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街中ダンジョン  作者: フィノ
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139話 勘違い 挿絵あり

「上位カ・・・、中位に至ったばかりだが先は長そうだナ。」


「まぁ、ぼちぼち頑張ればいいですよ。成りたくてなるものでも、努力でどうにかなるものでもないですし。」


 必要なのはきっかけや閃き、或いは真摯に自身と向き合う事なのだろうが、それをしたからと言って至れる訳でもない。ゲームの様に経験値が貯まればレベルアップなんていうお手軽さや、何かをすれば技が増える訳でもない。


 だが、逆を考えるとただのパンチにスーパーミラクルファイナルギャラクティカジェノサイドナックルとか名付けて、延々とモンスターを殴り倒していれば、いつかはイメージが固まりそれが本当に力をもつようになるだろう。それがどんなモノになるかは別としてだが・・・。


「我々政府の方向としては、現状を維持しつつ有事に備えると言う方針から代わりありません。その備えに必要な事は本部長として要請していただければ、精査の後に返答しましょう。千代田君は引き続き今の体制で頼みます。」


「私の方は構いません。室長を降りて楽をさせて頂いてますからね。」


 羨ましい。ネゴシエーターになって普段何をしているかと思えば暇らしい。顎で使って無理難題でも押し付けようか?割りと俺の方もスタンピードの知らせまで落ち着いて・・・、ないな。写真集作って視察して模擬戦して、各人の配置先の希望を締め切って、その上で応援体制をどうするかメンバーと話して、最低限の連携が取れるように調整して、素材集めて魚取って3日前には消し飛んで走馬灯鑑賞を終えて今ココ。


 おかしい。とっとと地元に帰るはずがどうしてこうなった?大会までは責任があると思っていた。しかし、次のスタンピードの知らせで危機感を覚えて奔走した。まぁ、ほぼ確定で要請が入るので間違いではない。ただ、本当に海外なら悩むよなぁ。誰が行くのか、どう対処するのか或いは、被害が出た際の賠償とか・・・。文句言われたら次から要請蹴ろ。多分、次はその国にも中位とかいると思うし〜。


「私の方も要請して精査していただけるならありがたい。どんどんおかしな要請を出しましょう。差し当たって、千代田さんが暇みたいなので大会運営委員長を代理でして下さい。」


 まぁ、代理と言ってもほぼ準備は終わって後は、放映権をどこに売るかや当日の物販準備くらいしかない。気の早い参加者は既に東京入りしてコチラのゲートに入っているとも聞くし、その辺りは問題ないだろう。それに、準備もそうだが中層入口までは降りておきたいので、そちらに取り組みだせば時間は更になくなる。何なら、中層に入って猶予を稼ぎたい。大会が先か何処かのスタンピードが先か。面倒なのは重なる事だが、その確率はもはやある無いの世界。詩的に言うなら神のみぞ知ると言うやつだろう。


 まぁ、大会後でも新たに本部長に任命された人は連れていけないよなぁ。なにが出来るかも分からないし連携も取れない。志願するなら吝かではないが、あまり調子に乗って討ち死にされても困る。


「クロエ、それはほぼ大会運営を政府に投げると言う事になりますが宜しいのですか?」


「さて、なんの事でしょう?私はあくまで千代田さんの会社に運営を任せるのであって、政府には放映権の方しかお願いしてませんよ?それに千代田さんも知っているでしょう?準備はほぼ完了して、後は当日の物販会場準備や、出場者がR・U・Rに慣れる程度だと。・・・、本音を言うと中層手前、或いは猶予を引き出しに中層のモンスターを狩りに行きたい。」


 一狩り行こうぜ!イャンクックばかり狩っても意味はない。装備に疑問は残るがあるもので賄うしかない。目指すはミラボレアスとは言わなくともイビルジョーくらいは倒したい。まぁイビルジョーもくらいで済ませるほど弱くはないのだが・・・。だが、現状の戦力で中層攻略をしておかないと、犬の噛みつき何かを実戦で体感しておかないと、スタンピードのラストでトチりそうなんだよなぁ。俺の場合、もぐもぐされそうになったらされる前にどうにかするイメージもあるし、されたらされたで巻き戻るので保険は大きい。そう言えば、死亡保険とか全部抜けよう。入ってても意味はないし。


「分かりました。大会運営方面は松田さんとどうにかしましょう。備蓄として必要なものはありますか?」


「それは・・・、高槻先生へは薬の増産と爆弾作りを。斎藤さんへは硬度照射装置の増産を打診するくらいですかね。前回のスタンピードを考えると長くても1日かかる事はないでしょうし。」


