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街中ダンジョン  作者: フィノ
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104話 肖像権 挿絵あり

 レポート用紙の出だしを日本語でエマは書いているが、そこは英語の方がいいんじゃないだろうか?日本に出すものでもないし、母国で使うものならわざわざ翻訳する手間も省けるし、何より漢字やカタカナの間違いもなくて済む。公文書と言う事は下手な間違いもいけないのだろうし・・・。


「わざわざ日本語で書かなくても英語でいいでしょう?それに、その方が表現の幅が広がるんじゃないですか?」


「私はアカデミーに行っていなイ。ハイスクール程度の母国語力よリ、詰め込まれた日本語の方が今なら分かりやすイ。それニ、日本語なら誤魔化しも効ク。」


 悪い顔で言っているが・・・、まぁ、表現の違いの問題だろう。割りと綺麗な字を書いているので努力のほども伺える。しかし、大学行ってないとなると親近感が湧くなぁ。俺も高校でてそのまま自衛隊だし。米国だと殆ど進学で入るので簡単に卒業は難しいと聞いた事がある。まぁ今もそうかは知らないが。


「しかし、レポートじゃなくていきなり公文書とかあちらは何考えてるんだか。」


「レポートをまとめるよリ、本人に聞きながら書いた方が生の情報が貰えるといわれタ。間違ってはないシ、こちらに残る期間延長の条件として命令されたので無下には出来なイ。完成すれば大使館に送り付けて終わりダ。そう言えバ、米国のおっさんが頻りにまた話したいと言っていタ。」


 米国のおっさん、多分エマのエージェントだろう。話した感じ皮肉屋っぽいが悪い奴ではなさそうだ。ただ、アメリカンジョークは日本人に中々理解できない所もあるので、偶に挟まれるそれは笑うに困る。チャップリンとかビーンならまだ、ドタバタ劇のコントとして取れば笑えるが、知らない常識で言われてもね・・・。


「機会があればとだけ伝えて下さい。そもそも定時報告なんですから私がいたら話せる事も話せないでしょう?」


「そんな人といつ話したんですか?」


「ん?前にエマが中位に至った時にささやかな宴会を部屋でしたでしょう?中々来ないエマを呼びに行った時にたまたまね。」


「よく話す気になったね。英語苦手だから話さないと思ってた。」


「ヒヤリングは出来るし、書く以外なら難しい話じゃなければ話せない事もない。まぁ、日本語で話してくれたからどうとでも。」


 あれで一言目が英語ならそそくさと帰っていた。怪しい部分はあるものの、日本語で話してくれたからこちらとしても付き合う事ができたが、下手に人数が増えても困るので確約はしない。出だしの言葉が決まったからか、エマの文章作成はスルスルと進み、職への理解の部分へ取り掛かった。思ったままを書いているので内容的には間違いないし正解もないので、書かれたものが正解だと言ってもいい。


「クロエ。全ての職は分かっているのカ?様々なモノがあるが名前だけでも、全て判明しているなら教えて欲しイ。」


「難しい質問ですね。職業は政府が聞き取り調査をしてあらかた分かっていると思いますが、それだけと断定するには早計すぎる。下位から中位、中位から上位、そしてその先に行けるか行けないか。位が上がれば名前も変わる。Sでもそれは一緒で法則があるかないかもあやふや。なら、ピンポイントで狙えるわけでもないですし、出た職を受け入れるしかない。」


「概ね欲しいものは出てると思うけどね。」


「それは分かりますね、遥さんはファッションデザイナー目指してたから装飾師になったんでしょう?」


「うん、ファッション業界を変えるなんて事は・・・、昔は無理だと思ってたけど、今ならやれる。流石にゲートの中で奇抜なファッションはしないしね。」


 実用性重視、動けて守れて破けず邪魔にならない。遥の目指すものはシンプルで常に見せびらかすよりは、常に現場で使う事を意識している。なら、デザインいるのか?と、言う疑問も出るがシンプルな物ほど手を入れるとバランスが崩れ、機能美を求め過ぎれば服の至る所に昔ならポケットがつく。そんなものの調和を取るというのは、やはりデザイナーとなって理解するしかないだろう。


「クロエのゴスロリは奇抜ではないのカ?」


「気分がいいならそれは戦闘服です。」


 人の服を見ながらエマが聞いてくるが、こればかりは仕方ない。実用性と機能美が試行錯誤された後なら、次は遊びの時間だ。俺が着たい訳では無いが魔女の機嫌がいいなら気分は良い。それに、制服効果も馬鹿には出来ない。


