を取り出してフルートの様に口に当てるのではなく、笛の先にボールが付いて本格的にマイクのようになっている。そして、アンチョコの様に黒い手帳を・・・、中位になって新しく取った職は宮藤と同じく記者か。初期では出ていなかったので、至った時に新しく出たのだろう。伝えるという方面で自身の能力も伸ばせるし、言葉で伝えられるなら色々と悪さもできそうだ。
前に渡した2つのボールは望田の周りを飛び、音響効果はバッチリのようだ。更にボール増やせないか箱開けも頑張ってみるかな?望田の場合、ボールの数=戦力と捉えても良さそうだし。さて、望田は歌う気満々だが何を歌ってくれるのだろう?先程モンスターはあらかた倒したが、そろそろ集まってきてるし。
「歌いだしたら私が攻撃しても大丈夫カ?」
「試して下さい。今回は私達ごと包むので、あんまり派手にやると危ないですけどね。」
「加減はしよウ。」
そう言ってエマがチラリと俺の方を見る。手出し無用と言う事だろう。まぁ、さっきモンスター倒したし魔女は別のイメージを探しているのか人の記憶を漁っているようだ。わざわざ人の記憶から探るのではなく、魔女自身のイメージはないのだろうか?いや、それをされても理解出来ない現象だと扱えないのか。既に魔法なんて訳分からんモノを扱っている訳だが・・・。ま、まぁ?ヤマトの波動砲だってつい最近まで原理不明でブッパしてたから大丈夫かな?
「では、行きます!」
そう言って歌い出したものは確かに、逃さないという意味では的を得ていて中には確かになにかが入っているというイメージは確固にある。ただ、これって日本人以外にも通じるのかな?俺は昔から聞いてるから分かるけど、エマとかちんぷんかんぷんかも・・・。
「籠め籠め 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面 だーれ♪」
「ここカ!」
歌の終わりと当時にモンスターが振り返り爆発する。多分エマのブービートラップかな?確かに籠という言葉も入るし、諸説あるこの歌は死産の歌と取る人や鬼を閉じ込めた歌と言う人もいる。それに、地方によっても歌詞が違う。まぁ、共通しているのは籠からいつ出るのか?という部分。ゲートを籠め籠めしていつ出るのかと急かし、モンスターが出たなら振り向かせてエマに爆破させる。
記者の伝承や伝達と言う能力を引き出せば、後ろを向かせるくらいどうとでもなるだろう。何せ江戸時代からこの歌はあるらしいし。追跡者のおかげで的確にタイミングも図れるようだし、このまま2人にはイメージを重ねていってもらえば戦えるようにはなるだろう。