 昼前頃から始まったスタンピードは夜には終決していた。前回と同じと仮定してシュミレーションしたとして、中位がいる今なら更に殲滅速度は上がるし、作戦が成功すれば初っ端からクライマックスバトルも夢ではない。そうなったら最初から犬みたいなのと戦うのか・・・。やっぱり中層を少しは降りないと危ないな。手塩に掛けたとは言わないが、次の講習会の予定はないので実質今のメンバーが最初で最後の生徒となる。そう軽々と死んでもらっては困るのだよ。


「私はクロエの言った作戦をイメージして練習ですね。難しくはないですけど、強度とか広さはやはり固めていかないといけないですから。手伝ってくださいね。」


「了解了解、どの道カオリには中層まで一緒に来てもらうんだし一緒に考えよう。」


 作戦の要が実力不足では困るもんな。閉じ込める檻、入って出られない檻、監獄塔にアルカトラズ。世界の刑務所図鑑とかあるのかな?あれば檻とか閉じ込めるモノのイメージとしては使えそうだが、音が絡むからなぁ。延々扉の閉まる音では駄目だろうし、何かしらの歌とか?まぁ、本人のイメージを伸ばす方向で考えよう。望田は何時も突拍子もなかったり斜め上に走っていくし・・・。頭の作りが根本的に違うのだろうか?


「私は本国に報告の後、アライル局長へ今回の事を報告しよウ。必要なラ、再度大使館会談があると思って欲しイ。」


 エマが俺の方を見ながら言う。前回の報酬が良かったからあと1回くらいは応じようと思っていたし、スタンピード方面の話し合いならやらない訳にもいかない。しかし、それは米国で発生すると確定してからでいい。何なら明かりが灯ってからでも事足りる。なにせ、自国なら俺より自分達の方が詳しいだろう。場の設定に被害想定なんかを俺に言われても、知らんの一言しか返せないし、被害を出さずに終わらせてくれと言われても約束はできない。


「その後エマはどうします?大使館駐留で情報待ちですか?」


「まさカ。それはウィルソン達の仕事ダ。私も中層へ行こウ。」


 既に腹は決まっているのだろう。一応客人扱いなので危ない事をして欲しくはないが、作戦の要2号なので潜ってくれるなら存分にやってもらおう。先行している宮藤達も気になるが、まだ中層までは行けてないと思うので、どこかで足並みを揃えてまとまって潜りたい。あぁ、あれは早期に設置してもらおう。出来るだけ強くて・・・。


「クロエの方からはもうなにもないですか?」


「長くて太くて奥まで届くの下さい。」


  挿絵(By みてみん)


「「「・・・」」」


「必要なんですよね、電力確保で有線は邪魔なので駄目ですよ?離れても快適に使えるように無線にして下さいね。映像はわざわざ取って送らないでしょうが、使ってるのが見たいなら送りましょう。ただ、気持ちよくスムーズに送れないと嫌ですよ?その為に太いのを・・・。」


「えっと、クロエさん?」


「はい?なんですか?くれないんですか?他の人も絶対に喜ぶと思いますが、そこまで技術がない訳でもないでしょ?無いなら既存のもので我慢しますが奥まで届きますか?最低2本は欲しいんですけど。」


 階層またいでもスマホは使える。まぁ、電波が悪くなるので出来ればセーフスペース毎に基地局を各キャリア毎に設置したい。既存の物だとイマイチ弱そうなので規格そのままに大型化してくれればいいのだが。


(カオリ、下ネタというやつか?)


(いや・・・、本人真面目に話しているので違うと思いますですはい。でも、アレを連想しますよね・・・。奥さんとも・・・。)


「色は何色がお好みでしょう?」


 松田が可哀想な者を見るような視線で聞いてくるが、色って何色かあるのだろうか?イメージとしては白とか赤とか青とか?あぁ、灰色と言うのもあるな。避雷針はいらないし固定処理と刻印何なら硬度照射まですれば、そうそう折れないし劣化もしない。潜るとなると外との連絡が付きづらいから、設置出来るなら何色でもいいと言えばいい。


「別に何色でもいいですよ。あっ、ただ目立ったほうがいいかもですね。それに、固定処理やらすれば曲がらないでしょう?長さは・・・、50mくらいは欲しいですね。」


「それはいくらなんでも入らないでしょう!?最初はもっとセンチ単位の小さなモノから始めましょう。」


 ポータブルアンテナとかポケットWi-Fiじゃ出力足りないような気がするんだよな。確かに持ち運びは便利だけど、結局それも基地局有りき。それを使うぐらいなら、セーフスペースに塔を立てた方が後々色々使えそうだしいいよな。それでなくとも、電話の度に取り出すのも面倒だし、戦闘中にわざわざ取り出している暇もなければ、モンスターに壊されて使えなくなる事もある。