 他の配信者でフルプレートアーマーでゲートを進む剣士がいたが、成りきった上でそれっぽい行動を取るもんだから中々様になっていた。スタイルも叩きつけて斬るタイプの西洋剣術でパーティーもそれっぽい格好しているので、映画を見ているように楽しめる。まぁ、後半はモンスターのビームで鎧が消し飛んだり、元々コスプレ衣装なので武器以外の部分が駄目になったりと残念ではあったが、それでも本人達は真面目に演技?しているので臨場感はある。


「制服効果・・・、米国も取り入れだしたらしイ。ただ、ファイターが袖の破れた道着と赤いハチマキスタイルばかりらしいガ・・・。」


「そこでケンじゃないのはなんでかと小一時間問い詰めたい。何ならガイル風でいいでしょう!?がん待ちサマーソルトとか、ソニックブーム出し放題ですよ?」


 やれよ米軍!立たない髪を無理やり立たせて、吸盤みたいな形にしてかかってこいよ!いや、飛び込んで来るのをひたすら待ってサマーソルトで迎撃しろよ!新しいやつだとリュウはなんかヒゲモジャのおっさん化してるんだぞ!?


「クロエそこはランボーとは言わないんですね?その前に、ソニックブーム出せると思う遥さん?」


「さぁ?赤峰さんに頼んだら出してくれるかも。懐かしいなぁ、対戦で弟をザンギでボコボコにしてた。」


「主人公の負けない心ト、瞑想を考えたら日本主人公だロ。」


「迷走?確かに迷走してますね・・・、いや、空手も柔道も輸出して道着は海外にあるし、何なら海外なら本物の刀も振れるからイメージしやすい?」


「そっちの迷走ではなク、心を落ち着かせて自分と向き合う方ダ。私も偶にやるようになったガ、中々良いものダ。クロエはしないのカ?」


「しても煩いんでやりません。大体自問自答の日々を過ごしてますからね・・・。」


 瞑想とかしたら賢者の所へ行って、それこそ死なない殺し合いである。まぁ、日々寝なくてもいい身体を利用して殴り合っている訳だが、最近は持ち帰った教材でコードの勉強をする事が増えた。そして、両膝をついて泣きたくなった。魔法の元とでも言えばいいコードなのだが、基本的に職の補助があればどんどん身体に馴染んでいって、位が上がる都度に本人に合った扱い方を自然に体得していく。それが戦闘スタイルであったり、技をだすイメージであったりするので、使い続ければ能力は当然となる。逆に扱わないコードはあまり馴染んでいないので、扱いが不安定になるのもまた事実。


 そして、先に進んだがゆえに開示された情報で膝をついた。魔女と賢者。両方ともEXで確定したのは喜ばしい。うん、実に喜ばしいのだが。コードは頭というか心?魂で理解しろと言われたから頭を抱えるしかない。理由はまぁ、中身が無い事・・・。本来ならと言えばいいのか、地球人は例外なく身体があって中身がある。脳もあれば心臓もある。


 しかし、俺はそんなモノ全部捧げてしまって、中身のないままで動いている訳で馴染む先が皮膚表面という極端に少ない部分しかない。それを補うとすれば、この思考であり魂とでも言えばいいものなのだが、精神体をぶっ壊したりするものを早々マスター出来る訳もなく日々賢者との殴り合いでの修行である。まぁ、殴り合うと言ってもイメージを練っての魔法合戦であり、強化での殴り合いもする。


賢者曰く『拳に少量のコード、魔法にも同じモノを混ぜてるから受ければ少しづつ体得出来るよ?痛みとか知らないけど。』


 だそうだ。試しに受けたら死ぬかと思った。いや、死なないが廃人になるかと思った。犬にもぐもぐされた時も痛かったが、それは物理的なもので、コードによる痛みは精神的なモノ。なんだろう、慟哭でいいのだろうか?戻れない喪失感や叶わない夢、過ぎてしまった日々を失い、ひたすらに咽び泣く。そんな気分をひたすらに味わい続ける。


 まぁ、身体のない相手にダメージ与えるなら目に見えるソレよりも精神ダメージだよな。そもそも痛みの定義なんてひとによって違うんだし、何で悲しむかなんかも人によって違う。人よりペットが大事な人もいるんだ、分からない訳では無い。そんなコードを理解するのはやはりダメージを受けながら体得するしかないんだろうな。


