133話 悪い事をした 挿絵あり
スマホで日付と時間を確認する。ちょうど3日か、三面モニターなので1面に付き1日換算とか?まぁ、取り敢えず戻ってこれたのでいいか。これが3年とか言われたらソーツに怒鳴り込むところだ。留守にすると連絡を入れていたので、この程度なら騒がれずに済むだろう。
(なぁ、2人共。頭が痛いんだが何があった?)
痛みはだいぶ取れたが、起きた時の頭の痛みは気になる。動けるし、だいぶいいがあの痛みは・・・、そう!初めてゲートに入って指輪を使った時の様な・・・。タンコブかと思ったが、後もないのでもっと内側の問題だろう。
(安全装置だよ?)
(安全装置?)
(そうそう、目覚めの一発。お喋りな夢遊病者は嫌だろう?文字通り叩き起こした。)
(いや、ちょうど起きそうだったんだが・・・。)
(そうなの?まぁ、次からは死んだ自覚すら無く動き出す。僕に感謝して欲しい。ゴミ掃除の時、身体は戻っても君が寝坊助では結局掃除できないからね。君の身体は君のモノ。盛大に裏技を盛ればどうにか出来るかもしれないけど、許可なくすれば何が起こるかわからない。僕も彼女も君より下だからね。)
賢者がしれっと言うが、どうやらあの痛みは叩き起こされた後遺症らしい。この身体になって継続的な痛みと言うモノがなくなっていたので懐かしく感じる。それに、痛みは防衛機能の1つなので無くなってもらっても困る。
(そうか・・・、モンスターとの戦闘中に限りその裏技とやらは許可するが、それ以外では使うなよ?)
(言われなくても出来ないんだよ。僕達はあくまで職だからね、職が独り歩きしだしたら、それはもう独立したなにかだよ。あくまで、君が寝ているからどうにかなる裏技だからね。)
(信頼はしないが信用はしよう。)
(おや?両方はくれないのかい?)
タバコを取り出しプカリ。裏技がどういうモノかは分からない。問い質した所で理解出来るとも思わない。そもそも、寝てると言うのは意識が無いと言う事だろう。知らない間に知らない所で何かをされる。恐ろしい事だ。賢者の言う様にお喋りな夢遊病者は願い下げで、限定して許可しないと揚げ足をとられる可能性もある。
(未来については不確定だ。能力は信用も信頼もするが、行く末を手放しに預けるほど手綱を放しはしない。)
(それは残念。全幅の信頼もくれるならイタズラし放題なのに。・・・、まぁいいや。で、何してるの?)
指輪から取り出すのは船の残骸から取り出した教材。走馬灯を見ている時にコードっぽいモノが、理解出来たような気がしたので取り出してみてみる。さてはて、感覚だけなのでどうだろう?
特定点滅を繰り返してる方は・・・、助けてー、修理してーか。短文なので理解できるのかは分からないが、内容の理解が出来る。音声も無いのでモールス信号を見ている気分だが成る程、解釈は間違っていないと思う。コードが馴染んだと言う事だろうか?爆散よりは走馬灯の方で馴染んだ様に思うので、職と言うのは人の深い所と繋がっているのが分かるな。
これならもう1つもわかるかな?取り出して見てみると・・・。うん、ごめんね?悪気はないんだよ?ウチの賢者がすいません。この様な事が再発しないよう、問題点を洗い出したうえで再発防止策をまとめ、しかる時しかる場所に提出し、賠償責任については相手が不明な為、不問と致す事をここに宣言させていただく所存であります・・・。
交通事故でも相手が立ち去って不明なら、警察に届け出てさえいれば相手がなにか言ってきた時点で犯罪となり、逆に何も訴え出なかった場合は無罪放免、犯罪歴も残らない。この場合、訴える墜落機の申し出は多分俺しか分からないので訴えは聞こえないし、指輪にしまって出しさえしなければバレない。正に完全犯罪。まぁ、もう1つの方の話していた?内容は墜落までの経緯。
うん、コヤツはどうやらガーディアンに轢かれたらしい。ルート宅配中の貰い事故だと思って諦めてね?嫌なら賢者が謝罪と賠償をするはずだから。
(僕に押し付けないでくれる?元はと言えば君が弱いのがいけないんだろ?溢れる猶予に一役買った僕は褒められるべきだ。)
(ちょっと魔女さん?お宅の子反抗期じゃなくって?素直に謝らないんだけど?)
(そうねぇ?賢者謝りなさい?)
