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街中ダンジョン  作者: フィノ
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140話 一杯やろう 挿絵あり

 小雪の舞う中ホテルに帰って一息。遥はまだ帰っていないようで、スマホを確認するとお願いした服を作る為に、前倒しで講習会を開くよう準備しているようだ。確かに人手が増えれば生産力もアップする。機械化による産業革命をしたというのにここでまさかの、手作業に戻る逆産業革命が起ころうとしているとは、イギリス人もびっくりだろう。高槻製の糸ならミシンでどうにかならないかな?切るのはスクリプターのハサミとかで切れそうだし。


 魔法糸は多分加工できても最後の切る時に装飾師か魔術師が必要で、既存のハサミだと切れないし、スクリプターのハサミなら切れるようだが、下手に切ると霧散するらしい。多分、元々無から有を生み出しているので文字通り綻びが出るのだろう。固定処理等をすれば問題ないし、装飾師なら加工はお手の物なのでマンパワーで頑張ってもらおう。


 糸も出せる人は増えたし、加工できる人間が増えればきっとインナーも安価になるはず。何なら後数枚遥に下着をお願いしようかな。市販品でもいいが作ってもらったTバックはフィットしてズレないムレない履いていないような履き心地なので、ついつい数枚でローテーションしてしまう。ただ冬は寒いので伝家の宝刀毛糸パンツとか欲しいな。タイツ履いても寒いし。


「エマは定時報告後に来ますが、先にやってて良いそうです。大っきいフランクフルトとかおツマミに食べます?」


「いや、その前に夕食だろう。そうだなぁ・・・、私はピザとチーズフォンデュ食べたいかな。後は適当に頼んでくれればいいよ。」


 雪を見ていたら久々に食べたくなった。白ワインでカマンベールチーズをのばしてパンや野菜を付けて食べる。さっき望田がフランクフルトとか言ったけど、ちまちまソーセージに付けて食べるより、串に刺さったフランクフルトにチーズを付けて食べた方が食いごたえはありそうだな。聞いてくるって事はルームサービスのメニューにあるんだろうし。しかし、要人用のホテルだけあって品揃えもメニューも豊富で助かる。


 まぁ、それでもタバコを買うついでに、コンビニの新作おにぎりは買いに行くし、新作のストゼロも味が気になって買う。何なら奇妙なカップ麺は日々指輪に備蓄されていっている。いつか食べるからね。多分ゲートの中でお湯沸かして・・・。ただ、チョコソースとショートケーキ味の焼きそば。てめぇはダメだ。限定販売だったが次でても俺は食わんぞ、甘い焼きそばとか脳がバグる。そう言えば、半田の所で似たような体験を最近したな。


 望田は日本酒をよく飲むし、お土産として貰ったジョークのような味の魚の皮をこっそりお摘みとして忍ばせておこう。見た目的には炙った皮なのでバレないだろうし、たまにはロシアンルーレット風な催しをしてもいい。胴元は俺なので被害は2人が受けるものとする。まぁ、2人がやりたければだが。


「狙ってそのチョイスなのか、素で食べたいのか悩みますがいいでしょう。お酒はハイボールでいいですか?」


「寒いから今日はウイスキー。どの道ロックだけどエマも飲むしそれでいいよ。割りたかったら指輪からなんか出すし。カオリはポン酒?」


 日用品がほぼ要らないので指輪の中には食べ物と未開封の箱が大半。箱の開封も進めないといけないのだが、ダルくて中々出来ない。あぁ、警視庁へ行ったのなら橘に投げつけて来ればよかった。橘の胃が悪くなりそうだが、見ない事には始まらない。資源等目録は今も品名が増え続けているので、びっくり箱感覚で楽しんでくれ。


「ええ、お酒はぬるめの燗がいい〜♪肴はあぶったイカでいい〜♪ホントは塩さえあれば摘みはいいんですけどね。」


 若いのにえらく渋い事だ。歌うように言っているが舟歌を知って歌っているのだろうか?まぁ、知らなかったらわざわざイカとか言わないか。と、言うか望田よ。その飲み方は上杉見たくトイレで死ぬぞ?まぁ、本当は別の所で死んだらしいが・・・。


