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街中ダンジョン  作者: フィノ
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141話 馬は早い

 朝っぱらからゴスロリを着てゲート前で宮藤達と話をする。内容はスタンピードまでの猶予を稼ぐ事。何を倒してどの程度稼げるか分からない。ただ、それをしなければならないという焦燥感は付き纏う。嘆こうが喚こうが後悔しようが平等に時間は過ぎて、平等に結果を求める。そう、よくも悪くも結果だ。過程は大事だが、求められる結果に繋がる過程と言うのは驚くほどに少ない。そして、過程を間違ったらその後に出るのは価値のないもしも論争。


 もしあの時にああしていれば・・・。ifの話は無意味だ。それは過ぎ去った過去に可能性を求める行為であり、求められた可能性は既に現実に叩き潰されている。残念な事に現実を打ち倒す事が出来るのは未来しかない。それこそ、不確定要素の卵は如何なる姿にもカタチを変えてくれる。腐って食えない物になるか、或いはピータンになって口を楽しませてくれるか。まぁ、ピータン食った事ないけどね。


「それでは自分達は引き続き先行でいいんですね?カメラは全員セットしました。」


「ええ、40階層からスタートして下さい。私達は36階層から始めて37階層で墜落機を一度探してみます。あれには一応壊れているとはいえ修復機能があるようですから、使える使えないは別として確保しておきたい。映像は後で編集して配信しましょう。」


 ガーディアンは質の悪い事にボロボロにしても回復したんだよなぁ。今の所確認したのはガーディアンだけだが、アレが他のモンスターに備わっていないとも限らない。ゲームならボス以外しないだろう禁じ手っぽいモノを雑魚がしだしたら、それこそキリが無くなるがしないとも限らないし、モンスターに取り込まれても面倒だ。それに、コチラで確保出来れば鑑定してもらって回復薬の製造プラントに組み込みたい。


 回復薬の製造は各国が乗り出しているが、その中で安定供給の目処が立てば優位性は更に確保され、資金源としては更に盤石になる。猶予がどの程度になるか分からないが、どの道スィーパーはゲートに入る。その中で消費される回復薬は増加の一途をたどり未だに価格は安定しないし、程度の良いものは高額化している。回復薬の程度=自身の死亡率という構図はこの先も中々変わらないだろうが、その中でも比較的安価に製造でき固定処理しているとはいえ、プラントに障害が出るリスクは減らしたい。


 これが出来る出来ないで一般人の攻略速度も変わり、結果として猶予を引き出せる時間も変わってくる。目標としては出来る限り中層へ人を送り込んで掃除してもらいたいが、現状を考えるなら今のメンバーしか中層へ行けそうな人材がいないので、先にバックアップ体制を整えたいというのが本音だ。


「分かりましたそちらはクロエさんたちに任せて、自分達は45階層を目指します。そこで合流出来れば50階層に全員でアタックして中層へ足を踏み入れましょう。」


「ええ、流石に51階層へは全員で行った方が安全でしょうからね。危険を感じたら早期に脱出して下さい。では、また夕暮れ時にこの場所で。」


「ええ、夕暮れ時にこの場所で。」


 さよならは言わずに宮藤達を送り出す。追い付ければいいが、望田とエマのイメトレもあるので、そこで合流するには多少時間がかかるだろう。2人共基礎はある。しかし、問題は量であり質であり継続時間。モンスターを倒すだけなら一撃必殺の瞬発的な火力でいいが、2人に求めるモノは通常戦闘とは少し毛色が違う。まぁ、ある意味職の本領発揮なのでそこまで危惧してはいないが・・・。


 映像については今後の糧として配信し、少しでも後続の安全マージンとして使いたい。ラストの夏目紹介動画は他のメンバー同様、少しの能力を見せる程度に留めたがまさか影武者に成ろうとして、全身操作してくるとは思わなかった。まぁ、色々(・・)警告としても使えるのでそのまま配信し、ラストにちょっと釘を刺すコメントをしたくらいでそのままUPした。


 今の時期に要らぬちょっかいは掛けられたくないし、今後もちょっかいは掛けてほしくない。それでも掛けてくるというのなら、相応の覚悟を持ってもらおう。知ってるぞアクセス数。流石に知りません見てませんは通用しない。仮にそれを言うのなら、俺も知りません分かりません協力しませんし、相手にしませんで貫こう。


