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街中ダンジョン  作者: フィノ
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94話 気付かないトロフィー 挿絵あり

「いゃぁ・・・、クロエっておちょくりたくならないですか?びっくりさせたり感情を引き出したいというか・・・。」


「分からない話ではないです。合法的且つ反論出来ない状況でクロエをおちょくれると言うのは甘露です。」


「分かりますよね、だから場を設定してムーディーで驚きと嬉しさのあまり『カオリ、大好き!』と、あわよくば!あわよくば言ってもらう計画が!」


 本人を前にしておちょくる計画を話すとかいい度胸だな。ちょっと魔女、ガチで魔性の女使ったらどうなる?ちょっと千代田とカオリの頭を冷やしたいんだけど?


『してもいいけど、責任は取らないわよ?』


『・・・、やめておこう。因みに、本当は魔性の女以外もあるよな?』


『そうねぇ、正解を当てたら教えてあげるわよ?』


『扇動する者とかはどうだ?』


 状況証拠だが、なければおかしい呼び名だ。民衆を散らし方向性を定めるないし誘導する。有名なのはドイツのあの人の演説手法だが、言葉に扇動の効力があるなら説明がつく。それが魔女の言葉に限定はされるかは微妙な所だが、この名は間違いなくある。寧ろなければおかしい。俺は元々一般人で確かな黄金比で構成されているが、それだけで説明をつけるにはいささが効力がありすぎる。そう考えるならこの名は魔女か賢者にあると思うが、賢者に入れるにはおかしな単語だ。なら、その名を冠するのは魔女だろう。


『コングラッチュレーション!正解よ。正解を引きあてたなら、貴方はそれを自覚する。言葉は貴方に刻まれる。上手く使いなさい?』


『分かった。』


 扇動か・・・。感情を高ぶらせたり、方向性を誘導したりする行為ないし行動。意見の変更なんかも出来るソレ。確かに魔女に扇動と言うイメージは合う。物語を読めばシンデレラでは行けないと言う主人公の意見を捻じ曲げるし、ゲームなんかでは、あれが必要だから取ってこいと言うポジション。寓話にしろゲームにしろ、主人公ではない魔女とは確かに良くも悪くも物語の方向性を誘導する。


 そんな魔女が魔法を使うというのなら、確かに強力なものになる。自身を扇動してイメージの方向性を誘導し、相手の意見さえ書き換える。アンチ魔法使いの魔法使い。いやらしいにも程がある。そして、その誘導は魔法使いのみならず物理職にも適応されるだろう。


「ファーストをおちょくル・・・、豪胆だな二人とモ。」


「クロエは意外とノリがいい。冗談でギャルっぽくおねだりされた時は危なかった。」


「私も橘さんにおねだりしてるのを見た時は、ちょっと通帳と印鑑渡そうかと思いましたね。」


「それハ・・・、おちょくると言うより搾り取られようとしているのではないカ?」


「そう言うエマさんだってモンスターとかクリスタル貢いでたじゃないですか。」


「・・・、ホ、報酬ダ。あれだけ成果を出してもらったのダ、報酬を渡さないといけないだロゥ?」


 人をおちょくるとか貢ぐとかいい会話ではない。確かにクリスタルやモンスターは貰ったけど、貢がせるだなんてそんな事は・・・、していないと思いたい。いや、行動を扇動出来るなら、いえば確かに貰えはするのだろうが。日本政府は俺の助言に何かしらの力があると思っていたようだが、なかなかどうして流石頭のいい人々だ。知らなかったけど確かにあったよその力。まぁ、自覚したなら多分制御も出来るだろう。


 その前にわざわざ辞令だとしても、九州なんて地方まで来てくれる望田に少しくらいはお礼をしよう。本人がそれを望むなら、多少はサービスするのも吝かではない。魔性の女は既に靴屋で知っている。それが戯れに使ったとしても効果が強い事を。なら、意識して扇動を使ったら?サービスになるかは分からないが、少し試してみよう。


「カオリ、カオリ。ちょっと耳かして。」


「何ですかクロエ?」


 耳をこちらにも傾ける望田にそっと口を近づけて、耳元で口を開く。別にいやらしい事はないが、自分から女性に近寄る事はほぼ無いので多少気恥ずかしい。まぁ、どうせ言うなら、ありがとうの気持ちを込めて言おう。


(カオリ・・・、親愛を込めて。大好き!)