「いくら回復薬あるからって健康を損なっては駄目だろう。何でもいいから少しは腹に入れてから飲むように。」


「体重計と友達になれる程度に食べときます。」


 望田が適当にルームサービスを頼み、料理が来るまでに日々のルーチンをこなす。最初は資源等目録に目を通す所から。前に千代田に言われて目を通すようにしているが、日々要るのか要らないのか分からないモノが増えている。残念な事にモンスターは資源扱いではないのでモンスター名は出て来ない。まぁ、名前出されても照合出来ないのでどうでもいい。


 続いてスマホでニュースや動画を漁る。どうやら金融街は陥落したようで金の価格は更に下がっている。ただ、このまま行くと混乱が生じるので最低価格保証を決めるようだ。つまり、これを世界が認めれば金貨が新たな通貨として保証される。金貨一枚の価格は円換算で約1万円程度で妥結しそうだ。元々1グラム数千円で取引されていたものが、グラム関係なく価格固定されると資産としては安定するが金額としては目減りする。


 ただ、先を見るならこれ以上の暴落が無いとポジティブに取ろう。価格設定して数年後に更に下げる様な事態となれば、金貨は貴金属からただの金属となり工業製品・・・、例えば電子基板を作る時に使う安価な材料となるだろう。逆にピトー銀貨は価格が上がってらしゃる。まぁ、銀貨と行っても中身はプラチナと金なので元価格的に違う。その他資源系の株価はほぼ横ばい。石油も箱から出るので昔よりは価格が下がったが、まだ安定している。ただ、元々単位がバレルだったのが横に括弧書きで1瓶とあるのは面白い。


 1バレル約160Lなのに対して、ゲートから出る石油は大中小と四角い瓶が出る。なぜ石油と分かるかって?漢字で書いてあるんだよ。何なら回復薬等の人に直接影響するもの以外は品名が漢字で書いてある。小さな心遣いが嬉しいが、量も書けよ。何本か試された後、それぞれ量は小瓶100L、中瓶500L、大瓶1000Lと判明し、他の液体系の資源もこの量で固定のようだ。前にLNGの瓶を水と思って、開封してゲート内で飲むという事故が海外で起こったらしいが・・・。うん。日本語読めないなら外で開けろよ?それ液化天然ガスって瓶に書いてあったらしいからね?見た目無色透明な液体だけどさ・・・。


 逆に鉱石系は全部立方体のキューブで入っている。規格を基準にしたのか鉄だろうとウランだろうと全部1㎥。ダイヤも鉱石なのでその大きさのダイヤモンドが手に入る。しかも最高品質、今度見つけたら妻に贈ろうかな。そんなに大きかったら有り難みもなさそうだが・・・。テレビで初公開された時はSNSではリアルマイクラと騒がれてたな。


 動画勢もマチマチで糸を出してみた!や身体能力の限界に挑戦などという見出しが乱立し、その中でも人気が高いのは格ゲーの技を完コピしたもの。竜巻旋風脚をリアルでやったら旋風が発生したのは中々面白い。フィギュアスケートしながらやったら何回転トーループになるんだろう?


 ガンナーはガン・カタ講座なるものが配信されているが、格闘術というより暗器術とか槍術を基礎としているように見える。感覚としては伸縮する槍の穂先が飛び出す感じらしい。割りとガンナーは狙撃かゼロ距離接近型かに分かれる。高い視力とボチボチの聴力、そして瞬発力。体力は鍛えればいいが、狙撃型でも撃っては走り撃っては走りを繰り返すので、割と体力はつく。ある意味、ゲート内で狙撃出来る人間は豪胆なんだよな。1人で配置についてモンスター待ち伏せたり、スコープの先で戦う仲間を見ながら隙を探すんだから。


 逆にゼロ距離だとガン・カタだけでなく霊丸撃ったりサイコガン撃ったり、変わった人はロケットパンチを撃っている。見る、撃つ、当てるなので銃に括らなくともなにか撃てればいいんだろ?知らんけど。そのうち複合武器とか鍛冶師が作りそうだな。差し当たってガンブレードとか?