 大きさについては最悪分解して指輪に入れればいいし、車が入るくらいだから多分そのまま収納できると思う。あの墜落機も全部指輪に入れればよかったな。何があるか分からないからと放置して箱だけ回収したが、今にして思えば勿体なかった。


「ん〜、入るでしょう?電力はクリスタルリアクターで賄えば半永久的に使えるんで、後から変えるよりある程度大きな物を使った方が手間はない。奥で使うのは初めてとは言いませんが、中と外とでは感度が違った。なら、やはり奥で使うなら大きい物が建ってる方がいい。千代田さんもそう思いませんか?」


「何でそこで私に振るんですか?確かに必要性は認めますが、規格外を求めるなら時間がかかるのでは?」


「そうですかね?既存品の大型化なら行けるじゃないですか?」


 モンスター持ち出しでガーディアンが起動した時に、電話した相手は千代田だったよな?こちらへの通信感度が悪くとも外はクリアだったとか?いや、ないだろう。外と中と言う違いはあるが、あくまで交信しているので片方だけ悪いとも・・・、無料通話だと相手が聞こえない事もあったな。それだと俺の方が悪かった?ん〜、魔法なんて不思議なモノ使ってるしレーザーとかビームも飛び交うし中の方が悪かったのかもしれない。


「あ~、お互い慌ててましたけど、そちらは良くてもこちらは全然駄目でしたよ?何か妨げる膜的なモノとかあったんですかね?」


 帯電した粒子の膜とかあるのかな?ただ、R・U・Rのサーバーの様に地下1500m付近から有線で繋ぐ訳にも行かないしな。そもそも、紐を繋いでゲートに入っても紐は切れる。なら、有線は確実に無理だろう。やっぱり無線で電波をリレー出来る基地局は設置しておきたいな。


「千代田君、妻子がありながら手を出したのかね?今の話しぶりなら合意ではあったようだが・・・。」


「松田さんは何を言っているんですか?誤解です。私は何もしていません。望田君とエマ少佐・・・、その疑うような目はやめなさい。」


 何やら千代田が疑われているらしいが、そんな要素あっただろうか?あぁ、そう言えば結局なにが欲しいのか物品名は言ってなかったな。まぁ、話の内容的にもう気付いてはいるだろうが、出し渋ってもらっても困る。個人で電波塔とか基地局とか買えるか知らないし。


「電波塔か基地局を建設して下さい。奥の36階層セーフスペースはコチラで建てるようにします。まぁ、既存なものを改良して建てるだけにしてもらえれば幸いですが。」


 なんかゴテゴテしたものが上には付いていたように思うが、多分講習会メンバーであれを扱える人間はいないだろう。建設の為だけに誰かを連れて行くのも骨が折れるし、それなら簡単に建てれるものがいい。幸いというか、ありがたいことに力仕事はどうにかなる。赤峰じゃなくとも電柱みたいなものを地面に刺すだけならどうにかなるだろうし、基礎工事についても先端を杭のようにしてもらえばいい。


「・・・、その程度なら打診しましょう。そうですね・・・、えぇ、各キャリアから機材も集めて相応に電波が飛ぶものを。」


「ありがとうございます。何時でもと言う訳ではないですが、これで緊急時にちゃんとした情報が伝達できる。私からはもうないです。」


 会議は終了しそれぞれ動き出す。昼も食わずの会議だったが内容的には一周回った感じがする。まぁ、話し合わん事には始まらない。スマホを見ると宮藤からのラインが入っており、内容的には全員無事に退出。本日は40階層まで行けたとのこと。ペース的にはいいのかな?ただ、そこに行くまでに変なモンスターが出たらしい。1つは4足歩行の肉食獣的なモノ。多分、犬の原型かな?ゲートのモンスターは基本的にこれまで球体を除き4足歩行と言うモノはいなかった。それがここに来て出だしたという事はそろそろ空間攻撃するやつも出てくるのだろう。もう1つは霧のようなやつ。宮藤と卓で焼き払ったが怪我人が出たらしい。霧と言ってもかなり薄く、いるのかいないのか分からないくらいで、気づいた時には纏わり付かれて皮膚をズタズタにされるらしい。幸い薬で回復出来たらしいが頭痛の種が増えたな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 美少女からそんな言葉出てきたら良からぬこと考えても致し方なし!(笑)
[一言] 見た目超美少女にこんなナチュラルに猥談始められたらねぇ TV中継中にこんな発言されたら今後は表に出せなくなるな
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