  言ってみたが反応はない。小声で言ったので聞き取りづらかったのだろうか?まぁ、2度は言う気がないので聞き逃したならそれまで。あまり変な事をすると妻の嫉妬も怖いし疑われるのも嫌だ。まぁ、望田は妻と同盟?を組んでいるらしいので大丈夫だとは思うが・・・。しかし、止まった望田が動かない。『なに冗談言ってるんですか、もう!』辺りを返されると思っていたのだが。


「クロエ、結婚しましょう!」


「いや、結婚してるし既に妻には会っただろ。」


「千代田さん!一夫多妻制!いや、一妻多妻制(いっさいたさいせい)を要求します!こうしてはいられません、ウエディングドレスかタキシードか、やっぱりウエディングドレスを2人分!」


  挿絵(By みてみん)


 一妻多妻制とはなんぞや?一夫多妻制も多夫一妻も知っているが、一人の妻に多数の妻って、それってつまり女子寮とか?女子校とか?話に聞くと現実の女子校は、おっさん化が進み甘酸っぱいキャッキャウフフは無いという。悲しい事だ・・・。


「落ち着きなさい望田君。それは女性同士のシェアハウスと変わりません。クロエ、余り人をからかわないで頂きたい。ただでさえ人目を引くのですから。」


「ちょっとしたお茶目ですよ。ほら、カオリ正気に戻る。」


「ちょっト?なんの魔法か知らないが危険なものダ。危うく大好きの部分だけ録音してリピートしたくなっタ。」


 漏れ聞こえたエマも危なかったらしい。効果は高いが使うのは控えよう。魔性の女との相乗効果は半端ないだろうし、制御できずに喋れば更に被害?が増える。多分、気持ちを込める込めないで変わると思うので気をつけよう。そろそろ望田も復活するかな?


「結婚は早いですね、先ずはお付き合いから・・・。はっ!ご両親にご挨拶がまだです!」


「カオリ、落ち着いて戻って来い・・・。その話は終わったから。ない未来予想図は描かない。」


 望田が戻って来るのはもう少し先らしい。仕方ないので、彼女に渡した本部庁舎の資料に軽く目を通して設備を考える。エントランスに受付があり、その奥にゲートが置かれる。ゲートの大きさを考慮して建物の高さは4階程度。ゲートは半地下状に下を掘ってコインを挟むように設置するらしい。ゲート移設も考慮して、ゲート設置区画は屋上を開閉式。最上階を本部長の執務室や会議室、他余った区画は物資の保管庫や出土品の保管庫が3階までを占め、2階部分には医務室と仮眠室などが設置される。1階には受付の他に食事スペース兼喫茶店、他にも待合所やネット端末等が置かれる。その他にはスィーパー用のコンビニが入って足りない物はそこで揃えられる様だ。


「一応、託児所とかも作れますか?必要かは分かりませんが、女性職員も採用するなら必要でしょう。スィーパーは男性だけではないのでどこか・・・、2階にでもお願いします。」


「ふむ、その程度なら可能です。その子が遺族となった場合の事も配慮しましょう。」


 避けては通れない道・・・、ゲートに潜ると言う事は死地を歩むのと変わらない。その中で、子供がいるから潜るなとは言えない。実際俺も子供がいて潜っている。それに、潜る目的が生活の為なら口出しもできない。長い時を歩むのだ、そういう人々との出会いも多く別れも多い。だから、憂いのない様に出来る事はしよう。無事ならいいな(・・・)。死なないといいな(・・・)。そんな希望的観測の時間は終わっている。


「お願いします。どのスィーパーにも出来る限りの配慮を。ギルドマスターとして、立つ位置は常にスィーパー側でなくてはいけない。」


「分かりました、その事は松田さんに力を入れるよう話します。今回はこれくらいですかね?」


「ええ、私はありません。2人は?」


 それぞれ言う事もない様なので、話し合いは終わりそれぞれの行動へ。千代田はさっきの話を松田に持っていくと席を立ち、エマはロビーに向かい早速判定機を国へ送るようだ。俺と望田はエマを待ち喫茶店でコーヒーを楽しむ。遥か彼方へ行っていた望田はどうにかこうにか戻ってきたが、先程のセリフを録音させろと煩い。


「クロエ、もう1度!恥ずかしいなら部屋でもいいですからもう1度お願いします!」


「言わないよ、その言葉は売り切れで残りは莉菜の分。そもそも、冗談なんだから本気にしない。カオリも知ってるでしょう?私は莉菜1筋だ。」


「あ〜、いけず〜。まぁ、欲しい言葉は貰えたから良しとします。実際、私も完成したら着いていくので、その際はお願いしますね?」


「君がそう判断したなら止めないけど、こっちに友達とか親御さんがいるんじゃないの?飛行機で2〜3時間とは言え遠いよ?」


「大丈夫ですよ、私天涯孤独なんで。物心付いた時には施設で下の子の面倒見てましたね。なんで、どこに行くにも何をするにも自由です。」


「それは・・・、うん。いい思い出だった?」


 カラカラと笑いながらヘビーな事を言っているが、言っている本人は悲しそうではない。なら、きつかったや悲しかったと言うのはちょっと違うと思う。そりゃ、本人が悲観しまくっているのなら、その言葉が出ない事もないが下手な慰めは本人を貶める。なら、楽しかった思い出を聞く方がお互いに気持ちが上向きになるし、あったかもしれない嫌な事を思い出さずに済む。


