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街中ダンジョン  作者: フィノ
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134話 調整中 挿絵あり

忙しくて短いです

 適当な服を着てゲートを出たが、深夜だったのでそのまま飛んでホテルに戻ってひと眠り。こっそりと入ったので誰にも気づかれずに済んだ。爆散して3日、いや、もう4日目か。頭痛も無くなり後はやる事の準備さえ出来ればどうにかなるだろう。準備して備えて、それで対処できないなら更に対応策を考えるしかない。猶予と言うものがどのスケールでの猶予かは分からないしなぁ・・・。


 一応、出る時に打ち上がった魚は取れるだけ取ったし、沈んでいた湖底から泳いで上がる際に賢者が時間を計っていたので概ねの深さは分かっている。これを知らせれば変な疑いは持たれないだろう。そして今、ホテルで大量の飯を食っている。別に隠れていた訳ではないので、寝て起きた時には既に望田や遥に見つかっており『疲れて寝てるなら、起こさずに朝ごはんだけ手配しよう。』と、言う事で大量の朝飯を注文してくれていたらしいが、多すぎない?まぁ、食えるから食うのだが・・・。


「ほら、魚ばかり食べてたんでしょう?シェフの味付けはいい感じですよ?お肉を一杯食べましょう。何ならア~ンとかいります?」


もぐもぐもぐ・・・。


「お父さん追加いる?まだ時間はあるからどんどん食べていいからね?」


もぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・。


 介護されている気分だが、一旦注文はストップ。今の俺にとって食事というのは腹を満たす行為ではなく、純粋に味を楽しむもの。調味料を舐めればいいじゃないかって?正解だが味気ない。


「クロエが帰還したのカ?」


「おはようエマ。」


「卵ライスなんて料理がよくホテルにあったナ・・・。無事で何よりだが調べたい事は分かったのカ?」


 玉子掛けご飯を食べているとエマが話しかけてくる。泳いだ速度と時間で計算は済んでいるので、それを後はもっともらしく言えばいい。悪い大人だな。嘘を真実にするなら、ソレが100%真実だとして嘘をつく。取っ掛かりも、気づいて欲しいなんてシグナルや態度も一切出さない。ただ泰然と話せばいい。


「ええ、階層の壁をぶち抜け無いかと思っていたのですが無理ですね。湖底までの約100m、その先は岩盤なので更に骨が折れる。近道行為は禁止なようです。」


「ふ厶・・・、爆弾はすべて使ったのカ?」


「いえ?残ってますよ?禿げたおっさんみたいに岩盤掘削は得意じゃないですからね。」


 地球を飛び立って隕石ぶっ壊しに行くヒーローじゃないしな。妻は春巻き丼と聞き違え、中華料理の映画だと思っていたと言っていた。まぁ、結構昔の映画だし放送当時なら妻は十代前半くらいだ。人気が出る前やそもそも映画に興味がないなら、適当にテレビで聞いて聞き間違っても仕方ない。


「そうカ、何はともあれ無事で良かっタ。それデ、今日は休みカ?」


「いえ、忙しいので休めません。こんななりでも大人ですよ?セーフスペースでわちゃわちゃしただけで休めませんよ。取り敢えず、遥。糸出すから3Lくらいのサイズでインナー量産して。モノは男女兼用、人手が足りないなら新しく講習会に来る人にも手伝わせて。目標は数千着だから。」


「は?」


「カオリ、今日は千代田さんと松田さんと話す。それに参加して欲しいのと、エマも・・・、付いて来て。聞かせられないと判断したら外で持ってもらうと思うけど。」


「厶?」


「いいですけど、他の方はどうするんです?」


「宮藤さんに任せます。ちょっと野暮用も頼みたいから電話してくる。」


  挿絵(By みてみん)


 情報共有という面では全体説明がいいのだろうが、メンバーへの説明は一旦保留として、糸の出せるメンバーは糸出しと先行して奥を目指してもらう。流石に中位の集団なら大丈夫だと思うし、墜落機を回収できるなら残骸ごと回収してもらいたい。希望的観測ではあるが、メンバーの追跡者に探してもらえれば無理とは言わないだろう。そんな段取りを考えつつスマホを出して宮藤へコール。時間的には起きてると思うが・・・。キセルを吸ってプカリ。吐いた煙を糸にしていく。時間が惜しいからね。


「もしもし?まだ寝てましたか?」


「いえ、歯磨きしてたので遅れました。帰れたんですね、お疲れ様です。朝早くからどうかしました?」


「どうかしたので朝っぱらから最悪なニュースを持ってきました。」


 その言葉に電話越しでも息を呑む音が聞こえてくる。多分、俺が最悪と言った事で嫌な事を思い浮かべているのだろう。うん、該当するものはあると思うよ?最悪なニュースなんて現状寝耳に水なそれしかないし。