こわっ!あの魔女が賢者に謝れと言っている。えっ?天変地異の前触れ?辺りは爆発の余波で天変地異後に見えなくもないし、打ち上げられた魚は心なしかこちらを見ている気がする。そもそも3日前に打ち上げられた魚は呼吸している様子はないが、尾ビレは動かすんだよな・・・。
(扇動までしようとしないでいいから!謝るから。ごめんて。)
おぉ~、殴り合わなくても謝罪がもらえた。まぁ、本当に賢者が悪いと思っていないし、他の階層での出来事まで責任は持てない。ゲート内ではモンスター同士も戦うので余波で壊れる事もあるだろう。しかし、珍しく素直に魔女が掃除以外で言う事を聞いてくれた気がするな。
(いい子ね。従順に従順に。これからどうするのかしら?)
これからか。取り敢えず外に出て警告を伝えるのが1つ。ただ、伝えるにしても情報がなさ過ぎる。前も同じ様な事を賢者に言われた際には猶予があった。そして、今回更に警告を受けた訳だが問題は毎度発信するのが俺からと言う事。情報は武器で早く手に入るならそれは強力なモノになるのだが、その情報の精度が低すぎても無用な混乱を呼ぶ。
更に言えば、警告があった事を伝えればまた変な所で疑われ出す。51階層、中層の話を出せばアライルは食い付いたし、職を隠している関係上、エマがいる前で堂々と警告があったと伝えていいものか・・・。これで職が預言者とかいれば、そいつが言ったと伝えれば事足りる。ん〜、内々で警告の事を伝え、大会準備の方は本格的に政府に任せて中層を目指すのが効率的か。
(魔女、溢れる警告はしたな?)
(ええ、従順なパートナーですもの。)
(パートナー?いや、それよりも溢れる警告は前回の様にゲートに明かりが灯ると思っていいのか?)
(賢者!バトンタッチ。)
(カレ等の作るものは独創的だけど基本は同じだよ。どのゴミもビームは撃つし触手もある。なら、ゴミ箱も一緒。前回溢れるのに何か警告はなかった?)
(ゲート開通後240時間で溢れるとは聞いたな。そして、溢れるゲートには明かりが灯った。)
(なら、時間は別として明かりは灯る。場所は言わないなら不明だけど、その時間でこの星で行けない所ってある?)
10日で行けない所・・・、いやその前に考えろ。本当に240時間でいいのか?あの時のヒリ付いた焦燥感を思い出せ。確かに時間は間違っていない。開通して240時間と推測すると言われた。誤差は多分、中に入ってモンスターを倒せば時間が変わるからだろう。ここまではソーツから聞いた話。明かりが灯るのは・・・、千代田からの知らせだ。写真だったか映像データだったかを見て秋葉原ゲートと確信を得た。
つまり、明かりが灯るのはもっと直近になってから。正確な時間は分からないが数日は猶予があった。それが少ないと取るか、多いと取るかは別として、日本から数日掛けて行けない所・・・。手段は飛行機でも車でもいい、そこに行くなら最短のモノと考えると・・・、南極北極も最短を考えれば丸1日そこいらで行ける。ゲートが南極北極にあるとは考えづらいし、あるとも聞いていない。そもそも、ゲートは多数あるが、どれもこれも人の多い所にしか無い。
南米のジャングルも除外していいだろう。都会よりも人は少ないし、やはりあるとは聞いていない。なら、交通面は問題ない。問題があるとすれば国家の隠蔽だが、別に自分の国がやらかした訳ではないので話は出ると思う。まぁ、プライド高く自分達で対処すると叫ばない限りだが・・・。
それを叫ばれると此方としては助けに行く事も出来ないし・・・、助けに行く・・・、行く?うん、海外に行きたくないと言ってる場合ではない。溢れたなら今の段階では行かなければ始末に負えない。海外に行きたくないだけで、日本で溢れろと思うほど落ちてもいない。
溢れる猶予を稼ぐ事はするが、中層のモンスターが出るのなら中層を掃除しないといけないのだろう。残り10数階層だが、行けない事はないと思う。ただ、本当に問題は時間だ。奥に行けば行くほど電波も悪くなるし・・・。駐屯地に基地局を作る?政府肝いりで作ればどうにかなりそうだが、間に合うかどうか・・・。
しかし、泣き言ばかり言っていても始まらない。前回より今回、次回はないものとして、より良い結果を目指すのが人と言うものだ。やれるだけの事はやろう。
(・・・、確かに時間は別だな。一旦外に出て話をして奥を目指す。走破速度次第だが、中層に入れれば猶予は増えるよな?)
(多分ね。大きいゴミは中層からだから、減れば隙間の分猶予はあるよ。)
(分かった、行こう。)