「そうですねぇ、色んな子に囲まれてお姉ちゃんお姉ちゃんって呼ばれて、危ない事してたら注意して回って・・・。そう言えば、小さい時もホイッスル持ってましたね。先生達に危ない事してる子がいたら教える為に吹いてました。」


 望田に防人が出たのは、出るべくして出たのかも知れないな。小さい頃から誰かを守り、危険だと思ったら誰かに知らせる。それが彼女の常識で当然な事。ホイッスルじゃなくて横笛になったけど、確かに彼女は今も誰かを守るように音を響かせている。


「そうか、私にはその経験はないけど・・・。うん、多くの人に出会えるのは素敵だよね。けど、疲れた時くらいは支えてあげよう。」


「今日はこの世の春なんですかね?ツカサがデレデレで私の理性が保たない。」


「ツカサ?」


「うぉ、エマさん戻ってましたか。」


 ちょうどエマが戻ったのと名前を呼んだのは同時。禁則事項に抵触するかは微妙なラインだな。黒江 司と言う人物は多分、探せば全国にそれなりにいると思う。いると思うが、さて、ゲート開通した地元に何人いるのか?ごまかすべきか、誤魔化さざるべきか。


「クロエ=ファースト=ツカサ。帰国子女っぽい名前でしょ?」


「OK、禁則事項だロ。いいサ、話せる時が来れば教えてもらおウ。それト、色々な娘にちょっかいをかけるなヨ、夜道で刺されるゾ?」


「私は妻1筋。そもそも、エマは何故私が既婚者だと信じない。」


「いヤ、ファーストが男に靡いて媚びている姿が思い浮かばなイ。まァ、夫は幸福な男・・・、いヤ、妻なら女性?この国は同性婚が認められているかラ、相手はやはり女性・・・?」


 ウンウン考え込んでいるが、そこまで考え込む事だろうか?米国の方がそう言う方面では進んでいると思っていたが、まぁ、彼女にそう言う思考がないなら、あなたの知らない世界と言うやつだろう。


「相手は女性、彼女しか愛さないよ。何かあれば間違いなく怒る。」


 妻に何かあれば・・・、今の所何も聞いていないが、仮に家族に何かあれば間違いなく怒るし、歯止めなんてものをかけないかもしれない。まぁ、あった度合いにもよるが、それ相応の罰は受けてもらおう。この場合の何かあると言うのは、犯罪方面のなにかに巻き込まれるとかだが。


「そうカ、ファーストには愛するものがいるのだナ。」


「当然です。配信でも妻と言ったはずですよ。」


「いヤ、浮世離れしていると思っていたが、地に足はついているのだナ・・・。」


 地に足か。元々はただのおっさんで、出生の秘密とかドラマチックな出来事とか・・・は、あったか。うん、あったから浮世離れしてしまったが、離れきれず繋ぎ止めてくれたものがあった。其れは妻であり家族であり人との繋がり。新しくできた繋がりもあれば、古くからの繋がりもある。割と恵まれてるな、俺。


「カオリ、少しゲートに行きたいが付き合ってもらえるカ?」


「いいですよ。なんの憂いもない私は、今パーフェクトです。」


「2人が行くならついて行こうかな。」


 何がパーフェクトなのかは知らないが、本人が言うからにはパーフェクトなのだろう。そんな望田とエマに付いていってゲートの中へ。階層をどこにするかと聞くと、セーフスペースがいいというのでそこへ向かう。相変わらず薄暗く呼べば不気味な三眼の馬が走ってくる。


「それで、なにか材料でも集めたかったんですか?」


「望田に模擬戦を挑もうと思っタ。ファーストは離れていてくレ。声の届かないところにでモ。」


 そう言うエマの目線の先には、腕を交差してストレッチしている望田の姿。そして、ストレッチが終わると笛と玉を出して動きをチェックしている。


「えぇ、それがいいですね。私達の会話はクロエには聞かせたくありません。」


 2人の間でなにかいざこざでもあっただろうか?飲む時もゲートで訓練する時も喧嘩する様な事はなかったと思うが・・・。まぁ、離れてほしいなら離れよう。声の届かない範囲まで。


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― 新着の感想 ―
[一言] >ゲートは半地下状に下を掘っコインを挟むように設置するらしい。 石貨がある程度地面に埋まってるようなイメージか、もしくは円を地面に向けて半分くらい埋め込まれる形?  というかリング(ゲート)…
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