「宮藤さん達行っちゃいましたし、私達も行きましょうか。」


「そうだナ。しかし、墜落機と言うのは分かりやすいものなのカ?実際に見たのはクロエしかいないガ・・・。」


「正直微妙な所ですが、一応検証も踏まえて馬を鹵獲して使います。セーフスペース外でも目的地に連れて行ってくれるなら、ある程度探索の際に足として活用できる。」


 速度不明の馬はセーフスペース内なら、駐屯地を知っていればそこに連れて行ってくれる。なら、ほかの階層でもそれが出来るなら探しものをする時に有効活用できる。今も作り続けているドッグ・タグ。これの回収も一応は仕事のウチなので、今から行く階層には無いだろうが、15階層付近までなら悲しい事だが複数枚あると思う。今回墜落機まで連れていってくれるなら、それを探す事も可能だろう。


「残念ですが、ゲートから戻らないパーティーもかなりありますからね・・・。」


 望田が暗い顔で口を開く。自己責任の名の下に16歳から、親の同意の元に入れるゲートは悲しい事に、かなりの数の行方不明者を出している。入る理由も背景も、それぞれに理由があるのだろうからとやかく言わない。いや、口を出してはいけない。そこに口を出すなら面倒を見る覚悟をしてからでないと、ただの綺麗事を並べただけになる。


 若いからそんな危ない事をするな。立派な言葉だが、ならその入る人間の抱えている問題は誰が解決する?言った自身が口を閉じず、寄り添うように全員の面倒を見て解決してくれるのか?残念な事にそれは無理だ。破綻している。そんな事ができるなら、そもそもなんの悲劇も生まれない。生まれは選べないが生き方は選べる。なら、その選んだ生き方で死んでしまうなら、後は看取るくらいしかない。


 前に見つけたドッグ・タグを親に返したと、千代田に言われた事があった。お互いその結果を警戒するように話したが、まとめると受け取った親は悲しみも嘆きもせずに淡々と受け取ったそうだ。何なら見舞金の一つもないのかと言ったと。俺は那由多や遥がそんな事になったらいても立ってもいられないし、泣き崩れるだろうが、そうでない親もいるのは知っている。それが事情であり入る理由になる事も分かる。だから、仕事と割り切って淡々とこなす。あくまで仕事であり他人事。守るのは知り合いや家族で手一杯だ。


「米国も似たようなものダ。何なら日本より悪イ。入場制限はないシ、タグも最近作り出しタ。自由には責任が伴ウ。その責任ガ、空の棺桶でも仕方なイ。」


 エマもどこか寂しそうに口を開く。いかんな、入る前からテンションガタ落ちでは出来ることも出来なくなる。なにかいいテンション上げる方法は・・・。


「無事に帰ったら魔法をあげましょう。内容指定でそんなにだいそれたモノでなければね。」


「ほウ、それはいい事を聞いタ。今から内容を考えるのが楽しみダ。」


「だいそれたモノ以外・・・、内容は詳しく話し合いましょう!」


 2人のテンションも少しは上がった。小さいかは別として、繋ぐ約束がある事はいい事だ。それに2人の出来次第で作戦の成功率も変わってくる。士気は高い方がいい。そんな話をしながら手を繋いで中へ入る。馬の鹵獲は簡単に出来るので、そのまま馬に乗って次の階層へ。馬は移動できたので後は走ってもらうだけなのだが・・・。


「方向は分かるカ?」


「イメージしてみましょう。ただ、イメージしても目標物がなぁ・・・。そうだ、アレに案内してもらおう。」


「おっ、ライトボール。」


 単色点滅の方は救難信号だが、色とりどりの方は一応経緯とかを話してくれるので機体の位置もわかるだろう。本体はコアだが身体は機体だろうし。


「身体の所まで案内してくれ。」


 一緒に機体の形をイメージ・・・、したいけどほぼ残骸なんだよなぁ。元の形が分かればいいが、それも分からないので破片や箱の散乱する場所をイメージしながら後はコアに任せる。人参よろしく馬の顔の前に垂らせばいいのかな?煙をプカリと吐いて糸を作って垂らすと、程なくして馬は動き出して走り出す。


「道中雑魚は任せるよ〜、梱包して爆破してねぇぇぇ〜・・・。」


「ちょ!走るなら合図して!エマいくよ!」


「了解ダ。包んだそばから爆破しよウ!」


 どんどん馬は走るが、他の階層で馬の運用がほとんどされない理由が分かる。速度は分からない。どこを走ってるのかも分からない。だが、1つ確かな事はあった。コイツは直線にしか走ってない!流鏑馬よろしくモンスターを魔法で貫いていくが、後から後から急に目の前にモンスターが出てくるんだ・・・。一応、後ろからついてきてる望田達が梱包爆破しているがそれよりも移動速度が早い!


「えぇい!なんで毎回上手く行かないのぉ!?」

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