「ツカサ、料理来ましたよ食べましょう。」


「来たなら食べるか。」


 スマホを使いながら食べるのは行儀が悪いので、代わりに墜落機から持ってきた教材を置いておく。相変わらず色とりどりに点滅しているが直感的に読み取れる。墜落原因はガーディアンだが、その前にも割とこいつはガタが来ていたらしい。輸送機だから保護されてるよね?と思っていたら、割とモンスター同士の争いのとばっちりで傷を負い、自動修復機能は破損し次の仕事が終わったら、一旦整備に戻ろうかとしていたらトドメのガーディアンだったらしい。ん〜、修復機能欲しいなぁ。壊れていてもどんなモノか分かれば、それなりに材料集めて修理出来るだろうし。


 チーズフォンデュを冷ましながら食べているが中々旨いな。昔はチーズとワインの煮物的なイメージだったが、食べてみるとチーズ次第で味が変わるので飽きはしない。しかし、これは、晩飯と言うより酒のツマミだな。


「その点滅、なんか話してる・・・。と、言うか語ってますよね?」


「ん?分かるの?」


「何となく苦労してるんだなぁくらいですが、見てると悪い事した気になります。」


「そうか・・・、これはガーディアンに轢き潰された輸送機のコア?的なもの。意思疎通と言うか、一方的に経緯を発信してる感じかなぁ。」


「えっ、そんな事まで分かるんですか!?」


「なんとなくだけどね。一応、コード使う用の教材だし。」


「はぁ〜、最初見た時何でライトボール眺めてるのかと思ってました。意味あったんですね。」


「漠然とそんなモノ眺めたら危ない人だよ・・・。乾燥機とか回ってるのついつい眺めてしまう時はあるけどさぁ。」


 疑問に思うなら普通に聞けよ・・・。今話さなかったら本当に危ない人じゃん。そんな事を、思いながらタバスコをかけてピザを食べる。って!熱!チーズがトロトロでチーズフォンデュより圧倒的に熱!巻き戻るけど火傷する!


「思ったより全然冷えてない〜!チーズくっついて伸びる!熱!って何してるの?」


 手を出してきたので水でもくれるのかと思ったら、何故か手のひらを眺めだした。早くも酔っ払ってるのか?割とはっきりと受け答えしてたと思ったけど。


  挿絵(By みてみん)


「報告が長引いタ・・・、カオリは何をしていル?」


「気にしないで下さい。おっさん的な遊びです。クロエは水でいいですか?」


(しまった・・・、親指はもう少し上で口の位置だったかぁ。でも、それだとチーズが見えない!)


「冷たければ何でも。」


「はいどうぞ、エマはウイスキーでいい?」 


「ストレートで頼ム。情報が早いというのも考えものだナ。ウィルソン達は上がった情報で上へ下への大騒ぎダ。数日は泊まりだろウ。またクロエへ会談要請が入るかもしれなイ。」


 スタンピードと聞けばどこも落ち着いてはいられないだろう。策は提示したが、人ありきなのでいなければほかの策を打ち出すしかない。でもまぁ、本当に心構え無く発生するよりはいいだろう。人にしても武器にしても場の設定にしても、時間があれば考えてより良い結果が出せる。それでも出した結果が悪ければ、文句を言わず次に活かすしかない。ここで言う文句は愚痴でしかない。


「前回いい料金を貰ったので、応じましょう。少しくらいは期待してますよ。心付け程度ですが。」


 無料でもいいけど示しがつかないので心付け程度。出された金額に文句言わず素直に受け取って次はなければいいなぁ・・・。向こうの理事アライルが何かしらの探りを入れてきそうで面倒といえば面倒だが、問題はスタンピードなので無用な事は黙秘しよう。


