123話 クリスマス後半 挿絵あり
クリスマスは朝からゲートに籠もって悠々自適に長電話していたが、話が途切れたタイミングで電話を終えると夕方近く。ありがとう無料通話。普通にテレビ電話してたら恐ろしい事になってたよ・・・。そんな電話でのイチャイチャを終え、ルンルン気分でホテルに帰ると望田とエマから盛大に愚痴られた。遥に一言残して出たのだが、昼間からいなくなるとは思っていなかった様で、女性3人でケーキや某有名チキンを買いに行くとナンパされて大変だったらしい。
聖夜を性夜と呼ぶ言葉遊びもあるし、ホテルも人で孕む日。出会いを求めるのは仕方ないだろう。ワンナイトラブと言う言葉もあるけど、個人的にはそう言う事は互いを知ってキッチリ責任を取れるような状態でないと不幸を呼ぶ。まぁ、色々な考え方があるとは思うが、どうしても人肌恋しいならそういうお店に行く事を推奨する。別に風俗が悪いわけじゃないしね。
部屋のテーブルの上にはケーキと某有名店のチキン。部位で名前が分かれているが、胸っぽい所が食べる所が多くていい。持ちやすい形の所は食べやすいけど、すぐに食べ終わってしまう。それの大盛りパックが5個。帰りが深夜になっていたら、どうするつもりだったのだろう?出来立てより冷えた方が好きなので食べるけどさ。
「それで、部屋でクリスマスパーティーするのはいいとして、私だけサンタ服なのはどうしてですかねぇ?」
「それは見たかったから!莉菜さんに見せて私達に見せないのはずるくないですか?後、スカート短いんでベッドに胡座で座るとパンツ見えますよ?」
望田が嬉しそうにベッドの上の俺を見る。ずるくはないと思うが、望田も三角帽子と白いヒゲ、赤い服を着ているのでサンタの格好はしている。ただ、俺がミニスカなのに対して望田が長ズボンと言うのは解せぬ。
「見たければ見ればいい。どうせホットパンツだし。」
「女の人がそんなこと言わない方がいいよ?」
「なら遥、ズボンをくれ。履くから。」
「ごめん、糸切らしてて。」
「糸出そうか?」
「ごめん、武器壊れてて。」
娘よ、見え透いた嘘をつくな。親父のパンツなんて見たくなかろうよ・・・。いや、少女のパンツを見たいと言う方も問題なのだが、娘がどんどん倒錯していってない?前に属性が渋滞していると言われたが、それを感じるのは他人なので如何ともし難い。こんな成りだが莉菜の夫で遥の父親という事実は変わらない。変わらないが、遥的にはどうするのがいいのだろう?
「遥、私は父親だけど少女になってしまった。その事実は変わらない。司と呼ぶのもエマがいる時は控えてもらっている。そこでだ、遥としてはどう接したほうがいい?」
「ん〜、お父さんはお父さんだし、姿変わっても中身変わらないからそのままでいいかな?あっ、でも女の子らしい慎みは持ってね?無いと高確率で襲われるから。」
どうやらそのままでいいらしい。女の子らしい慎みと言われても生まれてこの方男だったのでどれがそれらしいか迷う。まぁ、今もしていないが椅子に座る時に足は閉じておこう。しかし、エマが遅い。定時報告は終わっていそうな時間だが、何かしらのトラブルだろうか?前も長い事はあったし今回も呼びに行ってみるか。フロア的には一階下に降りるだけだし、何なら窓からこんばんわでもいい。
「ちょっと呼んでくる。」
「いいけど攫われないように気をつけてね?」
「エレベーターで下に降りるだけで何で攫われるんだよ・・・。」
心配してくれるのはいいとして変に過保護なのはいらん。寧ろ攫われたらホテルのセキュリティーを疑う。と、言うか日本の安全性を疑う。安全神話はとうの昔に崩れているだろうが、流石にこの距離はね・・・。部屋を出て誰もいないのをいい事にエレベーターのドアでコッソリとターミネーターごっこを楽しんでエマの部屋へ。ノックをすると返事があり、開けてもらって中に入ると米国のおっさんことウィルソンと話中だったようだ。部屋の中から声が聞こえる。
時差があるにしても今時期は米国なら冬季休暇を取っていそうなイメージだったが、エマが働いている手前ウィルソンも休みがないのだろう。訴訟大国なので、休みがない事を訴えなければいいのだが・・・。
「エマ少佐、ルームサービスはいい。チキンを買い込んだのだろう?それを食いに行く前に本の中身をコチラに見せろ!」
画面越しに何やら本を見せろと叫んでいる。何かの重要資料だろうか?それなら俺はお邪魔虫。報告が終わるまでタバコでも吸って待っているか。流石にサンタのまま来たのでロビーの喫煙所には行けないし、要件だけ伝えて部屋に戻ろう。