「やけに賑やかな瞑想だナ。雑念しかないのカ?」


「人がそれを捨てれたならきっと仏様になってますね。」


 シッダールタ。まぁ、釈迦は瞑想して悪魔と戦って色々やらかして悟りを開いたわけだが、俺はどちらかと言えば煩悩に塗れている人間なのでそんなモノは開けない。多分、したら寝る自信がある。


「職を極めて神様かぁ。まぁ、分からない訳では無いですね。歌人になって、言葉そのモノに言霊のように能力が乗るようになったので、ひたすらにイメージを広げたらなれるかも?」


「えっ!?そんな強力になってるの?」


「冗談ですよ。方向性は防衛一辺倒、少しは融通ききますけど、あまり外れすぎると途端に出来なくなります。」


 笑って言っているが、また凶悪な。話を聞く限りだと制限的なものはあるが、逸脱しない限りは融通もきくのだろう。笛がマイクに変われば、望んでいた戦場の楽士になれる。そうでなくとも、Sが至ると斜め上に飛んでいきやすいんだから俺のない胃を労ってほしい。


「カオリと戦ったガ、歌って笛を吹いていたのはそれが理由カ。訳の分からん状態で戦う事の怖さを久々に思い出したゾ。」


「そういうエマだっていらやしいコンボをガンガン仕掛けてきたじゃないですか!?」


「そう言う風に教育されたのでナ。相手がいるのに何故攻撃を止めると散々教育さレ、モンスターなんてゴミなんだからさっさと始末しろと尻を叩かレ、無理だと言えばやれと返されル。・・・、私はバーサーカーに教育を受けていタ?白髪赤目なら赤銅色の巨人が・・・!」


「そんなモノはいない。かわりに犬がいるのでそれと戦いましょう。大丈夫です。私が倒せたので教育を受けたエマなら軽く捻れるでしょう。」


「まテ!それは勘弁して欲しイ!」


「バーサーカーに教育されたのなら、引かぬ心はあるでしょう?12回まではアマガミなので耐えて下さい。」


「嫌ダ!アマガミでも割とムニムニされて痛いんだゾ!」


「マッサージだと思えば大丈夫です。あんなにも従順で指示に従ってくれたのに嘆かわしい。」


「時と場合によル!ト、遥は何を描いているんダ?」


 ワチャワチャしている中、遥は静かにスケッチブックに向かっているが、次のインナーのデザインを考えているんだろうか?講師となるなら、それなりの準備も必要だし何より今のメンバーの話を聞けるというのは今後に役に立つ。


 そのうち、政府公式デザインとか、警察公式デザインとかも出来るんだろうなぁ。まぁ、先に千代田に一着渡してやるか。スィーパーでもないし、危ない事からは離れたと思うがあの男は何処か危うさもある。


「次の魔法少女アニメの衣装デザイン。芽衣さんから頼まれたんだけど、凄いよね主人公ビジュアルはこれなんだよ。」


  挿絵(By みてみん)


  挿絵(By みてみん)


 キャラクタービジュアルは白い髪に赤い瞳、透けるように白い肌の何処か幻想的な美しい小柄な少女・・・。肖像権で訴えたら勝てますか?娘が反抗期です。父親のビジュアルを悪用してアニメデビューさせようとしています。


「クロエ・・・、こんなモノにOK出してんですか?」


「した覚えはない!」


「ゴールデンタイムに殴り込みだナ。主題歌は楽しみにしているゾ。主に電波ソング的なものヲ。」


「それは主人公で市井って名字の子。温泉が好きで将来は唐揚げ屋を開きたい、ちょっと変わった女の子だよ?」


 違うと言われてもね、概ね一緒のビジュアル出されたら肖像権で勝てると思うよ?どこの局だよ!これでクロエと名付けたら市井 クロエでクロエ=ファーストですよ!


「まぁまァ、そもそもクロエと言う名前ではないのだろウ?米国に多い名前で若々しく美しイ、全盛ノ、咲き誇るなんていみがあル。そう考えるト、本名は知らないがクロエ=ファーストというのは中々できた名前だナ。」


「はいはい、そのうち名前は・・・、教えましょう。それより公文書書きましょう、公文書。」


 いつまでも偽名で通すにはエマとも仲良くなりすぎた。出来ると思っていなかった外国の友人も出来たのだ、ならうん、コッソリとそのうち教えよう。


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