「それは構わなイ。スタンピードの事前情報は文字通り命の価値ダ。準備期間が長ければそれだけ策が練れル。」


 米国式作戦がどんなものになるかは、これから次第に上がってくるだろうが玉砕戦でないのは確かだ。その辺りは頭のいい人に頑張ってもらおう。俺が出したのはスィーパーを全面に押し出すもの。逆を考えるなら近代兵器を全面に押し出すモノだろうか?流石に核でひと当てしてみる?なんて事はないだろう。


「はぁ~、嫌だ嫌だと思っていても仕事はしないといけないんですよねぇ・・・。元々一般人なのに・・・。」


「疑問に思っていたのだが、クロエはその容姿で今まで何をしていたんダ?」


 エマがウイスキーを呷って聞いてくるが、残念な事にそれは駄目だ。探ればバレるし、免許証も毎回コンビニで出す時とかは名前を隠して提示しているがガッツリと黒江 司と書いてある。昼の事もあるし、友人を疑わない為には疑いの目を巻かない方がいい。


「禁則事項です。強いて言うならサラリーマン?OLと言うやつです。間違っても劇的な事なんてないですよ。一般ピープルです。」


「その容姿なら世界的なモデルでも映画スタートでも出来ただろう二・・・。」


「クロエは人前が苦手なんですよ。多分、上がってガチガチになって喋らず終わりとか?いや、暗示かければ割と饒舌?」


「上がらない為の暗示なんで演じるなんて無理。あくまで周りをジャガイモとかに見立てて喋ってるから、演じると言うのとはちょっと違う。」


 ふむ、対象を見立てるか。成る程。バイトは犬と見立てて犬にした。そう考えると深い自己暗示は中々侮れない。場合によっては毒にも薬にもなるな。人で試す気はないが、多分人にも効くんだろうな。魔法使ってハエが飛んでたから間違ってハエ人間作るとか笑えない冗談だ。そう言うのは映画だけでいい。


「ただいまー・・・、疲れた・・・、私ももらっていい?」


「おかえり遥。ウイスキーとピザでいいならどうぞ。生徒に問題あった?」


 上着を脱ぎながら遥が入ってきた。炭酸水を指輪から取り出したので、今日はハイボールだろう。椅子に座って氷をグラスに入れて薄く作っている。


「問題・・・、就職も下積み修行もしてない私は、何で講師なんでしょうか?」


「それは・・・、1番インナー作ってるから?人は望もうとそうでなかろうと、何かしらで踏ん張る時がある。それが今なんじゃない?」


「刻印もインナーも助けられてますからね。」


「素材もそうだガ、ウチには加工できる者はまだいないゾ?そもそも糸が輸入待ち状態だしナ。」


「それは・・・、そうだけど。一挙手一投足をずっと見られるのはかなり精神が・・・。」


 作ったハイボールを飲み干して、更に作りながらぐでっとしている。サバサバした性格だがそれでも来るものがあるのだろう。ようやく俺の気持ちが分かったか。昔、人前でそこまで上がらなくてもいいじゃないと俺に言っていたが・・・。


「あっ、でも半田さんと同じ様な武器貰って、辰樹さんに改造依頼してきた。装飾師の武器が割と出回っててよかったよ。」


「あれか・・・、あれで糸扱ったらまんま蜘蛛だな。」


「半田さんの武器ってなんですか?」


「ドクター高槻の所にいる料理人の武器ダ。腕と言うか手が増えるゾ。」


「千手観音・・・、遥様〜って、崇めないといけませんね。」


「望田さんやめて、インナー解れて消えるようにしますよ?」


「ゲート内ストリップは嫌です。友好的にそのままで行きましょう。」


 それぞれ疲れる事もあるが、やる事は多い。さて、明日からゲート攻略に力を入れるかな。願わくは、今晩のように笑って過ごせる時間が続けばいい。



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[一言] 資源としてヘリウムや水素も出てくるんだろうか 瓶なり何なりに入って出てくるなら容れ物も貴重品だな
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