「スタンピード関連ですか?」


「ええ、もう少し先ですが発生します。」


「場所等は?」


「一切不明です。ただ、中層・・・、ここを掃除できれば猶予が増えます。私は松田さんや千代田さん他数人と話し合ってこの情報を発信するべきか否かを決めようと思います。そこで宮藤さん。備えの為にインナー用の糸を出せるメンバーに相当量出させて下さい。出せないメンバーは先行出来る人はして、できない方は一旦保留。隊長は任せますよ?」


「・・・、分かりました。そうですか、スタンピードが迫ってるんですね・・・、成る程。ええ、引き受けましょう。無理はしませんが、中層を目指せばいいんですね?」


 声から滲み出るのは決意かな。無理はしないで欲しいし、まだ場所なんかもわからない。あくまで対策と準備という段階だ。中位の集団なので全く進めないと言う事はない。しかし・・・。


「ええ、ただ45階層以降。中層に入る前の最後の5階層分は、かなり厳しいものになると考えています。人員の選考をするなら犬の動画を見せてください。空間を食っている所を重点的に見せれば多少イメージも湧くでしょう。」


「それは・・・、はい。一旦集まって先行の話はしますが、スタンピードの件は話しても?」


「ゲートに入るメンバーには話しましょう。それ以外の方には一旦伏せて下さい。早急に話をまとめて私もゲートに入るようにします。それと、回復薬が心許無いなら兵藤さんにセーフスペース基地へ連れて行ってもらって、高槻先生か山口さんという方を訪ねて下さい。私からも連絡を入れますが薬を融通してくれるでしょう。」


「ふふ、前よりも今回はサポートが充実してますね。安全を考えながら先を目指します。外は頼みました。」


「ええ、すぐに追いつきますよ。」


 高槻へ連絡しようと思ったがゲートから離れているので、一旦保留し千代田へ。場のセッティングと松田が捕まるなら捕まえてもらおう。黒岩と大井は話がまとまってからがいい。国内の守りを固めるにはまだ時間があるはずだ。怖いのは国外でスタンピードが起こったら?という場合だ。


「もしもし千代田さん?おはようございます。」


「おはようございますクロエ。行方を眩ませるなら一筆私の前で書いてからにしていただけませんか?松田さんからゴリ押しで政府に投げさせたんじゃないかと疑いを持たれましたよ。」


「またまたぁ。子供じゃないんですから1人で散歩もすればピクニックも楽しみますよ。タバコも吸う、酒も飲む。仕事は仕事としてやる。立派な大人です。」


「外見に流される方も多いですが、そこは分かっています。それで、どうされました?1人でピクニックへ行って50階層へでも行かれましたか?」


 前の事を根に持っているのだろうか?腹に据えかねて35階層まで1人で突撃した時の事。まぁ、あの時は五分だな。俺も怒ったし政府もやんごとなき事情があった。そこを掘り下げても仕方ない。仕方ないので、胃を痛めてもらおう。


「千代田さん胃薬は常備してますか?」


「胃薬はないですが、回復薬なら数本あります。・・・、嫌な予感がするのですが。」


「ビンゴです。後でテレカをあげましょう。・・・、スタンピードがもう少ししたら起こるようです。」


「それは本当なのですか!?」


「ええ、賢者として保証しましょう。すぐとは言いません、ただそれを聞いて備えないほど楽観的でもありません。松田さんに連絡を取って貰えますか?話し合いがしたい。こちらからは望田さんとエマを連れていきます。」


「望田君はいいとして、エマ少佐は・・・。」


 やはり渋るか。しかし、どこで起こるかわからない関係上、国をまたげる人間もまた必要になる。別に国へ帰ってすぐさま指揮を取れ・・・、少佐なら部隊指揮は取れるのか。


「言いたい事は分かりますが、どこで起こるかは不明です。仮に米国で起こった場合、作戦の中心は間違いなく彼女になるでしょう。情報共有と収集と言う面から参加させる事を希望しますが、無理なら言ってください。」


「分かりました、調整するのでそのままホテルでお待ち下さい。エマ少佐には内容は伝えていますか?」


「いえ。話し合いの事は言いましたが、内容まではまだ。」


「そうですか、一旦そのままでお願いします。」


 電話を切って煙を見る。ふむ、なんか前より糸玉がスムーズに作れているような気がするな。



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[一言] >調味料を舐めればいいじゃないかって 調味料を味わうための土台とか言われるイギリス料理おすすめ
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