「あ〜、重要な話の様なので部屋に戻りますね。」
「いヤ、クロエがいた方が話が早イ。ちょっと通信に出てもらえないカ?それと、その服は似合っているゾ。気持ち悪いだろうが、ウィルソンも喜ブ。」
流石は米国人。歯に衣着せぬ物言いである。この服は妻にも好評で画面の前で何回くるくると回らされた事か。その際スカートの裾が短いから下着が見えると指摘され、ホットパンツを履いたのは記憶に新しい。
「いえいえ、人をそんなふうに言ってはいけませんよ。何の話か知りませんが、知らない仲でもないですし画面越しに会うくらいなら。」
部屋の廊下をスタスタ歩いてスマホの置いてある部屋へ。前も思ったが、映画とかならごっつい通信機置いて連絡するとか、衛星電話使うとかのイメージがあったけど、今はスマホ1つで事足りるのでいい時代になったもんだ。PCでskypeとかしてた頃が懐かしい。今はデスクトップのPCでさえ安ければ数万で買えるもんなぁ・・・。
「メリークリスマス、ウィルソンさん。大使館ぶりです。」
「天使か?」
「サンタです。羽はついていませんが・・・、大丈夫ですか?」
やっぱり冬季休暇がないのが響いているのだろうか?ホーム・アローンとかなら家族総出で旅行とか行ってたし、ウィルソンが既婚者かは知らないが、ゆっくり休んだ方がいいだろう。
「ウィルソンが米国でも写真集を売れとうるさイ。そのせいでこんな時間になっタ。」
「は?」
目が点とはまさにこの事。なにか重要な話ではなく写真集寄越せコールであったと?なんか心配して損したな。てか、エマは写真集の事までわざわざ報告しているのか。律儀と言うかなんというか・・・。一応、魔法の籠もった本・・・、と、言うか写真なので現代版魔導書とかの括りになる?まぁ、見ても魔法の知識なんてつかないだろうが・・・。
「えっとですねウィルソンさん。エマが律儀に報告しているのは素晴らしい事ですし、確かに資金集めの為に写真集も作りました。ですが、売れるかも分からないものなので、国内限定現地販売のみで、国外に出す気はありません。見たいならエマが帰国した後に許可を貰ってから見て下さい。貧相なので見た後にがっかりしても知りませんが・・・。」
そう言えば、エマにも普通に渡したが米国に持って行って大丈夫なのだろうか?向こうは相当厳しかった気がするし、児童ポルノ認定されてエマが捕まっても事だ。それに、向こうだとボンキュッボンが主流・・・、だよな?日本人は幼く見えるので余計ヤバい?
「エマ、重大な事実に気が付いたので写真集を返して下さい。」
「・・・、重大な事実?」
「ええ、米国でその写真集が児童ポルノ扱いされてエマが捕まっても困る。なので、引き取ります。」
手を差し出す。エマが目を逸らす・・・。いや、返せよ。理由も言ったし、本当に捕まられても困る。嫌だぞ、友人をしょうもない理由で犯罪者にするとか。
「フ、ファーストは43歳、OK?」
「その年齢は正しいですが、その写真集は危険です。返して下さい。」
「ダ、大丈夫ダ。仲間との記念品でもあるシ、これがなくなったら帰った後に何を見て過ごせばいイ?」
「全米美少女コンテスト2位の顔じゃないですか?普通の写真はいいので、写真集は返して下さい。水着姿もあるんですから。」
「なに、水着もあるのか!?」
「それなら大丈夫ダ。見つからなければどうと言う事はなイ。」
某赤い人の様なセリフだが、あの人の勝率は低いんだぞ?何時勝ったか知らんけど。
「エマがヘマになる前に引き取ります。ウィルソンさんも叫ばない。回収するので見れませんが、見ても面白くないのでそんなモノあったなぁ程度にして忘れて下さいね。」
「コラ!ウィルソン!お前のせいで私までとばっちりを受けているではないカ!この責任はどう取るつもりダ!」
「お前は中を見たのだろう!私は1ページも見ていない!」
「はぁ、後でいいので返して下さい。先に戻りますよ。遅くなるようなら先に始めてますからね。」
エマとウィルソンが言い合いを始めたので先に部屋を出る。写真集は後から部屋に来た時にでも回収しよう。部屋を出る間際まで言い合いの声が聞こえる辺り長くなりそうだ。しかし、米国に戻っても写真が見たいのか。どうなるかとは思ったが予想以上に仲良くなれたようだ。エマの帰国まで長くとも後2ヶ月程度、向こうに戻れば指導者になる予定だろうし、連絡が来るなら相談に乗る様にしよう。まぁ、俺の方も手探りできて、松田の話ではエマの公文書の様に各人に聞き取りをして、体系化出来るように動くらしい。
その本に俺はノータッチ。これはあくまで至った人の主観で書かないと意味がないので、横から口出しすればそれこそ内容を歪めてしまう。それに、職も色々あるので、その職で至った人の意見の方が重要だろう。
「戻ったよ〜。」
「お帰りなさい、時間かかりましたね。何かあったんですか?」
「米国のおっさんと話して、エマから写真集返してもらおうとしたら、エマとおっさんが言い合いしだした。」
「写真集を?何でまた。」
「向こうって児童ポルノに厳しいから。」
「あー、向こうだと自分の子供と一緒にお風呂に入っても性別違ったら捕まりますからね。前にニュースになってましたよ。それと写真集となにか関係が?」
「貧相で幼い顔つきの少女の水着写真。ヤバない?」
「ヤバある。向こうはシャワーオンリーが多いので子供でも1人ですからね、ヌーディスト・ビーチとかだと関係なく素っ裸らしいですが・・・。」
・・・、基準がよく分からん。まぁ、そういう国なのだろう。どの国も行けば何かしらおかしな所はあるもの、いちいち言い出したらきりがないし、返してもらえば済む話。最悪、返してもらえないなら国で見るなと釘を刺すくらいか。思い出はプライスレス。物より思い出よりお金、プライスレスという人もいるけれど、積み重なった思い出は生きる上での人生のお金になる。
「エマは遅くなりそうなんでぼちぼち食べようか?」
「ルームサービスでさっき料理頼んだからもうすぐ来ると思うよ。ケーキとチキンは取っておこう。」
「ありがとう遥、それと糸出すからちょっと作って欲しいものが・・・。」
ルームサービスが来て料理を食べ始めて、ちょっとした頃にエマが来た。プリプリと怒ってウィルソンへの愚痴が止まらない。どうやら俺が部屋を出た後もずっと言い合いをしていたようだ。そんなに欲しいかねぇ?写真集。
「はいケーキとチキン。後は好きに食べて飲む。写真集の件ですが・・・。」
「・・・、返さないとダメか?」
そんな捨てられた犬みたいな顔までせんでもいいだろう?しかし、この写真集にエマも携わって、それを思い出としてくれるのなら悪い気はしないな。なら、遥に頼んだアレを渡そう。
「そんなに欲しいなら取り上げませんけど・・・、はいこれ。」
「これハ?」
「糸で作ったブックカバーです。これをしておけば表紙は見えないし、失くしても戻ってくる。でも、くれぐれも口外しないで下さいよ?面倒になる。」
「するものカ!ありがとウ!」
お礼と一緒にハグするあたり流石欧米人。ガッツリ抱き締められて胸で息が苦しい。フム、妻よりはあるな。別に大きければいいというものでもないが・・・。
「ちょっ!エマさん離して離して!」
「離すものカ!この人の手を離さなイ。私の魂ごと離してしまう気がするかラ!」
懐かしのゲームのキャッチコピーみたいな事を言っているが、遥も慌ててるしそろそろ離して欲しい。
「これは私も負けられませんね!」
望田の声がしたら今度は後頭部に柔らかい感触が来る。いや、勝つも負けるもないし、そろそろ離して欲しい。胸が痛いだろうが、横にずれればいいのか。
「望田さんも離して!クロエ、莉菜さんに報告するよ!」
「「ぐおっ!」」
その場で一気にしゃがみながら横に抜ける。妻への報告とか辞めて欲しい。せっかく楽しい夜なんだから、変に心がざわめくのは勘弁願いたい。
「抜けた。今はここでは何もなかった、いいね?」
「望田さんとエマさんが胸を抑えてしゃがみこんでるけど、何もなかった。はい、こっち来る。」
娘の横に座り回復した望田やエマと楽しく食事を取る。さて、盆暮れ正月と言うが松田達と連絡をする限りだと、会場は武道館で決定し準備も着々と進んでいる。出場者がどの時点で東京入りするかは分からないが、別にトレーニングがあるわけでなく、やるのは事前に装置に慣れてもらうくらい。
前にエマが言っていた軽さという面もかなり解消されたと聞くし、どこかで誰かと模擬戦でもしようかな。リスクのない模擬戦ならそこまで気を使うこともないだろうし。
4人で行ったクリスマスパーティーは楽しく、お酒も食事も進んで、酔い潰れた所を見た事無いエマが珍しく酔い潰れてしまった。遥や望田も割と酔いが回っているのでお開きにするか。
「ベッドは3人で使って。私はソファーで寝るから。」
「講習会の人たちからのプレゼントがソファーにあるます・・・。」
2人に言葉を残しソファーへ。呂律が回っていないようなので、夜中にもどさなければいいが・・・。さて、子供の夢。プレゼントに囲まれて寝るとしよう。




